あらすじにも書いていたと思いますが、この小説はとあるサイトにも掲載されている小説です。
転載ではないのでご安心下さい。
私こと佐藤柚は突然、知らない存在に拉致られました。
「と、言う訳なのじゃ」
「全くもって意味が分からない」
勿体ぶって「と、言う訳なのじゃ」とか言われてもねぇ…。
だって、その前の言葉が「仕事に疲れた」だけなんだよ。
本気でそれだけだよ?長い話とかしてないから。
「ワシだって遊びたい」
見た目15、6歳の金髪金眼の少年は不貞腐れたように言った。
女の私より可愛いなんて、神様は残酷だ。
「それよりアンタ誰?」
子供だろうが私より可愛いだろうが、コイツが私を拉致したことに変わりは無い。
というより、この体格差でどうやって私を拉致したんだ?
私の灰色の脳が「引きずって連れてきた」という答えを導き出した。
「引きずってはおらんぞ?」
流石は私の脳味噌。間違った答えを出すことに関しては右に出る者はいない。
「……自分で言って悲しくならんのか?」
「ちょっとだけ。それより、ナチュラルに心読まれた?」
「ワシは精霊王じゃからの!」
どや!とした顔で胸を張られた。
少しうざい。
「それでー、その精霊王サマがー、私にー、何の用ですかー」
「間延びした揚句、棒読みとは…」
ワシ、泣いちゃうぞ?
勝手に泣けば良いと思う。
私はそれを面白おかしく携帯に撮ってちょっとアレな人に売りつけてお金ウハウハになる。
今の世の中は便利だからなぁ。
インターネットのオークションにでも出せば、素敵なオネエサマも飛びついてくるだろう。
よし、決定。
「人間怖いよ」(ガクブル
「じゃあ帰っていい?」
「それはダメじゃ」
チッ、恐怖心を売りつけて帰してもらう作戦は失敗したか。
「ならさっさと本題に入ってよ」
「さっきから言っておるじゃろう?ワシは仕事に疲れたのじゃ」
「いや、それだけじゃ分からないから」
「だからお主に精霊王であるワシの座を譲ってやる!」
「え、要らない」
そんな訳の分からない、厨二病患者も真っ青な座なんて要りません。
てか、さっきは流したけど精霊王って何。
「デュエルモンスターズの精霊王じゃ」
「は?」
「デュエルモンスターズの精霊王じゃ」
「別に二回も言わなくて良いから。聞こえてたから」
ただ、現実的に受け入れられないだけだ。
だってアレでしょ?デュエルモンスターズの精霊って言ったら“遊戯王”しか思い浮かばないじゃん。
むしろアレ以外に何がある。
「む?そうか、お主の世界ではワシ達は“二次元の存在”になっておるのか」
私の記憶を覗いたのか、目の前のショタ精霊王はアッサリと納得した。
話さなくて良いから楽だけど、これってストーカーより質悪いよね。
「いきなりのことだ。すぐに理解しろとは言わん。
じゃが、ワシ達は確かに生きて、自分の意思を持っておるのじゃ」
「あぁ、それは今アンタと話してる時点で理解してるから」
「理解早ッ!?」
だって、ねぇ?
そんなこと「今更?」って感じだ。
非科学的なことに順応してきた自分が怖い。
「要するにアンタは仕事に疲れたから私を精霊王ってヤツにして遊びたいんでしょ?」
「言い方が根も葉もないの」
「実際その通りでしょ。で、精霊王って仕事って何?」
「“存在すること”」
「……それだけ?」
「それが重要なのじゃ。精霊王とは精霊界そのもの。ワシがいなくなれば全ての精霊は消滅する」
思ったより重たい話だった。
だが、それだけに気に食わない。
「何でそんな大切な座を私に?」
「王とは常に大を守るために小を切り捨てる。ワシが消滅させた世界も多い」
「……ふーん」
「酷いと思うか?……それでいい。そう思えるお主だからこそ、ワシは選んだのじゃ」
「どういうこと?」
「人とは不思議じゃ。ワシら精霊より力も無いクセに、精霊でさえ抗えない運命を変える」
私は、その言葉を黙って聞いた。
口を挟んでいけないような、そんな気がしたから。
精霊王は私から少し距離を取り、話を続けた。
「だから、ワシは思ったのじゃ。人としての心を持ち、精霊の力を持ったらどうなるのか」
「………」
「無論、人間は必ずしも善では無い。が、必要悪というものはある」
それはそうだろう。
悪がなければ善も存在しないのだから。
「ワシはお主に全てを託す。もしそれで精霊界が滅ぼうとも、ワシはお主を恨まんよ」
「……そう」
なんかカッコイイこと言ってるけど、何で私が精霊王になること前提で話してるんだろう。
まだ成るとは言ってないよ。
「ちなみに」
「?」
「精霊王に成れば、お腹も空かないし学校に行かなくても良いし精霊の力が使いたい放題じゃ」
「よし成ろう。今すぐ成ろう」
即決?だからなんだ。
学校に行かなくていい=就職に悩むことがない。
憧れ(?)だったニート生活を堂々としていいと言われたのだ。
これほど嬉しいことは無い。
第一、私って両親とか仲の良い親族とかいないから尚更だね。
「デメリットは人よりも寿命が長いことと、今までの世界から別れることじゃ」
「うん。別に良いよ」
人よりも寿命が長いなんて気にしない。
どうせ、命あるモノは全て別れが訪れる。
私は別れを悲しむよりも、出会いに喜びを感じたい。
「……本当に良いんじゃな?もうお主の世界には帰れんぞ?」
「大丈夫。精霊界は任せて」
「うむ、お主を信じよう。……受け取るがいい」
「!これ、は…」
身体に言い知れぬ力が溢れ出す。
これが、精霊の………いや、精霊王の力。
全ての精霊を統括する、王の力。
「困った時はワシを呼べ。力は失ったが……微弱ながらも協力はする」
「うん。ありがとう」
「ではな!」
ピキリと、次元の壁にヒビが入る。
私は、それに吸い込まれるように消えた。
「……さて」
残された元精霊王は溜め息を吐き、
「リゾート地にでも観光に行くかの~♪」
それはもう輝かしい笑顔で世界に飛び立っていった。
誤字脱字は無いと信じたい。