「(うーん、意外…)」
取り敢えず大会自体は3位の成績を貰い、海馬君とデュエルすることは無かった。
勿論、海馬君は優勝して賞状やトロフィーを受け取っていたが。
しかし、私は思っているのはそういうことではない。
「(大会中に接触があると思ったんだけどなぁ…)」
一応監視なのかどうなのかは知らないが黒服らしき男たちの姿や視線を見受けられた。
だが、海馬君本人との接触は未だにない。
強行手段で奪われる予想が外れたな…。
それとも大会中に私にアンティルールを持ちかけるつもりだったんだろうか?
………あ、それとも接触はこれからかな?
「(大会中に“不慮の事故”があったら、大会自体が中止になるかもしれないしね)」
こっちの可能性の方が高いかなぁ。
ま、私はロビーのソファで寛いでいよう。
どうせあっちから接触があるだろう。多分。
「早く来ないかな…」
「誰か待っているのかい?」
「!」
せ、接触早ッ!?
思わず立ち上がりそうになったよ!
……まぁ、実際には内心で驚いただけだけど。
「えっと……海馬君、だよね?優勝おめでとう」
確認せずとも知っているが、保険のために疑問符をつけておく。
んー……こうやって見れば普通の美少年、って感じかな?
遊戯君と同じ年だし、多分12歳だよね。
「ありがとう。そういう貴女はユズさんでしょ?」
「私のこと知ってるんだ…」
「いきなり現れたダークホースだって、皆が言ってたからね」
「あはは。偶然、参加者に間違われただけなんだけどね」
「偶然?」
「そ。世界旅行が趣味で、色んな所に行ってるんだ」
今はエジプトしか行ってないけど、もっと他の所にも行ってみたいんだよねぇ。
アメリカとか、イギリスとか。
いつか全国に行ってみよう思う。
デュエルさえあれば、無条件で友達も増えるし。
言葉も心配しなくていいし、最高の旅だね。
「……ユズさんは自由人なんだね」
「まぁ、5年後にはやりたいことがあるけどね」
原作介入とか崩壊とか。
精霊界に影響がない程度には好き勝手やりたいな。
「やりたいこと…?」
「色々とね。…あ、そうだ」
「?」
危ない危ない、本来の目的を忘れる所だった。
いい加減、原作キャラにあったらテンションあがるクセを自重しないと。
私はホルスターから1枚のカードを取り出し、海馬君に差し出した。
「はい」
「これは…っ!」
海馬君は若干震えた手で私から差し出された【青眼の白龍】を受け取った。
これで5年後への布石は出来たかな?
「そのカードあげる」
「……いいのかい?」
ん?あれ?
「それが目的で近付いてきたんじゃないの?」
「ッ!?」
「あはは!海馬君って、案外分かりやすいね」
ポーカーフェイスは上手なのに、自分の心を指摘されると簡単に驚くなんて。
ここら辺はまだ小学生だなぁ。
原作に入るまでには成長していることを祈ろう。
「…からかっているのか?」
「まさか。私は自分の思ったことを言ってるだけよ」
私はニコリと笑い、席を立つ。
そして、一度だけ海馬君の方へ振り向いた。
「ねぇ海馬君。1つだけ覚えておいて」
「?」
「貴方が求めたから“有る”んじゃない。カードが望んだからそこに“在る”のよ」
【
有ると在る。同じようで全く異なる意味を放つ言葉。
いつか、気付ける日が来ると良いのだけれど…。
「どういう意味……」
「それじゃ、また会いましょう?海馬君」
海馬君の言葉を右から左へと流し、私は今度こそ会場を後にした。