「遊戯君、朝だよ」
「んー……」
夜遅くまで遊んでいた遊戯君と私。
そのせいで眠たそうに目を擦りながら………って、寝ちゃ駄目だって遊戯君。
寝惚けている遊戯君を何とか起こし、リビングにまで連れていく。
精霊の私は絶対とまではいかないけど、睡眠を必要としない。
まぁ、人間の時の記憶があるから嗜好程度にはするけど。
「おはようございます、双六さん」
「おはよー、じいちゃん…」
「おはよう。遊戯は寝惚けておるのか?」
「あはは、そうみたいです。夜中まで起きてましたから」
こんなことなら無理にでも寝かしつけるんだったなぁ。
私も原作キャラにあってテンション上がってたみたいだし。
今度から自重しよう。
「遊戯、早く食べんと学校に遅れるぞ?」
「え!?」
時計を見ると、針は既に8:00を指していた。
通っている学校がどこなのかは知らないけど、確かにマズイかもしれない。
遊戯君は急いでご飯を食べた後、すぐに部屋に戻って行った。
何やら上からドッタンバッタン聞こえるけど……着替えだよね?着替えてるだけだよね?
「じいちゃん、おねぇちゃん!いってきまーす!」
「気を付けるんじゃぞー」
「いってらっしゃい、遊戯君」
パタパタと走っていく遊戯君を見送った私は、食べ終わった食器を洗うのを手伝う。
だって泊めて貰ったのに何にもしないのはちょっと、ね。
あくまで心は日本人だもの。
「お譲ちゃんは学校平気かの?」
「あ、はい。今日は開校記念なのでお休みです」
さらりと嘘を混ぜつつ、返事をする。
本当のことは言えないしね。
「昨日はどうもありがとうございました」
「いいんじゃよ。ワシこそ礼を言わんとな」
その後は「親に事情を~」とか何とか言って、一時精霊界に帰宅した。
「さて…」
最初にいた“精霊王の樹”に座り、テレパシーで精霊を集める。
暫く待てば、属性や種族ごとにゾロゾロと色んな精霊が集まり始めた。
あ、そこ!仲悪いからって喧嘩するな!
流石に種族間じゃ戦争している所も多いが、私の前に来るとピタリと止めた。
うぅん、忠誠心が高いな。
《王》
《精霊王》
《我らの王》
《何故お呼びに?》
《何かあったのですか!》
《王よ》
《我々は王に仕えし者》
《邪魔なモノは排除する》
《我らが王》
《王》
…………ちょっと訂正。忠誠心高すぎ。
王、王、王と連呼されれば流石の私でも引くわ。
まぁ、敵には回らないようだから良いけどね。
「皆、ちょっと聞いて」
そんなに大きい声じゃないハズなのに、鶴の一声の如くシンとなる。
うん、なんか感動。
「私はこれから何度も人間界に行くけど、緊急時以外は話掛けちゃダメよ?」
《人間界に?》
《何故王自ら?》
《王、我々は不要ですか》
いや、何で「話掛けちゃダメ」で「不要」まで発展するんだ。
ついでに「死ぬ」とか言ってる精霊もいるし。
命を粗末にするな!
「……分かった。誰もいなかったら良いよ。だけどデュエル中は駄目」
デュエル中に話かけられたら、相手の手札とかデッキとか諸分かりだ。
ペガサスのマインド・スキャンなんて比じゃないよ。
下手したらそれより酷い。
「じゃ、話は終わり!」
そう打ち切って人間界に飛ぼうすれば、精霊たちに止められた。
どうやら、前の王はあまり精霊たちと対話しなかったらしく、姿を見たのは三千年ほど前。
あいつ、ファラオの時代から引き籠りかよ。
それで仕事疲れたとか言ってんの?あり得ないわ~、超あり得ないわ。
んで、やっとまとも姿を見れたと思えば私から話かけるな宣言。
………うん、ごめん。そりゃあ死にたい気分にもなるわ。
精霊たちの話を聞いてる限り、かなり不憫だったので暫くコッチにいることにした。
特に話すことは無かったが、精霊曰く「いるだけで安心できる」らしい。
人間的に言うと親と子なのかな?ほら、無条件の愛って感じだし。
ま、夜になったら向こうに行くけどね。
「うん、すっかり夜だね」
精霊たちの反対を押し切って何とか人間界に飛んでくると、空はどっぷりと暗闇に染まっていた。
………どうしよう、今から行っても迷惑な気がする。
「よし。ちょっとだけ顔出そう」
これでも精霊だ。
見つからないように姿を消すことも出来る。
というわけで、精霊の力を使って(乱用して)遊戯君の家に再びお邪魔する。
「うわぁぁあぁん!」
「(な、泣いてる!?)」
「おねぇちゃーん!」
「遊戯、お譲ちゃんは家に帰ったんじゃ」
「やだぁ!!」
なんか、すっごい罪悪感が…。
このまま見て見ぬ振りはダメなような気がするので、実体化してチャイムを押した。
「どちら様じゃ、……お嬢ちゃん!」
「!…ふぇ…っおねぇちゃん!」
「わ…っ」
私の姿が見えた途端に抱きついてくる遊戯君。
か、身体が精霊で良かった!
人間だったら勢いで倒れるところだったよ。
「遊戯君…?どうしたの?」
「おねぇちゃん、きゅうにいなくなったー!」
私が原因ですね、すみません。
まぁ確かに、学校から帰ってみれば私がいなくなってるもんね。
遊戯君からすれば、突然消えたのと同じだろう。
「ごめんね、遊戯君」
今回は私が全面的に悪いので、宥めるように遊戯君を撫でる。
それにしても、こんな短期間で本当によく懐いたよねぇ。
これは本気で精霊王的な力が関与しているのかどうか調べないと。
もし無意識に使っているのだとしたら、変な悪影響が出かねないし。
「おねぇちゃん、もうどこにもいかない?」
「えっと、それは……」
「う…っ」
「あ!そ、そうだ!遊戯君、コレ」
雰囲気で私の感情に気付いた遊戯君が再び目に涙を溜める。
私はそれを誤魔化すようにデッキから1枚のカードを取りだした。
そのカードは…
「【ブラックマジシャン】!?」
「遊戯君の所に行きたがっていたから、ね」
「ぼくのところに…?」
「そうよ」
本当、尋常じゃないぐらい。
私が驚くほど凄かったからねぇ、あの頼み方は。
下手したら土下座でもされる勢いだったし。
そんな趣味は無いから二つ返事で頷いたけど。
「遊戯君はそのカード、大切にしてくれる?」
「もちろん!」
「約束よ?たまに確認しに来るからね?」
「うん!」
再び会いに来ることを約束し、私はもう一度精霊界に帰った。
……だってデッキから《帰って来て下さい!》の声が五月蠅いんだもん。