「………」
私は精霊王の樹に背中を預け、思考の波に漂っていた。
考えるのは、遊戯君のことだ。
彼は原作に向け、ちゃくちゃくと進んでいる。
それは非常に喜ばしいことだ。
だが、その側に私が居ていいのだろうか?
正直言って、遊戯君が私に懐いてくれたのは嬉しい。
けれど、それではいけない気がした。
このままでは遊戯君は私を頼るようになってしまう。
それでは駄目だ。彼は、私以外の………いや、“人”との関わりを持つべきなのだ。
「そろそろ離れ時期かなぁ」
私も世界中を見て回りたいし、丁度いい頃合いなのかもしれない。
だからと言って、繋がりを断つ訳ではない。
たまには会いに来るし、手紙も出す。
精霊界を介せば飛行機とか面倒なモノに乗らなくて済むし。
「後は遊戯君に伝えるだけ、か」
それが一番言い難いんだよねぇ。
泣かれたり抱きつかれたりしたら最後まで言える自信が無い。
最終手段としては、手紙や双六さんを通して伝えるって方法もあるけど……。
やっぱり自分で言って、納得してもらいたい。
それが私なりの誠意になるから。
「……言うなら早いほう良いよね」
私はスッと目を閉じ、人間界の扉を開いた。
コツリ…
私が降り立ったのは、遊戯君の家の前。
時間帯は夜だが、前みたいに非常識な時間ではない。
「……ふぅ」
深く息を吐き、震える手でチャイムを鳴らす。
数秒もすれば双六さんが私を迎えてくれた。
「今日はどうしたんじゃ?」
「少し、遊戯君にお話しがあって」
いつもと違う雰囲気の私に気付いたのか、双六さんは黙ってリビングに上げてくれた。
「おねぇちゃん!」
「こんばんは」
「ワシは席を外した方がいいかの?」
「いえ、居て下さい」
その方が遊戯君も少しは安心出来るだろう。
私は静かに遊戯君を見据えると、ゆっくりと話し始めた。
「遊戯君。明日から私、遠いところに行くことになったの」
「とおい、ところ…?」
「そう。だから、暫く遊戯君と会えなくなるわ」
「しばらくって、どれくらい?」
「……長くて8年くらい」
「!!そんなのやだ…ッ!」
案の定、遊戯君は私の言葉を聞いてくれなかった。
双六さんは私の様子で予想は付いていたのか、あまり驚かない。
……さて、遊戯君にはどうしたら納得してもらえるかな。
「遊戯君」
「やだやだやだ!ずっといっしょにいてよ!」
「遊戯君、」
「やだったらやだ!」
ブンブンと首を横に振り、小さくすすり泣く遊戯君。
私は彼に手を伸ばし、優しく抱きしめた。
「遊戯君、聞いて?」
「……ひっく…ぐすっ…」
「私とした約束、覚えてる?」
「やく、そく…?」
「そうよ」
「…おぼえ、てる」
彼は小さくだが、頷いてくれた。
うん、偉いね。
その様子を優しい笑みを浮かべ、私は言葉を紡ぐ。
「だから、絶対に会いに来るわ。永遠の別れじゃない」
「……ほんとに、あいにきてくれる?」
「えぇ。毎日とはいかなくても手紙も出すから」
「やくそくだよ?」
「約束する。絶対よ」
遊戯君の小指と私の小指を絡め、しっかりと約束を誓った。
大丈夫。また会えるわ。
必ず、ね。
色々と直したい場所がありすぎて困る。