遊戯君と別れた私は、エジプトに来ていた。
勿論、此処に来るまでの旅行費なんて支払ってない。
全て精霊界を通して来たのだ。
卑怯?何とでも言うがいい。
「(それにしても…)」
ここ、精霊の力が凄く使いやすい。
三千年の時が経ったとは言え、今でも古代エジプトの力が流れているようだ。
私もなんとなくだが調子が良い。
「まずはピラミッドでも見に行くかなぁ」
エジプトに来たなら、これを見ないと気が済まない!
精霊化すれば壁もすり抜けられるし。←
「……っ!」
「……、…!……!」
「………!…、……。」
ん?なんか、向こうの方から平和的じゃない会話が聞こえてくる。
精霊達からも気が立ってる雰囲気を感じるし…。
私(精霊王)としては黙って見過ごす訳にはいかないな。
「ま、ピラミッドは何時でも見れるし」
路線を変え、私は声の方向に急いだ。
「(ワォ、修羅場だわ)」
現場に着くと其処には少女と男の子、そして彼女達を取り囲む黒い集団。
数は……うん、結構多い。
だが、奴等は私に気付いていない。
「(……聞こえる?精霊達)」
《!…王?》
《王だと?》
《何故このような場所に?》
流石は精霊。
一瞬で私だと気付いてくれた。
多勢に無勢な卑怯集団とは違う。
「(それは後でね。今、どういう状況か教えてくれる?)」
《黒い奴等は刺客ですじゃ》
《お恥ずかしい限りながら》
「(キミたちが悪いんじゃないよ。教えてくれて有り難う)」
《王が我らに礼を…!》
《なんとお優しい!》
……すみません、見えないからと言って拝むのは止めてくれません?
どっちも見えてる私の目には凄くシュールに映るんですけど…。
「覚悟してもらおう」
「(って、まずい!)」
暑さ用に精霊界から持ってきたマントを深くかぶり、黒集団の前に出る。
そして、ナイフの一撃を実体化させた鎖で止めた。
ガ、キンッ!
「「「「!?」」」」
「(ふぅ、精霊の身体で良かった)」
突然の乱入者に両者とも驚いたようだが、黒集団の方は私を敵と判断したようだ。
さっきの一撃で一対一は不利と判断したのか、リーダー的な存在が視線で指示を交わす。
……数的に面倒臭いし、さっさと引いてもらおう。
「引け。さもなくば………殺す」
僅かばかりだが、精霊王の力を言霊に上乗せする。
流石に王の力は普通の人間には辛かったのか、私に背中を見せないように逃げた。
「(あぁ、恐かったぁ~)」
内心で安堵の息を吐き、ゆっくりと後ろに振り返る。
いくら助けてくれた人物とはいえ、私も怪しい人物には変わりはない。
私を見る目には、かなりの警戒心が籠っていた。
「大丈夫?」
初対面の奴にいきなり「私は怪しい人物じゃありません」とか言われても安心出来るハズはない。
それを知っている私は、なるべく優しい口調で問いかけた。
「……どなたか存じませんが、ありがとうございます」
「いえ、ただのお節介に過ぎませんので」
そう。これはただのお節介だ。
もしかしたら、この人たちで対処出来たことかもしれない。
だから礼を言われるのは筋違いだ。
………ちなみに、私が何故エジプト語を話させるのか?
それは、精霊王になった瞬間に精霊世界の知識を全て吸収したからだ。
デュエルモンスターズは世界的に有名だからねぇ。
今なら軽く50カ国以上は話せる。
「あ、の…」
少し驚いていた男の子が前に出て、にっこりと笑った。
「ありがとう!」
………遊戯君並に可愛い。
しかし、なんかどっかで見たことのあるような…?
「此方こそ、ありがとう」
お礼を言ってくれて。
私はそう言いながら、被っていたマントを脱ぐ。
マントの中で固まっていた髪が、ぱさりと背中に流れた。
ふぅ、暑かったー!
「じょ、女性…?」
「何か問題でも?」
「あ、いえ……」
まぁ大体の予想はつく。
恐らく、黒集団どもを追い払った時の“威圧”が原因だろう。
確かにアレは女が出せるモノではない。
厳密に言えば人間に出せるモノでも無いんだけどね。
「さぁマリク、帰りましょう」
「でも…」
………マリクぅ!?
確かに私の記憶の端に薄っすらとあるマリクの面影とソックリだけど……。
ってそういう話じゃない!
もしかしてコレってあの場面!?
まずい、このまま行くとマリクの父親が死ぬ!
「(どうすれば…ッ)」
こんな状況で、原作云々は言ってられない。
死ぬと分かってる人を死なせる奴がいるか!
………いや、マリクの父親は嫌いだけど…ねぇ?
アニメを見た限りじゃ良いイメージも無いし。
だけど、これを放置すればマリク二重人格=マリク父死ぬ=ファラオ原因=遊戯が恨まれる。
という何とも悪循環な結果に…。
ん?待てよ?
「(私も付いてけばいいんじゃね?)」
だってファラオの記憶で三幻神が必要ってことは、私はその地位の上だ。
つまりは何とでもなる。
もし信じてくれなかったら三幻神を精霊界から引っ張りだそう。よし決定。
この二人には私が精霊王ってことがバレるかも知れないが……大丈夫だろう。
墓守の一族ってことは、きっと口も堅いハズだ。
最終的には「記憶をアレしちゃうぞ☆」って脅せばいいし(最低)
「ちょっと待って」
「「!」」
「送って行くよ」
私の言葉にイシズ(仮)は少し悩むような動作をしたが、首を横に振った。
さっきの奴らに襲われる可能性と、一族の掟を天秤にかけたのだろう。
「……いえ、結構です」
「そう?何かあったら“ユズ”って呼んで」
「ユズ…?」
「私の名前だから」
じゃあね。
最後にそう付け足し、私はマリク達の前から去った。
……と思わせ、精霊化して後ろをついて行く。
決してストーカーじゃないよ!