「ん~……っと」
晴々した空の下で背中を伸ばし、肩をならす。
精霊界へと帰還した私は、暫くの間こっちで休養を取っていた。
案外、力を溜めるのは難しくて3年間は“精霊王の樹”で眠りっぱなしだったんだよ。
おかげで身体が鈍るし、ちょっと大変。
「ま、気にしない方向でいくか」
人間界で実体化出来るほどの力も十分に溜まったし。
「あ、でもその前に遊戯君に手紙出さなきゃ」
エジプトで買ってきた(お金?質屋で換金しましたが何か?)写真付きのハガキに私が元気なことを書き、適当に送る。
マリクの件もあったけど、実際にエジプトは綺麗だったよ。
ナイル川も見たし、感無量だったね。
「次はどこかなぁ…」
原作に関わりのあるところ、か。
今のところはエジプト以外に思いつく場所は無いなぁ。
まだ5年あるし、思いついたら行ってみよう。
「よし、行こう」
右手を前へと翳し、人間界への道を繋いだ。
「……ん?」
ランダムに道を開くと、何故か建物内に辿り着いてしまった。
まずい、これって不法侵入になるんじゃ……。
いや、でもエジプトに行った時点で密入国してるようなものだし………うん。いっか。
「あれ?キミも参加者?早くしないとエントリー終わっちゃうよ?」
「え?参加?」
「ほら早く!」
いきなり現れた青年に手を引っ張られ、受付だと思われる場所に連れてこられた。
え、何?どういうこと…?
「お名前をご記入ください」
「あ、はい」
取り敢えず、来てしまったものは仕方がないので用紙に私の名前を書いて出した。
「ユズ様ですね?番号は608になります」
608と書かれた紙を貰い、無くさないように胸ポケットに入れておく。
これ、一体何の参加なんだろう…。
「それにしても、今回は災難だよねー」
「何が?」
「何が、って…。今回の大会だよ!あの海馬瀬人が出るんじゃ、優勝は無理だね」
ま、一応3位以内に入ってれば特典のレアカードは貰えるけど。
青年はそう言うと、クルリと踵を返してどこかに行ってしまった。
だが、私の脳裏には青年の口から出た人物の名前が駆け巡っていた。
「(海馬…瀬人……)」
私の記憶が正しければ、後に遊戯君のライバルになる存在。
いきなりここでエンカウントするなんて……。
運が良いのか悪いのか判断つかないよ。
《お…う…》
「!」
《お、う…》
「(この声は…!)」
後ろを振り向くと、そこには精霊化した【青眼の白龍】がいた。
…うん。一応予想はしてたよ。
《王、どうか私の願いを…》
「(分かってるわ)」
《…感謝致します》
ゆらりと陽炎のように消えた【青眼の白龍】は、1枚のカードとなって私の手元に落ち着いた。
それを素早くデッキのホルスターに仕舞い、私は会場へと向かった。
……ところで、これってデュエルモンスターズの大会だよね…?