仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム 作:ロンギヌス
今日はいよいよギーツ&キングオージャーの映画が公開!
でも作者は諸事情で日曜日まで見に行けないので、見に行った人はネタバレしないよう、お口チャックでお願いします!←
今回はデザグラ3回戦に入る前のお話になります。
あと、活動報告の方で第2回オリジナルライダー募集を開始しました。興味が湧いた方はぜひ活動報告まで。
・主なプレイヤー
小林紬/仮面ライダーハーム
我那覇冴/仮面ライダーロポ
宗像勇海/仮面ライダーオルカ
浅利切人/仮面ライダーターボン
雪ノ下幸/仮面ライダーホワイティー
榎本龍之介/仮面ライダーグリズ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
参加人数:30名
現在生き残っている人数:5名
デザイアグランプリ第2回戦、コイン集めゲームが終わってから約2週間後。
現在、ジャマトの襲撃はまだ発生しておらず、プレイヤー達は各々の時間を過ごしていた。
サロンで時間を過ごす者もいれば、次の呼び出しがあるまで自宅で過ごす者もいる。
そんな中、紬は何をしているのかと言うと……。
「ほら、前にばかり集中しない! 左右や後ろにも意識を向けて!」
「は、はい!」
冴の指導の下、ハームに変身した状態で数体のポーンジャマト達を相手取っていた。
何故、このような状況になったのか?
それは、第2回戦が終わったばかりの頃まで遡る……。
◆
「これで、残るプレイヤーはあと5人か」
デザイア神殿のサロン。
カウンター席で紅茶を飲んでいた英寿は、スパイダーフォンの画面を見ながらそう呟く。
スパイダーフォンの画面には、現時点で残っているプレイヤー達の名前が表示されていた。
「複数回参加してるロポにオルカ……加えて、初参戦でここまで勝ち残って来たグリズにハームか……なかなか面白くなってきたな」
「それは良いんだけどさ英寿君」
英寿の隣に座っていたのは、ゲーム機で遊んでいた勇海。
彼は今、とある方向を向いて困惑した様子で問いかけた。
「あれは一体どういう状況なのか、聞いてみても良いかな?」
勇海が指差した方向。
その先にあったのは……ソファに座ってスポーツドリンクを口にしている冴の前で、凄く綺麗な姿勢で頭を下げている紬の姿だった。
「冴さん、お願いします! 私を鍛えて下さい!」
「……はぁ」
紬の冴に対する頼み事、それは自身を鍛えて欲しいという内容だった。
真剣な態度で頭を下げる紬に対し、冴は大きく溜め息をついていた。
「あのね紬ちゃん。何度も言うけれど、私達は本来ライバル同士よ? 敵に教えを乞うなんて、普通なら考えられないでしょう。それに私だって、ずっとトレーニングに付き合ってあげられるほど暇じゃないから」
「そこを何とか! 毎日じゃなくても良いんです! 時間に余裕がある時だけでも、私に戦い方を教えて欲しくて! お願いします!」
「いやだから、そこを何とかって私に言われても……」
冴がいくら断ろうとしても、しつこいくらい食い下がってみせている紬。
これには流石の冴も困り果てていた。
「一応聞くけど、そうまでして私に鍛えて欲しい理由は何?」
「……2回戦のあの時、私は幸さんに騙されて危うく死にかけました。あの時は冴さんや勇海さん、英寿さんが助けてくれたおかげで何とかなったけど……そうじゃなかったら、幸さんの代わりに私が脱落しててもおかしくなかったし、何なら死んでいたかもしれません」
幸の罠に嵌められ、動けなくなっていたところをジャマトに襲われそうになった2回戦。
冴、勇海、そして英寿が助けてに来てくれていなければ、今頃ジャマトに倒されて退場していたかもしれない。
加えて、その後も3人には色々と助けて貰ってばかりで、3人に負担をいっぱいかけさせてしまった事が、紬にとっては申し訳なく感じてしまっていたのだ。
「だからこそ、今度は自分一人でも戦えるように強くなりたいんです! またあの時みたいに、私なんかのために皆さんに迷惑をかけてしまうような事になるのは嫌だから! なのでお願いします! 本当に少しだけでも良いんです! 私に、戦い方を教えて下さい!」
もう一度頭を下げて、冴に必死に懇願する紬。
そんな彼女の姿を見て、ますます困り果ててしまう冴だったが……やがて根負けしたのか、再び小さく溜め息をついてから口を開いた。
「……さっきも言ったけど、私も毎日暇って訳じゃないから。私とあなたで、スケジュールをきちんと確認する必要がある。あと、やるのはあなたの足がちゃんと治ってからね」
「! じゃあ……!」
「その様子だと、もう梃子でも動かないつもりでしょう? やるからには厳しくするわよ」
「……ありがとうございます!」
鍛えて貰えると分かり、嬉しさのあまり笑顔になる紬。
冴はやれやれと言った様子の表情を浮かべるが、その口元は僅かに緩んでいた。
「へぇ、まさかあのロポが了承するとはな。狼とハムスターによる師弟コンビ結成か?」
「気前が良いね。普段の冴さんなら、そういうのは断ってただろうに」
「一人でも戦えるぐらい強くなって貰った方が、こっちも手間がかからなくて済むと思っただけよ。それに……」
「それに?」
「……いや、やっぱり何でもない」
「?」
勇海が首を傾げる中、冴はつい先程まで紬が見せていた表情を思い出す。
紬が見せた真剣な目付きが、冴は見覚えがあった。
『お姉ちゃん、俺達にもスポーツ教えてよ!』
『お願い、お姉ちゃん!』
(……あの子達と同じ目で頼まれたんじゃ、断りようがないもの)
冴の脳裏に思い浮かぶ、大好きな弟や妹の真剣そうな表情。
それと重なって映ってしまった以上、冴にはもう断る理由が他に思い付きそうになかった。
どうやら自分も、まだまだドライにはなり切れていないらしい。
冴はそう思いながらも、頭の中で紬を鍛えるためのトレーニング内容を考案し始めていた。
◆
そして現在。
冴による紬のトレーニングは続いていた。
「ほらほら、反応が遅れてる! 相手の動きも予測しながら動く!」
「は、はい! うおりゃー!」
緑が広がる大きな平地にて、冴が大声で呼びかける。
それに応えるように、紬はハーム・ビートフォームに変身した状態で、数体のポーンジャマトを相手取る。
彼女達が今いるのは、デザイア神殿内に設立されているトレーニングルーム。
このトレーニングルームはスパイダーフォンで背景を設定する事で、現実世界と何ら変わらない仮想空間を作り出す事ができる。
加えて、ハームが現在戦っているポーンジャマト達も本物ではなく、あくまで練習台として召喚された仮想の存在である。
これらの機能を利用して、冴は紬に実践的な訓練を積ませ続けているのだ。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……っ」
「うん、良い感じ。最初の1日目に比べたら、だいぶ動きが良くなってきてる」
変身を解除し、大の字になって倒れた紬を見下ろしながら、冴は満足そうな笑みを浮かべていた。
「ほ、本当ですか……?」
「まぁ、最初よりはマシになった程度だけど。少し休憩したら、今のをもう1回やるわよ」
「ふえぇ……冴さん、思ってた以上に鬼コーチ……!」
「文句を言わない。せっかく鍛えてあげてるんだから、頑張って乗り切りなさい」
「は、はいぃ……」
なお、このトレーニングは後に紬だけでなく冴も行っているが、冴の場合は練習台として呼び出した仮想ジャマトの数が紬よりも多い。
にもかかわらず、トレーニング後も疲労で倒れる事なく立ち続けていられるなど、冴の体力は底無しだった。
「凄いです冴さん……私以上にいっぱい動いてるのに、まだ立ち続けていられるなんて」
「まぁ、これでも伊達にアスリートをやってはいないからね。体を動かす事には慣れているつもりよ」
しかも冴はロポに変身した後、バックルを使わずに装甲を纏っていない状態―――“エントリーフォーム”の姿で仮想ジャマト達を複数同時に相手取ってみせた。
彼女の戦闘能力の高さに、紬は改めて驚かされるばかりであった。
「そういえば冴さん、前から気になっていた事があるんですけど」
「何?」
「冴さんって、どうしてそこまでして強くなろうとしているんですか?」
紬にそう問われ、一瞬黙り込んでしまう冴。
彼女は少しだけ考える仕草を見せた後、その理由を簡潔に説明した。
「家族の幸せのために、かな」
「家族の……?」
「そう。強くなる事が、私の家族を幸せにする事に繋がる。だから私は、少しでも強くならないといけない。他のプレイヤー達に、負ける訳にはいかないの」
冴の話を聞いて、紬は彼女が強くなろうとする理由を理解する。
それと同時に、自分の強さに対する認識を改めさせられた気分にもなった。
冴の強さは、ただ単に身体能力が高いというだけでは語れない。
もっと何か別の要因が、彼女に途轍もない力を与えているのではないかと思えていた。
「他のプレイヤーの人達も、そんな感じなんでしょうか? 勇海さんや、英寿さんも……」
「勇海の奴が何を願っているのかまでは、私も詳しくは知らない。けれど、英寿が前回のデザグラで叶えた願いなら知ってる」
「え、何ですか?」
「【無くし物がいつか見つかる世界】ですって」
「あぁ、無くし物を…………へ?」
それを聞いて、紬は思わず首を傾げてしまう。
「な、無くし物がいつか見つかる世界……え、そんな事のためだけにデザ神になったんですか、あの人……えぇ?」
そこはこう、もっと違う事を願った方が良かったのではないか。
そう思いながらも、冴から伝えられた真実に困惑するしかない紬。
だが冴は、その反応も当然だろうと言わんばかりの表情を浮かべていた。
「安心して。あいつが何考えてるかなんて、たぶん誰にも分からないと思うから」
「は、はぁ……」
紬どころか、冴ですら読めそうにない英寿の目的。
一体、何がしたくてデザイアグランプリに参加し続けているのか。
どれだけ考えても、今の冴と紬ではとてもその答えは出せそうになかった。
「……ま、そんな話はさておき。そろそろトレーニング再開よ」
「あ、はい!」
とにかく、今は自分が強くなる事だけを考えなければ。
もう、自分なんかが誰かの足を引っ張るような事態にはさせたくない。
そう思った紬は大の字の状態から起き上がり、冴の指導の下、トレーニングを再開させるのだった。
「じゃあ、今度はバックルの使用禁止。素手の状態で戦ってみなさい」
「え、ちょ、冴さん? いきなりそれはハードル高い気が……あれ? 何で練習台のジャマトがこんなにたくさん……アァーッ!?」
◆
翌日。
(き、昨日は本当に大変だった……)
あれ以降、冴の指導によってみっちり扱かれた紬。
現在は学校の教室にて、疲れた体を休めるべく自身の席に座って机に顔面を突っ伏していた。
(まさか、冴さんがあんなにも鬼コーチだったなんて……)
冴に鍛えて欲しいと頼んだのは他でもない自分だが、まさかここまで厳しいとは思わなかった。
とはいえ、この日は冴の方がスケジュールの都合が合わなかったため、この日のトレーニングはお休みである。
しかし、冴が不在の間も紬が一人でトレーニングできるよう、冴は腹筋や腕立て伏せ、朝のランニングなど、基礎的な体力作りの方法を紬に教えてくれていた。
おかげで基礎的な体力はそれなりに身に付いたものの、やはりまだまだ冴には遠く及ばないであろう事を紬は強く実感していた。
「な~に机に突っ伏してんのさ紬」
「! さゆりちゃん……?」
そんな時、さゆりが紬に話しかけてきた。
顔を上げてみると、そこにはいつものように明るい笑みを向けてくる彼女の姿があった。
「大丈夫、アンタ? 随分とお疲れみたいだけど」
「あ、うん……夏バテみたいな感じかな……?」
デザイアグランプリに関する情報は明かせないため、もちろん冴に鍛えて貰っている事も話す訳にはいかない。
紬はそれっぽい理由を付ける事で、さゆりに悟られないようにした。
「ありゃりゃ、そりゃ良くない。そういう事なら紬、アンタも私と一緒にひんやりしようよ」
そう言うと、さゆりは自身のスマホを取り出し、某有名動画サイトのとあるユーザーのチャンネルを映し出した。
「さゆりちゃん、それは?」
「へ!? 紬アンタ、もしかして“イサミン”を知らないの!?」
「ん? イサ、イサミン……?」
何だろう、何処かで聞いた事がある名前のような気がする。
紬がそう思う中、さゆりはまだ聞かれてもいないのに説明し始めた。
「ゲーム実況者“イサミン”! これまで様々なジャンルのゲームをプレイしては多くの視聴者を楽しませている、動画投稿者にして歴戦のプロゲーマーと呼ばれし男! 公式のゲーム大会にも出場して、優勝を搔っ攫う事なんかしょっちゅうの凄いゲームプレイヤーよ!」
「は、はぁ……」
ゲームと言われ、そこに“イサミン”と来た。
紬は薄々だが、そのイサミンという人物の正体を察し始めていた。
「ほら、見てみなって! これがそのイサミンのゲーム実況!」
さゆりが動画の再生ボタンを押す。
動画はゲームのスタート画面から始まり、そこから動画投稿者の声が聞こえ始めた。
『どうも皆さん、おはこんばんちわ。今日ものんびりと昼寝してお眠なイサミンです。今日は少し前に発売されたばかりのゾンビハザードシリーズ最新作、ゾンビハザード8をプレイして行こうと思っております』
(何処かで聞き覚えのある声だー!?)
紬は確信していた。
間違いない、これは勇海の声だと。
まさかこんな形で、他のプレイヤーの素性を知る事になろうとは、紬も想定していなかった。
「イサミンのメインチャンネルの登録者数はなんと50万人超え! そんなイサミンの最大の
(! そういえば……)
さゆりの無駄に気合いの入った説明を聞いて、紬はハッと気付いた事があった。
(勇海さん、あの黒いマスクを外しているところ、まだ一度も見ていないような……)
英寿の場合はスナック菓子を食べているところを、冴の場合はスポーツドリンクを口にしているところを紬はしっかり見ていた。
何ならグリズこと龍之介も、あのサロン内で食事をしているところを見た事がある。
しかし勇海だけは、如何なる時もあの黒いマスクを着けたままであり、紬は彼が食事をしている姿を一度も見た事がない。
何故、彼はやたら素顔を隠そうとしているのか。
紬はそれが疑問だった。
「……で、さゆりちゃん。一緒にひんやりしようって、どういう事?」
「あれ、気付いてないの紬? 今イサミンが動画内でプレイしてるの、あの有名なホラーゲームだよ?」
「えっ」
ホラーゲームと聞いて、表情が一気に青ざめていく紬。
紬はホラー系の類は大の苦手なのだが、そんな事など知る由もないさゆりは、そのまま動画を再生し続けた。
それからというもの、紬は動画内でプレイされているゲームのホラー演出に何度も悲鳴を上げてしまい、さゆりの提案を受け入れてしまった事を少しだけ後悔する羽目になるのであった。
◆
同日、デザイア神殿のトレーニングルーム。
今回は冴も紬も都合が付かなかったため不在だったが、代わりに別の人物が仮想ジャマトと対峙していた。
「はっ!!」
「ジャーッ!?」
そう、噂の“イサミン”こと勇海である。
彼はオルカ・ゾンビフォームの姿に変身してから、向かって来る仮想ジャマト達をゾンビブレイカーで両断していた。
英寿が所持しているはずのゾンビバックルを、何故彼が所持しているのかと言うと……。
「存分に使いこなしているな」
「ふぅ……うん、やっぱりゾンビはしっくり来るね」
オルカが元々所持していたマグナムバックルを、英寿が持っていたゾンビバックルと交換したからである。
それにより、欲しかったゾンビバックルを手に入れたオルカは、ウキウキな様子で右手に持っていたゾンビブレイカーを眺めた。
「にしてもまさか、本当に手に入るなんて思ってなかったなぁ……♪」
「そんなにゾンビが好きなのか?」
「まぁねぇ~。最近また、ゾンビハザードシリーズにどハマりしちゃってさぁ。最新作の8がまた面白いんだこれが」
「フッ……まぁ、俺もマグナムバックルが手に入ったから別に構わないけどな」
英寿の方も、オルカにゾンビバックルを差し出す代わりにマグナムバックルを手に入れたため、お互いWin-winの関係を築いていた。
その時。
「こんな時まで仲良しこよしか」
「「!」」
英寿とオルカの前に、別の人物が姿を現した。
龍之介だ。
ユニフォームの上着を脱ぎ、上半身に黒いタンクトップ一枚というラフな格好をした彼は、その手に持っていたニンジャバックルを軽く宙に放りながら2人の前まで近付いて来た。
「アンタか……何か用?」
「精々拝んでやろうと思ってな。ライバル同士で馴れ合っている貴様らの間抜け面を」
「わざわざご苦労な事だな。そんな事のためだけにここへ来たのか?」
「それもあるが、本命は別にある」
「本命?」
オルカが変身を解いて勇海の姿に戻る中、龍之介は英寿に対してある事を提案した。
「貴様が持っているそのバックル、俺に寄越せ」
「何?」
「代わりにこのバックルはお前にくれてやる。どちらも強力なバックルだ、悪い話じゃあるまい」
龍之介の提案、それは英寿が持つマグナムバックルを自身の持つニンジャバックルと交換する事だった。
いきなり何故そんな事を提案して来たのか。
英寿と勇海は理解できなかった。
「急に何を言い出すのかと思ったら……アンタに渡す訳ないでしょ」
「貴様には聞いていない。俺は今こいつに聞いているんだ……で、どうだ?」
「断る。わざわざ交換してやる理由がないからな」
「……ふん、そうか。そう言われるだろうとは思っていた」
英寿の答えはノーだった。
そう返される事は想定内だったのか、龍之介は特に残念がる様子は見せなかった。
「何でわざわざマグナムを欲しがる訳?」
「決まっているだろう。お前達よりも俺の方が、そのバックルの力をフルに活用できるからだ」
「へぇ、随分な自信だな。その根拠は?」
「今ここで証明してやっても良い。おい、武器を出せるだろう? 貸してみろ」
龍之介にそう言われ、英寿はマグナムバックルの機能により手元にマグナムシューター40Xを出現させる。
差し出されたそれを手に取った龍之介は、マグナムシューター40Xをライフルモードに切り替え、仮想ジャマト達に狙いを定める。
すると、彼は仮想ジャマト達の頭部を正確に撃ち抜いて行き、難なく倒し切ってみせた。
(! 今の構え……)
この時、龍之介のマグナムシューター40Xを構える姿を見ていて、英寿は気付いた。
龍之介の構えは、銃器を扱い慣れている者の構えである事に。
勇海も何となくその事に気付いたのか、龍之介に対して興味深そうな視線を向ける。
「その構え……素人じゃないな。アンタ、何者だ」
「榎本龍之介二等陸尉……こう名乗ればわかるか?」
「! 自衛官だったのか……!」
龍之介の正体が自衛官だとわかり、驚愕する勇海。
しかし、ここで一つの疑問が浮かび上がる。
何故、自衛官である龍之介がこのデザイアグランプリに参戦しているのか。
その理由を、龍之介は自ら明かした。
「自衛隊に加わってからというもの、俺はずっと考えて続けて来た事がある……我が国は、あまりにも堕落しているのではないかと」
「堕落?」
「そうだ。かつて日本は、第二次世界大戦で戦いに敗れ、降伏せざるを得なかった。強力な兵器を持ってさえいれば、決してそのような結末にはならなかったはずだ……だからこそ俺は決意したのさ。俺がデザ神となり、我が国を世界最強の軍事国家として君臨させると!」
「「!?」」
龍之介が目指している理想の世界。
それを知った英寿と勇海が目を見開く中、龍之介は更に続けた。
「そのための軍事兵器として、最も利用できそうな力は既に見つかっている。他でもない、仮面ライダーの力その物だ! この力を量産する事さえできれば、もはやどの国にも負ける事はない! 我が国こそが最強なのだと、連中に力の差を思い知らせる事ができる!」
「っ……アンタ、戦争を引き起こすつもりか!?」
「全ては我が国の安寧に繋がる。そのためならば、多少の犠牲は止むを得まい」
「自衛官にあるまじき発言だな……!!」
「俺が求めるのは武力による平和だ。それ以外に方法などない」
あまりにも身勝手過ぎる理由で戦争を起こそうとしている龍之介。
勇海が怒りの目を向ける中、黙って静かに話を聞き続けていた英寿が口を開いた。
「なるほどな。よくわかった」
「ほうほう、お前も俺の理想に共感するか。ならば猶更、お前が持っているバックルをこの俺に―――」
「違う。そこじゃない」
龍之介の言葉を遮り、英寿は視線を合わせる。
その目付きは鋭く、まっすぐ龍之介を睨みつけていた。
「今回のゲーム、ますます負ける訳にはいかなくなった……という事だ」
「ふん……ならば、次の3回戦で勝負と行こうじゃないか」
龍之介もまた、英寿を見下ろすように睨みつける。
それでもなお英寿は怯む事なく、龍之介と正面から相対してみせた。
「俺の予想が正しければ、次の3回戦でもまた一人、脱落者が発生する事だろう。お前か、それともお前か、もしくはあの小娘共のどちらか……まぁそれは誰でも良い」
「……」
「覚えておくと良い……今回のデザイアグランプリ、最後に笑うのはこの俺だ……!!」
龍之介は口角を吊り上げながらそう言い放ち、2人に背を向けてその場を後にする。
英寿と勇海は何も言わぬまま、立ち去る龍之介の背中を睨み続けていた。
◆
それから更に数日後。
運命の時は、迫ろうとしていた。
「皆さん、大変お待たせしました。これより、デザイアグランプリ第3回戦を開始します!」
To be continued……
仮面ライダーギーツ!
英寿「3回戦の開幕だ」
龍之介「頂点に立つのはこの俺だァ!!」
ツムリ「皆さん、緊急事態です!」
紬「冴さん、これ使って下さい!」
冴「最速で駆け抜ける……!!」