仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム   作:ロンギヌス

16 / 36
ガッチャード、始まりましたね。キャスト欄をよく見てみたら、『仮面ライダーアマゾンズ』で駆除班の高井望を演じていた人が出演しているのに気付いてビックリしました。

……とまぁそんな話はさておき、今回はギーツエクストラの14話を更新です。

紬の過去に何があったのか?

今回はその答え合わせとなります。

それではどうぞ。

あと、活動報告にて第3回オリジナルライダー募集を開始しました。興味がある方はぜひ。













・主なプレイヤー

小林紬/仮面ライダーハーム
我那覇冴/仮面ライダーロポ
宗像勇海/仮面ライダーオルカ
浅利切人/仮面ライダーターボン
雪ノ下幸/仮面ライダーホワイティー
榎本龍之介/仮面ライダーグリズ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ

参加人数:30名

現在生き残っている人数:4名



第14話:生き残った者の使命

これは、少し昔のお話。

 

小林家は父、母、長女、次女の4人家族だった。

 

この内、次女の紬はと言うと……両親との関係が、冷めに冷め切っていた(・・・・・・・・・・)

 

父と母が元々、それぞれ教育の厳しい家庭に生まれたのもあってか。

 

2人は自分達が産んだ娘達に対しても、厳しい教育をしていた。

 

長女の小林(こばやし)(みやび)は、勉強も運動も共に優秀だった。

 

それに対し、次女の小林紬は、勉強も運動も得意ではなかった。

 

両親は娘達を比較していた。

 

優秀な雅の事は高く評価していたが、紬に対してはあまり評価しなかった。

 

『テストで良い点が取れたから何だって言うんだ。雅なら100点くらい普通に取れるぞ』

 

『その程度の事で喜ぶ暇があるなら、さっさと部屋に戻って勉強しなさい』

 

『……はい』

 

父と母は、少しも紬の事を褒めてはくれない。

 

しかし、姉の雅だけは違った。

 

雅も、紬に勉強を教える時は厳しかった。

 

それでも、両親と違う点が1つあった。

 

『ど、どうかな、お姉ちゃん……?』

 

『ん~……うん、全問正解。やればできるじゃん。偉いぞ♪』

 

『や、やった! えへへ……!』

 

それは、褒める点はちゃんと褒めてくれる事。

 

家族の中で、紬を褒めてくれるのは雅だけだった。

 

『父さんと母さんの言う事はいちいち気にしちゃ駄目。紬は紬のやり方で頑張れば良いの。大丈夫。紬の頑張ってる姿は、私がちゃんと知ってるんだから』

 

『……うん!』

 

そう言って貰える事が、紬にとっては凄く嬉しい事だった。

 

紬は両親に苦手意識を抱いていたが、自身を褒めてくれる姉にだけは、心から懐いていた。

 

しかし……悲劇は、ある日突然起こった。

 

それは、姉妹でバスに乗って登校していた時の事だった。

 

『!? 紬、危ないッ!!!』

 

『えっ―――』

 

 

 

 

 

 

ドガァンッ!!!

 

 

 

 

 

 

雅が紬を咄嗟に突き飛ばしたその直後、それは起きた。

 

居眠り運転をしていたトラックと、2人が乗っていたバスによる衝突事故。

 

バスの横から突っ込んで来たトラックにより、大きく横転したバス。

 

車体が宙に浮く程の衝撃に、乗客の大半が重傷を負い、中には即死した者もいた。

 

小林姉妹もまた、瀕死の重傷を負っていた。

 

『お、ねぇ、ちゃん……』

 

『つ、む……ぎ……ッ』

 

意識が朦朧としている紬に、雅は苦しそうに呻きながら、必死に手を伸ばした。

 

彼女の伸ばした手は震えており、今にも力尽きてしまう寸前だった。

 

『たす、けて……つむ、ぎ……ッ』

 

その一言が、紬が聞き取れた言葉だった。

 

それを聞いた時、紬もまた、雅に向かって手を伸ばした。

 

お姉ちゃんが苦しんでいる。

 

死にかけているお姉ちゃんが、助けを求めている。

 

助けなくちゃ。

 

大好きなお姉ちゃんを、死なせたくない。

 

しかし、どれだけ姉の事を強く想ったところで、同じく死にかけている紬にできる事は何もなく。

 

紬はその後、すぐに意識を失った。

 

次に彼女が目覚めたのは病院だった。

 

紬はあの衝突事故で生き延びた、数少ない生存者だった。

 

その後、大好きな姉が死亡した事を知った。

 

紬は悲しんだ。

 

姉が助けを求めていたのに、助けられなかった。

 

自分だけが生き延びてしまった。

 

自責の念に駆られた紬。

 

そんな彼女に、更に追い打ちをかける出来事があった。

 

紬の見舞いに来た両親は、雅が亡くなった事を悲しみながらも、担当の医師に感謝の言葉を述べていた。

 

しかしその後、紬は聞いてしまった。

 

両親が、小声で呟いていた一言を。

 

『最悪だな……よりによって、出来の悪い方(・・・・・・)が生き残るとは』

 

『本当にね。紬じゃなく、雅の方に助かって欲しかったのに……』

 

両親は、紬が生き延びた事を喜んではいなかった。

 

それどころか、「紬の方が死ねば良かったのに」といった旨の話をしていた。

 

姉を助けられなかったと思い込んでいた紬にとって、その言葉は強く突き刺さってしまった。

 

あぁ、どうしてだろう。

 

どうして優秀な姉ではなく、不出来な自分の方が生き延びてしまったのか。

 

不出来な自分が生き延びたって、何の価値もないというのに。

 

紬は考えるようになった。

 

自分が生き延びた理由は何なのか。

 

その理由が知りたい。

 

そんな想いに駆られるようになった紬は……やがて、運命の時がやって来た。

 

『おめでとうございます』

 

『厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました』

 

『今日からあなたは、仮面ライダーです!』

 

デザイアグランプリ。

 

そのプレイヤーに、紬は選ばれた。

 

選ばれてしまった。

 

紬は考えた。

 

この仮面ライダーの力があれば、誰かを助ける事ができるのではないか。

 

あの事故で生き延びてしまったからには、この力で誰かの助けになるような事をしなければならない。

 

だからこそ、紬は仮面ライダーとして戦う道を選んだ。

 

両親との関係はすっかり冷え切ってしまったが、それでも両親が自身を捨てずに育ててくれたのは事実。

 

せめて、自身を育ててくれた事への恩ぐらいは返したい。

 

そこで彼女が願ったのが、『家族の幸せ』だった。

 

これすらできないようなら、自分にはもう、生きている価値なんてない。

 

そんな思いが、紬の心には深く根付いてしまっていた。

 

 

「―――ここは」

 

目覚めた紬。

 

そこは何もない、真っ暗な空間だった。

 

紬は思い返す。

 

何故自分はこんな所にいるのか。

 

先程まで、自分は何をしていたのか。

 

「確か、あの時……ラスボスが攻めて来て……」

 

「俺達が死んだんだ」

 

「ッ!?」

 

紬の背後から、語りかけて来る者がいた。

 

その男は、死神ジャマト達に襲われて死んだ者の一人だった。

 

「お前が遅かったせいで、俺達は死んだんだ」

 

「ねぇ、何でもっと早く助けに来てくれなかったの?」

 

「そんな凄い力を持っておいて、何の役にも立たねぇ奴だな」

 

「なぁ教えてくれよ。何で俺達が死ななきゃいけなかったんだ?」

 

「お前はまだ死んでいないってのによぉ」

 

「あなただけ生き延びて、狡いじゃないの」

 

「俺達の人生を返してくれよ」

 

「代わりにお前が死ねば良かったのに」

 

死者達が語りかけて来る。

 

それはまるで呪いのようだった。

 

紬が耳を塞いでも、彼らの言葉は止まらない。

 

「お前なんか死んじゃえよ」

 

「使えない役立たずめ」

 

「生きていて恥ずかしいって思わないのかしら?」

 

「死んだ人達はもっと生きたかったはずなのに」

 

「っ……ごめん、なさい……ごめんなさい……!!」

 

死者達の言葉に、紬は涙を流しながら何度も謝り続けた。

 

それでも、死者達は紬を責め続けた。

 

「どうせつまんねぇ命なんだからよぉ。とっとと死んでくれねぇか? なぁ?」

 

耳を塞いで蹲る紬に、ターボンが覗き込みながらそう言い放つ。

 

更に別の人物が、紬の肩に手を置いた。

 

その人物の顔を見て、紬は思わず呼吸が止まった。

 

「お……お姉ちゃん……?」

 

「酷いわ、紬。どうして助けてくれなかったの? 私、あんなに助けてって言ったのに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当、肝心な時に使えない役立たずねぇ。あなたは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!!」

 

ガバッと起き上がった紬。

 

呼吸が荒く、汗だくな彼女の耳には、もう死者達の声は聞こえて来なかった。

 

「はぁ……はぁ……あ、あれ……ここは……」

 

そこは、デザイア神殿のサロンに設置された病室だった。

 

目覚めた紬はベッドから身体を起こし、周囲をキョロキョロと見渡す。

 

その時、部屋のカーテンがシャッと開かれ、そこから英寿、冴、勇海の3人が姿を見せた。

 

「目が覚めたか、ハーム」

 

「! あの、ここは……?」

 

「サロンだ。あの後、一度態勢を立て直すためにここまで撤退したんだ」

 

ラスボスであるローズフォートレスジャマトの猛攻により、形勢不利と判断した英寿。

 

彼は敵の攻撃をレイズシールドで何とか防いだ後、冴や勇海と共に一度戦線から離脱したのだ。

 

もちろん、無理が祟り意識を失ってしまった紬も連れて。

 

「本当にあなたって娘は、無茶はしないようにってあれほど言ったのに」

 

「英寿君に感謝しなよ。気絶した君を運んだのは英寿君だから」

 

「っ……すみません。また、ご迷惑をおかけしました……」

 

「謝罪は良い。それよりも、君に聞きたい事がある」

 

英寿はベッドの近くにある椅子に座り込み、紬に問いかけた。

 

「あの時、何故あんな真似をしたんだ?」

 

「? えっと……何の事でしょうか……?」

 

「あの時。そんなボロボロの状態で、ラスボスに挑もうとした事だ」

 

ローズフォートレスジャマトの攻撃から、ハームがロポを庇った時の事。

 

決して少なくないダメージを受けたはずなのに、ハームはその状態で無理してでも戦いを挑もうとした。

 

そして、その際にハームが叫んだ、あの台詞。

 

『誰も助けられない、何の役にも立てない私なんかに、生きてる価値なんてない!!!』

 

「あの時、君が言ったあの台詞……何をそんなに生き急いでいる?」

 

「え……」

 

「前々から、何かおかしいとは思っていた。自分なんか、自分なんて、と自分を卑下する言い回しが多かったからな」

 

何か確信を得たのか、英寿は紬に問いかけた。

 

「最初の1回戦の時、ジャマトに襲われた君は「死にたくない」と叫んでいたから、すぐには気付けなかったが……それも、ただ自分の命が惜しいからって訳じゃないんだろう?」

 

「……はい。だって、せっかく仮面ライダーになれたのに、あんな所で死んじゃったら意味がないじゃないですか。どうせ死ぬなら、せめてこの力で誰かの役に立ってからじゃないと」

 

「「……ッ!?」」

 

何をそんな当たり前の事を……とでも言うかのように、さらりと言ってのけた紬。

 

これには冴と勇海も思わず目を見開いた。

 

「やっぱりな……改めてわかった。ハーム、君は自分の命を大事にしていない。誰かを助けるためなら、その過程で自分が死んでも構わないとすら考えている……そうだな?」

 

「……はい」

 

「っ……ふざけないで!!」

 

英寿の言葉を、紬は否定しなかった。

 

それを聞いた冴は怒りの表情を浮かべ、紬の肩を掴んだ。

 

「死んでも構わないって何を馬鹿な事を……あなた、もっと自分の命を大事にしようって思わないの!?」

 

「思える訳ないじゃないですかッ!!!」

 

それに対し、今度は紬の方から冴の肩に掴みかかる。

 

声を荒げながら言い放つ紬に、冴は思わず呆気に取られてしまった。

 

「誰も助けられないで、自分だけ生き残ってしまったのに!! どうやって自分を大事にしようって思えるんですか!!!」

 

「ッ……!?」

 

「……ハーム、詳しく話せ。君がそう考えるようになった理由を」

 

「……はい」

 

特に隠す理由もないからか。

 

英寿からそう告げられ、紬は冴の肩から手を離してから話し始めた。

 

両親からは、ずっと厳しく育てられてきた事。

 

自分を褒めてくれる、姉の雅にだけは心を開いていた事。

 

その姉と一緒に事故に巻き込まれ、目の前で姉が死んでいった事。

 

両親は、自身が助かった事を全く喜んではくれなかった事。

 

一部始終を、紬は話し終えた。

 

彼女の過去を知った冴と勇海は言葉を失い、英寿はただ沈黙を貫いていた。

 

「なら、紬ちゃんが脱落するのを嫌がってた理由って……」

 

「この力があれば、誰かを助ける事ができると思ったからです。あの時と違って、今度こそ自分の力で……それもできないようなら、もう私が生きている価値なんてありません」

 

「っ……けど、あなたのお姉さんが死んだ事故は、あなたのせいじゃないでしょう!? あなたのお姉さんだって、あなたが死ぬ事を望んでいた訳じゃ―――」

 

あの人(・・・)はずっと、私に助けを求めてたからッ!!!」

 

紬は自身の頭を押さえながら、再び声を荒げた。

 

その脳裏に、死に行く姉の姿を鮮明に思い浮かべながら。

 

「ずっと私の事を大事にしてくれていたお姉ちゃんが、目の前で死にかけてるというのに、私は何もできなかった!! お姉ちゃんが目の前で死んでいくのを、黙って受け入れる事しかできなかった!! その時のお姉ちゃんの顔が、今でもずっと頭に焼き付いていて離れないのに……忘れたくても、忘れられないんです……ッ!!」

 

「紬ちゃん……」

 

目元に涙を浮かべながら、自身の想いを吐き出す紬。

 

これには冴も、勇海も、何て言ってあげれば良いのかわからず、再び言葉を失ってしまった。

 

「……君の過去についてはわかった」

 

その時、黙って話を聞いていた英寿が、椅子から立ち上がる。

 

「どちらにせよ、君はここで休んでいろ。ラスボスに捕まった人達は俺達で助け出す」

 

「いえ、私も行きま……ッ」

 

「ちょ、紬ちゃん!? まだ動いちゃ駄目だって……!!」

 

ベッドから起き上がろうとする紬だったが、まだ傷が痛むのか表情が歪む。

 

勇海が慌ててベッドに寝かせる中、英寿は背を向けたまま言い放つ。

 

「そんな状態で何ができる? 万全の状態ならともかく、今の君じゃ何もできない」

 

「……今の私は、役立たずだって言いたいんですか」

 

「逆に聞くが」

 

英寿は顔だけ後ろに振り返り、紬に質問を返した。

 

「自分の事も大切にできないような奴が、他人を助けられると思うのか?」

 

「……ッ」

 

英寿の質問に、紬は何も答えられなかった。

 

そうなる事は想定内だったのか、英寿は彼女の答えを聞く事なく、病室を後にするのだった。

 

 

「色々複雑だねぇ」

 

その後。

 

ラスボスのローズフォートレスジャマトが一時的に姿を消したため、再び現れるまでの間、デザイア神殿で待機する事になった一同。

 

トレーニングルーム内で再現された大きな公園にて、勇海は自身が乗ったブランコを漕ぎながら、ブランコを囲っている柵の上に腰かけている英寿に語りかけた。

 

「何が言いたい?」

 

「紬ちゃんの事。最初に会った時は、明るくて優しい女の子って印象だったんだけどさ」

 

のんびりとブランコを漕ぎながら、勇海は初めて紬と会話をした時の事を思い返す。

 

「色々思い知らされたよ。俺達はあの娘の事を、何も理解してなんかいなかったんだなって……」

 

「……」

 

「んで、今思い返してみるとさ……グリズのおっさん、気付いてたんだよね。紬ちゃんの異常性に」

 

グリズこと龍之介。

 

第3回戦が始まる前、彼は紬に対してこう告げていた。

 

 

 

 

 

 

『ふん、謙虚過ぎるのも考え物だな』

 

 

 

 

 

 

そう、龍之介は気付いていたのである。

 

紬のあまりに低過ぎる自己肯定感に。

 

「サバイバーズ・ギルト……周りの人達が死んでいった中で、自分だけ生き延びてしまったと思い込んだ人は、今のハームみたいに自責の念に駆られるようになる。一度あぁなったら、口で説得するだけじゃ簡単には変わらない」

 

「けど、紬ちゃんの気持ちはわかるよ……俺も昔、似たような時期(・・・・・・・)があったし」

 

「! お前が……?」

 

「まぁね……だからこそ、なんて声をかけるべきか、慎重に考えないといけないってのもわかるんだ。下手な発言は、かえって相手を追い詰めてしまいかねないから」

 

「……お前はどう思う? ロポ」

 

英寿と勇海は視線を違う方向に向ける。

 

2人の視線の先には、滑り台の一番上で座り込んでいる冴の姿があった。

 

「何、いちいち言わなきゃ駄目?」

 

「単純に気になった。お前はハームの事を散々鍛えてやってたんだからな」

 

「……ハッキリ言うと、納得はしてない」

 

冴はボソリと呟くように答えた。

 

「あの娘がどういう思いで戦っていたのかは理解できても、それで自分を大事にしない事まで、納得できた訳じゃない……それから」

 

「それから?」

 

「……あの娘があんなに思い詰めていた事に気付きすらしなかった、そんな自分に腹が立って仕方ない」

 

これまで、ずっと紬の事を鍛え続けてきた冴。

 

そんな彼女にとっては、紬が思い詰めていた事に全く気付いてあげられなかった事が、何よりも悔しい話だった。

 

「……いずれにせよ、これ以上ハームに無茶をさせる訳にはいかない」

 

「最終戦は、残った俺達でクリアするしかないよね」

 

「ラスボスに捕まった人達も、何とかして助け出さないと」

 

これ以上紬が無理をしないよう、急いでこの最終戦を終わらせる必要がある。

 

そのために、一番手っ取り早い方法はただ一つ。

 

「「「ラスボスは、俺/私が倒す」」」

 

3人の意志は決まっていた。

 

 

それから数時間後……ゲームは再開された。

 

「皆さん、再びラスボスが現れました! 急いで向かって下さい!」

 

ツムリが言い終わるより前に、英寿、冴、勇海の3人はジャマーエリアへと転移し、死神ジャマト達が暴れている街中へと駆け付けた。

 

遠くの空では、ローズフォートレスジャマトが浮遊しており、街全体に茨の棘を飛ばして爆撃を仕掛けていた。

 

「あ、見てあそこ!」

 

勇海が指差した先。

 

その先にあったのは、ローズフォートレスジャマトの本体から伸びている茨で形成された、球体状の大きな檻。

 

檻の中にはさゆりを初め、ローズフォートレスジャマトに捕まった人達が、意識を失った状態で閉じ込められていた。

 

「捕まった人達はあそこか……!」

 

「急ぐぞ……!」

 

≪SET≫

 

≪≪SET FEVER≫≫

 

「「「変身!!」」」

 

≪MAGNUM≫

 

≪HIT ZOMBIE≫

 

≪HIT BEAT≫

 

英寿はマグナムバックルを使い、ギーツ・マグナムフォームに変身。

 

冴と勇海はフィーバースロットバックルを使い、冴はロポ・ゾンビフォームに、勇海はオルカ・ビートフォームに変身を遂げた。

 

「「「「「ジャジャーッ!!」」」」」

 

「……行くぞ!!」

 

死神ジャマト達が迫り来る中、3人は同時に動き出した。

 

ギーツはマグナムシューター40Xを構え、死神ジャマト達を正確に狙い撃つ。

 

ロポは素早く駆け回りながら、ゾンビブレイカーで死神ジャマトを斬りつけていく。

 

≪ROCK FIRE≫

 

「2人共、構えて!!」

 

オルカはロックンロールを演奏し、ビートアックスに炎を纏わせると、彼の意図を察したギーツとロポがそれぞれ武器を構える。

 

ビートアックスを持ち替えたオルカは、ギーツが構えるマグナムシューター40Xの銃口と、ロポが構えるゾンビブレイカーの刀身部分にそれぞれ炎を纏わせ、2人の武器を一時的に強化させた。

 

≪TACTICAL FIRE≫

 

「「「はぁっ!!!」」」

 

「「「「「ジャーーーーーッ!?」」」」」

 

ギーツのマグナムシューター40Xからは強力な火炎弾を連射し、ロポとオルカはそれぞれ武器を振るい強力な炎の斬撃を放つ。

 

灼熱の炎に焼かれた死神ジャマト達は、その場で次々と爆散していく。

 

そこに、ローズフォートレスジャマトが攻撃を仕掛けて来た。

 

「ギョアアアアアッ!!」

 

「「「ッ……!!」」」

 

次々と振るわれて来る茨の鞭を、的確にかわしていく3人。

 

しかし、複数の茨の鞭による猛攻は激しく、更には茨の鞭で破壊された建物や地面の瓦礫などが邪魔になり、3人は思うように反撃の隙を見出せなかった。

 

「チッ……上手く近付けない!!」

 

「まずは凍らせるか……!!」

 

≪FUNK BLIZZARD≫

 

振るわれて来る茨の鞭をロポがゾンビブレイカーで切断していく中、オルカは再びビートアックスで演奏し始める。

 

ビートアックスから冷気が噴出し、オルカはすぐにビートアックスを地面に叩きつけた。

 

「そぉれ!!」

 

≪TACTICAL BLIZZARD≫

 

茨の鞭が地面に突き刺さったその直後、オルカが地面に叩きつけたビートアックスから冷気が広がり、地面に突き刺さった茨の鞭が一気に凍りついていく。

 

結果として、凍りついた茨の鞭が、ローズフォートレスジャマト本体に向かうための道となった。

 

「道ができたな、今なら―――」

 

しかし、その時だった。

 

「はぁっ!!」

 

「「「!?」」」

 

突然、3人の頭上を1つの影が通過した。

 

3人が見上げた先には、ハムスターのような四足歩行の姿をしたブーストライカーが、ブーストフォーム姿のハームを乗せた状態で高く跳躍していた。

 

「ハーム!?」

 

「「紬ちゃん!?」」

 

何故ここにハームがいるのか。

 

今の彼女は、傷が深くてまともに戦えないはずなのに。

 

3人が驚いている中、ブーストライカーに乗り込んだハームはビートバックルを取り出した。

 

≪REVOLVE ON≫

 

「ごめんなさい、言いつけを守らなくて……でもやっぱり、黙って見てる事はできません!!」

 

≪SET≫

 

≪DUAL ON≫

 

≪BEAT & BOOST≫

 

「チュー太郎、お願い!!」

 

ドライバーを半回転させ、ビートバックルを装填したハームは、その場でボディが変化。

 

ビートブーストフォームの姿となったハームは、自身が“チュー太郎”と名付けたブーストライカーに再び乗り込んだ。

 

「ちょ、待って紬ちゃん!?」

 

「駄目よ!! 戻りなさい!!」

 

オルカとロポが慌てて呼びかけるも、ハームは2人の制止を無視し、凍った茨の鞭の上を駆け上がってローズフォートレスジャマトの下まで向かい始めた。

 

当然、ローズフォートレスジャマトはそれを阻もうと複数の茨の鞭を伸ばして来るが、ハームは構えたビートアックスを演奏し、ビートアックスに炎を纏わせる。

 

≪ROCK FIRE≫

 

≪TACTICAL FIRE≫

 

「てやぁっ!!」

 

ビートアックスから放たれた炎が、茨の鞭を次々と焼き尽くしていく。

 

その後もハームを乗せたブーストライカーは走り続け、ハームは茨の檻に閉じ込められている人達の姿を見据える。

 

「さゆりちゃん……!!」

 

檻の中で意識を失っているさゆり。

 

彼女の姿を見て、ハームはビートアックスを掴む右手の力が強くなっていく。

 

(待ってて……絶対、助けるから……!!)

 

自身にとって一番の親友。

 

何としてでも助けたい。

 

たとえ、自身の命と引き換えになろうとも。

 

ハームの脳裏に、過去の記憶が呼び起こされる。

 

 

姉を失い、両親から愛されていないと知った紬。

 

彼女は高校生になってからも、心の傷が癒えずにいた。

 

そのせいで暗い性格になっていた当時の彼女は、その陰気な雰囲気が災いし、クラスメイト達は誰も彼女に関心を示そうとしなかった。

 

そんな彼女に初めて声をかけたのが、さゆりだった。

 

『ねぇねぇ、アンタもその本読んでるの?』

 

『……そう、だけど』

 

読書をしていた紬に、臆する事なく声をかけたさゆり。

 

たまたま本の趣味が同じだった事を切っ掛けに、2人は少しずつだが、話をするようになった。

 

一緒に本屋に行ったり、ゲームセンターで遊んだり。

 

全て、さゆりが紬を誘う形だった。

 

切っ掛け自体は単純だったかもしれない。

 

それでも、姉を失った悲しみに暮れていた紬にとって、少しでも自身を楽しませようとしてくれるさゆりの存在は、とても大きくなっていた。

 

ある時、紬はさゆりに問いかけた。

 

何故、そうまでして自分と一緒に遊ぼうとするのか。

 

その質問に、さゆりは答えた。

 

『アンタがずっと暗い顔してるのが見てらんなかっただけ。理由なんて、そんな単純なもんで良いの。人間、暗い顔するより、笑った顔してた方が楽しいでしょ?』

 

理由自体は本当に単純だった。

 

しかし、閉ざされていた紬の心を氷解させるには、充分過ぎるものだった。

 

いつしか、紬の表情にも笑顔が戻っていった。

 

そんな紬を見て、さゆりも今まで以上に笑ってみせた。

 

2人が親友と呼べる間柄になるまで、そう時間はかからなかった。

 

 

(たとえ、私が死ぬ事になっても……!!)

 

≪BOOST TIME≫

 

(絶対……助け出す!!!)

 

ブーストバックルのハンドル部分を回すハーム。

 

更にビートバックルも操作し、ビートアックスに強力なエネルギーが収束していく中、ハームは再度ブーストバックルのハンドルを回した。

 

「私の友達を……」

 

≪BEAT BOOST≫

 

「離せええええええええっ!!!」

 

≪GRAND VICTORY≫

 

「ギュオオオオオ……ッ!?」

 

凍った茨の鞭を駆け抜け、茨の檻まで近付いて来たブーストライカー。

 

そのブーストライカーから跳躍したハームは、エネルギーの収束されたビートアックスで、迫り来る茨の鞭を纏めて一閃。

 

そのままローズフォートレスジャマトのボディを斬りつけていき、最後に茨の檻を吊り下げていた茨を切断した。

 

「ッ……さゆりちゃん!!!」

 

強力な一撃で斬りつけられ、落下し始めるローズフォートレスジャマト。

 

それと共に、さゆり達の閉じ込められた茨の檻もまた、地上へと落下していく。

 

必死に手を伸ばすハームだったが、その手は茨の檻に届かない。

 

その時……。

 

≪GOLDEN FEVER VICTORY≫

 

「!?」

 

地面から伸びて来た巨大なゾンビの腕が、落ちて来た茨の檻を優しくキャッチし、地面に優しく下ろしていく。

 

ハームの視線の先には、バーサークローを地面に突き刺しているロポの姿があった。

 

(あぁ……良かった……冴さんが、助けてくれた……)

 

「ッ……紬ちゃん!!」

 

「ロポ、オルカ、この場は任せる!!」

 

≪SET≫

 

≪BOOST≫

 

≪READY FIGHT≫

 

≪BOOSTRIKER≫

 

ロポが叫ぶ中、ギーツはブーストフォームにチェンジし、ブーストライカーを召喚。

 

キツネの姿をしていたブーストライカーは、その場で変形してバイクモードとなり、ギーツはそれに乗り込んでハームの下へと向かって行く。

 

 

「はぁ……はぁ……ッ」

 

その後。

 

地面に落下したハームは、大の字になって倒れ込んでいた。

 

ブーストタイムを発動した後であるため、既にブーストバックルは何処かに飛び去っており、現在のハームは通常のビートフォームの姿に戻っていた。

 

当然、彼女が乗っていたブーストライカーも、既に姿を消している。

 

(やった……さゆりちゃんを……皆を、助け出せた……!)

 

その近くには、同じく地面に落下したローズフォートレスジャマトが、地面に大きく減り込んでいる。

 

ボディ各部から火や煙が上がっており、ハームは確かな手応えを感じていた。

 

「うっ……くぅ……!!」

 

起き上がろうとするも、全身に痛みが走り、すぐに起き上がれないハーム。

 

彼女は大の字の状態から、まずはゆっくりと寝返りを打ち、うつ伏せの状態になる。

 

そこから、地面に付けた両腕に少しずつ力を入れ、痛みを我慢しながらも、体を少しずつ起こしていく。

 

(ッ……これ、明日は丸一日、動けないかも……)

 

何とか上半身を起こしたハームは、女の子座りの態勢になる。

 

全身の痛みが引くまで、しばらくはこの態勢でいようと彼女は考えた。

 

(英寿さん達には、怒られるだろうなぁ……)

 

彼らの言いつけを無視し、自身は痛む体を無理やり動かして、この場にやって来た。

 

英寿は勿論、冴や勇海もきっと怒るだろうという事を予想したハームは、怒られる事を覚悟していた。

 

(でも……後悔はしてない)

 

しかしそれでも、自分はさゆり達を助ける事ができた。

 

それだけで、彼女は満足だった。

 

しかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズズズズ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームはまだ、終わっていなかった。

 

「―――ッ!?」

 

突然の地響き。

 

何事かと思ったハームはすぐに振り返り……仮面の下で、表情が青ざめた。

 

「そ、そんな……ッ!?」

 

「ギュアアアアアアアア……!!」

 

ハームの目の前で、複数の茨を地面に突き刺し、減り込んだ地面から起き上がり始めていたローズフォートレスジャマト。

 

ハームがビートブーストフォームの姿で放った一撃ですら、あくまでそのボディに傷を残しただけで、トドメを刺すまでには至らなかったのだ。

 

「くっ……!!」

 

ローズフォートレスジャマトが再び宙に浮かび上がっていく中、ハームは全身の痛みを我慢し、何とか立ち上がろうとする。

 

しかし、今の彼女にはもう、走るどころか、歩く力もほとんど残されていなかった。

 

(せめて、防御を……!!)

 

シールドバックルを装填しようとするハーム。

 

しかし手に力が入らず、シールドバックルを取り落としてしまう。

 

そんな彼女を見下ろしながら、茨の鞭を伸ばすローズフォートレスジャマト。

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数の茨の棘が、雨のように降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガガガガガガァンッ!!!

 

「ああああああああああっ!!?」

 

地面に刺さると同時に、次々と爆発を起こしていく茨の棘。

 

逃げる気力が残っていなかったハームは、そのまま爆炎に飲み込まれてしまう。

 

それから爆風が収まった後、その場には、全身から火花を散らしているハームの姿があった。

 

「う、ぁ……あっ……」

 

ハームの変身が解け、紬は全身がボロボロになった状態で、その場に倒れ込む。

 

ローズフォートレスジャマトはそんな彼女にトドメを刺す事なく、何処かへ飛び去って行く。

 

それから少しした後、ブーストライカーに乗ったギーツが駆け付け、遠くに消えて行くローズフォートレスジャマトを見据えた後、地面に倒れている紬の姿を見つけた。

 

「ッ……ハーム!!」

 

「あっ……英寿、さん……っ」

 

急いでブーストライカーから降り、倒れている紬の下へ駆け寄るギーツ。

 

変身を解いた英寿は、紬の肩に腕を回し、ゆっくりと彼女の上半身を抱き起こしたが……。

 

 

 

 

 

 

ピシィッ!!

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

紬のデザイアドライバーに装填されている、ハームのIDコア。

 

そのIDコアが、縦に大きく罅割れた。

 

それを見た時点で、英寿は嫌でも理解してしまった。

 

紬はもう、助からないと。

 

「え、えへへ……失敗、しちゃいました……」

 

「ハーム、君は……」

 

既に己の死を悟ったのか、全身傷だらけになってもなお、笑顔を浮かべてみせる紬。

 

そんな彼女に、英寿はどう声をかければ良いのか、わからなかった。

 

「ごめん、なさい……言いつけを、破っちゃって……友達を……助けたくて……黙って、いられなくて……」

 

「……」

 

「英寿さん……私、本当は……凄く、嬉しかったです……英寿さんに……冴さんに……勇海さんに……心配、して貰えて……それだけでも……私は充分、幸せでした……」

 

紬の右足を始め、徐々に赤いノイズが走り始める。

 

間もなく自分は死ぬだろう。

 

そう気付いた紬は、残る力を振り絞って右手を伸ばし、自身の上半身を抱き上げている英寿の左腕を掴んだ。

 

「英寿さん……どうか……お願い、します……私の、友達が……皆が、幸せに……生きられる……世界……を……っ」

 

紬の全身に走っていく赤いノイズ。

 

紬は最期まで笑顔を浮かべたまま、英寿に看取られる中で両目を閉じる。

 

(あぁ……もう、終わりかぁ……)

 

消え行く紬の脳裏に、自身がこれまで関わってきた人物の顔が思い浮かぶ。

 

大好きな姉の雅。

 

このデザイアグランプリで出会った英寿、冴、勇海の3人。

 

そして、一番の親友であるさゆり。

 

(皆……私……最後まで……ちゃんと、やれたかなぁ……?)

 

自分は本当に、成すべき事を成せただろうか。

 

生き残ってしまった者として、使命をちゃんと果たせただろうか。

 

死に行く自分にはもう、それを確認する術はない。

 

それだけが、唯一の心残りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪MISSION FAILED≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……残念です」

 

デザイア神殿のロビーにて、ツムリはそう呟く。

 

彼女が所持していたタブレットの画面では、表示されていた紬の名前が暗くなると共に、その上から赤文字で【LOSE】と書き込まれる。

 

人助けに積極的だった紬の退場には、多少思うところがあったのか。

 

ツムリは1人静かに、タブレットを強く抱き締めていた。

 

 

「ハーム……」

 

英寿は地面に落ちている物を見つめる。

 

そこに落ちているのは、紬が遺していったビートバックルとシールドバックル。

 

その2つを拾い上げた英寿は、バックルを掴む力が強くなっていく。

 

「……後は任せろ」

 

英寿は立ち上がり、ローズフォートレスジャマトが飛び去って行った方角を見据える。

 

その瞳には、これまでのような含みは一切なく、強い闘志が宿っていた。

 

「こんな悲劇の世界は、俺が作り変える……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




仮面ライダーギーツ!

冴「紬ちゃんは!? 紬ちゃんはどうしたの!? ねぇ!!」

勇海「一体、どうしてあげれば良かったのかな……?」

ギロリ「この世界を救えるか、仮面ライダー達よ……!」

英寿「この世に崩れない城なんてない」






英寿「その言葉……お前は信じるか?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。