仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム 作:ロンギヌス
……とまぁそんな話はさておき、今回はギーツエクストラの14話を更新です。
紬の過去に何があったのか?
今回はその答え合わせとなります。
それではどうぞ。
あと、活動報告にて第3回オリジナルライダー募集を開始しました。興味がある方はぜひ。
・主なプレイヤー
小林紬/仮面ライダーハーム
我那覇冴/仮面ライダーロポ
宗像勇海/仮面ライダーオルカ
浅利切人/仮面ライダーターボン
雪ノ下幸/仮面ライダーホワイティー
榎本龍之介/仮面ライダーグリズ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ
参加人数:30名
現在生き残っている人数:4名
これは、少し昔のお話。
小林家は父、母、長女、次女の4人家族だった。
この内、次女の紬はと言うと……両親との関係が、
父と母が元々、それぞれ教育の厳しい家庭に生まれたのもあってか。
2人は自分達が産んだ娘達に対しても、厳しい教育をしていた。
長女の
それに対し、次女の小林紬は、勉強も運動も得意ではなかった。
両親は娘達を比較していた。
優秀な雅の事は高く評価していたが、紬に対してはあまり評価しなかった。
『テストで良い点が取れたから何だって言うんだ。雅なら100点くらい普通に取れるぞ』
『その程度の事で喜ぶ暇があるなら、さっさと部屋に戻って勉強しなさい』
『……はい』
父と母は、少しも紬の事を褒めてはくれない。
しかし、姉の雅だけは違った。
雅も、紬に勉強を教える時は厳しかった。
それでも、両親と違う点が1つあった。
『ど、どうかな、お姉ちゃん……?』
『ん~……うん、全問正解。やればできるじゃん。偉いぞ♪』
『や、やった! えへへ……!』
それは、褒める点はちゃんと褒めてくれる事。
家族の中で、紬を褒めてくれるのは雅だけだった。
『父さんと母さんの言う事はいちいち気にしちゃ駄目。紬は紬のやり方で頑張れば良いの。大丈夫。紬の頑張ってる姿は、私がちゃんと知ってるんだから』
『……うん!』
そう言って貰える事が、紬にとっては凄く嬉しい事だった。
紬は両親に苦手意識を抱いていたが、自身を褒めてくれる姉にだけは、心から懐いていた。
しかし……悲劇は、ある日突然起こった。
それは、姉妹でバスに乗って登校していた時の事だった。
『!? 紬、危ないッ!!!』
『えっ―――』
ドガァンッ!!!
雅が紬を咄嗟に突き飛ばしたその直後、それは起きた。
居眠り運転をしていたトラックと、2人が乗っていたバスによる衝突事故。
バスの横から突っ込んで来たトラックにより、大きく横転したバス。
車体が宙に浮く程の衝撃に、乗客の大半が重傷を負い、中には即死した者もいた。
小林姉妹もまた、瀕死の重傷を負っていた。
『お、ねぇ、ちゃん……』
『つ、む……ぎ……ッ』
意識が朦朧としている紬に、雅は苦しそうに呻きながら、必死に手を伸ばした。
彼女の伸ばした手は震えており、今にも力尽きてしまう寸前だった。
『たす、けて……つむ、ぎ……ッ』
その一言が、紬が聞き取れた言葉だった。
それを聞いた時、紬もまた、雅に向かって手を伸ばした。
お姉ちゃんが苦しんでいる。
死にかけているお姉ちゃんが、助けを求めている。
助けなくちゃ。
大好きなお姉ちゃんを、死なせたくない。
しかし、どれだけ姉の事を強く想ったところで、同じく死にかけている紬にできる事は何もなく。
紬はその後、すぐに意識を失った。
次に彼女が目覚めたのは病院だった。
紬はあの衝突事故で生き延びた、数少ない生存者だった。
その後、大好きな姉が死亡した事を知った。
紬は悲しんだ。
姉が助けを求めていたのに、助けられなかった。
自分だけが生き延びてしまった。
自責の念に駆られた紬。
そんな彼女に、更に追い打ちをかける出来事があった。
紬の見舞いに来た両親は、雅が亡くなった事を悲しみながらも、担当の医師に感謝の言葉を述べていた。
しかしその後、紬は聞いてしまった。
両親が、小声で呟いていた一言を。
『最悪だな……よりによって、
『本当にね。紬じゃなく、雅の方に助かって欲しかったのに……』
両親は、紬が生き延びた事を喜んではいなかった。
それどころか、「紬の方が死ねば良かったのに」といった旨の話をしていた。
姉を助けられなかったと思い込んでいた紬にとって、その言葉は強く突き刺さってしまった。
あぁ、どうしてだろう。
どうして優秀な姉ではなく、不出来な自分の方が生き延びてしまったのか。
不出来な自分が生き延びたって、何の価値もないというのに。
紬は考えるようになった。
自分が生き延びた理由は何なのか。
その理由が知りたい。
そんな想いに駆られるようになった紬は……やがて、運命の時がやって来た。
『おめでとうございます』
『厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました』
『今日からあなたは、仮面ライダーです!』
デザイアグランプリ。
そのプレイヤーに、紬は選ばれた。
選ばれてしまった。
紬は考えた。
この仮面ライダーの力があれば、誰かを助ける事ができるのではないか。
あの事故で生き延びてしまったからには、この力で誰かの助けになるような事をしなければならない。
だからこそ、紬は仮面ライダーとして戦う道を選んだ。
両親との関係はすっかり冷え切ってしまったが、それでも両親が自身を捨てずに育ててくれたのは事実。
せめて、自身を育ててくれた事への恩ぐらいは返したい。
そこで彼女が願ったのが、『家族の幸せ』だった。
これすらできないようなら、自分にはもう、生きている価値なんてない。
そんな思いが、紬の心には深く根付いてしまっていた。
◆
「―――ここは」
目覚めた紬。
そこは何もない、真っ暗な空間だった。
紬は思い返す。
何故自分はこんな所にいるのか。
先程まで、自分は何をしていたのか。
「確か、あの時……ラスボスが攻めて来て……」
「俺達が死んだんだ」
「ッ!?」
紬の背後から、語りかけて来る者がいた。
その男は、死神ジャマト達に襲われて死んだ者の一人だった。
「お前が遅かったせいで、俺達は死んだんだ」
「ねぇ、何でもっと早く助けに来てくれなかったの?」
「そんな凄い力を持っておいて、何の役にも立たねぇ奴だな」
「なぁ教えてくれよ。何で俺達が死ななきゃいけなかったんだ?」
「お前はまだ死んでいないってのによぉ」
「あなただけ生き延びて、狡いじゃないの」
「俺達の人生を返してくれよ」
「代わりにお前が死ねば良かったのに」
死者達が語りかけて来る。
それはまるで呪いのようだった。
紬が耳を塞いでも、彼らの言葉は止まらない。
「お前なんか死んじゃえよ」
「使えない役立たずめ」
「生きていて恥ずかしいって思わないのかしら?」
「死んだ人達はもっと生きたかったはずなのに」
「っ……ごめん、なさい……ごめんなさい……!!」
死者達の言葉に、紬は涙を流しながら何度も謝り続けた。
それでも、死者達は紬を責め続けた。
「どうせつまんねぇ命なんだからよぉ。とっとと死んでくれねぇか? なぁ?」
耳を塞いで蹲る紬に、ターボンが覗き込みながらそう言い放つ。
更に別の人物が、紬の肩に手を置いた。
その人物の顔を見て、紬は思わず呼吸が止まった。
「お……お姉ちゃん……?」
「酷いわ、紬。どうして助けてくれなかったの? 私、あんなに助けてって言ったのに……」
「本当、肝心な時に使えない役立たずねぇ。あなたは」
◆
「―――ッ!!!」
ガバッと起き上がった紬。
呼吸が荒く、汗だくな彼女の耳には、もう死者達の声は聞こえて来なかった。
「はぁ……はぁ……あ、あれ……ここは……」
そこは、デザイア神殿のサロンに設置された病室だった。
目覚めた紬はベッドから身体を起こし、周囲をキョロキョロと見渡す。
その時、部屋のカーテンがシャッと開かれ、そこから英寿、冴、勇海の3人が姿を見せた。
「目が覚めたか、ハーム」
「! あの、ここは……?」
「サロンだ。あの後、一度態勢を立て直すためにここまで撤退したんだ」
ラスボスであるローズフォートレスジャマトの猛攻により、形勢不利と判断した英寿。
彼は敵の攻撃をレイズシールドで何とか防いだ後、冴や勇海と共に一度戦線から離脱したのだ。
もちろん、無理が祟り意識を失ってしまった紬も連れて。
「本当にあなたって娘は、無茶はしないようにってあれほど言ったのに」
「英寿君に感謝しなよ。気絶した君を運んだのは英寿君だから」
「っ……すみません。また、ご迷惑をおかけしました……」
「謝罪は良い。それよりも、君に聞きたい事がある」
英寿はベッドの近くにある椅子に座り込み、紬に問いかけた。
「あの時、何故あんな真似をしたんだ?」
「? えっと……何の事でしょうか……?」
「あの時。そんなボロボロの状態で、ラスボスに挑もうとした事だ」
ローズフォートレスジャマトの攻撃から、ハームがロポを庇った時の事。
決して少なくないダメージを受けたはずなのに、ハームはその状態で無理してでも戦いを挑もうとした。
そして、その際にハームが叫んだ、あの台詞。
『誰も助けられない、何の役にも立てない私なんかに、生きてる価値なんてない!!!』
「あの時、君が言ったあの台詞……何をそんなに生き急いでいる?」
「え……」
「前々から、何かおかしいとは思っていた。自分なんか、自分なんて、と自分を卑下する言い回しが多かったからな」
何か確信を得たのか、英寿は紬に問いかけた。
「最初の1回戦の時、ジャマトに襲われた君は「死にたくない」と叫んでいたから、すぐには気付けなかったが……それも、ただ自分の命が惜しいからって訳じゃないんだろう?」
「……はい。だって、せっかく仮面ライダーになれたのに、あんな所で死んじゃったら意味がないじゃないですか。どうせ死ぬなら、せめてこの力で誰かの役に立ってからじゃないと」
「「……ッ!?」」
何をそんな当たり前の事を……とでも言うかのように、さらりと言ってのけた紬。
これには冴と勇海も思わず目を見開いた。
「やっぱりな……改めてわかった。ハーム、君は自分の命を大事にしていない。誰かを助けるためなら、その過程で自分が死んでも構わないとすら考えている……そうだな?」
「……はい」
「っ……ふざけないで!!」
英寿の言葉を、紬は否定しなかった。
それを聞いた冴は怒りの表情を浮かべ、紬の肩を掴んだ。
「死んでも構わないって何を馬鹿な事を……あなた、もっと自分の命を大事にしようって思わないの!?」
「思える訳ないじゃないですかッ!!!」
それに対し、今度は紬の方から冴の肩に掴みかかる。
声を荒げながら言い放つ紬に、冴は思わず呆気に取られてしまった。
「誰も助けられないで、自分だけ生き残ってしまったのに!! どうやって自分を大事にしようって思えるんですか!!!」
「ッ……!?」
「……ハーム、詳しく話せ。君がそう考えるようになった理由を」
「……はい」
特に隠す理由もないからか。
英寿からそう告げられ、紬は冴の肩から手を離してから話し始めた。
両親からは、ずっと厳しく育てられてきた事。
自分を褒めてくれる、姉の雅にだけは心を開いていた事。
その姉と一緒に事故に巻き込まれ、目の前で姉が死んでいった事。
両親は、自身が助かった事を全く喜んではくれなかった事。
一部始終を、紬は話し終えた。
彼女の過去を知った冴と勇海は言葉を失い、英寿はただ沈黙を貫いていた。
「なら、紬ちゃんが脱落するのを嫌がってた理由って……」
「この力があれば、誰かを助ける事ができると思ったからです。あの時と違って、今度こそ自分の力で……それもできないようなら、もう私が生きている価値なんてありません」
「っ……けど、あなたのお姉さんが死んだ事故は、あなたのせいじゃないでしょう!? あなたのお姉さんだって、あなたが死ぬ事を望んでいた訳じゃ―――」
「
紬は自身の頭を押さえながら、再び声を荒げた。
その脳裏に、死に行く姉の姿を鮮明に思い浮かべながら。
「ずっと私の事を大事にしてくれていたお姉ちゃんが、目の前で死にかけてるというのに、私は何もできなかった!! お姉ちゃんが目の前で死んでいくのを、黙って受け入れる事しかできなかった!! その時のお姉ちゃんの顔が、今でもずっと頭に焼き付いていて離れないのに……忘れたくても、忘れられないんです……ッ!!」
「紬ちゃん……」
目元に涙を浮かべながら、自身の想いを吐き出す紬。
これには冴も、勇海も、何て言ってあげれば良いのかわからず、再び言葉を失ってしまった。
「……君の過去についてはわかった」
その時、黙って話を聞いていた英寿が、椅子から立ち上がる。
「どちらにせよ、君はここで休んでいろ。ラスボスに捕まった人達は俺達で助け出す」
「いえ、私も行きま……ッ」
「ちょ、紬ちゃん!? まだ動いちゃ駄目だって……!!」
ベッドから起き上がろうとする紬だったが、まだ傷が痛むのか表情が歪む。
勇海が慌ててベッドに寝かせる中、英寿は背を向けたまま言い放つ。
「そんな状態で何ができる? 万全の状態ならともかく、今の君じゃ何もできない」
「……今の私は、役立たずだって言いたいんですか」
「逆に聞くが」
英寿は顔だけ後ろに振り返り、紬に質問を返した。
「自分の事も大切にできないような奴が、他人を助けられると思うのか?」
「……ッ」
英寿の質問に、紬は何も答えられなかった。
そうなる事は想定内だったのか、英寿は彼女の答えを聞く事なく、病室を後にするのだった。
◆
「色々複雑だねぇ」
その後。
ラスボスのローズフォートレスジャマトが一時的に姿を消したため、再び現れるまでの間、デザイア神殿で待機する事になった一同。
トレーニングルーム内で再現された大きな公園にて、勇海は自身が乗ったブランコを漕ぎながら、ブランコを囲っている柵の上に腰かけている英寿に語りかけた。
「何が言いたい?」
「紬ちゃんの事。最初に会った時は、明るくて優しい女の子って印象だったんだけどさ」
のんびりとブランコを漕ぎながら、勇海は初めて紬と会話をした時の事を思い返す。
「色々思い知らされたよ。俺達はあの娘の事を、何も理解してなんかいなかったんだなって……」
「……」
「んで、今思い返してみるとさ……グリズのおっさん、気付いてたんだよね。紬ちゃんの異常性に」
グリズこと龍之介。
第3回戦が始まる前、彼は紬に対してこう告げていた。
『ふん、謙虚過ぎるのも考え物だな』
そう、龍之介は気付いていたのである。
紬のあまりに低過ぎる自己肯定感に。
「サバイバーズ・ギルト……周りの人達が死んでいった中で、自分だけ生き延びてしまったと思い込んだ人は、今のハームみたいに自責の念に駆られるようになる。一度あぁなったら、口で説得するだけじゃ簡単には変わらない」
「けど、紬ちゃんの気持ちはわかるよ……俺も昔、
「! お前が……?」
「まぁね……だからこそ、なんて声をかけるべきか、慎重に考えないといけないってのもわかるんだ。下手な発言は、かえって相手を追い詰めてしまいかねないから」
「……お前はどう思う? ロポ」
英寿と勇海は視線を違う方向に向ける。
2人の視線の先には、滑り台の一番上で座り込んでいる冴の姿があった。
「何、いちいち言わなきゃ駄目?」
「単純に気になった。お前はハームの事を散々鍛えてやってたんだからな」
「……ハッキリ言うと、納得はしてない」
冴はボソリと呟くように答えた。
「あの娘がどういう思いで戦っていたのかは理解できても、それで自分を大事にしない事まで、納得できた訳じゃない……それから」
「それから?」
「……あの娘があんなに思い詰めていた事に気付きすらしなかった、そんな自分に腹が立って仕方ない」
これまで、ずっと紬の事を鍛え続けてきた冴。
そんな彼女にとっては、紬が思い詰めていた事に全く気付いてあげられなかった事が、何よりも悔しい話だった。
「……いずれにせよ、これ以上ハームに無茶をさせる訳にはいかない」
「最終戦は、残った俺達でクリアするしかないよね」
「ラスボスに捕まった人達も、何とかして助け出さないと」
これ以上紬が無理をしないよう、急いでこの最終戦を終わらせる必要がある。
そのために、一番手っ取り早い方法はただ一つ。
「「「ラスボスは、俺/私が倒す」」」
3人の意志は決まっていた。
◆
それから数時間後……ゲームは再開された。
「皆さん、再びラスボスが現れました! 急いで向かって下さい!」
ツムリが言い終わるより前に、英寿、冴、勇海の3人はジャマーエリアへと転移し、死神ジャマト達が暴れている街中へと駆け付けた。
遠くの空では、ローズフォートレスジャマトが浮遊しており、街全体に茨の棘を飛ばして爆撃を仕掛けていた。
「あ、見てあそこ!」
勇海が指差した先。
その先にあったのは、ローズフォートレスジャマトの本体から伸びている茨で形成された、球体状の大きな檻。
檻の中にはさゆりを初め、ローズフォートレスジャマトに捕まった人達が、意識を失った状態で閉じ込められていた。
「捕まった人達はあそこか……!」
「急ぐぞ……!」
≪SET≫
≪≪SET FEVER≫≫
「「「変身!!」」」
≪MAGNUM≫
≪HIT ZOMBIE≫
≪HIT BEAT≫
英寿はマグナムバックルを使い、ギーツ・マグナムフォームに変身。
冴と勇海はフィーバースロットバックルを使い、冴はロポ・ゾンビフォームに、勇海はオルカ・ビートフォームに変身を遂げた。
「「「「「ジャジャーッ!!」」」」」
「……行くぞ!!」
死神ジャマト達が迫り来る中、3人は同時に動き出した。
ギーツはマグナムシューター40Xを構え、死神ジャマト達を正確に狙い撃つ。
ロポは素早く駆け回りながら、ゾンビブレイカーで死神ジャマトを斬りつけていく。
≪ROCK FIRE≫
「2人共、構えて!!」
オルカはロックンロールを演奏し、ビートアックスに炎を纏わせると、彼の意図を察したギーツとロポがそれぞれ武器を構える。
ビートアックスを持ち替えたオルカは、ギーツが構えるマグナムシューター40Xの銃口と、ロポが構えるゾンビブレイカーの刀身部分にそれぞれ炎を纏わせ、2人の武器を一時的に強化させた。
≪TACTICAL FIRE≫
「「「はぁっ!!!」」」
「「「「「ジャーーーーーッ!?」」」」」
ギーツのマグナムシューター40Xからは強力な火炎弾を連射し、ロポとオルカはそれぞれ武器を振るい強力な炎の斬撃を放つ。
灼熱の炎に焼かれた死神ジャマト達は、その場で次々と爆散していく。
そこに、ローズフォートレスジャマトが攻撃を仕掛けて来た。
「ギョアアアアアッ!!」
「「「ッ……!!」」」
次々と振るわれて来る茨の鞭を、的確にかわしていく3人。
しかし、複数の茨の鞭による猛攻は激しく、更には茨の鞭で破壊された建物や地面の瓦礫などが邪魔になり、3人は思うように反撃の隙を見出せなかった。
「チッ……上手く近付けない!!」
「まずは凍らせるか……!!」
≪FUNK BLIZZARD≫
振るわれて来る茨の鞭をロポがゾンビブレイカーで切断していく中、オルカは再びビートアックスで演奏し始める。
ビートアックスから冷気が噴出し、オルカはすぐにビートアックスを地面に叩きつけた。
「そぉれ!!」
≪TACTICAL BLIZZARD≫
茨の鞭が地面に突き刺さったその直後、オルカが地面に叩きつけたビートアックスから冷気が広がり、地面に突き刺さった茨の鞭が一気に凍りついていく。
結果として、凍りついた茨の鞭が、ローズフォートレスジャマト本体に向かうための道となった。
「道ができたな、今なら―――」
しかし、その時だった。
「はぁっ!!」
「「「!?」」」
突然、3人の頭上を1つの影が通過した。
3人が見上げた先には、ハムスターのような四足歩行の姿をしたブーストライカーが、ブーストフォーム姿のハームを乗せた状態で高く跳躍していた。
「ハーム!?」
「「紬ちゃん!?」」
何故ここにハームがいるのか。
今の彼女は、傷が深くてまともに戦えないはずなのに。
3人が驚いている中、ブーストライカーに乗り込んだハームはビートバックルを取り出した。
≪REVOLVE ON≫
「ごめんなさい、言いつけを守らなくて……でもやっぱり、黙って見てる事はできません!!」
≪SET≫
≪DUAL ON≫
≪BEAT & BOOST≫
「チュー太郎、お願い!!」
ドライバーを半回転させ、ビートバックルを装填したハームは、その場でボディが変化。
ビートブーストフォームの姿となったハームは、自身が“チュー太郎”と名付けたブーストライカーに再び乗り込んだ。
「ちょ、待って紬ちゃん!?」
「駄目よ!! 戻りなさい!!」
オルカとロポが慌てて呼びかけるも、ハームは2人の制止を無視し、凍った茨の鞭の上を駆け上がってローズフォートレスジャマトの下まで向かい始めた。
当然、ローズフォートレスジャマトはそれを阻もうと複数の茨の鞭を伸ばして来るが、ハームは構えたビートアックスを演奏し、ビートアックスに炎を纏わせる。
≪ROCK FIRE≫
≪TACTICAL FIRE≫
「てやぁっ!!」
ビートアックスから放たれた炎が、茨の鞭を次々と焼き尽くしていく。
その後もハームを乗せたブーストライカーは走り続け、ハームは茨の檻に閉じ込められている人達の姿を見据える。
「さゆりちゃん……!!」
檻の中で意識を失っているさゆり。
彼女の姿を見て、ハームはビートアックスを掴む右手の力が強くなっていく。
(待ってて……絶対、助けるから……!!)
自身にとって一番の親友。
何としてでも助けたい。
たとえ、自身の命と引き換えになろうとも。
ハームの脳裏に、過去の記憶が呼び起こされる。
◆
姉を失い、両親から愛されていないと知った紬。
彼女は高校生になってからも、心の傷が癒えずにいた。
そのせいで暗い性格になっていた当時の彼女は、その陰気な雰囲気が災いし、クラスメイト達は誰も彼女に関心を示そうとしなかった。
そんな彼女に初めて声をかけたのが、さゆりだった。
『ねぇねぇ、アンタもその本読んでるの?』
『……そう、だけど』
読書をしていた紬に、臆する事なく声をかけたさゆり。
たまたま本の趣味が同じだった事を切っ掛けに、2人は少しずつだが、話をするようになった。
一緒に本屋に行ったり、ゲームセンターで遊んだり。
全て、さゆりが紬を誘う形だった。
切っ掛け自体は単純だったかもしれない。
それでも、姉を失った悲しみに暮れていた紬にとって、少しでも自身を楽しませようとしてくれるさゆりの存在は、とても大きくなっていた。
ある時、紬はさゆりに問いかけた。
何故、そうまでして自分と一緒に遊ぼうとするのか。
その質問に、さゆりは答えた。
『アンタがずっと暗い顔してるのが見てらんなかっただけ。理由なんて、そんな単純なもんで良いの。人間、暗い顔するより、笑った顔してた方が楽しいでしょ?』
理由自体は本当に単純だった。
しかし、閉ざされていた紬の心を氷解させるには、充分過ぎるものだった。
いつしか、紬の表情にも笑顔が戻っていった。
そんな紬を見て、さゆりも今まで以上に笑ってみせた。
2人が親友と呼べる間柄になるまで、そう時間はかからなかった。
◆
(たとえ、私が死ぬ事になっても……!!)
≪BOOST TIME≫
(絶対……助け出す!!!)
ブーストバックルのハンドル部分を回すハーム。
更にビートバックルも操作し、ビートアックスに強力なエネルギーが収束していく中、ハームは再度ブーストバックルのハンドルを回した。
「私の友達を……」
≪BEAT BOOST≫
「離せええええええええっ!!!」
≪GRAND VICTORY≫
「ギュオオオオオ……ッ!?」
凍った茨の鞭を駆け抜け、茨の檻まで近付いて来たブーストライカー。
そのブーストライカーから跳躍したハームは、エネルギーの収束されたビートアックスで、迫り来る茨の鞭を纏めて一閃。
そのままローズフォートレスジャマトのボディを斬りつけていき、最後に茨の檻を吊り下げていた茨を切断した。
「ッ……さゆりちゃん!!!」
強力な一撃で斬りつけられ、落下し始めるローズフォートレスジャマト。
それと共に、さゆり達の閉じ込められた茨の檻もまた、地上へと落下していく。
必死に手を伸ばすハームだったが、その手は茨の檻に届かない。
その時……。
≪GOLDEN FEVER VICTORY≫
「!?」
地面から伸びて来た巨大なゾンビの腕が、落ちて来た茨の檻を優しくキャッチし、地面に優しく下ろしていく。
ハームの視線の先には、バーサークローを地面に突き刺しているロポの姿があった。
(あぁ……良かった……冴さんが、助けてくれた……)
「ッ……紬ちゃん!!」
「ロポ、オルカ、この場は任せる!!」
≪SET≫
≪BOOST≫
≪READY FIGHT≫
≪BOOSTRIKER≫
ロポが叫ぶ中、ギーツはブーストフォームにチェンジし、ブーストライカーを召喚。
キツネの姿をしていたブーストライカーは、その場で変形してバイクモードとなり、ギーツはそれに乗り込んでハームの下へと向かって行く。
◆
「はぁ……はぁ……ッ」
その後。
地面に落下したハームは、大の字になって倒れ込んでいた。
ブーストタイムを発動した後であるため、既にブーストバックルは何処かに飛び去っており、現在のハームは通常のビートフォームの姿に戻っていた。
当然、彼女が乗っていたブーストライカーも、既に姿を消している。
(やった……さゆりちゃんを……皆を、助け出せた……!)
その近くには、同じく地面に落下したローズフォートレスジャマトが、地面に大きく減り込んでいる。
ボディ各部から火や煙が上がっており、ハームは確かな手応えを感じていた。
「うっ……くぅ……!!」
起き上がろうとするも、全身に痛みが走り、すぐに起き上がれないハーム。
彼女は大の字の状態から、まずはゆっくりと寝返りを打ち、うつ伏せの状態になる。
そこから、地面に付けた両腕に少しずつ力を入れ、痛みを我慢しながらも、体を少しずつ起こしていく。
(ッ……これ、明日は丸一日、動けないかも……)
何とか上半身を起こしたハームは、女の子座りの態勢になる。
全身の痛みが引くまで、しばらくはこの態勢でいようと彼女は考えた。
(英寿さん達には、怒られるだろうなぁ……)
彼らの言いつけを無視し、自身は痛む体を無理やり動かして、この場にやって来た。
英寿は勿論、冴や勇海もきっと怒るだろうという事を予想したハームは、怒られる事を覚悟していた。
(でも……後悔はしてない)
しかしそれでも、自分はさゆり達を助ける事ができた。
それだけで、彼女は満足だった。
しかし……。
ズズズズズ……!!
ゲームはまだ、終わっていなかった。
「―――ッ!?」
突然の地響き。
何事かと思ったハームはすぐに振り返り……仮面の下で、表情が青ざめた。
「そ、そんな……ッ!?」
「ギュアアアアアアアア……!!」
ハームの目の前で、複数の茨を地面に突き刺し、減り込んだ地面から起き上がり始めていたローズフォートレスジャマト。
ハームがビートブーストフォームの姿で放った一撃ですら、あくまでそのボディに傷を残しただけで、トドメを刺すまでには至らなかったのだ。
「くっ……!!」
ローズフォートレスジャマトが再び宙に浮かび上がっていく中、ハームは全身の痛みを我慢し、何とか立ち上がろうとする。
しかし、今の彼女にはもう、走るどころか、歩く力もほとんど残されていなかった。
(せめて、防御を……!!)
シールドバックルを装填しようとするハーム。
しかし手に力が入らず、シールドバックルを取り落としてしまう。
そんな彼女を見下ろしながら、茨の鞭を伸ばすローズフォートレスジャマト。
そして……。
無数の茨の棘が、雨のように降り注いだ。
ドガガガガガガァンッ!!!
「ああああああああああっ!!?」
地面に刺さると同時に、次々と爆発を起こしていく茨の棘。
逃げる気力が残っていなかったハームは、そのまま爆炎に飲み込まれてしまう。
それから爆風が収まった後、その場には、全身から火花を散らしているハームの姿があった。
「う、ぁ……あっ……」
ハームの変身が解け、紬は全身がボロボロになった状態で、その場に倒れ込む。
ローズフォートレスジャマトはそんな彼女にトドメを刺す事なく、何処かへ飛び去って行く。
それから少しした後、ブーストライカーに乗ったギーツが駆け付け、遠くに消えて行くローズフォートレスジャマトを見据えた後、地面に倒れている紬の姿を見つけた。
「ッ……ハーム!!」
「あっ……英寿、さん……っ」
急いでブーストライカーから降り、倒れている紬の下へ駆け寄るギーツ。
変身を解いた英寿は、紬の肩に腕を回し、ゆっくりと彼女の上半身を抱き起こしたが……。
ピシィッ!!
「……ッ!!」
紬のデザイアドライバーに装填されている、ハームのIDコア。
そのIDコアが、縦に大きく罅割れた。
それを見た時点で、英寿は嫌でも理解してしまった。
紬はもう、助からないと。
「え、えへへ……失敗、しちゃいました……」
「ハーム、君は……」
既に己の死を悟ったのか、全身傷だらけになってもなお、笑顔を浮かべてみせる紬。
そんな彼女に、英寿はどう声をかければ良いのか、わからなかった。
「ごめん、なさい……言いつけを、破っちゃって……友達を……助けたくて……黙って、いられなくて……」
「……」
「英寿さん……私、本当は……凄く、嬉しかったです……英寿さんに……冴さんに……勇海さんに……心配、して貰えて……それだけでも……私は充分、幸せでした……」
紬の右足を始め、徐々に赤いノイズが走り始める。
間もなく自分は死ぬだろう。
そう気付いた紬は、残る力を振り絞って右手を伸ばし、自身の上半身を抱き上げている英寿の左腕を掴んだ。
「英寿さん……どうか……お願い、します……私の、友達が……皆が、幸せに……生きられる……世界……を……っ」
紬の全身に走っていく赤いノイズ。
紬は最期まで笑顔を浮かべたまま、英寿に看取られる中で両目を閉じる。
(あぁ……もう、終わりかぁ……)
消え行く紬の脳裏に、自身がこれまで関わってきた人物の顔が思い浮かぶ。
大好きな姉の雅。
このデザイアグランプリで出会った英寿、冴、勇海の3人。
そして、一番の親友であるさゆり。
(皆……私……最後まで……ちゃんと、やれたかなぁ……?)
自分は本当に、成すべき事を成せただろうか。
生き残ってしまった者として、使命をちゃんと果たせただろうか。
死に行く自分にはもう、それを確認する術はない。
それだけが、唯一の心残りだった。
≪MISSION FAILED≫
◆
「……残念です」
デザイア神殿のロビーにて、ツムリはそう呟く。
彼女が所持していたタブレットの画面では、表示されていた紬の名前が暗くなると共に、その上から赤文字で【LOSE】と書き込まれる。
人助けに積極的だった紬の退場には、多少思うところがあったのか。
ツムリは1人静かに、タブレットを強く抱き締めていた。
◆
「ハーム……」
英寿は地面に落ちている物を見つめる。
そこに落ちているのは、紬が遺していったビートバックルとシールドバックル。
その2つを拾い上げた英寿は、バックルを掴む力が強くなっていく。
「……後は任せろ」
英寿は立ち上がり、ローズフォートレスジャマトが飛び去って行った方角を見据える。
その瞳には、これまでのような含みは一切なく、強い闘志が宿っていた。
「こんな悲劇の世界は、俺が作り変える……!!」
To be continued……
仮面ライダーギーツ!
冴「紬ちゃんは!? 紬ちゃんはどうしたの!? ねぇ!!」
勇海「一体、どうしてあげれば良かったのかな……?」
ギロリ「この世界を救えるか、仮面ライダー達よ……!」
英寿「この世に崩れない城なんてない」
英寿「その言葉……お前は信じるか?」