仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム 作:ロンギヌス
今回は最終戦決着後の話となるため、普段に比べると短めです。
それではどうぞ。
活動報告での第3回オリジナルライダー募集もよろしくです。
EDテーマ:Trust・Last
「ミッション、コンプリートです!」
ギーツ、ロポ、オルカの3人の活躍により、見事撃破されたローズフォートレスジャマト。
デザイアグランプリ最終戦【要塞ゲーム】は、ツムリによって終了を告げられていた。
「それにしても驚きました! まさか3人の連携で、ラスボスまで倒してしまうなんて!」
本来、最終戦に登場するラスボスは、並のプレイヤーが挑んで勝てるような相手ではない。
そのため、最終戦はラスボスの猛攻を凌ぎつつ、ポーンジャマトを倒してスコアを稼いでいくのが一番堅実な戦い方となる。
にもかかわらず、ここまで生き残った3人のプレイヤーは、巧みな連携により見事ラスボスを倒してみせた。
これには、ナビゲーターであるツムリも驚きの顔を隠せなかった。
「そういう訳で、デザイアグランプリはこれにて終了! そして今! 遂に、デザ神が決定しました! こちらが、最終戦終了時点でのスコアとなります!」
最終戦が終了した今、残る本題は「誰がデザ神となったのか」という事。
ツムリはにこやかに微笑みながら、スコアのランキングを自身の後ろに投影させた。
「3位、オルカ! 2位、ロポ! そして……」
「1位、ギーツ!」
「デザ神、降臨です!」
そう宣言されると共にデカデカと浮かび上がる、【デザ神降臨】という大きな文字。
ツムリが「わ~!」と喜びの舞を踊る中、デザイア神殿のロビーの周囲から、打ち上げ花火や噴出花火が一斉に噴き上がるのだった。
◆
「今回もギーツがデザ神か……」
ゲームマスターの間。
マスク越しにモニターを眺めながら、ギロリは何処か不満そうに呟いていた。
(こうも連続で勝たれてしまっては、他のプレイヤー達にチャンスが回って来ない……全く、どうしたものか)
ここしばらく、デザイアグランプリで連勝を続けているギーツ。
しかし、ギーツばかり勝ち続けているという事は、他のプレイヤー達がデザ神になれないという事でもある。
ジャマトから世界を守り抜いた見返りを、ギーツだけが独占するというのは如何な物かと、ギロリはそう思わずにはいられない。
しかし、デザ神となった以上、ギーツの願いを叶える他ないのもまた事実。
(そもそも、何故彼は何度もデザグラに出場しようとする……?)
英寿が初めてデザ神となった時、彼が叶えた願いは【俺が死ぬまでデザイアグランプリに参加できる世界】。
その願いを利用してまで、何度もデザイアグランプリに出場している彼の目的は、一体何なのか。
その理由を探るためにも、ギロリはまだしばらくの間、様子見に徹する事にした。
「君の目的、見極めさせて貰うぞ……浮世英寿」
◆
なお、ギーツ達の戦いを見届けていたのは、ツムリやギロリだけではない。
「凄い、凄過ぎるよギーツ……!」
とある異空間に存在する一室。
その室内のソファに座り、これまでのゲームの一部始終を見届けていたのは、黒髪に青いメッシュが入った青年だった。
「退場したハームの意志を継いで、ロポやオルカと共にラスボスを倒すなんて……やっぱり君は最高だよ! 感動した!」
青年は楽しそうに笑いながら、正面のモニターに映った英寿の姿を見据える。
そのモニターに映る英寿が浮かべていたのは、笑っている青年とは違う、何処か物悲しげな表情だった。
◆
「チッ……今回もギーツが勝ちやがったか」
一方、別の異空間の部屋では。
畳、屏風、炬燵、そして炬燵の上に乗った蜜柑と、和室をイメージしたその一室で、同じくモニターでゲームの一部始終を見届けていた人物……否、
その置物は、スーツを着た蛙が肘をついた状態で座っているという、何とも奇妙な外見をしていた。
「ハームはなかなか良い線行ってると思ったんだが、あんな所で退場するとはな……俺の見込み違いだったか?」
置物であるため、その蛙の表情が変化する事はない。
しかし、その声色は何処か不満そうだった。
「あ~あ、他にいないもんかねぇ……俺が理想とする“仮面ライダー”になれそうな奴は」
◆
「―――ふぅ」
ローズフォートレスジャマトが滅び去った後。
マグナムバックルを外し、変身を解除した英寿は、疲れた様子で一息ついていた。
なお、ブーストタイムを発動したため、ブーストバックルは既に彼のドライバーから外れ、何処かに飛んで行ってしまっている。
(終わったぞ、ハーム)
英寿は懐から取り出したビートバックルを見つめる。
その脳裏に、笑顔を浮かべた紬の顔が浮かび上がる英寿だったが、彼はすぐに思考を切り替え、自身のスパイダーフォンを開く。
スパイダーフォンの画面に映ったランキングには、【VICTORY】と金色の文字が浮かび上がっており、それを見た英寿はいつも通りの不敵な笑みを浮かべてみせた。
「悪いが、今回も俺がデザ神のようだな」
「……そうらしいね」
「ッ……」
英寿が振り向いた先には、同じく変身を解除した勇海と冴。
スパイダーフォンに映ったランキングを見て、勇海は何処か達観した様子で呟き、冴は悔しげな表情でスパイダーフォンを握り締めている。
その様子を見て、英寿は勇海に呼びかけた。
「どうしたオルカ? 随分反応が薄いな」
「これでも、負けて悔しいとは思ってるよ……ただ」
勇海の視線が、英寿の持っているビートバックルに向けられる。
「今回のゲーム……勝っても負けても、悔いの残る結果になっちゃったね……」
「……」
ラスボスを倒すまでの間に、犠牲になってしまった紬。
彼女の死もあってか、勇海の目には、憂いの感情が込められていた。
「……どの道、負けは負けだ」
その時、黙っていた冴が口を開いた。
スパイダーフォンを閉じながら告げる彼女の目には、熱い炎が灯り続けていた。
「相変わらず、負けを認める時は潔いな。ロポ」
「勘違いするな。自分の願いを捨てた訳じゃない」
英寿が冴の肩に手を置き、冴はそれを払い除けてから、英寿と正面から向き合う。
「何度負けようと、私は諦めない……生きている限り、何度でも戦う。私の理想を叶えるその時まで、ずっとね」
「あぁ、そうだな。またいつか挑みに来い。何度でも受けて立つ」
「……ふん」
冴はいつものクールな表情で鼻を鳴らし、英寿から視線を逸らす。
しかしその際、彼女は横目で、英寿が持っているビートバックルを見つめていた。
(家族のためになら、私は何度でも戦う……だけど)
『冴さん!』
冴の脳裏に浮かび上がる、彼女と共にトレーニングに励む紬の姿。
先に退場してしまった紬には、もう二度と、理想を叶えるチャンスは訪れない。
(せめて……あなたにも、生き延びて欲しかった)
冴の全身に、少しずつ青いノイズが走り始める。
敗退が決まり、その場から転送させられるその時まで、冴は紬の事を想い続けていた。
「紬ちゃん―――」
≪RETIRED≫
冴の姿が消え去り、彼女の使用していたデザイアドライバーが地面に落ちる。
その様子を英寿と勇海が見届けた後、勇海の全身にも、青いノイズが走り始めた。
「俺もここまでか……とりあえず、デザグラ優勝おめでとう」
「あぁ。お前も、またいつか挑みに来い」
「うん……それじゃあ、またね。英寿君」
≪RETIRED≫
勇海もその場から消え、彼のデザイアドライバーも地面に落ちる。
2人が残していったデザイアドライバーを拾い上げた英寿は、ローズフォートレスジャマト達によって滅茶苦茶に破壊された街を見渡しながら、手元のコインを弾き上げる。
「さぁ、始まるぞ……俺の理想の世界が」
ゴォォォォォン……ゴォォォォォン……
鳴り響く、荘厳な鐘の音。
それと共に、破壊された街が、元の状態へと作り直されていく。
そして―――
◆
「じゃあね、また明日~!」
「バイバ~イ!」
その日。
世界はまた、これまでのような平和な日常に戻っていた。
授業を終えた学生達は、下校する者もいれば、学校に残って部活に励む者もいる。
「はい、課長。来週の会議で使う資料の件ですが……」
「う~ん……今日の夕飯、何を作ろうかしら?」
「ふぅ、少しベンチで休もうかのぉ」
街中では、仕事で忙しく働いているサラリーマンや、ショッピングモールで買い物を楽しむ主婦、散歩を楽しんでいる老人などが、平穏な時間を過ごし続けている。
まるで、ジャマトの襲撃など最初からなかったかのように、世界は平和だった。
英寿が理想の世界を叶えた事で、ジャマトに破壊された街や、ジャマトに殺された人達は、その全てがリセットされ、元の平和な世界に作り変えられたのである。
しかし……全てが、元に戻った訳ではなかった。
◆
「家出したまま行方不明……か」
デザ神として世界を作り変えた張本人である英寿は、ペットボトルの水を一口飲んだ後、掲示板に貼りつけられている貼り紙に目を向けていた。
その貼り紙には……【捜しています】という文字と共に、小林紬の顔写真が載せられていた。
英寿がたまたま見つけたその捜索願の貼り紙によると、小林家の次女である小林紬が、ある日突然、両親に黙って家出した後、そのまま行方がわからなくなってしまい、彼女を探し出して欲しい……という内容が記されていた。
(見つかる訳がない……ハームはもう……)
英寿は知っている。
デザイアグランプリで退場してしまった者達は、デザ神が世界を作り変えた後も、復活する事はない。
次のデザ神が【デザイアグランプリで退場した人達を蘇らせたい】といった願いでも叶えない限り、退場してしまった者達は皆、永遠に死んだままの状態となる。
そして、退場してしまった者達が何処に消えたのか……それは英寿も知らない事だった。
「じゃあね、さゆりさん」
「うん、また明日」
「!」
その時。
英寿から少し離れた場所で、2人の女子高生が別れて帰宅しようとしていた。
その女子高生達の顔に、英寿は見覚えがあった。
(あの2人……ハームの友達か)
清水薫、そして若槻さゆり。
両者共に、最終戦で紬と共に助け出したのを英寿は覚えていた。
2人はそれぞれ逆の方向に別れ、さゆりが英寿の隣をすれ違う形で歩き去ろうとして……掲示板の目の前で立ち止まる。
彼女は掲示板に貼られている捜索願を一目見て、悲しげな表情で俯いてから、再び歩き始める。
その寂しい後ろ姿を、英寿は黙って見つめる事しかできなかった。
「……悪いな、ハーム」
自分には、他に成し遂げたい目的がある。
そのためにも、退場してしまった者達の事を、いつまでも引き摺っている訳にはいかない。
何処かのビルの屋上へとやって来た英寿は、街全体を見下ろす。
彼が救い出し、新たに作り変えた世界が、そこには広がっていた。
「いつか必ず、見つけ出してみせる……!」
脳裏に呼び起こされる記憶。
それは英寿にとって、
『私の事は忘れて。その方が幸せよ』
「……忘れる訳にはいかない」
かつて、自身にそう告げて姿を消した人物。
その人物の行方を知るためにも。
もう一度、その人物に会うためにも。
英寿は、立ち止まるつもりはなかった。
「待っていてくれ……“母さん”」
右手に持った金色のコイン。
古代ローマの君主、ガイウス・ユリウス・カエサルの横顔が彫られているそれを、英寿は指先で弾き上げ、そしてキャッチする。
その時、彼の背後から足音が聞こえて来た。
聞き覚えがある足音に、英寿は先程まで浮かべていた憂いの表情から、再び不敵な笑みへと切り替わり、後ろに振り返った。
そんな彼に、その足音の正体は、にこやかな笑顔で告げた。
「おめでとうございます」
「厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました」
「今日からあなたは、仮面ライダーです!」
「……あぁ、知ってるよ」
足音の正体―――ツムリの言葉に、英寿はそう返した。
悲しみの顔は、不敵な笑顔で隠し通す。
今日もまた、キツネは笑顔という名の仮面を被り、人を化かすのだ。
◆
「おめでとうございます」
「厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました」
「今日からあなたは、仮面ライダーです!」
その後も、街の各地でツムリからデザイアドライバーとIDコアを受け取る者達。
受け取った者達の内の大半は、これまでデザイアグランプリに全く関わって来なかった素人ばかりである。
しかし中には……デザイアグランプリへの参加は、これが初めてではない者もいた。
「―――そうだ、思い出した」
選ばれた者の内……1人の女性は、受け取ったIDコアに触れた事で、デザイアグランプリに関する記憶を全て取り戻していた。
手に持ったIDコアを強く握り締めながら、彼女は天を見上げた。
「待っていろ、浮世英寿……」
「今度こそ、私は貴様に勝つ……!!」
デザイアグランプリは、次のシーズンへと移行する。
To be continued……
仮面ライダーギーツ!
さゆり「何処に行っちゃったの、紬……?」
???「今回も君がデザ神となるのか? 正解は……」
???「今度こそ、私は貴様に勝ってみせる」
英寿「今回のデザグラも、一波乱起きそうだな……!」