仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム   作:ロンギヌス

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どうも、ロンギヌスです。

筆の進みがだいぶ遅くなってしまった今回の19話ですが、ようやく書き上がったので更新しました。

今回……遂に、あのイベントが起きてしまいます。

それではどうぞ。









・主なプレイヤー

瑠璃川四葉/仮面ライダーラミア
今井透/仮面ライダートゲッチ
石村火炎/仮面ライダーリザ
朝霞夢乃/仮面ライダーツッキー
五十鈴大智/仮面ライダーナッジスパロウ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ

参加人数:32名

現在生き残っている人数:12名






第19話︰こんな悲劇は、忘れるに限る

「ふぅ、疲れた疲れた……」

 

夕方、とある工事現場。

 

その日の仕事が終わり、透は自動販売機で買ってきた缶コーヒーを口にしながら、ベンチに座って休んでいた。

 

現場作業員としての仕事は、どれも体力を消耗するものばかり。

 

そんな疲れた状態で飲むコーヒーは、これまた格別な味である。

 

普段の透ならば、心の中でそう考えていた事だろう。

 

しかし、この日の彼は、いつもとは違う心境でいた。

 

「あっさりいなくなる、か……」

 

透がボソリと呟いた一言。

 

そう呟いた理由は、前日の出来事が深く関係していた。

 

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 

それは、魔法使いゲームの第2ウェーブが終了した後の事。

 

魔導師ジャマト達との戦いを生き延びたプレイヤー達は、デザイア神殿のサロンへと帰還したのたが……その人数は、第1ウェーブが終了した時よりも更に減ってしまっていた。

 

「現在、生き残っているプレイヤーは12名。次の第3ウェーブも、最後まで油断しないようお気を付け下さい」

 

「「えっ……」」

 

ツムリの言葉を聞いて、透と夢乃はサロン内を見渡した。

 

現在残っている12名のプレイヤー。

 

その中に、2人が仲良くなった人物達の姿が見当たらなかったからだ。

 

「草太と、瑞希ちゃんは……?」

 

神薙草太。

 

谷瑞希。

 

第1ウェーブで透が助け出した2人の高校生の姿が、何処にも見当たらない。

 

透が問いかけると、ツムリは少し悲しそうな表情を浮かべつつ、残酷な真実を口にした。

 

「神薙草太様と谷瑞希様のお二人は、既に退場しています」

 

「ッ……そんな……」

 

夢乃はスパイダーフォンを取り出し、プレイヤーの一覧を確認する。

 

【LOSE】の赤文字を刻み込まれた20名のプレイヤーの中には、草太と瑞希の名前も含まれていた。

 

2人の末路を知り、愕然とする透と夢乃。

 

ツムリが立ち去って行った後、夢乃は力なくソファに座り込んだ。

 

「草太君……瑞希さん……」

 

美容師になる事を夢見ていた瑞希。

 

野球部の活動に力を注いでいた草太。

 

共に頑張ろうと誓った2人が、こうもあっさりいなくなってしまったという残酷な現実に、夢乃は恐ろしさを感じていた。

 

「こんなにもあっさり、人はいなくなるんですね……」

 

「それがデザイアグランプリだ」

 

「「!」」

 

透と夢乃に、近くに立っていた四葉が語りかけてきた。

 

彼女は魔導師ジャマトとの戦闘中に手に入れたバックルを眺めていたが、そのバックルに透と夢乃は見覚えがあった。

 

「お、おいアンタ、それって……!?」

 

四葉が手にしていた、ウォーターバックルとシールドバックル。

 

それぞれ、草太と瑞希が所持していたバックルだ。

 

それを何故彼女が持っているのか。

 

驚く2人に、四葉が説明する。

 

「道端に落ちていたのを拾った。恐らくだが、ジャマトにやられて退場したプレイヤーが遺した物だろう」

 

「ッ……じゃあ、本当に2人は……」

 

四葉の発言から、草太と瑞希がもうこの世界にいない事を改めて思い知らされる事になった透と夢乃。

 

そこに、四葉が続けて語る。

 

「ジャマトにやられた者は退場し、この世界から消える。お前達も死にたくないのなら、他人の事よりまず自分の身を心配した方が良い」

 

「だが……!」

 

「それから」

 

四葉は横目で、他に生き残っているプレイヤー達を見る。

 

カウンター席で、アイスコーヒーを飲みながら寛いでいる英寿。

 

ソファに座り、1人静かに読書をしている大智。

 

壁に寄り掛かり、ドリルバックルをハンカチで磨いている火炎。

 

更には、机に足を乗せた行儀の悪い座り方をしている男性プレイヤー達。

 

それぞれの過ごし方をしているプレイヤー達の姿を見据えながら、四葉は透と夢乃に忠告した。

 

「ライダーは皆、お行儀の良い連中ばかりではない。全員が敵同士である以上、あまり仲良くなり過ぎない方が身のためだ……無論、私ともな」

 

「ッ……だが……」

 

「でなければ、お前達が死ぬだけだぞ」

 

冷徹な口調でそう告げてから、四葉はサロンから立ち去って行く。

 

彼女が立ち去った後も、透と夢乃は彼女から告げられた言葉が、何度も脳裏を過っていた。

 

 

そして時は、現在に至る。

 

「そうは言われても、簡単には割り切れねぇだろ……」

 

仕事が終わり、作業服から私服に着替え終えた透は、自身のカバンに入っているデザイアドライバーと、ゾンビバックルに目を向ける。

 

ジャマトの脅威から世界を守るために戦うデザイアグランプリ。

 

ジャマトにやられた者は、この世界から退場して消える定め。

 

とんでもないゲームに参加してしまったものだと、透は改めて実感していた。

 

「それでも、俺は―――」

 

「透、何やってんだ?」

 

「へ!?」

 

その時、後ろから同じ作業員にして、透の友人である青年が呼びかけて来た。

 

透はすぐにカバンを閉じ、咄嗟に笑って誤魔化した。

 

「い、いや、別に何でも、ははは……!」

 

「? 変な奴だな……明日は今日以上にまた仕事の量も増えるんだ。あんま気を抜くなよ」

 

「お、おう、わかってるって! それじゃ道長、また明日な!」

 

「あ、おい透……!?」

 

青年の呼び止めようとするも、透は逃げるように走り去って行く。

 

1人その場に残された青年は、走り去って行く透の後ろ姿を見て、怪しむような表情を浮かべていた。

 

「何なんだ一体……アイツまさか、隠れて変な事やってんじゃねぇだろうな……?」

 

 

「ふぅ、危ない危ない……」

 

それから夜中の7時。

 

透は1人、暗い夜道を歩いていた。

 

その日の夕飯の食材を買い終えたばかりである彼は、友人にデザイアドライバーとゾンビバックルを見られずに済んだ事で安堵していた。

 

(デザイアグランプリの事は、部外者に話しちゃいけないんだったな……家族や友人にも黙ってなきゃいけないってのがもどかしいな……)

 

デザイアグランプリの情報を部外者には明かせない以上、仲の良い友人にも秘密にしなければならない。

 

透はその事がどうしても申し訳なく感じていた。

 

「こういう時、道長ならどうするんだろうなぁ……ん?」

 

透が公園の近くを通り過ぎようとした時だった。

 

誰もいないはずの、公園のすぐ隣に設置されているバスケットコートにて、1人の少女がバスケットボールをゴール目掛けてシュートしていた。

 

投げたボールはゴールのリングに当たって弾かれ、少女のすぐ近くまで跳ねてから転がって行く。

 

それを拾い上げた少女の顔に、透は見覚えがあった。

 

「あれ、夢乃ちゃん?」

 

「! 透さん……?」

 

透に呼びかけられ、彼の存在に気付いた夢乃も驚いた様子で目を見開いた。

 

その後、2人はバスケットコート内にあるベンチに座り、自動販売機で購入した飲み物を口にする。

 

透はコーヒー、夢乃はオレンジジュースだった。

 

「いくら家が近いからって、こんな夜中に1人は危ないんじゃないか?」

 

「すみません……でも、どうしても外で運動したい気分だったので」

 

缶ジュースを口にした夢乃は、自身のすぐ隣に置いているバスケットボールを見つめる。

 

その様子を見て、透は夢乃の心情を何となくだが察していた。

 

「好きなんだな、バスケ」

 

「はい。以前はよく、幼馴染と一緒によくここに来ていました……今はもう、ここに来るのは私だけですが」

 

夢乃はバスケットコートに視線を移す。

 

まだ小学生だった頃から、幼馴染と一緒にバスケを楽しんできた夢乃。

 

その後も中学生、高校生と、2人でバスケを楽しむ日々が続いていくだろうと、かつての夢乃は思っていた。

 

そう、かつては。

 

「願いのためなら、命もかけられるってのか?」

 

「はい。私はまだ、諦めていませんから。いつの日かまた、彼と一緒にバスケを楽しめるようになる……そんな日がやって来る事を」

 

オレンジジュースを飲み終えた夢乃は、缶をゴミ箱に捨てた後、再び手に取ったバスケットボールをコートの上で何度も跳ねさせる。

 

それから両手でシュートし、バスケットゴールのリングに見事、ボールを叩き込んでみせた。

 

しかし、シュートを決めたにもかかわらず、その表情は何処か寂しげたった。

 

「そっか……なぁ夢乃ちゃん。その幼馴染って、どんな奴なんだ?」

 

「どんな奴、ですか?」

 

「あぁ。話聞いてる内に、ちょっと気になってきてさ」

 

「うーん、そうですねぇ。素直じゃなくて、少なからず捻くれたところもあるんですけど……バスケに対する情熱は本物、という感じですかね」

 

「へぇ~。何というか、俺の親友と似てるなぁ」

 

「透さんの友人も?」

 

「あぁ。何処かドライな感じで、素直じゃないし、口も悪い……けど、根は悪い奴じゃないんだ。不器用って言えば良いのかな」

 

「ふふっ……お互い、素直じゃない人が近くにいると苦労しますね」

 

「あぁ、全くな」

 

知人についての話をしている内に、少しずつ会話が弾んでいき、透も夢乃も楽しそうに笑い合う。

 

その後も2人の談笑は続き、気付けば結構な時間が経過していた。

 

流石にこれ以上、外に長居するのはマズいと判断した2人が、ベンチから立ち上がり帰宅しようとした……その時だった。

 

「「!」」

 

突然鳴り響く、透と夢乃が所持しているスパイダーフォン。

 

先程まで楽しそうに笑い合っていた2人の表情が切り替わり、2人はスパイダーフォンを取り出した。

 

≪GATHER ROUND≫

 

「ッ……透さん……」

 

「あぁ……ジャマトが現れた……!」

 

2人の目の前に出現した、ジャマーエリアの透明な壁。

 

2人は即座にデザイアドライバーを取り出し、腰に装着した。

 

≪≪DESIRE DRIVER≫≫

 

「「変身!!」」

 

 

『再び魔導師ジャマトの大軍が現れました! 更に、魔導師ジャマト達を率いるリーダー格のジャマトも出現したという報告が入っています! 皆さん、くれぐれもご用心を!』

 

ツムリのアナウンスと共に、ジャマーエリア内に駆けつけるプレイヤー達。

 

彼らはライダーに変身し、出現した魔導師ジャマト達を迎え撃つ。

 

≪SET≫

 

「変身!」

 

≪DUAL ON≫

 

≪GET READY FOR≫

 

≪BOOST & MAGNUM≫

 

≪READY FIGHT≫

 

早速、マグナムブーストフォームに変身したギーツが現場に駆けつけ、マグナムシューター40Xで魔導師ジャマト達を撃ち抜いていく。

 

それに対し、同胞を倒させまいとした数体の魔導師ジャマトが、魔法陣から発生させた氷の矢をギーツ目掛けて発射するが……。

 

≪SET≫

 

「変身!」

 

≪DUAL ON≫

 

≪ARMED PROPELLER≫

 

≪ARMED SHIELD≫

 

≪READY FIGHT≫

 

「はぁっ!!」

 

“アームドプロペラシールド”に変身したラミアが、飛んで来た氷の矢を左腕のレイズシールドで全て弾き返した。

 

それを見たギーツはヒュ~と口笛を吹く。

 

「サンキュー、先輩♪」

 

「ふん、勘違いするな。私は自分の身を守っただけだ」

 

ラミアはギーツにそう言い捨てた後、右腕のレイズプロペラのローター部分を回転させ、戦場を素早い速度で飛び回っていく。

 

その近くでは、アームドドリルに変身したリザが1体の魔導師ジャマトを相手取っていた。

 

「ほっ!!」

 

「ジャッ!?」

 

リザに右足で蹴りつけられ、怯んだ魔導師ジャマトの胴体にレイズドリルが容赦なく突き刺さる。

 

リザはレイズドリルの突き刺さった魔導師ジャマトをそのまま高く持ち上げ、ドリルを魔導師ジャマトごと(・・・・・・・・・)高速回転させ始めた。

 

「リビビロバガーーーッ!?」

 

「クハハハハハ!! 回れ回れぇ!!」

 

「「「ジャーッ!?」」」

 

レイズドリルで高速回転させられる魔導師ジャマト。

 

リザは高笑いしながら、回転させていた魔導師ジャマトを近くにいた他の魔導師ジャマト達に激突させ、一度に纏めて薙ぎ倒してみせた。

 

「ふんっ!!」

 

「ジャ……ッ!?」

 

更に離れた場所では、モンスターフォームに変身したナッジスパロウが、モンスタークローブによる一撃で魔導師ジャマト達の頭部を粉砕。

 

続けて他の魔導師ジャマト達も、ナッジスパロウの繰り出すパンチによって次々と粉砕されていく。

 

「おっと、もう始まってるか……!!」

 

ライダー達と魔導師ジャマト達が戦闘を繰り広げているところに、透が変身したトゲッチ・ゾンビフォームと、夢乃が変身したツッキー・アームドハンマーの2人も駆けつける。

 

魔導師ジャマト達を迎え撃とうとする2人だったが、その前にツッキーが、魔導師ジャマト達に襲われている一般人を発見した。

 

「!? 危ない!!」

 

≪HAMNER STRIKE≫

 

「ッ!? ジャーーーッ!?」

 

魔導師ジャマトの出現させた赤い魔法陣から、一般人に向かって放たれた球状の火炎弾。

 

直前で乱入したツッキーは、デザイアドライバーに装填しているハンマーレイズバックルを操作し、レイズハンマーを振るい火炎弾を打ち返した。

 

まさか打ち返されるとは思っていなかったのか、驚いた魔導師ジャマトは戻って来た火炎弾で焼き尽くされ、その隙にトゲッチが一般人を避難させる。

 

「逃げろ、早く!!」

 

「あ、ありがとうございます……!!」

 

一般人が逃げ去った後、数体の魔導師ジャマトが魔法陣を出現させ、トゲッチ目掛けて魔法を繰り出そうとする。

 

それに気付いたトゲッチはゾンビバックルを操作し、左腕のバーサークローを地面に突き刺した。

 

≪ZOMBIE STRIKE≫

 

「うぉら!!」

 

「「「ジャジャーッ!?」」」

 

トゲッチは突き刺したバーサークローで地面を大きく抉り、抉れた岩盤をぶつけられた魔導師ジャマト達が一斉に吹き飛ばされていく。

 

(よし、今んところは問題ねぇ……これなら……!!)

 

順調に魔導師ジャマト達を倒せている今、トゲッチの中で少しずつ自信が湧いてきた。

 

これなら、この1回戦を最後まで生き残れると。

 

そう思うトゲッチだったが……ここで、思わぬ事態に発展する。

 

「な、なぁ、そこのアンタ!!」

 

「ん?」

 

トゲッチの後ろから、呼びかけて来る声があった。

 

大きな耳に2本の鋭い象牙、そして1本の長い鼻などが特徴的な象のような戦士―――“仮面ライダーアイボリー”だ。

 

アームドアローの姿をしたアイボリーが、何処か焦った様子で、途中転びかけながらもトゲッチの下まで必死に走って来たのだ。

 

「どうした?」

 

「た、頼む、助けてくれ!! 俺のダチが、ジャマトに襲われて大怪我しちまって……!!」

 

「何だと……!?」

 

アイボリーの話を聞いて、トゲッチも焦りを見せる。

 

その話が本当であれば、助けない訳にはいかない。

 

即座に動き出そうとするトゲッチだったが、そんな彼の脳裏に、ある台詞が過る。

 

 

 

 

 

 

『ライダーは皆、お行儀の良い連中ばかりではない』

 

 

 

 

 

 

『全員が敵同士である以上、あまり仲良くなり過ぎない方が身のためだ』

 

 

 

 

 

 

『でなければ、お前達が死ぬだけだぞ』

 

 

 

 

 

 

四葉から告げられた忠告。

 

それが今もまだ、トゲッチの心にこびり付いていた。

 

(それでも、俺は……!!)

 

自身の目の前で、困っている人がいる。

 

トゲッチが動く理由は、それだけで充分だった。

 

「ッ……そのダチってのは、今何処にいる!?」

 

「こ、こっちだ!! 付いて来てくれ!!」

 

トゲッチはアイボリーに案内される形で、その場から離脱。

 

2人が何処かへ走り去って行く姿を、魔導師ジャマトを狙撃していたギーツは目撃した。

 

「ん? アイツらは……」

 

ギーツが注目したのは、トゲッチではなくアイボリー。

 

その姿を見た彼は、数秒ほど考える仕草をした後、何かに気付いた。

 

(まさか……!)

 

「ジャーッ!!」

 

「ッ……ふん、はぁっ!!」

 

後を追いかけようとするギーツだが、その行く手は魔導師ジャマト達に阻まれてしまう。

 

振るわれて来た剣をかわし、ギーツは魔導師ジャマト達が魔法陣から飛ばして来る岩石を、マグナムシューター40Xで的確に撃ち砕いていく。

 

その間に、トゲッチとアイボリーはどんどん遠くまで走り去って行ってしまった。

 

 

「あ、あそこだ!! あそこにいる!!」

 

「ッ……アイツか……!!」

 

その後、アイボリーの案内を受けながら移動し続けるトゲッチ。

 

アイボリーが指差した先では、エントリーフォームの姿をした1人のライダーが地面に倒れ、両手で腹部を押さえながら呻いていた。

 

「おいアンタ、大丈夫か!?」

 

「う、うぅ……ッ」

 

長い角が特徴的なインパラのような戦士―――“仮面ライダーインパル”はトゲッチの存在に気付くと、苦しそうな声で助けを求め始める。

 

それを見て、トゲッチはすぐにインパルの傍まで駆け寄った。

 

「うぅっ、い、痛え……た、頼む……助けてくれ……ッ」

 

「おい、しっかりしろ!! 今サロンまで運んでやる!! 立てるか!?」

 

魔導師ジャマトが出没するこのジャマーエリアにいたら、彼の命が危ない。

 

そう考えたトゲッチは、両手でインパルの身体を支えながらゆっくり立ち上がらせ、サロンまで連れて行こうとした。

 

「ぐ、あぁっ……痛ぇ、痛ぇよぉ……!」

 

「大丈夫だ、俺がお前を死なせたりはしねぇ!! だから諦めるな!!」

 

「そ、そんな事、言われてもよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「面白過ぎて、笑えて腹が痛ぇんだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

インパルの発言に、トゲッチの動きが止まる。

 

その直後だった。

 

≪ALLOW STRIKE≫

 

ズドォンッ!!

 

「がぁっ!?」

 

トゲッチの背中に炸裂した、強烈な矢の一撃。

 

吹き飛んだトゲッチは地面を転がり、変身が解けて透の姿に戻ってしまった。

 

「ぐ、うぅ……な、何しやがる……!?」

 

何が起きたのか、理解が追い付かない透。

 

仰向けに倒れた彼が見据えた先にあったのは、構えたレイズアローを透に向けているアイボリーと、先程まで苦しそうにしていたのが嘘のように、ピンピンした様子で立っているインパルの姿。

 

彼らは怪しげに笑いながら、何が何だか分かっていない透を見下ろしていた。

 

「ハハハハハ! 上手く行ったなぁ、相棒?」

 

「あぁ、本当にな! 上手く行き過ぎて、笑いが止まりそうにねぇや!」

 

「ッ……どういう事だ……!?」

 

「バッカだなぁ、お前。まだ気付いてねぇのか?」

 

「お前は騙されたんだよ。俺達になぁ……!」

 

インパルとアイボリーは笑いながら、透に真実を告げる。

 

そう、全てはこの2人が仕掛けた罠だった。

 

インパルが魔導師ジャマトに襲われて大怪我したというのは、真っ赤な嘘。

 

2人がそのような罠を仕掛けたのは、ある目的を果たすためだった。

 

「俺達もなぁ、デザ神になって願いを叶えてぇんだ」

 

「だが、こんな弱っちぃバックルじゃ、どう考えても勝ち残れる気がしねぇ」

 

エントリーフォームの姿に戻ったアイボリーが、取り外したアローバックルを見ながら言い放つ。

 

続けてインパルが、透のデザイアドライバーに装填されているゾンビバックルを指差した。

 

「それでよぉ……お前、なかなか強そうなバックル使ってるじゃねぇか」

 

「ッ……まさか、お前らの目的は……!!」

 

「そうさ。お前が使ってるそのバックルだよ」

 

「そいつを寄越しな。俺達が代わりに使ってやるからよぉ」

 

インパルとアイボリーの目的。

 

それはつまり、透が使っているゾンビバックルの強奪である。

 

これまでの第1ウェーブと第2ウェーブで、ゾンビフォームに変身したトゲッチの戦いを見ていた2人は、透が持つゾンビバックルを奪い取る事を画策していたのだ。

 

「ッ……ふざけるな……これは、俺のバックルだ……!! そもそも、他のライダーを攻撃するのはルール違反じゃねぇのか……!?」

 

「あぁん? 知るかよ、そんな事」

 

「勝てれば良いんだよ勝てれば……良いからとっとと寄越せ!!」

 

「くっ……がはっ!?」

 

アイボリーがその場から駆け出し、立ち上がろうとした透の腹部を蹴りつける。

 

続けてインパルが透の顔面を殴りつけ、彼を徹底的に痛めつけ始めた。

 

(ッ……マズい、このままじゃ……!!)

 

インパルに羽交い絞めにされ、アイボリーに連続で殴られる透。

 

ここに来て、透はようやく理解した。

 

先日、四葉から告げられた忠告の本当の意味を。

 

 

 

 

 

 

『ライダーは皆、お行儀の良い連中ばかりではない』

 

 

 

 

 

 

『全員が敵同士である以上、あまり仲良くなり過ぎない方が身のためだ』

 

 

 

 

 

 

『でなければ、お前達が死ぬだけだぞ』

 

 

 

 

 

 

デザイアグランプリは基本的に、プレイヤーがプレイヤーに攻撃を仕掛けるのはルール違反である。

 

破った者には何かしらのペナルティーが課せられ、最悪の場合は強制脱落となってしまう。

 

しかし、あらゆる欲望が渦巻くのがこのデザイアグランプリ。

 

今回のインパルやアイボリーのように、ルールなどお構いなしに攻撃を仕掛けて来る者がいても、何ら不思議ではないのだ。

 

「おらよっとぉ!!」

 

「はっはぁ!!」

 

「がっ……ごふぅ……ッ!?」

 

インパルとアイボリーに殴られ、蹴られ、ボロボロに痛めつけられていく透。

 

そしてとうとう、アイボリーに殴られた拍子に透のドライバーからゾンビバックルが外れ、それが地面に落ちてしまった。

 

(し、しまった……ッ!?)

 

地面に倒れた透が動けない中、ゾンビバックルを拾い上げたインパルは透に言い放つ。

 

「こいつは貰っといてやるよ……!」

 

「お前はここで終わりだ……!」

 

「「ヒャハハハハハハ!!!」」

 

目的を達成した事で、くるりと背を向けてさっさと立ち去って行くインパルとアイボリー。

 

2人の笑い声が夜の街に響き渡る中、透は痛む全身を何とか起こし、後を追いかけようとする。

 

「返せ……俺の、俺のバックルを……返せ……ッ!!」

 

透のその懇願が、聞き入れられる事はなかった。

 

インパルとアイボリーの後ろ姿がどんどん遠ざかって行く中、透は必死に歩こうとするが、ボロボロに痛めつけられたせいで身体に力が入らず、ほとんど歩けていない。

 

そんな彼に、更なる悲劇が襲い掛かる。

 

「「ジャ~……」」

 

「……ッ!?」

 

透の前にタイミング悪く現れた、2体の魔導師ジャマト。

 

魔導師ジャマト達は獲物を見つけたと言わんばかりに、構えていた剣を突きつけながら透に迫り来る。

 

そして……。

 

「「ピアーブッ!!」」

 

ザシュッ!!

 

ズバァッ!!

 

「ぐっ、がぁっ……!?」

 

無慈悲な斬撃が、透の身体に襲い掛かった。

 

痛みのあまり、その場で倒れ込む透。

 

それと共に、透のドライバーにセットされていたトゲッチのIDコアが、大きく罅割れてしまう。

 

(ッ……そん、な……)

 

こんなところで、俺は終わるのか。

 

絶対に勝ち残ってやろうと、誓ったはずなのに。

 

IDコアが破損した時点で、その誓いは一瞬で無意味な物と化した。

 

(俺、は……まだ……ッ)

 

 

 

 

 

 

「透ッ!!!」

 

 

 

 

 

 

透の名前を、叫ぶ声がした。

 

血相を変えて駆けつけて来た1人の人物。

 

それは透にとって、一番の親友と呼べる存在だった。

 

「道、長……ッ……」

 

 

(何だ……何が起こってんだよ……!?)

 

青年―――“吾妻(あづま)道長(みちなが)”は動揺を隠せなかった。

 

彼はこの日、夕飯はコンビニ弁当で適当に済ませようと、夜の外を出歩いていた。

 

その道中、突然ジャマーエリアに閉じ込められた彼は、いきなり現れた魔導師ジャマト達に襲われかけた。

 

訳が分からず、魔導師ジャマト達の攻撃から必死に逃れ続けた道長が、逃げた先で目撃した光景。

 

それは、インパルとアイボリーに痛めつけられている透の姿だった。

 

それを見てしまった道長は困惑する。

 

何故、そんな所に透がいるのか。

 

あの変な仮面の奴らは、一体何者なのか。

 

どうして、透がそいつらに酷い目に遭わされているのか。

 

「こいつは貰っといてやるよ……!」

 

「お前はここで終わりだ……!」

 

「「ヒャハハハハハハ!!!」」

 

透からゾンビバックルを奪ったインパルとアイボリーが、高笑いしながら立ち去って行く。

 

彼らが何を奪い取ったのか、そんな事は道長にとってはどうでも良い事だった。

 

問題は、ボロボロに痛めつけられた透の方である。

 

「返せ……俺の、俺のバックルを……返せ……ッ!!」

 

返せだと?

 

バックルって一体何だ?

 

透、お前はこんな所で一体、何をやっていたんだ?

 

ありとあらゆる疑問に頭が埋め尽くされ、考えが全く纏まらない道長。

 

そんな時、フラフラでほとんど歩けていない透に、2体の魔導師ジャマトが迫って来た。

 

「「ピアーブッ!!」」

 

「!? 逃げ―――」

 

道長が叫ぶよりも前に。

 

魔導師ジャマト達の攻撃が、透にトドメを刺してしまった。

 

ザシュッ!!

 

ズバァッ!!

 

「ぐっ、がぁっ……!?」

 

「透ッ!!!」

 

道長が見ている前で、魔導師ジャマト達に斬られ、とうとう力尽きた透。

 

すぐさま駆け寄った道長は、倒れたまま動けない透の上体を両腕で抱き起こした。

 

「大丈夫か、しっかりしろ!!」

 

「はぁ……はぁ……こんなはずじゃなかったんだ……ッ」

 

「え……?」

 

道長の腕の中で、透の身体に少しずつ赤いノイズが走り始める。

 

既にほとんど意識が消えかけていた透は、残る最後の力を振り絞って、道長に告げようとした。

 

「デザイアグランプリで……ッ……」

 

 

 

 

 

 

(俺の理想を、叶えたかったんだ―――)

 

 

 

 

 

 

理想を願った透の想い。

 

その言葉が、最後まで告げられる事はなかった。

 

≪MISSION FAILED≫

 

「ッ……おい、透!!」

 

赤い塵となり、道長の腕から跡形もなく消え去った透。

 

透が消えると同時に、道長は彼を抱きかかえていた感覚を失い、先程まで透が倒れていた地面に両手を付く事しかできなかった。

 

「何なんだよ!! デザイアグランプリって!?」

 

透が言い遺した、デザイアグランプリという単語。

 

それが指しているのは何なのか、この時の道長には全く理解できなかった。

 

しかし、考えている暇はない。

 

透にトドメを刺した魔導師ジャマト達が、今度は道長に狙いを定めて来たからだ。

 

「「ジャジャーッ!!」」

 

「ッ……!!」

 

魔導師ジャマト達が剣を振りかぶるのを見て、道長が咄嗟に後退ろうとした……その時。

 

「はっ!!」

 

「「ジャッ!?」」

 

「ッ!?」

 

駆けつけたギーツが、道長に襲い掛かろうとした魔導師ジャマト達を難なく蹴散らした。

 

その姿に道長が驚く中、振り向いたギーツは彼の姿を見据える。

 

(ッ……間に合わなかったか……)

 

インパルとアイボリーによる笑い声と、道長による慟哭の声は、駆けつけようとしていたギーツの耳にも届いていた。

 

しかし、駆けつけたギーツが見たのは魔導師ジャマトと、魔導師ジャマトに襲われかけていた道長の姿のみ。

 

そこに透の姿はない。

 

その時点で、ギーツは透が退場してしまった事を悟り、仮面の下で沈痛な表情を浮かべる。

 

悟ったところで、彼が道長に話せる事は何もない。

 

デザイアグランプリの詳細を、部外者に明かす事はできないからだ。

 

だからこそ彼は、自身の事を見ている道長に対し、こう伝える事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「こんな悲劇は、忘れるに限る」

 

 

 

 

 

 

ただ一言。

 

それだけ告げて、ギーツは魔導師ジャマト達との戦闘を再開する。

 

その言葉を受けた道長はと言うと、そんなギーツの戦う後ろ姿を、鋭い目付きで睨みつけていた。

 

(忘れるに限る……だと?)

 

目の前で、人の命が消えたというのに?

 

何でそんな言葉を、そんな簡単に言ってのける?

 

ふざけるな。

 

何が忘れるに限るだ。

 

そんな馬鹿げた話があってたまるか。

 

道長の心の中で、怒りの感情が沸々と湧き上がっていく。

 

「ッ……忘れてたまるか……!!」

 

道長は許せなかった。

 

透を痛めつけたインパルとアイボリーの事が。

 

透を殺害したジャマト達の事が。

 

それらの悲劇に対し、「忘れるに限る」と言ってのけたギーツの事が。

 

しかし……そんな道長の怒りの記憶は、すぐに忘れさせられる事になる。

 

バチィッ!!

 

「うっ……!?」

 

突如、道長の首元に襲い掛かった電流。

 

彼の背後に回り込んでいた警備隊の隊員が、道長の首元にスタンガンを当てたのだ。

 

スタンガンの電流を喰らった道長が倒れ、意識を失った事を確認した隊員の下に、他の隊員達も駆けつけた。

 

「運べ」

 

「「はっ!」」

 

気絶した道長を、隊員達が何処かに運び去る。

 

その間に、防護服を着込んだ隊員達が、先程まで透が倒れていた地面に向けて白いガスを噴きかけ始めた。

 

ゲーム退場者の痕跡隠滅業務。

 

それが警備隊によって、驚くほど迅速に行われていく。

 

そんな中、警備隊の隊員である1人の青年は、運ばれていく道長の姿を眺めながら静かに呟いていた。

 

「忘れたくねぇのに忘れさせられる、か……ままならねぇ話だよな……本当に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある異空間。

 

そこには、赤色を基調とした、ゴージャスな雰囲気のある部屋が存在している。

 

その赤い部屋の中で、ある人物が楽しそうに笑っていた。

 

「へぇ、面白そうなのがいるじゃない」

 

赤色と黒色を基調とした、ゴスロリチックな衣装。

 

白色とピンク色のメッシュが入った長い黒髪と、緑色と紫色によるオッドアイ。

 

そして、右目の目元にある黒色の小さなハートマーク。

 

それらの特徴を持った謎の少女は、左手に持っているタブレットの映像を見ながら、瓶詰めから摘んで取り出した赤色のジェリービーンズを齧っていた。

 

「ギーツの事あんなに睨むなんて……彼、よっぽどライダーが憎いみたいね」

 

透の身に起きた一連の出来事を、彼女は全て見届けていた。

 

当初は、透が退場して消滅するまでの光景を見て楽しんでいた少女だったが、ここで更に面白い収穫があった。

 

その面白い収穫こそが、道長だった。

 

ギーツを強く睨みつけていた彼の姿を見て、少女はある事を思いついていた。

 

彼をデザイアグランプリに参加させたら、もっと面白い不幸が見られるのではないか……と。

 

「次回のデザグラの審査で、アタシの方から推薦してみようかしら……ウフ、フフフ、アハハハハハハ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

面白そうだったから。

 

ただ単に、そんな軽い理由で下された1つの判断。

 

それが後に、デザイアグランプリその物の在り方を大きく変える切っ掛けになろうとは。

 

この時はまだ、誰も知る由はなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




仮面ライダーギーツ!

インパル「どんな手を使おうが、勝った奴が正義なんだよ……!!」

夢乃「あなた達なんかに、私は絶対負けません!!」

大智「魔導師ジャマトのリーダーがお出ましか……!」

四葉「今だけでも覚えておけ……これがデザイアグランプリだという事を……!!」
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