仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム   作:ロンギヌス

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お待たせしました、21話目の投稿です。

冬映画『THE WINTER MOVIEガッチャード&ギーツ』に、Vシネ『仮面ライダーバッファ』、更にギーツエクストラ『仮面ライダーゲイザー』……見たい物が多過ぎます。
作者のギーツ熱はまだまだ収まりそうにありません。

それはさておき、本編をどうぞ。

ついでに、前回の後書きに載せ忘れていた賢者ジャマトの詳細も載せておきます。











・主なプレイヤー

瑠璃川四葉/仮面ライダーラミア
今井透/仮面ライダートゲッチ
石村火炎/仮面ライダーリザ
朝霞夢乃/仮面ライダーツッキー
五十鈴大智/仮面ライダーナッジスパロウ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ

参加人数:32名

現在生き残っている人数:8名













※JYAMATO DATA※

・賢者ジャマト

デザイアグランプリ第1回戦【魔法使いゲーム】に現れた、魔導師ジャマト達を率いるリーダー格のジャマト。ベースは【ビショップジャマト】。
黒い外套を身に纏い、赤い宝玉の装飾が付いた杖を装備している。
この個体が繰り出す魔法攻撃は非常に強力で、魔導師ジャマトの比にならない。まともに喰らった場合は最悪、【一撃で退場させられてしまう】。






第21話:退場者の行方

「―――ふぅ」

 

喫茶店【CLOVER】の店長、瑠璃川四葉の朝は早い。

 

店の開店時間が朝の7時であるため、それまでには店に到着し、開店準備を進めなければならない。

 

普段は小さなアパートの一室に住んでいる四葉は、朝の5時には起床し、浴室にてシャワーを浴びる。

 

シャワーから流れ出るお湯が、四葉の白い肌の上を艶めかしく流れ落ちていく。

 

それからシャワーのお湯を止めた彼女は、濡れた髪をタオルで丁寧に拭きながら、目の前の鏡に映る自分の姿を見据えた。

 

その視線の先には、鏡に映り込む、彼女自身の左肩に見える小さな傷痕。

 

(……まだ、少し疼くか)

 

左肩から鎖骨辺りまで続いている傷痕にそっと触れてから、四葉はバスタオルを巻いて洗面所に移動し、洗面台の棚からドライヤーを取り出して髪を乾かしていく。

 

それも終えた彼女は普段着に着替えると、台所に向かい、朝食の準備を進める。

 

トーストに入れた食パンが焼き終わるまでの間に、四葉は玄関の扉のポストに突っ込まれている新聞を取りに行き、その日の最新のニュースを確認する。

 

(『連続殺人事件解決、犯人はまさかの女子高生』……か)

 

デザイアグランプリが関わらずとも、世の中が物騒なのは変わらないものだ。

 

四葉はそう考えながら一旦新聞を置き、こんがり焼き終わった食パンにマーガリンと苺ジャムを塗ってから食べ始める。

 

それを食べ終わると、四葉は再び洗面所に向かい、洗顔、歯磨き、スキンケア、化粧などを順番に済ませていく。

 

それから着ていた普段着を脱ぎ、改めて外出用の服に着替えた事で準備が整った四葉は、カバンを持って玄関まで向かい、黒色のヒールを履く。

 

玄関の扉の鍵を開け、扉を開こうとする前に、四葉は靴箱の方に視線を向ける。

 

靴箱の一番上には、2つの写真立てが並べられていた。

 

片方には、彼女の家族写真が。

 

もう片方には、長身の男性が四葉と共に肩を並べて笑っている写真が。

 

「……行って来ます」

 

写真立てを見つめながら、四葉はただ一言、誰もいない空間にそう呟く。

 

それから彼女はドアノブを回して扉をゆっくりと開き、朝日が照らす外へと出て行った。

 

 

「ありがとうこざいました」

 

喫茶店【CLOVER】。

 

会計を済ませて帰っていく客に笑顔で頭を下げながら、四葉は感謝の言葉を口にする。

 

昼間のピークを過ぎた事で、店内からは一時的に客がいなくなり、その間に店員達がカウンターやテーブルを綺麗に掃除し始める。

 

「ふぅ、やっと落ち着いて来たか」

 

「あぁ~疲れたぁ~……」

 

「2人共、お疲れ様」

 

修平がテーブル席の皿やティーカップなどを片付けるその横で、眼鏡をかけた茶髪の女性店員―――“鳥羽(とば)律子(りつこ)”がうーんと背伸びしてから、水に濡らした付近でカウンター席を綺麗に拭いていく。

 

厨房では、修平から皿やティーカップなどの食器を受け取った四葉が、受け取ったそれらを綺麗に洗い始めていた。

 

「うへぇ……喫茶店のバイトなら、仕事も楽で簡単にお金稼げるかなって思ってたのにぃ……」

 

「それは飲食店の仕事を舐めてたお前が悪い。ほら、そっちのテーブル席もちゃんと拭いとけよ」

 

「はーい……」

 

律子は修平と同じ大学に通っている大学生で、修平からこのCLOVERを紹介される形でアルバイトを希望した身である。

 

「普段は客もそんなに多くない」という修平の言葉を真に受けた彼女は、「それなら楽にお金稼げるかも」と思ってアルバイトを希望したのだが、彼女の見通しは甘かった。

 

あくまで「普段はそんなに多くない」というだけであって、昼間のピーク時などは普通に客も多く訪れるため、その時間帯は仕事も増えて大忙しである。

 

カウンター席とテーブル席3つのみと、店内の席数自体はあまり多くない事が、律子にとっては辛うじて救いであった。

 

「あぁ、飲食店舐めてたわ私……こんな事なら違う仕事選ぶべきだった……」

 

「安心したまえ、律子ちゃん。テーブル全部拭き終わったら、君はもう上がってくれて構わない。もし君が望むのなら、仕事を終えた褒美として私が何か作ってやっても良いが」

 

「良いんですか!? わーい!! 心の底から大好きです店長ー!!」

 

「いや変わり身はえーなオイ」

 

仕事を頑張った律子のために、何か賄いでも作ってやろうかと四葉が告げた途端。

 

先程までげんなりしていた律子がいきなり元気を取り戻し、厨房に立つ四葉に笑顔で両手を振り出した。

 

そんな律子に、修平は呆れた顔を浮かべる。

 

「何か食べたい物はあるか?」

 

「じゃあ私、ナポリタンが食べたいです!」

 

「わかった、任せておけ」

 

「やったぁ!」

 

「食べるなら奥の部屋で食べろよ。ここだとお客さんの邪魔になるから」

 

「わかってまーす!」

 

律子が店の奥にある従業員専用の入り口に移動する中、四葉はナポリタンの調理を始める。

 

修平もテーブル席の食器を厨房まで運んだ後、ダストボックスのゴミ袋を交換したり、トイレの清掃を行ったりと、客がいない間も忙しく働き続ける。

 

それから少しして、カランカランと店の扉に取り付けられているベルが鳴り、新たな客の来店を四葉達に知らせた。

 

「お、今日もやってるな」

 

「いらっしゃいませ。1名様ですね? こちらの席にどうぞ」

 

店にやって来たのは、オールバックにした黒髪と口周りのダンディな髭が特徴的な、サングラスをかけた中年男性。

 

男性は店内を見回しながら、修平の案内でカウンター席まで移動すると、その男性の顔を見た四葉が僅かにだが目を見開いた。

 

「あれ、栗山さん……?」

 

「やぁ四葉ちゃん、久しぶりだな。今日も相変わらず綺麗で」

 

「フフッ、そんな大袈裟な。栗山さんの方こそ、お久しぶりです」

 

「? 店長、お知り合いですか?」

 

四葉と男性が仲良く話しているのを見て、気になった修平が四葉に問いかける。

 

「あぁ、そういえば修平君は会うのは初めてだったかな。彼は栗山さん。この店の常連の方だ」

 

「やぁ青年。君は見た感じ、大学生かな? バイトしてるなんて偉いねぇ」

 

「い、いえ、褒められるほどの事では……」

 

「ははは、そんな謙遜しなくても良い。君みたいな若い子が、お店の戦力になってくれるというのは、大人からしたら頼もしいものなんだよ。なぁ四葉ちゃん?」

 

「ええ、そうですね」

 

男性――“栗山《くりやま》理祈(リオル)”はかけていたサングラスを外し、楽しそうに笑いながらカウンター席に座る。

 

四葉の方も、穏やかな笑みを浮かべながら理祈と会話を交わしていく。

 

「今日も、いつもので良かったですよね?」

 

「あぁ。今日も美味いコーヒーとホットケーキを頼むよ」

 

「えぇ、かしこまりました……あぁ修平君。ナポリタン完成したから、律子ちゃんの所に持って行ってあげてくれ」

 

「わかりました」

 

四葉はちょうど完成したばかりのナポリタンが乗った皿を、フォークと水の入ったコップと共にお盆に乗せ、それを修平に渡す。

 

修平がそれを受け取り、奥の従業員用の部屋で休んでいる律子の所へ持って行くのを見届けた後、四葉はすぐにホットケーキの調理に取り掛かり始める。

 

四葉が調理している間、理祈は店内を見渡していた。

 

「相変わらず、お店は狭いままなんだな。四葉ちゃんなら、もっと大きい店を構えてもやっていけるだろうに」

 

「いえ、私はこういうこじんまりとした雰囲気の方が好きですから。ここに来るお客さんの中にも、こういう狭い空間の方が落ち着くという方もいらっしゃいますし」

 

「あぁ、なるほど。それは俺にもよくわかる。このレトロな内装、俺も気に入ってるからな」

 

「お世辞でも、そう言って頂けると本当に嬉しいです」

 

「いやぁ、お世辞なんかじゃないさ。この店は本当に良い。この落ち着いた雰囲気……嫌な事があった後でも、心を癒やしてくれる」

 

理祈が声のトーンを低くして告げたその呟き。

 

その一言から、彼の表情に現れた暗い感情を察知した四葉は、混ぜ終えたホットケーキの生地をフライパンで焼きながら問いかけた。

 

「ここしばらく、栗山さんはうちに来ていませんでしたよね」

 

「!」

 

「その間に、何かあったんじゃないですか? その落ち込みようからして」

 

「……四葉ちゃんの前で、隠し事はできんらしいな」

 

理祈は観念した様子で、懐から1枚の写真を取り出す。

 

その写真には、1笑顔を浮かべている若い少女の姿が写り込んでいた。

 

「俺がフリーライターをやってるのは、四葉ちゃんにも前に教えたよな?」

 

「えぇ、まぁ」

 

「実は今、人探しをしている真っ最中でね。見つけ出したいのさ……いなくなってしまった“あの娘”を」

 

「……その娘は?」

 

「俺の姪っ子だ。ある日突然、家出して行方不明になった」

 

「! 行方不明……?」

 

理祈が告げた“行方不明”という言葉に、四葉はピクリと眉が反応する。

 

その言葉は、以前にも聞いた事があったからだ。

 

「その件について、警察には?」

 

「もうとっくに伝えた後さ。俺の方からも捜索願は出している……が、碌に成果を得られていないのが現状だ」

 

「……そうですか」

 

四葉が先程までとは僅かに違う反応と表情をしている事に、俯いていた理祈は気付かない。

 

気付かないまま、彼は写真に写る少女を見つめながら話を続ける。

 

「一体何処に消えてしまったのか、まるで見当も付かなくてなぁ……こんな事になるなら、もっと早くあの娘の傍に寄り添ってあげるべきだった……ッ」

 

「? どういう事ですか?」

 

少女がいなくなってしまった理由に、何か心当たりでもあるのか。

 

四葉が問いかけると、理祈は先程までの暗い表情から打って変わり、怒りに満ちた表情を浮かべ始めた。

 

「あの娘の父親、まぁ俺の弟なんだが……あのド阿呆め。妻共々、自分の娘に対して虐待に近い育て方をしていやがった」

 

「虐待、ですか……」

 

「あぁ。おまけに、あの娘が行方不明になってからも、まるで心配する素振りも見せなかったからな。流石に俺も頭に来て、どっちも平等に殴り倒してやったよ」

 

「そ、それはやり過ぎでは……?」

 

「これでもまだ殴り足りないくらいさ。むしろ一発で済ませてやっただけ、ありがたく思えって話だ」

 

握った拳をシュッシュッと空気に当てながら、理祈はその時の怒りが蘇ったのか、メラメラと怒りを露わにする。

 

四葉はそんな理祈の様子に若干の困惑を示しつつも、ホットケーキの焼き加減を確認し、フライ返しを使って綺麗に引っ繰り返す。

 

「本当なら、フリーライターとしての立場を利用して、あのバカ夫婦共を社会的に抹殺してやろうかとも考えたが、それは流石にやめといた」

 

「はぁ……それは何故?」

 

四葉が問いかけると、理祈はその表情から少しずつ怒りの感情が消えていき、落ち着いた様子で答えた。

 

「……どんなに腐っていようとも、あのバカ夫婦こそがあの娘の両親だからな」

 

理祈は知っていた。

 

姪っ子であるその少女が、どれだけ優しい性格なのかを。

 

だからこそ、彼は何とか踏み留まった。

 

少女の両親を社会的に抹殺してしまおうものなら、悲しい思いをするのは他でもない、その少女自身なのだから。

 

「とりあえず、ホッとしました。そう考えられるだけの理性は残っているとわかりましたから」

 

「ふん、それでも俺はまだ納得しちゃいない。あの娘の両親は、いつか俺の方からきっちりシメてやる……が、今はそれよりも、この娘を見つけ出すのが最優先だと思っただけだ」

 

理祈がフンと鼻を鳴らしながら頬杖を突く一方で、四葉は出来上がったホットケーキを2枚重ねの形で皿に移し替え、その上からバターとシロップをかけていく。

 

その後、淹れたばかりのブラックコーヒーが入ったカップ、そしてナイフとフォークも一緒にお盆に乗せ、それを理祈の前に差し出した。

 

「はい、お待たせしました。ホットケーキとブラックコーヒーです」

 

「おぉ、来た来た」

 

理祈は待ってましたとばかりにそれを受け取ると、早速ナイフとフォークを手に取り、ホットケーキを食べ始める。

 

理祈は口の中に広がるバターとシロップの甘さと、ホットケーキの香ばしさが織り成すハーモニーを楽しみながら、ゆっくりと味わっていく。

 

「うん、やっぱり美味いな。ここで食べるホットケーキは」

 

「ありがとうございます」

 

理祈は次にカップを手に取り、ブラックコーヒーの香りを楽しんでからゆっくりと口にする。

 

ブラック特有の苦味と、鼻を通り抜けていく深い香りが、理祈の気持ちを落ち着かせていく。

 

そんな理祈の様子を、四葉は静かに微笑みながら見つめていた。

 

「はぁ、全く律子の奴。疲れたからって肩叩きまで要求しやがって……」

 

そこに、律子にナポリタンを運び終えた修平が戻って来た。

 

どうやらナポリタンを届けた後も、律子から肩叩きを要求され、それに突き合わされていたようだ。

 

「ん?」

 

その時、修平は理祈がカウンターに置かれている写真に気付く。

 

写真に写っている少女の顔を見た途端、彼は驚いた様子で声を上げた。

 

「あ、あの!! この写真に写ってる子って……!?」

 

「ん? あぁ、これかい? 俺が今探している女の子なんだが……」

 

理祈の説明を、修平は最後まで聞く事はなかった。

 

否、聞く必要がなかった。

 

何故なら、わざわざ理祈から説明を聞かずとも、修平は既に、その写真の少女を知っているのだから。

 

「これ、紬ちゃんですよね……!?」

 

「「!?」」

 

修平の口から出た名前に、理祈と四葉も驚いて彼に視線を向ける。

 

「せ、青年、何故この子の名前を知ってるんだ……?」

 

「実は……」

 

驚く2人に、修平は簡潔にだがその理由を説明した。

 

写真に写る少女―――小林紬は、妹の若槻さゆりと親友の間柄である事。

 

自身も紬とは面識がある事。

 

紬が家出して行方不明になってからというもの、妹がすっかり元気をなくしてしまっている事。

 

修平がそれらの説明をした後、理祈は目をパチクリさせてから、その口元がほんの僅かに微笑みを浮かべた。

 

「そうか……君の妹さんが、紬ちゃんとお友達だったんだな。まさかこんな形で巡り合う事になるとはね」

 

「俺も驚きました。まさか、紬ちゃんの親戚の方と対面するとは……」

 

「ふふ、そうか……あの子にもちゃんと、お友達がいたんだな」

 

姉を失い、両親に疎まれ、孤独だと思われていた紬が、自身の知らないところで友達を作っていた。

 

その事が分かった嬉しさから、理祈は目元にうっすらと涙を浮かばせていく。

 

「こうして出会えたのも、きっと何かのご縁って奴だな……修平君。もし、今後紬ちゃんの行方について何か分かった事があったら、すぐに俺の方まで伝えて欲しい

 

「はい、もちろんです……!」

 

行方不明になった紬を心配している者同士、心が通じ合ったのか。

 

修平と理祈は互いに頷くと、しっかりと握手を交わした。

 

何としてでも、紬ちゃんを見つけ出してみせよう。

 

そんな気持ちを胸に抱きながら。

 

しかし……。

 

「……」

 

理祈が食べ終えたホットケーキの皿を洗いながら、2人の会話を静かに聞いていた四葉。

 

紬を見つけ出す事を誓い合った修平と理祈の2人とは違い、彼女だけは、全く違う結論に至っていた。

 

(その小林紬という少女……私の推測が正しければ……)

 

薄々だが、四葉は既に察していた。

 

小林紬という少女は既に、この世界の何処にもいないという事を。

 

何故、そういった結論に至ったのか。

 

紬が行方不明になった原因に、心当たりがあり過ぎたからだ。

 

(間違いない……その少女の件、デザグラが関わっている)

 

四葉は思い起こす。

 

今からおよそ1週間前にあった、デザイアグランプリでのやり取りを。

 

 

『皆さん、お疲れ様でした』

 

デザイアグランプリ第1回戦【魔法使いゲーム】が無事に終わり、デザイア神殿のロビーに集められたプレイヤー達。

 

彼らの前で、ツムリの口から直々に魔法使いゲームの終了が告げられた。

 

『魔導師ジャマトの全滅が確認されたため、魔法使いゲームはこれにて終了。この場にいる皆さんが、2回戦進出となります』

 

『この場に……』

 

夢乃が周囲を見渡す。

 

現在生き残っているプレイヤーは、夢乃を含めてもたったの8人。

 

それ以外のプレイヤーは全て、ジャマトにやられて退場してしまっている。

 

その退場者の中には、草太や瑞希、そして透も……。

 

『あの、ツムリさん』

 

夢乃はツムリに問いかける。

 

退場者について、彼女はツムリに聞きたい事があった。

 

『ジャマトにやられたプレイヤーは退場して、この世界からいなくなるんでしたよね』

 

『はい、その通りです』

 

『それなら……退場した人達は一体、何処に行ってしまったんですか?』

 

夢乃の問いかけに、先程までは微笑んでいたのが、切なげな表情へと変わるツムリ。

 

それから少し遅れて、ツムリは夢乃の問いかけに答えるべく口を開いた。

 

『それは、ジャマトにしかわかりません』

 

『ジャマトにしか……?』

 

『はい。残念ながら、私から言えるのはそれだけです』

 

そう言って、ツムリはクルリと背を向け、ロビーから立ち去って行く。

 

その会話を聞いていたのか、四葉と英寿が夢乃に語りかける。

 

『1回戦が終わった後は、いつも大体これぐらいの人数だ。それはもう、今に始まった事ではない』

 

『ここからまた、人数は更に減っていく事になる。そして、最終戦で勝利した1人だけがデザ神となり、理想の世界を叶えられる。ここにいる俺達全員が、ライバル同士って事だ』

 

『ッ……ですが……』

 

2人からそう告げられても、夢乃はまだ納得が行っていない様子で、拳を強く握り締めていた。

 

それに見て、四葉は小さく溜め息をついてから会話を続ける。

 

『割り切れないか? この現状が』

 

『……そんな簡単に、割り切れる訳がないじゃないですか』

 

『言ったはずだ。貴様が納得できるかどうかは関係なく、ゲームは続いていくと』

 

夢乃の心情を察してもなお、バッサリと冷徹に切り捨てる四葉。

 

しかし、四葉の台詞はそこで終わりではなく、「だが」と彼女は続けて口にした。

 

『貴様の気持ちも、決して分からん訳ではない』

 

『え?』

 

四葉の口から出た言葉に、顔を上げた夢乃が四葉に視線を向ける。

 

冷徹な雰囲気を醸し出している彼女の口から、そのような言葉が出るとは思わなかったのか、夢乃は少し驚いた表情をしていた。

 

『怒りを抱いた相手があっさりいなくなり、やり場のない怒りだけが心の内に残る……そんな状況は、私も過去に経験した事がある』

 

『あなたも、ですか……?』

 

『あぁ……だが、いくら燻っていようが、それだけでは何も始まらない』

 

夢乃の肩に手を置き、四葉は彼女と視線を合わせる。

 

普段は鋭い目付きを浮かべ、苛烈そうな雰囲気を醸し出している四葉が。

 

この時だけは、そういった雰囲気を全く見せず、落ち着きのある優しげな表情を浮かべていた。

 

『貴様が今するべき事は何だ? 怒りや悲しみに振り回されるのではなく、次に進むための行動を取るべきだろう』

 

『次に、進むための行動……』

 

『そうだ。デザイアグランプリを勝ち上がってデザ神となり、自身の理想の世界を手に入れる事こそが、貴様が今するべき事。ただグチグチと文句を言い続けるだけの愚か者に、叶えられる理想の世界はない』

 

それだけ告げると、四葉は夢乃の肩から手を離し、ロビーを後にしていく。

 

四葉が去った後、それに続くように英寿や火炎、他のプレイヤー達も順番にロビーから立ち去って行く中。

 

夢乃はしばらくその場に留まり、四葉から告げられた言葉を噛み締めていた。

 

『……』

 

その様子を、彼女の後ろに立っていた大智が、無言で見ていた事にも気付かないまま。

 

 

(―――ジャマトにしかわからない、か)

 

修平と理祈が握手を交わしているのを眺めながら、四葉はツムリが告げていた言葉を思い出していた。

 

ジャマトにやられた事で、この世界から退場してしまったプレイヤー達。

 

普通なら、跡形もなく消滅した事から、死んだと考えてしまうのが普通だろう。

 

しかし、ツムリは確かに言っていた。

 

ジャマトにしかわかりません、と。

 

それはつまり、退場者達はただ消滅するだけで終わった訳ではない……という事になる。

 

(彼女の言っていた言葉の真意は……考えたところで答えは出ないか)

 

どちらにせよ、現時点でわかっている事は1つ。

 

現在、自身の目の前で1人の少女を見つけ出す事を決意している2人。

 

彼らの願いは、恐らく叶う事はないだろうという事だ。

 

その事実を、四葉は2人に伝える事はできない。

 

「もどかしい話だな……」

 

「? 店長、何か言いましたか?」

 

「いや、何でもない」

 

ナイフとフォークを洗う四葉の様子に、不思議そうに首を傾げる修平。

 

CLOVERの店内は、今日も穏やかな雰囲気に包まれ、ゆったりとした時間が過ぎ去っていく。

 

 

場所は変わり、とある大きな図書館。

 

多くの本棚が並び、多くの人々が利用するその図書館の、一番奥にある本棚。

 

その本棚の前で、1人の青年が、自分が読むための本を物色していた。

 

五十鈴大智である。

 

彼は本棚から適当な本を手に取った後、それをパラパラと捲りながら、その場で立ち読みを始める。

 

大智が今手に取って読んでいる本は、どうやら医療系の本のようだ。

 

難解そうな医学用語がビッシリと敷き詰められた文章を、スラスラと読み進めていく大智。

 

そして数分ほどして、大智はパタンッと本を閉じて本棚にしまい、また別の本を手に取っては読み進めていく。

 

それを繰り返している間、大智の中では1つの小さな疑問が、頭の中から離れずにいた。

 

(リザ……あの男は一体、何を考えている……?)

 

それは仮面ライダーリザこと、石村火炎についてだった。

 

何故、大智がここまで彼の事を気にしているのか。

 

それは、魔法使いゲームが繰り広げられる中で火炎が大智に告げた、1つの発言に理由があった。

 

 

『ここは1つ、俺達で手を組んでみないか? ナッジスパロウ殿』

 

魔法使いゲーム。

 

その第2ウェーブの戦いの最中、リザがナッジスパロウに向けて言い放った事。

 

それは、自分達2人で協力関係を結ばないかという提案だった。

 

『あのジャマトという怪物達を前に、手慣れているかのような戦い方……それを見て俺は、お前さんもこのデザイアグランプリにおいては、かなりの実力者だと考えた』

 

『……ギーツやラミアには声をかけなかったのかい?』

 

『もちろん、最初はその2人にも声をかけるかどうかも考えたが、それはやめにした。俺の中の勘が、俺にこう言ったのさ。あの2人には断られるだろうとね』

 

『それで、僕に声をかけてみたという事か』

 

『そういう事になるな。さて、どうだい? お前さんの返事は』

 

リザの提案に、ナッジスパロウは右手の指先で頭に触れながら、数十秒ほど思考を奔らせる。

 

やがて、ナッジスパロウは答えを出したのか、ゆっくりと口を開いた。

 

『君の出した問いに答えよう』

 

『ほう』

 

『僕の答えは……ノーだ』

 

『……理由を聞いてみても良いか?』

 

断られる可能性も考えていたのか。

 

特に驚く様子を見せないリザに対し、ナッジスパロウは右手で自身の顎に触れながら、その理由を語る。

 

『見たところ、君がデザイアグランプリに参加するのは今回が初……つまり、君の実力は未知数だ』

 

『ふむ』

 

『君が果たして、僕らに並ぶ実力者と成り得るのか? それとも、今回のゲームであっさり負けて終わるのか? 碌にデータも集まっていないこの状況で、そう簡単に首を縦に振る事はできない……という事さ』

 

ナッジスパロウが断った理由は至って単純。

 

リザと手を組む事に対する、明確なメリットが見出だせないからだ。

 

デザイアグランプリに複数回の参加経験があるナッジスパロウと、今回がデザイアグランプリ初参加となるリザ。

 

どれほどの実力を持っているのかもわかっていない相手と組むのは、相応のリスクがある。

 

とてもではないが、ナッジスパロウはリザの提案を受け入れる気にはなれなかった。

 

『それもそうか……しかし、残念だよ。俺とお前さんなら、きっと仲良くできると思ったんだが』

 

『一応聞いておこうか。何故そう思ったのかな?』

 

『そう難しい話ではない。お前さんは、ギーツやラミアとは違う点があると踏んだからさ』

 

『違う点?』

 

『第1ウェーブの時だ……お前さん、ジャマトに襲われている他のプレイヤー達を、助けようとすらしていなかっただろう?』

 

その言葉に、ナッジスパロウは僅かにだがピクリと反応し、それに気付いたリザがフッと笑う。

 

そう、リザは知っているのだ。

 

最初の第1ウェーブで、初参加のプレイヤー達が何もできないまま魔導師ジャマト達に襲われていた時。

 

その光景を見ていた大智が、助けようとする素振りすら見せていなかったところを。

 

『その時の様子、そしてお前さんとギーツとラミアの会話に聞き耳を立てて、俺は推測したのさ。自分が理想とする世界を叶えるためなら、そのための犠牲は厭わない……お前さんがそういう人間である事をな』

 

『……』

 

『だがまぁ、フラれてしまったのなら仕方ない。この場は素直に引き下がるとしよう』

 

あっさりと引き下がり、再び魔導師ジャマト達の討伐に戻っていくリザ。

 

リザが引き下がった後も、ナッジスパロウはそんな彼の後ろ姿を、ただ静かに睨み続けたのだった。

 

 

(純粋に高く評価されているのか、それとも単に舐められているのか……この際、それはどっちでも構わない)

 

席に座り、読み終えた本をテーブルの上に積み重ねていきながら、大智は今後の事を考える。

 

火炎から共闘を提案された際、彼はそれを一度は断った。

 

しかし今後の事を考えれば、他のプレイヤーと何らかの理由で、協力関係を結ばなければならないような事態に発展する可能性もある。

 

もしそうなった場合、誰と手を組むべきか。

 

誰を利用するべきか。

 

誰から蹴落とすべきか。

 

それらを完璧に見極められたプレイヤーこそが、デザ神の座に近付く事ができる。

 

それが大智の考えだった。

 

(いずれにせよ、最後に勝つのはこの僕だ)

 

五十鈴大智を突き動かす物、それは知識欲。

 

彼にとっては、知識こそが最高の財産である。

 

知りたい。

 

学びたい。

 

己の糧にしたい。

 

ありとあらゆる知識を求め続けた大智は、いつしか“クイズ王”という肩書きを手に入れるほど、頭脳明晰な人間となった。

 

だが、まだ足りない。

 

もっともっと、知りたい事はたくさんある。

 

あらゆる知識を身に着けてもなお、大智の知識欲は収まるところを知らない。

 

そんな彼が、今一番知りたがっている物。

 

それは、単純な知識だけでは理解する事ができない物。

 

実際に手に入れる事ができるのであれば、そのための手段は問わない。

 

それが、五十鈴大智という男なのだ。

 

「必ず手に入れてみせるよ……全人類の記憶を」

 

また新たに読み終えた本を閉じ、大智は顔を上げる。

 

眼鏡のレンズから見えるその瞳には、狂気にも似た何かを宿しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




仮面ライダーギーツ!

ツムリ「デザイアグランプリ第2回戦、始まります!」

英寿「俺の知らないゲームか」

夢乃「ジャマトが復活した!? 何で!?」

大智「必ず何か、攻略法はあるはずだ」

四葉「どのような敵であろうと、全て捻じ伏せるのみ……!!」
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