仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム   作:ロンギヌス

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どうも皆さん、ロンギヌスです。
今年も『仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム』をよろしくお願い致します。

さて、今年初の投稿となります第26話。今回は次の第3回戦までの繋ぎのお話となっております。

それではどうぞ。

活動報告ではオリジナルライダー募集がまだまだ続いておりますので、そちらもぜひ。











・主なプレイヤー

瑠璃川四葉/仮面ライダーラミア
今井透/仮面ライダートゲッチ
石村火炎/仮面ライダーリザ
猿山信吾/仮面ライダーヒヒ
朝霞夢乃/仮面ライダーツッキー
五十鈴大智/仮面ライダーナッジスパロウ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ

参加人数:32名

現在生き残っている人数:6名














※追記※

後書きにアンケートを追加しました。







第26話:変わったもの、変わらないもの

デザイアグランプリ第2回戦が終わってから、およそ1週間。

 

突然現れたジャマトが人を襲っても。

 

ライダー同士が鎬を削っていても。

 

世界は変わらず、普段通りの日常が過ぎていく。

 

(―――本当、不思議な感覚ね)

 

デザイアグランプリが行われていない間、夢乃は普段通りの学生生活を送っていた。

 

教室では教師の授業を受け、体育館では体育の授業を行い、食堂では昼食を摂り、その日の授業が全て終われば部活が始まる。

 

それら全て、普段と何も変わらない。

 

しかし、夢乃は知っている。

 

何も変わっていないように見えて、実際は以前の日常と違う点も存在しているのだという事を。

 

神薙草太。

 

谷瑞希。

 

そして今井透。

 

デザイアグランプリのゲーム中、自分の知らないところで退場してしまった者達。

 

彼らはもう、この世界には存在しない。

 

だというのに、世界はまるで何事もなかったかのように、普段通りの日常が続いている。

 

夢乃からすれば、それが何処か不気味に思えて仕方なかった。

 

「はぁ……」

 

どうしても暗い気持ちのまま、夢乃はその日の全ての授業が終わる。

 

ホームルームも終わり、下校する生徒もいれば、部活に向かう生徒もいる中、彼女も部活に向かうべく動き始めていた。

 

「夢っち、今日もバスケ部んとこ行くの?」

 

「うん。それと奏斗にも一応、声はかけてみようと思ってる」

 

同じ教室のクラスメイトである女子生徒―――“大久保(おおくぼ)涼音(すずね)”にそう答えた後、夢乃は同じ教室にいた、1人のクラスメイトの少年の下まで向かおうとする。

 

しかし、その少年は夢乃の顔を見た途端、露骨に嫌そうな表情で小さく舌打ちしてみせた。

 

「チッ……いい加減しつこいよ、お前」

 

「お前って言わない、ちゃんと夢乃って呼んで。今日ぐらい部活に顔出してみたらどうなの?」

 

「あのさぁ、何度も言わせんなよ。もうどうでも良いって言ってんだろ、バスケなんか」

 

「あ、ちょっ……奏斗!」

 

夢乃の呼び止めようとする声を無視し、その少年―――“墨田(すみだ)奏斗(かなと)”は教科書やノートなどをカバンに詰め込んだ後、さっさと教室から出て行ってしまった。

 

「あぁもう!」と不機嫌そうに頭を掻く夢乃に、涼音は苦笑いを浮かべながら語りかけた。

 

「やめときなって夢っち。あんな根暗男、放っとけば良いのよ放っとけば」

 

「そういう訳にはいかないでしょ。あと涼音、そういう呼び方もやめて……アイツだって、好きであぁなったんじゃないんだから」

 

 

墨田奏斗。

 

彼こそが夢乃の幼馴染であり、同時に彼女が助けてあげたいと思っている少年だった。

 

かつてバスケ部に所属していた奏斗は、他の部員達とのチームワークを駆使するくらいには、人付き合いが良い方だった。

 

全国大会での優勝を目指すくらい、当時の彼は情熱的だった。

 

夢乃はマネージャーとして、そんな彼を心から応援し、全力でサポートし続けてきた。

 

あれだけ頑張っているのだから、きっと彼の夢は叶うだろうと。

 

そう信じて疑わなかった……ある悲劇が起きるまでは。

 

『奏斗、大丈夫!? しっかりして!! 奏斗ッ!!』

 

『ぐっ……うぅ……ッ!!』

 

ある日、奏斗に突然襲い掛かって来た交通事故。

 

その事故を目の前で見た夢乃は、思わず自分の目を疑った。

 

こんな悲劇が起きるなんて、想像もしていなかった。

 

当然、夢乃はすぐに救急車を呼び、病院に運ばれた奏斗は医師達による治療を受けた。

 

結果として、命に別条はなかった奏斗だったが……医師からは、残酷過ぎる現実を突きつけられる事となった。

 

『右足の傷が深く、無理に動かすと取り返しのつかない事になってしまいます。普通の日常生活を送るだけであれば問題はないでしょうが、これまでのようにスポーツをやる事は……』

 

『ッ……そんな……』

 

奏斗が右足に負った傷。

 

それが、奏斗の選手生命を完全に絶ってしまったのだ。

 

バスケが大好きな奏斗にとっては、あまりにも絶望的過ぎる現実だった。

 

その出来事を境に……奏斗は大きく変わってしまった。

 

『ねぇ奏斗、本当に諦めるつもりなの!? リハビリなら、私がいくらでも手伝うから―――』

 

『うるさい!! もうどうでも良いんだよ全部!! 放っといてくれ!!』

 

自暴自棄になった奏斗は、大好きだったバスケをやめてしまい、夢乃の事も突き放すようになった。

 

バスケができない日常なんて、自分にとっては何の価値もないのだと、そう思い込むようになってしまったのである。

 

それでも、夢乃はそんな彼を放っておく事はできなかった。

 

奏斗に絶望したままでいて欲しくない。

 

バスケを楽しんでいた頃の奏斗を取り戻したい。

 

そんな思いを胸に抱き続けた夢乃だったが、世界はいつだって残酷である。

 

どれだけ考えたところで、すっかりやさぐれてしまった今の奏斗を説得する術など、思いつくはずもなかった。

 

だからこそ……。

 

『おめでとうございます』

 

『厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました』

 

『今日からあなたは、仮面ライダーです!』

 

ツムリから告げられたその言葉は、今の夢乃にとって、何よりも待ち望んでいた物だった。

 

 

「―――にしても、アンタも本当に熱心よねぇ」

 

体育館。

 

バスケ部の部員達がコートで練習している間に、部員達に渡すための飲み物やタオルなどの準備を進めていた夢乃と涼音。

 

飲み物の入った籠を運びながら、涼音は何処か感心した様子で夢乃に告げる。

 

「熱心って、何が?」

 

「墨田の事。昔からの幼馴染だからって言っても、あそこまで陰気になった奴をよくそこまで気にかけられるよね。事情が事情だから仕方ないとはいえ、アタシなら絶対無理だわ」

 

「当然でしょ。アイツだって、このバスケ部の一員なんだから」

 

「けどさぁ、ここ最近は顔すら出しに来ないじゃん。あれはもうバスケに対する情熱が完全になくなってんじゃない?」

 

「……それでも、私は簡単には諦められない」

 

夢乃の脳裏に思い浮かぶ、かつてバスケをしていた頃の奏斗。

 

大好きなバスケに打ち込んでいた頃の彼は、本当に楽しそうに笑っていた。

 

そんな彼の笑顔を知っているからこそ、夢乃は奏斗の事を、簡単に見捨てるような真似はできなかった。

 

「彼にもう一度、前を向いて歩いて欲しいだけなの。もう一度、彼が心から笑っている顔を見たい。だから……」

 

「ふぅ~ん……?」

 

その言葉を聞いて、ニヤニヤと口角を上げる涼音。

 

その表情を見た夢乃は、彼女がそんな顔をしている理由がわからなかった。

 

「ちょっと、何よその顔?」

 

「いんやぁ? ただ夢っちってさぁ、もしかして奏斗の事が好きなんじゃないのかって思ってさぁ?」

 

「……はぁっ!?」

 

涼音の口から飛び出した発言に、夢乃は数秒ほど遅れてから頬が赤くなる。

 

「ち、ちちち、違うわよ!? わ、私と奏斗は別にそ、そんなんじゃないってば!!」

 

「はいはい、わかってるわかってる。安心しなって、周りには言いふらさないであげるからさぁ」

 

「違うって言ってるでしょ!? 私と奏斗はただの幼馴染で……」

 

「いやぁ、それにしても青春だねぇ。アンタが墨田に対してそんなお熱だったとは思わんかったわ」

 

「だから人の話を聞きなさいってばぁ!!」

 

そんな夢乃の悲鳴を余所に、どこか楽しそうに笑う涼音。

 

体育館にて、2人がそんなやり取りをしていたその一方……。

 

 

(―――くっだらない)

 

本人の知らないところで、夢乃と涼音の会話の中心人物にされていた奏斗。

 

バスケ部に顔を出さず、1人ダラダラと下校していた彼は、周囲に見渡しながら不快そうな感情を露わにしていた。

 

友達同士でお喋りをしながら歩いている中学生の女子達。

 

手を繋ぎながら歩いている夫婦とその子供。

 

ティッシュ配りのバイトを熱心に頑張っている青年。

 

そして、元気にランニングをしている中年男性が横を通り過ぎて行くのを見て、彼は苛立ちのあまり小さく舌打ちをする。

 

(今ある日常が、この先もずっと変わらないと信じ込んでるのか……)

 

そんな事、絶対にあり得ないというのに。

 

交通事故に遭い、右足に傷を負ったその時から。

 

奏斗から見た世界は、以前とは全くの別物と化していた。

 

平穏な人生を謳歌している人達が、憎たらしく見えて来る。

 

目に映る物全てを、壊してしまいたくなる。

 

夢乃の知らないところで、奏斗が胸に抱いた絶望は、いつからか嫉妬の感情に変わり、彼の心の中で大きな歪みが生まれようとしていた。

 

(あぁムカつく……ムカつくなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何もかも、全部壊れてしまえば良いのに……ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の中に芽生えた破滅願望。

 

 

 

 

 

 

それが後々、ある人物に対して牙を剥く事になるのだが……それはまだしばらく先のお話。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、喫茶店【CLOVER】。

 

この日も四葉は変わらず、喫茶店の店長としての仕事に勤しんでいた。

 

「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしています」

 

いつも通り客を見送った後、四葉はテーブル席から回収した食器を洗っていく。

 

手慣れた動きで皿やフォーク、ティーカップなど全てを綺麗に洗い終えた後、それらを食器棚に片付けた彼女は、自身が愛読している小説を取り出し、静かに読み始めた。

 

今は店の中に彼女しかおらず、のんびり読書ができる程度には余裕があった。

 

しかし、その頭の中では、全く違う事を考えていた。

 

(2回戦も終わって、残るは3回戦と最終戦……最後まで勝ち残れば、デザ神になる事ができる……)

 

そして、その最大の障害となり得る人物が1人。

 

言うまでもない、浮世英寿である。

 

これまでのデザイアグランプリで連勝を続けてきている彼は、デザ神の座を目指している四葉からすれば、忌々しい事この上ない。

 

何としてでも、彼には脱落して貰わなければならない。

 

(そうするにはまず、奴に勢い付かせない事が重要だな……)

 

何処から湧いて来ているのかも分からない英寿の自信を、徹底的に折る必要がある。

 

そのために、既にヒヒとクダールの脱落が決まり切っていた2回戦では、わざわざ反則染みた手段を使ってまで高得点を稼ぎ、スコアで英寿と火炎のデュオを上回ってみせたのだから。

 

(他のプレイヤー達も油断はできんが、目下の問題は浮世英寿だ。奴の強さを乗り越えてようやく、私はデザ神となれる)

 

自分は誰にも負ける訳にはいかない。

 

自分には何としてでも、叶えたい理想の世界があるのだから。

 

フゥと一息ついた後、ページの途中に栞を挟んでから小説を閉じた四葉は、気分転換のためにコーヒーを淹れようとした……その時。

 

カランカランと、入り口の扉のベルが鳴る音がした。

 

それを聞いた四葉は即座に表情を切り替え、喫茶店の店長として客を迎えた。

 

「いらっしゃいませ。1名様で、す……か……」

 

言いかけたところで、四葉の動きがピシリと固まった。

 

その理由は何故か?

 

答えは簡単。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、ここが先輩の店か。なかなかお洒落だな」

 

 

 

 

 

 

四葉が一番敵意を抱いている男―――浮世英寿が、堂々と入店してきたからである。

 

「な、な……なん……ッ!?」

 

四葉は思わず、手に持っていたカップを落としかけた。

 

幸いにもカップは落とさずに済んだが、それは今はどうでも良い事。

 

何故この男がここにいる!?

 

動揺を隠せないでいる四葉に対し、英寿はいつもの飄々とした笑みで右手を振った。

 

「あぁすまない、驚かせてしまったか?」

 

「ッ……!!」

 

ニヤニヤ笑いながら、四葉の確認を得る前にカウンター席に座る英寿。

 

この時、四葉はとある衝動に駆られていた。

 

今すぐこの男を摘まみ出したい。

 

その気持ちでいっぱいな四葉だったが……ハッと冷静さを取り戻した四葉は「こほん」と小さく咳き込んだ後、穏やかな笑みを浮かべて接客を開始した。

 

「……いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「そうだな……玉子ハムサンドのセット、それからコーヒーをブラックで1杯貰おうか」

 

「畏まりました」

 

英寿の注文を受け、四葉は彼の前に水の入ったコップとおしぼりを渡した後、すぐに準備を開始する。

 

彼女が調理にかかっている間、英寿は笑みを浮かべながら、彼女の様子を眺め続けていた。

 

(何がおかしいんだこの男……ッ!!)

 

カウンターテーブルに肘を突いたまま、四葉をジッと眺めている英寿。

 

彼が笑っている顔を見るたびに、四葉は苛立つ気持ちを抑えなければならなかった。

 

四葉がそんな苦労を強いられている中、英寿は笑みを崩さぬまま口を開いた。

 

「なかなか良い店だな先輩……いや、店長。落ち着いた雰囲気だし、何よりもコーヒーの香りが良い。美味いサンドイッチが食べられそうな予感がするよ」

 

「お褒めに預かり、光栄です」

 

苛立ちを必死に抑えながらも、四葉はカウンター奥のキッチンに向かい、調理を進めていく。

 

その際、さりげなく横目でチラッと英寿の様子を見た彼女は、彼に聞こえない程度の声量で小さく舌打ちした。

 

(この男、一体何が目的だ……わざわざ私の店に現れるなど……)

 

デザイアグランプリのミッション以外で、極力顔も合わせたくないというのに。

 

まさか、また何か妙な事を企んでいるのではないか。

 

そんな四葉の心情に気付いているのか否か、英寿はおしぼりで両手を拭きながら再度口を開いた。

 

「知らなかったよ。まさかこんな所に、こんなお洒落な喫茶店があったなんてね」

 

貴様には知られたくなかったがな。

 

間違ってもそんな言葉は口に出さず、四葉はただひたすら調理に集中する。

 

頼むからこれ以上、気が散るような発言はしないで貰いたい。

 

そして、できる事ならさっさと出て行って貰いたい。

 

四葉はとにかく、早く英寿にこの場から消え失せて欲しいという気持ちでいっぱいだった。

 

「おまけにこんな綺麗な店長さんがいるなんて、本当に良い店だな。今日から常連になろうかな?」

 

勘弁してくれ。

 

貴様と何度も顔を合わせるなど御免だ。

 

そう考える四葉だったが、そこはプロフェッショナル。

 

意地でも四葉は営業スマイルを徹底し続けた。

 

「あと店長。どうせ俺達しかいないんだ。しんどいなら無理に店長として振舞わなくても良いんだぞ?」

 

張り倒してやろうか貴様

 

……英寿の口から、「普段通りで構わない」という旨の提案をされるまでは。

 

 

「うん、美味いな。コーヒーとのバランスも良い」

 

皿の上に乗った玉子ハムサンドを手に取り、美味しそうに咀嚼する英寿。

 

コーヒーの香りも楽しんでいる彼に、四葉は敵意を隠そうともしていなかった。

 

「一体どういうつもりだ貴様? 私の店にまで現れるなど……」

 

「ははっ。随分嫌われてるみたいだな、俺」

 

四葉にどれだけ睨まれようと、英寿はまるで堪えている様子がない。

 

むしろ、四葉が睨んで来るのを見て楽しんでいるようだった。

 

「アンタが不安に思うような事は考えちゃいないさ。ここにはただ、飯を食べに来ただけだ」

 

「不安? 馬鹿を言うな。私が不安など抱くものか」

 

「じゃあ俺の事は気にしなくて良いよな? せっかくの古株同士だ、たまにはお喋りでもしようじゃないか」

 

「……変わらないな、貴様の憎たらしさは」

 

コーヒーを口にしている英寿に対し、四葉は視線を決して逸らさない。

 

彼女からすれば、とにかく不快だった。

 

デザイアグランプリの2回戦で、自分が英寿のスコアを上回ってやったというのに。

 

それでもなお、英寿は決して余裕そうな態度を崩そうとしない。

 

その態度が、四葉は心の底から気に入らなかった。

 

「そういえば知ってるか?」

 

英寿は自身のスマホを取り出し、画面を四葉に見せた。

 

画面に映っていたのは、四葉にとっても見覚えのある人物だった。

 

「この男……猿山信吾か」

 

「あぁ。ヒヒの奴、元は実業家の家系の出身だったらしい」

 

スマホに映っていたのは、デザイアグランプリの2回戦で脱落したヒヒこと、猿山信吾の写真だった。

 

その写真はネットニュースによる物であり、彼が暴行事件を起こして警察官に逮捕されたというニュースが、そこには詳しく書かれていた。

 

「その昔。親の権力を盾に散々悪さをした結果、実家を追い出されたんだと」

 

「で、自分を追い出した実家に復讐でも目論んでいたと? その結果、今は復讐するどころか警察のお世話になっていると……実に下らない話だ」

 

信吾が何を願っていたのか。

 

信吾が現在どうしているのか。

 

そんな事は、四葉にとっては非常にどうでも良い話である。

 

既に脱落したプレイヤーのその後など、彼女は知る由もないし、そもそも知ろうという気持ちにもならなかった。

 

「貴様もそうだろう? 浮世英寿」

 

「何がだ?」

 

「とぼけるな。貴様とて、脱落したプレイヤーの事をいちいち気にかけたりはせんだろう? 何度もデザ神になるくらいだからなぁ。貴様のせいで泣きを見たライダーは数知れずだ」

 

英寿の隣まで移動し、カウンターテーブルに右手を置く四葉。

 

サンドイッチを頬張っている英寿を睨みつけながら、彼女は彼の耳元で囁くように言い放つ。

 

「貴様と関わるたびに思い出すよ……貴様よりも前に(・・・・・・・)連勝を続けていた男の事を」

 

「……」

 

「これ以上、貴様らに踏み躙られるのはたくさんだ……あの男(・・・)にも貴様にも、もうこれ以上負けてなるものか……ッ!!」

 

「……俺を誰と重ねて見ているのかは知らないが」

 

口の中のサンドイッチを飲み込んだ英寿は、コーヒーを口にしてから四葉と目線を合わせる。

 

その表情は今もなお、余裕に満ちた笑みを徹底していた。

 

「負けないよ。次にデザ神になるのも、この俺だ」

 

その言葉に、四葉の睨む目付きはまた更に鋭くなる。

 

店内の空気はどんどん重くなっていく一方であり、常人がこの場にいれば間違いなく萎縮していた事だろう。

 

他に客や店員がいなかった事が、この時ばかりは不幸中の幸いだった。

 

 

「はぁ……」

 

喫茶店【CLOVER】が険悪な空気になっている事など露知らず。

 

若槻修平は盛大に溜め息をつきながら、街中をトボトボと歩いていた。

 

彼がここまで沈んだ気分でいるのには理由がある。

 

「大学の知り合いにも色々聞いてみたが……収穫ゼロとはなぁ」

 

1枚の写真を手に持ちながら、修平は頭を抱えた。

 

写真に写っている少女―――小林紬について、修平は自身が通う大学の知人達にも何か知っている事はないか、一通り聞いて回っていた。

 

結果として、収穫はゼロ。

 

何の情報も得られないまま終わってしまい、修平は意気消沈していた。

 

「いやいや、おかしいだろ……手がかり1つ見つからないってどうなってんだよ……?」

 

何か1つか2つくらい、手がかりになりそうな情報があったって良いはずなのに。

 

ここまで情報が得られないと、かえって不気味に思えてきてしまう。

 

「栗山さん、何か情報手に入ったりしてないかなぁ……」

 

紬の伯父である栗山理祈。

 

姪っ子を捜すため、修平と協力関係を結んでいる彼なら、何か情報を得られているのではないか。

 

駄目元で電話してみようかと、修平がスマホを取り出した時だった。

 

「……ん?」

 

修平の視線が、ある人物の姿を捉えた。

 

それは、とあるバス停のすぐ近くに立てられている掲示板の前に立っている1人の青年。

 

遅めの昼飯を買ったばかりだろうか。

 

黒いマスクを着けたその茶髪の青年は、コンビニ弁当と炭酸飲料のボトルが入ったビニール袋を引っ提げた状態で、掲示板に貼られている紬の捜索願をジッと眺め続けていた。

 

「あ、あの……」

 

「!」

 

修平に声をかけられ、気付いたマスクの青年が振り向く。

 

マスクの青年は左目が前髪で隠れており、その右目は修平の事をまっすぐ捉えている。

 

一瞬、不気味に思った修平だったが、意を決して声をかけた。

 

「あなたも、この娘を捜してるんですか?」

 

「……君、誰?」

 

マスクの青年の声は低く、何処か冷たさを感じさせる雰囲気である。

 

しかし怯んではいられないと、修平は自分を鼓舞しながらた。

 

「あ、あぁいえ。この写真に写っている娘、俺の妹の友達でして。知り合いと協力しながら、ずっと捜してるんです」

 

「ふぅん……」

 

「この娘について、何か知っている事はありませんか? もちろん、知ってたらで良いんで」

 

「……さぁ。俺は何も知らないよ」

 

「ッ……そう、ですか」

 

マスクの青年が告げた答えに、修平は肩を落とす。

 

そんな彼の前で、マスクの青年は凄くどうでも良さそうな様子で話を続けた。

 

「ずっと捜してて見つからないんならさぁ。何か事件にでも巻き込まれたんじゃないの? 俺は知らないけど」

 

「事件……ッ」

 

その台詞を聞いて、修平は頭の中で悪い想像をしてしまう。

 

知らないところで事件に巻き込まれた紬が、実はもうこの世にいなかったとしたら?

 

それとも、紬自身が隠れて犯罪にでも加担していた可能性も?

 

最悪の可能性ばかり思い浮かんでしまい、修平は頭を抱える事しかできない。

 

「クソ……一体、あの娘の身に何があったってんだよ……ッ!」

 

「俺に言われても知らないって。俺も俺で忙しいからさ、もう行って良いよね?」

 

「あ、ちょっ……」

 

修平のリアクションを煩わしいと思ったのか、マスクの青年は冷たく言い放つと、さっさとその場から立ち去って行く。

 

呼び止めようとする修平の声にも全く振り返る事なく、彼の後ろ姿はどんどん遠ざかって行ってしまった。

 

「ッ……すっごい感じの悪い人だな、今の人」

 

人が事件に巻き込まれているかもしれないというのに。

 

まるで知った事ではないと言わんばかりの態度を見せたマスクの青年に、修平は少しだけ苛立ちを覚えてしまっていた。

 

 

「あ~あ、全く。無駄に時間取っちゃった」

 

そのマスクの青年はと言うと。

 

彼が住んでいると思われる一軒家に帰宅し、自室に戻った彼はビニール袋の中から、買ったばかりのコンビニ弁当と炭酸飲料のボトルを取り出していた。

 

彼が今いる部屋には、パソコンや大きなテレビ、マイクやヘッドセット、カメラにキャプチャーボード、そしてゲーム機などの様々な機材が置かれている。

 

加えて、部屋全体がしっかりとした防音対策がなされており、どれだけ騒がしくしても音が外に漏れ出す事はない。

 

まさにゲーム実況に最適なその部屋の中で、マスクの青年はある事を不思議に感じていた。

 

(俺、何であのポスターを眺めてたんだろ……?)

 

それは先程まで、彼自身が眺めていた紬の捜索願についてだ。

 

自分にとって、その少女は赤の他人であるはず。

 

なのに、そのポスターを何故かジッと眺めている自分がいた。

 

マスクの青年は、自分がそのような行動を取った理由が、全くわかっていなかった。

 

ただ自然と、ポスターに映っていた少女の顔写真に、視線が釘付けになっていたのだ。

 

「……ほんと、馬鹿馬鹿しい」

 

彼は考える事をやめた。

 

何処の誰が家出をしていようと、自分には関係ない。

 

そう自分に言い聞かせた後、青年は着けていたマスクを外し、遅めの昼食を摂るべくコンビニ弁当の蓋を開ける。

 

割り箸を割り、ささっとコンビニ弁当を食べ終えた彼は、ボトルの炭酸飲料を一口飲んだ後、すぐに動画の録画準備に取り掛かり始めた。

 

自分はただ、気ままにゲーム実況をするだけ。

 

そんな人生を送る他ないのだと考えながら……今日もまた、彼はゲーム実況を開始するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうも皆さん、おはこんばんちわ。ここ最近やたら肩凝りに悩まされているイサミンです。本日は現在実況中であるゾンビハザード8、その続きから始めて行こうと思います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




仮面ライダーギーツ!

ツムリ「第3回戦は、かくれんぼゲーム!」

英寿「隠れながらミッションを達成しろって事か」

四葉「あのバックルさえ手に入れば……」

哲夫「な、何だよあのジャマト……強過ぎるだろ……ッ!!」

火炎「初めてだよ。こんな命懸けのかくれんぼは」
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