仮面ライダーギーツエクストラ 追憶:知られざるゲーム   作:ロンギヌス

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さぁ、第7話の更新です。

今回は前回以上に文字数が多いですが、今後もこんな事がちょくちょくあると思いますのでご了承下さいませ。

ちなみにプレイヤー達が所持しているミルク缶ですが、これは『仮面ライダーOOO』で伊達明/仮面ライダーバースが背負っていたあのミルク缶をイメージして下さい。

そして今回、あのフォームがようやく登場します。

それではどうぞ。









・主なプレイヤー

小林紬/仮面ライダーハーム
我那覇冴/仮面ライダーロポ
宗像勇海/仮面ライダーオルカ
浅利切人/仮面ライダーターボン
雪ノ下幸/仮面ライダーホワイティー
榎本龍之介/仮面ライダーグリズ
浮世英寿/仮面ライダーギーツ

参加人数:30名

現在生き残っている人数:6名



第7話:鳴らせ、魂のビート!

「はぁ!!」

 

「ジャーッ!?」

 

ゾンビフォームとなったギーツに挑みかかる警備員ジャマト達。

 

ギーツは体を斜めに倒し、振り下ろされて来た警棒を回避すると同時に、バーサークローで警備員ジャマトの胴体を切り裂く。

 

続けて2体、3体と警備員ジャマト達を薙ぎ倒して行き、倒れた4体目の警備員ジャマトの腹部にバーサークローを思いきり突き刺す。

 

そこから猛毒が注入され、刺された警備員ジャマトが苦しみながらドロドロに溶けて消滅していく。

 

「さて……ゾンビの力、とくとご覧あれ!」

 

≪ZOMBIE BREAKER≫

 

バーサークローを引き抜いたギーツは、左腰に吊り下げていたゾンビブレイカーを手に取り、刀身の鎖鋸を高速回転させ始める。

 

「ふっ!!」

 

「ジャーーーーーッ!?」

 

ギュイイインと高い音を鳴らしながら、近付いて来た警備員ジャマトの胴体にゾンビブレイカーを力強く叩きつけ、高速回転する鎖鋸が警備員ジャマトの胴体を抉るように切断する。

 

そこから更に、他の警備員ジャマト達もゾンビブレイカーで斬りつけていき、1体の警備員ジャマトを蹴り飛ばした後、ゾンビブレイカーのポンプ部分を左手で掴んでスライドさせた。

 

≪POISON CHARGE≫

 

「はぁっ!!」

 

≪TACTICAL BREAK≫

 

「「「ジャジャーッ!?」」」

 

鎖鋸の回転速度が更に増したゾンビブレイカーで、一気に数体の警備員ジャマトを切り裂いて爆散させるギーツ。

 

彼は鎖鋸の停止したゾンビブレイカーを一度地面に突き刺し、デザイアドライバーの上部に付いているボタンを押し込み、ドライバーその物を半回転させた。

 

「よっと」

 

≪REVOLVE ON≫

 

その瞬間、ギーツのボディに変化が生じた。

 

ギーツの周囲にリング状のエフェクトが出現したかと思えば、その場でギーツのボディが浮遊し、マスクの外れた頭部が引っ込むと同時にボディが時計回りに半回転して逆さまになる。

 

両腕は両足に、両足は両腕に切り替わり、引っ込んでいた頭部がすぐに飛び出して再びマスクが装着され、その場に着地したギーツは先程までと違う姿に変化していた。

 

「え、えええええ!? な、何ですかアレ!? あんな事できるんですか!?」

 

「……まぁ、最初にアレ見たら驚くよね」

 

「ふぅ、さてと」

 

先程までと違い、ゾンビフォームの装甲を上半身ではなく、下半身に装備したギーツ。

 

驚きの声を上げているハームにオルカが同意している中、右足側に移動したバーサークローでガリッガリッと床を引っ搔いたギーツは、接近して来た警備員ジャマトの警棒を左膝の装甲で防御し、すぐさま右足で蹴りつける。

 

「ジャッ!?」

 

「ふん!!」

 

蹴り飛ばされた警備員ジャマトが他の警備員ジャマトと激突する中、ギーツは近くの石柱を右足による回し蹴りで破壊し、吹き飛んだ石柱の破片が他の警備員ジャマト達にぶつけられる。

 

そして警備員ジャマト達が怯んでいる隙に、ギーツはドライバーの左側に移動したゾンビバックルを操作する。

 

≪ZOMBIE STRIKE≫

 

「はぁっ!!」

 

「「「「「ジャ……ジャーーーーッ!?」」」」」

 

ギーツが右足のバーサークローで床を勢い良く踏みつけると、警備員ジャマト達の足元に赤黒く禍々しいオーラが漂い始める。

 

そこから【JYAMATO】と文字の彫られた墓石状のエフェクトが次々と飛び出し、それを喰らった警備員ジャマト達は1体残らず天井まで吹き飛ばされ、爆散してしまった。

 

「まぁ、こんなもんだ」

 

周囲の床に複数枚のコインが散らばる中、ギーツの変身を解除した英寿は、冴と勇海に保護された紬の方へと駆け寄った。

 

「ハームの怪我はどうだ?」

 

「右足の怪我が酷いわね。血も出ちゃってる」

 

ハームに変身していたため、紬の外傷自体はそれほど多くはなかった。

 

しかし瓦礫に押し潰された際に負傷したのか、紬の右足はユニフォームのタイツが裂けて切り傷ができてしまっている。

 

今は手当てするための救急箱が手元にないため、冴がひと通りの応急処置を行い、紬の右足には白い布が巻きつけられた。

 

「ホワイティーにしてやられたようだな。ハーム」

 

「っ……はい……」

 

「酷いもんだよ本当に。紬ちゃんのコイン、全部取られちゃってる」

 

勇海が運んで来たハーム用のミルク缶は、中に1枚もコインが入っていない。

 

幸に裏切られた挙句、コインを全部取られる羽目になり、一気に窮地に陥ってしまった紬。

 

そのショックは大きかったのか、彼女は目に見えて落ち込んでいた。

 

「幸さん……どうして、裏切ったんでしょうか……?」

 

「やっぱりな。オルカが懸念していた通りの展開だ」

 

「……怪しいとは思ってたんだよね。最初に共闘を提案してきたのは雪ノ下さんだし、断られた時も大して残念そうじゃなかった。むしろ、紬ちゃんと二人だけで組む事になって、都合が良いって感じの顔をしてたよ」

 

「大方、組んだ相手を陥れるのが目的だろうな。ホワイティーからすれば、ハームはまさに最高の獲物だった訳だ」

 

「そんな……っ」

 

「それで、どうするハーム? 今のお前はかなりピンチな状況だ。このままじゃ最下位のまま、ここで脱落する事になるだろう」

 

英寿はスパイダーフォンの画面を見ながら問いかける。

 

画面に映っているランキングでは、1位のグリズが517枚、2位のギーツが482枚、3位のロポが430枚、4位のオルカが383枚、5位のホワイティーが254枚、そして6位のハームが0枚と表示されている。

 

制限時間は1時間以上が経過し、残り35分。

 

ここから急いでコインを集めなければ、ハームの脱落は免れない。

 

「今さっき倒したジャマト達のコインでも、精々数十枚程度だ。ホワイティーには到底追いつけない」

 

「おまけに足まで怪我しちゃったんだ。流石にこれはもう……って!?」

 

すると、紬は壁に寄りかかりながらも何とか立ち上がり、その場から歩き出そうとし始めた。

 

右足の怪我の痛みから、その表情は険しいものになっている。

 

「ちょ、ちょっと、無理しない方が良いよ!! まだ痛むでしょ!?」

 

「大丈夫です。私、諦めません……!」

 

「馬鹿、どう考えても大丈夫じゃないでしょ! まともに歩けてすらいないじゃない!!」

 

勇海と冴が慌てて紬を止めようとするが、紬は止まろうとしない。

 

幸が捨てていったアローバックルを拾い上げた彼女は、自分用のミルク缶を持ち上げようとする。

 

「せっかく、ここまで来たんです……こんな所で、まだ終わりたくない……!」

 

「何故そうまでして戦おうとする? それほどの怪我だ、自主的にリタイアする事もできるんだぞ」

 

英寿の言う通り、あまりにプレイヤーの怪我が酷い場合は、自主的にリタイアする事が可能であり、デザイアグランプリ側の判断でドクターストップがかかる事もある。

 

紬が何故そこまでして諦めようとしないのか、英寿はその理由がわからなかった。

 

「やらなきゃ、駄目なんです……こんな私でも、仮面ライダーに選ばれたんだとしたら……きっと何か、意味があるんじゃないかって……!」

 

「紬ちゃん……」

 

「それに、せっかく考えた私の願い……あんな人のために、台無しにされたくありませんから……ッ!」

 

右足の痛みに耐えながら、必死に歩こうとする紬。

 

そんな彼女を見て、これはもう梃子でも動かないだろうと考えたのか。

 

冴はハァと溜め息をついて頭を掻いた後、紬の右腕を自身の肩へと回し、彼女の体を支えた。

 

「全く、本当に見てて危なっかしいのよあなたは。これならいっそ、近くで見てた方が逆にハラハラしないで済む」

 

「! 冴さん……」

 

「勘違いはしないで。何度も言ってるけど、見殺しにしたら寝覚めが悪いだけよ。私達がライバル同士な事に変わりはないわ」

 

あくまでクールにそう告げる冴。

 

しかしここで、勇海がある事を紬に暴露する。

 

「……なんて、本人は言ってるけどね紬ちゃん。彼女、俺と英寿君が来るよりも前に、大急ぎで君の所まで突っ走ってたんだよ」

 

「!?」

 

そう、英寿と勇海はしっかり目撃していた。

 

自分達が紬の所へ駆けつけるより前に、ロポが大急ぎで階段を駆け上がり、2階フロアまで走っていた姿を。

 

まさか見られているとは思わなかったのか、冴が思わず勇海の方に振り向いた。

 

「なんだ。やっぱりロポも、ハームの事が心配だったんだな」

 

「そうじゃなきゃ、自分の身を心配しなさいなんてわざわざ言わないもんね」

 

「っ……うるさい!」

 

ニヤニヤと笑う英寿、微笑ましそうに見ている勇海の2人に対し、図星だった冴は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

 

そんな彼女の優しさを知った紬は、嬉しそうにお礼を告げる。

 

「冴さん、ありがとうございます……!」

 

「……私のコイン集めも手伝いなさい。それで貸し借りはなしよ」

 

「けど、真面目にどうするの? ジャマトを倒したコインを集めても、大した数は集まらないよね」

 

「せめて、ある程度の枚数は一気に稼がないと……」

 

どうするべきか、紬達が考えていた時だった。

 

「ジャッジャッジャッ……」

 

「「「「ん?」」」」

 

4人のすぐ近くを、1体のポーンジャマトが通りかかった。

 

頭部をほっかむりで覆い、唐草模様の風呂敷を背中に背負ったそのジャマト―――“泥棒ジャマト”はコソコソと館内を移動しており、他の警備員ジャマト達と違って、紬達に襲い掛かって来る様子もなかった。

 

「何だあれ……泥棒?」

 

困惑する紬・冴・勇海の3人。

 

しかし、英寿だけは違う反応を見せた。

 

「ハーム、今すぐ奴を倒せ! 奴はコインを大量に持っている!」

 

「「「え!?」」」

 

そう。

 

英寿の言葉通り、その泥棒ジャマトは背負っている風呂敷の中に、大量のコインを隠し持っていた。

 

それを知った3人は慌てて変身する。

 

「ちょ、逃げられる前に倒さなきゃ! 変身!」

 

「英寿、そういう大事な事はもっと早く言いなさい! 変身!」

 

「ここからなら狙い撃った方が早いかな……変身!」

 

≪ARMED ARROW≫

 

≪ARMED CLAW≫

 

≪MAGNUM≫

 

≪≪≪READY FIGHT≫≫≫

 

変身した3人の内、オルカは構えたマグナムシューター40Xのマズルを展開し、ハンドガンモードからライフルモードに変形。

 

すぐさま泥棒ジャマトの足元を狙い撃とうとするが、それに気付いた泥棒ジャマトが慌てて逃げ始めた。

 

「ジャッ!? ジャジャーッ!!」

 

「あ、逃げた!?」

 

「ちょ、待って!! 逃げな……ッ」

 

アームドアローの姿になったハームはすぐに追いかけようとしたが、右足の怪我が痛むのか、上手く走る事ができない。

 

そんなハームを、ロポがすぐさま自身の背中に背負い込んだ。

 

「え、冴さん……!?」

 

「その足の怪我じゃ走れないでしょ。このまま突っ走るわ。あなたはただ、あいつを倒す事だけ考えなさい!」

 

「っ……はい!」

 

ロポはハームを背中に背負ったまま、泥棒ジャマトを追いかけるべく走り出す。

 

ハームはロポに背負われながら、手にしたレイズアローで泥棒ジャマト目掛けて矢を放ち始めた。

 

「わぁお、パワフルだねぇ冴さん……」

 

「フッ、面白い女だ。あぁいうタイプは嫌いじゃない。俺も少しは手伝ってやろうか」

 

「なら俺は、雪ノ下さんの様子を見て来るよ。また何か妙な策を仕掛けて来ると面倒だしね」

 

「そうか。そういう事ならオルカ」

 

ハームとロポの方は英寿に任せ、自身はホワイティーのいる方へ向かおうとするオルカ。

 

そんな彼に、英寿はあくどい笑みを浮かべながら告げた。

 

「お前に1つ教えておいてやる……ちょっとした、ずるーい攻略法をな」

 

 

≪TACTICAL SLASH≫

 

「「「「「フンッ!!」」」」」

 

「「「ジャーッ!?」」」

 

それから時間は経過し、1階フロアの化石エリア。

 

そこでは複数の分身を出現させたグリズが、ニンジャデュアラーから放った斬撃で警備員ジャマト達を蹴散らしていた。

 

それから床に散らばったコインを、グリズの分身達が手分けして回収していく。

 

「ふん、連中の力もこの程度か。これは1位の座をキープするのも楽勝だな」

 

ニンジャデュアラーで右肩を叩きながら、グリズは余裕そうな口調で笑う。

 

しかし、そんな彼が予想だにしていない事態が発生した。

 

ガシャアンッ!!

 

「!? 何っ!?」

 

グリズの後ろに置かれていたグリズ用のミルク缶が、何処からか投げられて来たレイズチェーンアレイの鉄球をぶつけられ、その場に倒れてしまった。

 

倒れたミルク缶からコインが散らばってしまい、グリズは鉄球が飛んで来た方に振り向いて睨みつける。

 

その先にはレイズチェーンアレイを構えているホワイティーの姿があった。

 

「小娘、貴様……!!」

 

「あらごめんなさい、わざとじゃないのよ? てっきりまだジャマトがいるのかと思って」

 

もちろん嘘である。

 

グリズが集めたコインを散らばせる事で、少しでも自身の順位を上げようと考えたのだ。

 

「そんな誤魔化しが通用するとでも……!!」

 

「あら、良いのかしら? 私を攻撃したら、ペナルティーでコインを失っちゃうかもしれないわよ?」

 

「……チッ!!」

 

そしてペナルティーの件もある以上、グリズはホワイティーを攻撃できない。

 

やり場のない怒りにグリズが舌打ちするのを見て、ホワイティーは仮面の下でニヤリと笑う。

 

(あぁ、最高……やっぱり、他人を陥れるのは楽しいわ……♪)

 

 

ホワイティー……雪ノ下幸の心は歪んでいた。

 

元々、彼女は金持ちの家に生まれた娘だった。

 

しかし、それ故に彼女は両親から、清く正しく、優秀な存在であり続ける事を強要された。

 

勉強や運動は、できて当たり前。

 

漫画やゲームなど、その手の娯楽に時間を費やす事は許されなかった。

 

クラスメイトや教師達も、そんな自分の優秀さにだけ目を向けており、彼女自身の内面には碌に見向きしようともしない。

 

ただ期待され続けるだけの人生に、幸は嫌気が刺し始めていた。

 

そして彼女は、溜まりに溜まった鬱憤を晴らしたいがためだけに……人が越えてはならない一線を越えてしまった。

 

ある日の夜、彼女は塾からの帰り道で、たまたま一人の男を発見した。

 

見るからに柄の悪そうなその男は、口笛を吹きながら傾斜の高い坂道を歩いている。

 

その後ろ姿を見て、幸は考えてしまった。

 

後ろから蹴ったら、彼はどんな風に転がり落ちるのだろう……と。

 

結果、幸は何となく行動に出た。

 

行動に出てしまった。

 

幸に後ろから蹴りつけられた男は、そのまま坂道を転がり落ちていき、転がった先にあった電柱に頭を強くぶつけてしまった。

 

頭の打ち所が悪かったのか、その男は後日、死亡が確認された。

 

幸が彼の背中を蹴りつけたところを見た者は誰もいなかったため、その男の死は不慮の事故として片付けられた。

 

この一件を経て、幸は見出してしまったのだ。

 

他人を蹴落とす事への快感を。

 

それからというもの、幸は人知れず他者の命を踏み躙る凶行を楽しむようになった。

 

手段は様々だった。

 

ターゲットも様々だった。

 

ある時は凶器を使った。

 

ある時は力の弱い子供や老人を狙った。

 

自身が犯人だと突き止められないように、証拠はきっちり隠滅した。

 

両親はもちろん、クラスメイトや教師の前でも、普段通りの清楚で優秀な女子高生として振舞い続けた。

 

罪悪感は、全くと言って良いほどなかった。

 

自分より幸せな奴、自分より強い奴を陥れるのが、こんなに楽しいだなんて。

 

そんな彼女の歪んだ思想は、このデザイアグランプリでも存分に発揮される事となったのである。

 

 

「―――さて」

 

ホワイティーはスパイダーフォンを取り出し、ランキングを確認する。

 

グリズのコインが散らばってしまった事で、今はギーツが1位の座に就いており、それ以外に順位の変動はなかった。

 

ハームのコイン数を確認すると、現時点では42枚と表示されていた。

 

一方で、5位である自身のコイン数は298枚。

 

そして残り時間は15分。

 

この少ない時間で、自身を上回るコイン数を集めるなど不可能。

 

これでハームの、小林紬の脱落は確定した。

 

自身の勝ち抜けを確信し、ホワイティーはほくそ笑んだ。

 

「随分あくどい事をするものだね」

 

「!」

 

そんな彼女の後ろから、英寿達と別行動を取ったオルカが語りかける。

 

彼はライフルモード状態のマグナムシューター40Xを構えており、その銃口はホワイティーの背中に向けられていた。

 

「何の話かしら?」

 

「君が裏切ったせいで、彼女は危うく死にかけたんだ。その事について罪悪感はないのかな?」

 

「あら、私が紬ちゃんを陥れて死なせようとしたと? 酷いわ、そんな事する訳ないじゃない! あれはジャマトの攻撃が運悪く天井を破壊して―――」

 

「え、何を言ってるのかな? 俺は“彼女”って言っただけで、“紬ちゃん”だなんて一言も言ってないけど?」

 

「っ……」

 

ホワイティーは口ごもった。

 

オルカに上手く誘導尋問された事に気付いたからだ。

 

「その反応、自白したようなものだよね」

 

「……ふん! あの娘が死にかけたから何だって言うのかしら?」

 

もはや隠すのは無駄だと理解したのか。

 

ホワイティーは開き直った様子で振り返り、オルカに向けて言い放つ。

 

「あの娘も馬鹿よねぇ。裏切りの可能性があるって散々言われていたのに、馬鹿正直に私の事を信用するんだもの。都合が良いったらありゃしないわ」

 

「それで、彼女を罠に嵌めてやったと?」

 

「騙されたあの娘が間抜けなのよ! ほら、見てみなさいよこの残り時間! あと15分もないのよ? 今更コインを頑張って集めたところで、私の順位は越えられない! 可哀想にねぇ、あの娘はもう脱落決定よ!!」

 

「それはどうかな?」

 

「……はぁ?」

 

オルカの台詞に、ホワイティーはイラッとした様子で睨む。

 

しかし、オルカは全く動じる事なく告げた。

 

「あの娘、君が思ってる以上に諦めが悪いみたいだよ?」

 

「何を言って……ッ!?」

 

その時、ホワイティーは信じられない物を見た。

 

スパイダーフォンに表示されていたハームのコイン数。

 

それが突然、42枚から242枚へと、一気に200枚も増加したのだ。

 

これにはホワイティーも驚きを隠せなかった。

 

「な、何で急に増えて……!?」

 

「……どうやら、向こうは上手くやれてるみたいだね」

 

 

何があったのか、それは数分前の出来事。

 

「くそ、ちょこまかと……!」

 

「こらー、逃げるなー!」

 

「ジャ、ジャ~!?」

 

ハームはロポに背負われながら、レイズアローで泥棒ジャマトを狙い続けていた。

 

しかし泥棒ジャマトは素早く逃げ回り、なかなか矢を当てる事ができない。

 

そのすばしっこい動きに、ロポは舌打ちしながらも走り続ける。

 

「すいません冴さん、無理させちゃって……!」

 

「余計な心配は無用よ! 私の体力、嘗めて貰っちゃ困るわ……!」

 

実際、ハームを背負いながら走り続けているのに、ロポは未だに疲れている様子はない。

 

アスリートとして鍛え上げた彼女の体力は、ハームの想像を上回っていた。

 

「とにかく、あなたはあの泥棒を狙いなさい! 私の事は気にしないで!」

 

「は、はい!」

 

自身を背負いながら走ってくれているロポのためにも、泥棒ジャマトは確実に仕留めたい。

 

ハームはレイズアローを連射し、泥棒ジャマトの足元に次々と着弾させる。

 

そのせいで逃げ辛い状況になった泥棒ジャマトは、近くにあった巨大な怪物の骨格標本を登って逃げようとしたが……。

 

≪ZOMBIE STRIKE≫

 

「はぁ!!」

 

「ジャッ!?」

 

その時、泥棒ジャマトの足元から巨大な赤黒い腕が出現し、登ろうとしていた泥棒ジャマトの右足を掴んで引っ張り落とした。

 

ギーツが変身したゾンビフォームの能力で、ゾンビの腕を床から生やしたのだ。

 

「今だ、ハーム!!」

 

「やりなさい、紬ちゃん!!」

 

「はい!!」

 

≪ARROW STRIKE≫

 

「当ったれえええええ!!!」

 

アローバックルを操作し、ハームが構えたレイズアローに収束していくエネルギー。

 

そこから放たれた強力な一撃が、泥棒ジャマト目掛けて飛んで行く。

 

それに気付いて逃げようとした泥棒ジャマトだが、ギーツが生やしたゾンビの腕に押さえられて逃げられない。

 

「ゼラ、ゼラリジーーーーーッ!!?」

 

泥棒ジャマトの胴体に撃ち込まれた一撃が、大爆発を引き起こす。

 

そして爆風が晴れた後、大量のコインがロポとハームの目の前に降り注いで来た。

 

「うわ、凄い!? コインがこんなにたくさん……!!」

 

「これなら、少しはホワイティーにも追いつけるんじゃないかしら……!」

 

「それだけじゃないぞ。ほら」

 

≪SECRET MISSION CLEAR≫

 

「「え?」」

 

突然鳴り響く音声。

 

何事かと思ったロポとハームに、ギーツがスパイダーフォンの画面を見せる。

 

そこには【泥棒ジャマトを倒す】という文字が表示されていた。

 

「え、何ですかこれ……?」

 

「シークレットミッション。ゲーム中はこうやって、隠しミッションも仕掛けられている事があってな。クリアすれば、ゲームに有利なアイテムが手に入る」

 

するとロポとハームの足元に、白いミッションボックスが出現する。

 

2人の代わりにそれを拾い上げたギーツは、ミッションボックスの上蓋を開けて中身を2人に見せる。

 

そこに入っていたのは、ピアノの鍵盤やディスクなどが取りつけられた、カラフルな大型バックルだった。

 

「ビートバックルか。ハーム、良い物を手に入れたな」

 

「ビートバックル……?」

 

ギーツはミッションボックスから取り出したその大型バックル―――“ビートレイズバックル”をハームに差し出す。

 

ハームはそれを受け取ろうと左手を伸ばしかけるが、ロポやギーツに手伝って貰った手前、自分なんかが受け取って良いのだろうかと受け取るのを躊躇してしまった。

 

そんなハームを、ロポが後押しする。

 

「使いなさい。そのバックルはあなたの物よ」

 

「え、でも……」

 

「あなたがあのジャマトを倒したんだから、それを使う権利はあなたにあるわ。私達に申し訳ないと思ってるのなら、そのバックルを使って、私達のコイン集めを手伝いなさい」

 

「だそうだ。こいつを受け取るか、受け取らないか……どうする? ハーム」

 

「冴さん、英寿さん……」

 

ハームは差し出されたビートバックルを見つめる。

 

2人からそう言われてしまっては、受け取らない訳にはいかない。

 

ハームは左手を伸ばし、ギーツが差し出して来たビートバックルを、しっかりと受け取ってみせた。

 

 

そして時は戻り現在。

 

「「「はっ!!」」」

 

オルカ、グリズ、ホワイティーが警備員ジャマト達と戦っているところに、ギーツ、ロポ、ハームの3人も駆けつけた。

 

ハームは変わらずロポに背負われた状態でレイズアローを連射し、警備員ジャマト達を撃ち抜いていく。

 

ギーツはすれ違い様にゾンビブレイカーを振り回し、迫り来る警備員ジャマト達を薙ぎ払う。

 

そんな3人の姿にオルカ達も気付いた。

 

「英寿君、冴さん、紬ちゃん!」

 

「6人全員、この場に集まったか……!」

 

「チッ……今更足掻いて、一体何のつもりよ……?」

 

ホワイティーが忌々しげにそう呟く中、ハームを背中から降ろしたロポはレイズクローを構え直し、ハームの隣にはギーツが並び立つ。

 

「ハームは俺が援護する。ロポ、お前は急いでコインを稼げ」

 

「言われずとも!!」

 

ギーツが言い切る前に駆け出したロポは、レイズクローで警備員ジャマト達を切り裂いていく。

 

その間に、ハームは先程ギーツから受け取ったばかりのビートバックルを取り出す。

 

「私は……まだ諦めない!!」

 

≪SET≫

 

ハームはアローバックルを取り外した後、ビートバックルの鍵盤部分を押してからドライバーに装填。

 

軽快な音楽が鳴り響き、ハームの後ろに【BEAT】の文字が浮かび上がる中、ハームはビートバックルに付いているディスク状の操作盤を回して操作した。

 

≪BEAT≫

 

ビートバックルから飛び出す大量のカラフルな音符。

 

それがハームの真横に集まって装甲を生成し、それがハームの上半身に装備される。

 

≪READY FIGHT≫

 

スピーカーが付いた上半身の装甲。

 

クラッシャーに付いた金色のインカム。

 

そしてハームの左手に出現した、カラフルなエレキギター型の武器。

 

ハームは音楽の力を宿した形態―――“ビートフォーム”への変身を完了させた。

 

「うわ、エレキギターだ……!」

 

≪BEAT AXE≫

 

ハームは早速、左手に現れたエレキギター型の武器―――“ビートアックス”を両手で構える。

 

すると、隣に並び立っていたギーツが彼女に助言した。

 

「ハーム、丸いボタンの所を2回押してみろ」

 

「えっと……ここですか?」

 

≪METAL THUNDER≫

 

「よし、そのまま思いきり演奏しろ」

 

「えっ!? 上手く弾けるかな……でも、やるしかない!!」

 

いきなり演奏するよう言われて不安になるハームだったが、すぐに気持ちを切り替えて、ビートアックスを弾き始める。

 

ハームの指先がビートアックスの弦を撫でる度、ヘビメタな重厚感溢れる音楽が、フロア全体に鳴り響く。

 

「!? 何だ、あの姿は!?」

 

「あれは、ビートバックル……!?」

 

「はぁ!? あの娘、何であんなバックルを!?」

 

グリズやオルカ、ホワイティーが驚いているのを他所に、ひたすらビートアックスを弾き続けるハーム。

 

初めはまだ弾き慣れていない彼女だったが、弾いている内にリズムが安定してきたのか、本人も徐々にノリノリになっていき、彼女の周囲を複数の黄色の音符が流れていく。

 

(凄い……私、ちゃんと弾けてる……!!)

 

窮地に陥っていた自身を助けてくれた冴、勇海、英寿の3人。

 

彼らから受けた恩を返すため。

 

ハームの演奏は止まらない。

 

(こんな私にも、できる事があるとわかった……だから!!)

 

「轟け……私の音楽(ビート)ッ!!!」

 

≪TACTICAL THUNDER≫

 

ピシャアアアアアンッ!!

 

「「「「「ジャーーーーーッ!!?」」」」」

 

ビートアックスのトリガーを押すと、ハームの周囲を浮遊していた複数の音符が、強力な雷へと変化する。

 

それが警備員ジャマト達に命中し、一気に複数の警備員ジャマトを爆散させる事に成功。

 

倒された警備員ジャマト達の持っていたコインが、床にどんどん散らばっていく。

 

「な、何だ、あの威力は……ッ」

 

ハームが放った必殺技の威力に戦慄するグリズ。

 

一方、自身の演奏で警備員ジャマト達を大量に倒せた事に、ハームは自分でも驚いていた。

 

「や、やった……やったぁ!! 英寿さん!! 私、ちゃんと弾けました!!」

 

「あぁ、やるなハーム。楽器の才能あるんじゃないか?」

 

「えへへへ……!」

 

ギーツに右手で頭を撫でられ、嬉しそうに笑うハーム。

 

その様子に、ロポやオルカも仮面の下で微笑む中……1人だけ、面白くなさそうにしている者がいた。

 

それは他でもない、ホワイティーである。

 

(何よあのクソガキ……何処であんな強そうなバックルを……!!)

 

窮地に陥れたはずの相手が、自分の知らないところで新しいレイズバックルを手に入れ、その力でジャマト達を蹴散らしてみせた。

 

ハームが脱落する事を望んでいたホワイティーからすれば、到底面白くない状況だった。

 

(ふん、まぁ良いわ……いくらジャマトを倒したって、コインを集めなければ意味はない!!)

 

倒された警備員ジャマトのコインも、自分が先に拾い上げてしまえば良いだけの話。

 

これ以上、ハームにコインを稼がせはしない。

 

そう思ったホワイティーは、ハームより先にコインを拾おうと動き出し……。

 

 

 

 

 

 

≪TACTICAL SHOOT≫

 

 

 

 

 

 

その隙を、オルカは見逃さなかった。

 

「ほっ」

 

マグナムシューター40X・ライフルモードを構えたオルカが、1発の弾丸を発射。

 

その一撃はまっすぐ飛来し……ホワイティーが背負っていたミルク缶に命中した。

 

ズギャアッ!!!

 

「―――えっ」

 

オルカが放った一撃を受け、木っ端微塵に粉砕されたホワイティーのミルク缶。

 

ミルク缶の残骸と共に、大量のコインが周囲に散らばっていくのを見たホワイティーは、数秒ほど遅れて、仮面の下で表情が青ざめた。

 

「あ……あああああっ!!? わ、私のコインがあああああっ!!?」

 

先程までの余裕そうな態度は一瞬で消え失せ、ホワイティーは慌てて散乱したコインをかき集めようとする。

 

しかし、ミルク缶を破壊された以上、ホワイティーのコイン数は0枚と見なされてしまっていた。

 

「ア、アンタ、なんて事してくれたのよ!? 私が集めたコインを!!」

 

「悪いけど、俺から見ても君のやり方は不快でしかなかったからさ。ちょっとばかり、ずるーい攻略法を使わせて貰ったよ」

 

何故、オルカがホワイティーのミルク缶を銃撃して破壊したのか。

 

それは、少し前に英寿がオルカに告げていた、“攻略法”がきっかけだった。

 

『基本的に、他のプレイヤーを攻撃した場合は、何らかのペナルティーが発生する』

 

『だが、このゲームにおいては……プレイヤーが持っているミルク缶を攻撃した場合は、その限りじゃないのさ』

 

英寿は、このコイン集めゲームを過去にも経験した事がある。

 

だからこそ、彼は知っていたのだ。

 

プレイヤーではなく、プレイヤーが持っているミルク缶の方を攻撃してしまえば良い。

 

そうすれば、攻撃した側はペナルティーを受ける事なく、他のプレイヤーを一気に蹴落とす事が可能なのだと。

 

「紬ちゃんの命をわざと危険に晒したんだ。自分が痛い目に遭わないだけ、ありがたいと思いなよ」

 

「ふ、ふざけんじゃないわよ!? この卑怯者がぁ!!!」

 

「卑怯者で結構。俺も、普段ネット対戦とかやってると、対戦相手がチートを使ってまで勝とうとして来る事がちょくちょくあるんだ。そのたびに俺は思うんだよね」

 

 

 

 

 

 

「そういう姑息な奴ほど、蹴落としてやった時の達成感は最高だなぁ……ってさ♪」

 

 

 

 

 

 

焦りに焦るホワイティーを見下ろしながら、楽しそうに言い放つオルカ。

 

そんな彼の台詞を聞いて、ロポとハームは同時にこう思った。

 

((性格わっる……!!))

 

恐らく仮面の下では……更に言うとマスクの下では、きっと物凄く悪い笑みを浮かべている事だろう。

 

そんなイメージが、2人は脳内で容易に想像できていたのは言うまでもない。

 

一方、一部始終を見ていたグリズが動き出した。

 

「ふん、事情はよく知らんがまぁ良い……落ちたコインは貰ったぁ!!」

 

「あ、ちょ、馬鹿、これは私のコインよ!! 拾ってんじゃないわよクソが!!」

 

破壊されたホワイティーのミルク缶から飛び散った大量のコインを、グリズの分身達が手分けして次々拾い始める。

 

ホワイティーは暴言を吐きながら急いで止めようとするが、グリズの方が先にコインを回収していく。

 

「おっと、俺も早く動いた方が良さそうだ」

 

「マズい、先を越される!!」

 

「はわわ!? そうだった、早くコインを拾わなくちゃ!!」

 

オルカとロポ、そしてハームも、同じくコインの回収に動き出そうとする。

 

しかし、一同はまだ気付いていなかった。

 

オルカ以上にもっと質の悪い人物が、この場にはもう1人いる事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ZOMBIE STRIKE≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「―――へ?」」」」」

 

その直後だった。

 

床から突然伸びて来た、巨大な赤黒いゾンビの腕。

 

それが、一同が拾い集めようとした床のコインを全て搔っ攫い、その場から消えてしまったのだ。

 

そしてゾンビの腕は、ハームの隣に立っていたギーツのすぐ近くに現れ、彼が持っていたミルク缶の中へとコインを収めていく。

 

「おぉ、大量大量♪」

 

「ギーツ!? 貴様ァ……!!」

 

一瞬でコインを全て横取りされてしまい、ギーツを睨みつけるグリズ。

 

ギーツは悪びれない様子で、右手の指先で狐の頭を作りながらオルカの方に告げた。

 

「オルカ。俺に化かされてくれて、サンキュー♪」

 

「……あっ!?」

 

そう言われて、オルカは気付いた。

 

(ゾンビとマグナムの交換を渋ったのは、これが理由か……!!)

 

ギーツが自身のゾンビバックルと、オルカが持つマグナムバックルの交換を渋ったのは、全てこのため。

 

ゾンビの腕を自在に生やせるゾンビフォームの力なら、床に落ちたコインを簡単に拾い集める事ができてしまう。

 

だからこそ、ギーツは敢えてすぐにはバックルを交換しようとしなかった。

 

そして、ギーツがオルカに「ミルク缶を攻撃してもペナルティーにはならない」と教えた件。

 

それもまた、オルカがホワイティーのミルク缶を破壊しに動くだろうと、ギーツは読んでいたのだ。

 

「諦めずに頑張ったご褒美だ。ハーム、君が倒した分は君が持っていけ」

 

「あ、ど、どうも……あははは……」

 

加えて、ハームにもきちんとコインを分けてあげていると来た。

 

ここまで上手くやられてしまっては、オルカも不思議と怒る気力は湧いて来なかった。

 

「は、はははっ……してやられたよ、あの化け狐……!」

 

しかし当然、この状況を面白くないと思っている人物はいる。

 

オルカにミルク缶を破壊され、持っていたコインを全て失い、自身が陥れようとしたハームが自分よりも上の順位になった。

 

そんな状況に、ホワイティーは我慢ならなかった。

 

「ふ、ふざけるな……ふざけるなこのクソ共があああああっ!!!」

 

≪CHAIN ARRAY STRIKE≫

 

レイズチェーンアレイを振り回し、ハームとギーツ目掛けて鉄球を飛ばそうとしたホワイティー。

 

しかし、そんな彼女の行動もギーツは予測済みだった。

 

「おっと」

 

「なっ……きゃあ!?」

 

再び床から出現したゾンビの腕が、レイズチェーンアレイの鉄球を掴み取り、そのまま引っ張ってホワイティーから奪い取った。

 

引っ張られた勢いで床に倒れたホワイティーは、自身を見下ろしているギーツを睨みつける。

 

「駄目じゃないか、こんな物を振り回したら。不慮の事故(・・・・・)が起きたら大変だろう?」

 

「ぐぎいいいいい……っ!!」

 

ギーツの物言いに、ホワイティーは歯軋りしながらも必死に考える。

 

何か、何か逆転の術はないのか。

 

そうだ、ミルク缶だ。

 

さっきオルカがやったように、自分も他のプレイヤーのミルク缶を破壊すれば良い。

 

そう考えたホワイティーは、咄嗟に自身が所持しているバックルを確認し……ハッと気付いた。

 

(ない……アローバックルがない!?)

 

最初に持っていたアローバックルは、「弱いからいらない」と言って自分で捨ててしまった。

 

まさかそのアローバックルが、後にハームがシークレットミッションをクリアし、新たにビートバックルを手に入れるきっかけになろうとは、ホワイティーは思いもしていなかった。

 

そして今、ホワイティーの手元にはもう、他に役立ちそうなバックルはない。

 

「ミルク缶を破壊された場合、新しいのが再支給されるが……もうすぐタイムアップだ。今からじゃもう間に合わないだろうな」

 

「そ、そんな……嘘よ……こんな、はずじゃ……ッ」

 

ホワイティーの敗北が、確定した瞬間だった。

 

そして……。

 

『タイムアップ! そこまでです!』

 

ツムリのアナウンスにより、第2回戦の終了が宣言されたのだった。

 

 

「皆さん、大変お疲れ様でした」

 

その後、デザイア神殿のロビーに戻って来たプレイヤー達。

 

一同にゲームの結果を伝えるべく、ツムリが宙に投影されたモニターにランキングを表示させた。

 

「これより、皆さんの集めたコインの枚数を発表します。まずは1位、ギーツ。789枚」

 

「フッ」

 

1位の座を獲得し、どや顔を浮かべる英寿。

 

「2位、グリズ。635枚」

 

「チッ……1位は取られたか……!」

 

1位の座をキープできなかった事で、悔しげな表情を浮かべる龍之介。

 

「3位、ロポ。608枚」

 

「3位か……」

 

3位のまま終わった事で、同じく悔しそうにする冴。

 

「4位、オルカ。561枚」

 

「うん、まぁまぁかな」

 

4位で終わりを迎えたものの、特に不満のない様子でいる勇海。

 

「5位、ハーム。452枚」

 

「や、やった、5位だ……!」

 

何とか5位に滑り込んだ事で、安堵の表情を浮かべる紬。

 

そして……。

 

「6位、ホワイティー。0枚」

 

「……ッ!!」

 

最下位となってしまい、苛立ちを露わにしながら拳を強く握り締める幸。

 

強く握り締め過ぎて、爪が喰い込み血が滲んでいる程だった。

 

「よって、最下位となった雪ノ下幸様は、ここで脱落となります」

 

ツムリの口から淡々と告げられ、幸はその場に俯いた後、「フフフ」と小さく笑い、そこから高笑いし始めた。

 

「フフッ……アッハハハハハハハ!! クソが、クソがクソがクソがぁ!! どいつもこいつも、私の邪魔ばっかしやがってぇ!!」

 

「うわぉ、とうとう清楚のせの字もなくなったね」

 

「うるさい黙れクソマスク野郎!! 覚えてなさいよ!! アンタ達全員、いつか痛い目見せてやるんだから!! 首洗って待ってろよクソ共がぁ!!!」

 

もはや取り繕う事すらしなくなり、他のプレイヤー全員に向かって暴言を吐き散らす幸。

 

しかし、そこに英寿が冷たく言い放った。

 

「残念だが、それは無理だな」

 

「あぁ!?」

 

「脱落が決まった以上……君はこれから、全てを忘れる」

 

英寿がそう告げた時だった。

 

幸のドライバーにセットされていたホワイティーのIDコアが、青白いノイズが走ると共に消失。

 

それに続いて、幸の全身にも青白いノイズが走り始めた。

 

「な、何よこれ……!? こ、こんなの、聞いてな―――」

 

≪RETIRED≫

 

響き渡る無情な音声。

 

幸がその場から完全に消え失せた後、残されたデザイアドライバーが床に落下し、それをツムリが拾い上げた。

 

「これで雪ノ下幸様は、仮面ライダー“失格”となります」

 

それだけ告げて、ツムリは回収したデザイアドライバーを持って立ち去って行く。

 

その光景を見ていた紬は、隣に立っていた勇海に問いかける。

 

「あ、あの……幸さんは、どうなったんですか?」

 

「……デザイアグランプリに関する記憶を消されて、元の生活に戻されただけだよ。少なくとも死んではいない」

 

「そ、そうですか」

 

幸が死んだ訳ではないとわかり、ホッとする紬。

 

それとは逆に、勇海は冷たい表情を浮かべていた。

 

(まぁもっとも……元の生活に戻れたからって、平穏な人生に戻れるとは限らないけどね)

 

 

これは、少し先の未来のお話。

 

雪ノ下幸のその後は、勇海が予測していた通りの展開となった。

 

幸がこれまで起こしてきた殺人事件。

 

彼女は自身がその犯人だと特定されないよう、事件に関する証拠品は全て隠滅していた。

 

しかし不幸にも(・・・・)、彼女が隠滅したはずの証拠品は、諦めずに捜査を続けてきた警察によって発見されてしまった。

 

それにより、事件の犯人が幸である事が、警察に突き止められてしまったのだ。

 

言い逃れができない状態に陥った幸を、警察は殺人の容疑で逮捕。

 

このニュースに、彼女が通っていた高校のクラスメイトや教師達は、大いに驚かされる事となった。

 

それに加えて、このニュースを知った幸の両親は、「雪ノ下家の歴史に傷を付けた」という理由から、幸との縁を完全に切る事を決意。

 

幸は雪ノ下家から、永久追放される事が決定した。

 

デザイアグランプリに関わった事で、これまで自身が持ち得ていた物を全て失う羽目になってしまった幸。

 

そんな幸の行く末を、紬が詳しく知る事は最後までなかったという……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued……

 




仮面ライダーギーツ!

紬「お願いします! 私を鍛えて下さい!」

英寿「これで、残るプレイヤーはあと5人か」

冴「やるからには厳しくするわよ」

龍之介「今回のデザイアグランプリ、最後に笑うのはこの俺だ……!」
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