強き呪いは猛りて爆ぜる   作:ゾエア

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黒曜石は砕けない

 

 

「よかったのカ。」

「ん?何が?」

 

異様な呪骸の頭部が見える。茶色い木造のからくりじかけと、頭部のスピーカーから独特な音声を発しながら、メカ丸は問いかけた。緑色のカメラアイは明滅し、簡易メンテナンスで各部の武装を出したり収めたりしている。高出力の呪力が放たれる砲口には安全装置がつけられていた。

耀は展開されている腕部の出力機構を眺めながら暇を潰す。

 

「東堂と真依は打ち合わせの付き添いに東京ヘ。てっきりあんたも行くかと思ってナ。」

「俺はパス。せっかく東京行くのに東堂のお守りなんて嫌だろ?アイツ個握目当てだし、確実に巻き込まれるぞ。」

 

 

耀はそう愚痴りながら続けて理由を述べた。

──嘘だナ。

乙骨が特級に返り咲いてから、周囲の反応は様々だった。あるものは納得感とともに理解を示し、あるものは畏敬の念を持っていた。耀は前者だ。自分を負かした男が強いと嬉しいものなのかもしれないが、メカ丸にはいまいち理解できなかった。そんな耀が東京にいる特級術師に()()()()しに行かないはずがない。恐らくどこからか乙骨の不在を聞き取ったようだ。やる気を見せなくなっている。

ちなみにもう一人の最強にはわざわざ会いに行こうとはしない。

 

「乙骨なしだろ?人数足りんくて一年も入るだろうしなぁ。今度は爆破なしで結構立ち回れると思うのに口惜しいね。」

 

交流会は後遺症を負うレベルの戦いは厳禁だ。もちろん殺害もなし。耀の起こす爆発は殺傷能力が高過ぎて、度々制限されてしまう。初日の団体戦よりも二日目の個人戦を想定しているようだった。

 

「秤が出るんだったら俺も存分にやれそうだったな!」

 

秤は京都出向時に術師とトラブルを起こして停学中だった。遠目に見えた領域の外殻から、彼の実力と結界内での立ち回りを夢見ていたようだ。

 

「あっちで宿儺の器が死んでル。最近はきな臭い噂も多イ。そんな中停学するとは大したもんだナ。」

「…そだな。」

 

恐らく東京に()()()()学生を見たくなかったのだろう。自分より年下の、一年生が一人死んでいる。任務中だったのだろうか。世界から宿儺の指が減ったのを喜ぶことだってあるだろうに。

メカ丸はメンテナンスを終え、展開していた武装を戻す。彼は、眼前の三年生の意外と感傷的なところが嫌いじゃなかった。

 

「東堂がいなくて暇なのカ?」

「いや全然。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ 来たぜ」

 

「あら お出迎え? 気色悪い」

 

京都高専の面々が顔を出した。190cmを越す体格の頭にドレッドヘアの男。箒を握る金髪の女子。日本刀を腰に差す長髪の女。目を閉じるように薄めている黒髪の男。木造の茶黒いロボット。毒気づく女。そして紺髪に軽装の男。七人勢揃いである。

 

「うるせぇ早く菓子折り出せコラ。」

「しゃけ」

 

それに応えていく東京校の面々。一人荷物を携えた茶髪の女はどうやら間が悪いらしい。京都土産を期待している。銀色がかった白髪の男は鮭を所望しているようだった。

 

「怖…」

「腹減ってんじゃねぇの?」

「乙骨いねぇじゃん」

「乙骨がいないのはともかク、一年二人はハンデが過ぎないカ?こっちは数も多イ。」

「呪術師に歳は関係ないよ。特に伏黒君。彼は禪院家の血筋だが──宗家より余程できが良い。」

「チッ」

「何か?」

「別に。」

 

騒がしいことだが、早速喧嘩が勃発しそうであった。それも京都校のみで。そこに特徴的な傷痕を残す女性が声をかけた。

 

「はーい。内輪で喧嘩しない。まったく…」

 

歌姫は京都校の仲の()()にうんざりしていた。

 

「で あの馬鹿は?」

「悟は遅刻だ」

(バカ)が予定通りに来るわけねーだろ。」

「誰もバカが五条先生のこととは言ってませんよ。」

「東京校にも問題児がいるんだな…」

 

「おまたー!!」

 

東堂に並ぶ長身に白髪を逆立たせて、黒目隠しの男が手押し台車を押して駆けてきた。

ミーハー的な反応をする女と舌打ちする女。リアクションは様々である。

 

「やぁやぁ皆さん おそろいで。 (わたくし)出張で海外に行ってましてね。」

 

そのまま語り始めた。

 

「はいお土産。京都の皆にはとある部族のお守りを。」

 

独特な形をした異様な人形を京都校の者たちに配り始める。各々は不思議そうな目でそれを見つめる。異様にハイテンションな五条はまだ終わらない。

 

「そして東京都の皆にはコチラ!!」

 

ぐりんっと振り返り、台車に載っていた箱の中身を紹介する。

 

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」

 

 

「はい!!おっぱっぴー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都姉妹校交流会一日目 団体戦

 

"チキチキ呪霊討伐猛レース"!!

指定区間内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利となる!!区間内には三級以下の呪霊も複数放たれており、日没までに決着がつかなかった場合、討伐数の多いチームに軍配が上がる!!それ以外のルール一切なし!!

 

「以上 開始時刻の正午まで 解散。」

説明をしつつ最強(バカ)を締め上げている夜蛾学長。相手を殺したり、再起不能の怪我をおわせることがないように注意を加えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宿儺の器 虎杖悠仁は殺せ。」

「アレは人ではない。故に全て不問。事故として処理する。遠慮も躊躇もいらんぞ。」

 

 

その老人は淡々と述べた。暗い眼窩は光を見せず、垂れ下がる眉毛先と髭が歳を重ねた様を現している。京都高専学長 楽巌寺嘉伸である。

 

「現在肉体の主導権は虎杖悠仁にある。宿儺が出てこなければ呪力で殺すと死は覆らん。一回生だ。縊るのは容易い。」

 

虎杖悠仁を抹殺するように京都校の面々に向けて呼びかける。

 

耐えかねた東堂は障子を蹴り飛ばし、鴨居に手をかけて和室を出ようとする。

 

「下らん。勝手にやってろ。」

「戻れ東堂。学長の話の途中だ。」

 

生真面目な加茂は東堂を諌めた。

 

「11時からの散歩番組に高田ちゃんがゲスト出演する。リアタイ観んだよ。説明これ以上いるか?」

「録画すればいい。戻れ。」

 

加茂はさらに言い聞かせようとするが、逆効果だろう。東堂の沸点は近い。

 

「謀略 策略勝手にやれよ。但し次俺に指図し──

 

 

「──俺が殺る。一人で殺るよ。」

 

 

 

「─っ」

 

「どうせ東堂に合わせるのは無理だろ?俺が肉体もろとも吹っ飛ばせば終わりだ。それで丸く収まる。いいよな?」

 

場を制したのは耀だった。妙に落ち着いた姿は淡々と処理を述べている。話を黙って聞きながらも、どこか穏やかな表情だった。

 

「──好敵手(ライバル)。お前はそれでいいのか?その()()は正しいといえるのか?」

「知らん。ただ最善ではあるだろ。俺にはもう()()()はねぇ。失うもんもな。だったら東京校の皆さんの恨みを独り占めするのは俺がちょうどいい。」

 

「──フンッ」

 

 

東堂はどこか気に入らない様子で去っていった。

 

 

 

「どうします?あの様子じゃ作戦行動なんて無理ですよね。学長も行っちゃったし。」

「どうせアイツ東京陣営まっしぐらでしょ。勝手に暴れてくれるなら、私達は呪霊狩り(ゲーム)に専念すれば。」

「だが、高専に所属する呪術師の中で、虎杖のような半端者がいるのは由々しき事態だ。加茂家嫡流として見過ごせん。」

「指は何本か、少なくとも二本は入ってんだろ?顕現した時のリスクと五条悟の存在。諸々考慮すると、俺なら()()()()()即死はしねぇ。」

「しかし…!」

「五条悟と保守派の争いの代理戦争だ。巻き込まれるのは最小限にすべきだろ。多分東堂は例の質問だな。アレの返答次第で半殺し。その後俺が殺して終わり。加茂は確認するくらいにしとけ。」

 

 

耀はまくし立てるように意見を述べていく。東堂にも他の京都の面々にも、それが最善だと言い聞かせるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[開始一分前でーす。ではここで歌姫先生によるありがだーい激励のお言葉を頂きます。]

「はぁ!?え…えーっと」

 

[そのぉ…時々は助け合い的なアレが…]

[時間でーす。]

 

[それでは姉妹校交流会]

 

 

 

──スタァートォ!!!

 

 

 

 







東堂君の術式解禁で頭が混乱する
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