強き呪いは猛りて爆ぜる   作:ゾエア

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砕破極臨

 

 

 

 

 

「五条悟が 封印されタ」

 

10月31日、しばらく聞けなかった声が通信機から聞こえた。制服を着たそのボディは動くことはなく、彼は行方不明となっていた。歌姫先生は何か勘づいていたようだが、その真相は分からずじまい()()()

 

 

簡潔に情報を伝えてくる。東堂と新田は渋谷へ向かわせ、他の学生たちは別々の任務にあてていると。

 

「……高度な保険ダ。お前が持っていた通信機で条件はマシになったガ 時間がなイ。術師を入れない帳が上がり次第、突入してくレ。幸いお前は近イ。()()の気配を探セ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漏瑚は宿儺の器を探して走っていた。

既に五条悟の封印には成功している。

右掌に馴染んだ()()は五条悟の消耗に貢献したようだ。右腕を赤黒い紋様が走り、脈打ちながら妖しく光る。

 

先程道すがら葬った呪術師の亡骸を捨ておき、そのまま探索を続ける。

真人が宿儺の器を殺してしまう前に、持つ指を全て食わせなければならない。

 

脹相のものと思わしき残穢を発見した。改札を通り、エスカレーターを降りた先に──

 

「宿儺の器!!」

 

──虎杖悠仁が倒れていた。

 

すぐさま駆け寄り、様子を伺う。どうやら戦闘の結果は脹相の勝利に終わったようだ。出血を見るところ、戦闘後間もない。宿儺に代われば傷も癒えるだろう。指を食わせなければ。

 

懐から巻物を取り出す。中に収めているのは宿儺の指。高専から奪ったものと合わせて十本ある。情報の通りであれば、一日に十本も取り込むことで肉体の主導権を宿儺に明け渡すはずだ。

 

虎杖悠仁の顎を片手に、口内に呪物を取り込ませていく。

七本目、八本目、九本──

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

──瞬時に振り返り、周りを伺う。

 

感じた呪力の気配は敵術師か。五条悟を封印した今、警戒すべき相手はいないはず。宿儺はまだ目を覚ましていない。何が起こっている!!帳内に誰が──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────つんざく轟音。

 

 

土煙を纏って人影が立っている。胸部から赤い光がこぼれ、粉塵に反射し揺らめきをみせた。全身から迸る呪力と、圧倒的存在感は戦闘の気配を隠さず、尋ねる用件を明確にしている。

煙が晴れると、その男は紺髪をかきあげて前を見据えた。

 

ここは地下4階。地上から()()()()を通った証は、月の光を覗かせた。蛍光灯の片側が外れ、そのまま落下した。月光はなお光を浴びせ続ける。

 

 

 

「──メカ丸から聞いた。」

 

 

重心を軽く落とし、左半身。左手は固く握られ、右手は軽く開かれた。耳に付いている傀儡は既に言葉を発さなくなった。男は身構える漏瑚の右手に収まった黒曜石に視線を向ける。

 

漏瑚は黒く染まった歯を噛み締める。漏れた情報からわざわざやってきたらしい。しかし()()()()()話と違う。それにこの溢れんばかりの呪力の根源にあるのは──

 

 

「お前を祓う。」「────ガァッ!?」

 

 

 

小手調べの火炎放射。爆発的な呪力出力は尽く焼き付くすはずだった。

 

回避することなく熱波を貫く紺藍。掠らせた右指が二本宙を舞う。

 

そのまま脇腹に拳がめり込む。さらに胴体に二撃。漏瑚の視界が霞む。顔面を大きく占める単眼に、呪力を纏った一撃が突き刺さる!!

 

 

 

──重い!!ただ呪力で強化した拳だけでこの威力!!

 

 

 

「──ッ!?」

 

 

頭部に向けた蹴りを左手でガードする。反動で吹っ飛ばされながらも、何とか体制を立て直した所へ、右膝が突き刺さる。口から血飛沫が上がる。

 

 

「──ヒャアッ!!」

 

 

右掌を向ける。それと同時におびただしい数の噴火口が作られた。その砲口は全てただ一人の術師に向けたもの。獄炎が襲いかかる───!

 

 

建物から爆光が漏れる。それと同時に影が2つ飛び出た。

 

 

一つ目は紫の血を吐き、もう一方の影は拳を振り抜いている。

 

 

「まだまだァ!!」

 

 

空中で右手を向けた。左手を右手首に添えて呪力を装填。炉心は呪力を高圧と高熱に変換して──

 

 

豪炎が空を彩る。爆風が地上を撫で付け、周囲のビル群の窓を叩き割る。

 

陽炎の中から黒い影が飛び出す。それは深い紺色に染まり、光沢を返した。胸部の赤は少しずつ増していく。

呪霊の頭を掴む。指がめり込んだ部位から紫の血が飛び出る。そのままビルの屋上にぶん投げられた!!

 

 

「カ────ッ!!」

 

 

着地の衝撃と同時に背中に突き刺さる拳──地盤が浮かび、フロアを突き破る。その回数6回。連続する爆音は呪霊の悲鳴をかき消す。

 

 

────なんだこの膂力は!!出力が高すぎる。夏油が語っていた話と違う!!術式は爆発を扱うのではないのか!?

 

 

到着した一階で漏瑚は畏怖の汗を流していた。そこに黒曜が蒸気を纏いながら迫る────!

 

「術式は使わないのか!?いや、使()()()()()()!!何らかの"縛り"だな!!」

 

無言の打撃で応酬。当たりか?何にせよ──ッ!

 

 

──道路を転がり、勢いのまま体を飛び起こした呪霊は掌印を形作った。両指を曲げ、親指を組み合わせる。それは大黒天印。生得領域を現実に顕現する。

 

 

領域展開

 

蓋棺鉄囲山(がいかんてっちせん)

 

 

両者は溶岩流れる火山内にいた。天井まで覆う岩石は溶岩流により明るく照らされ、ゴツゴツとした表面をみせる。

息を切らし、歯を食い縛った漏瑚は油断なく視線を向けた。

 

 

──術式も力も効果がない!!領域内の高熱にも耐えている!!底上げによって強化された出力をぶつけるしかない!!

 

呪霊は指を向ける。右掌から溢れる出力は術式をさらに強化して──

 

極の番!!

 

 

巨大な隕石とせり上がった大地が、衝突を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

積み上がった岩山の下から、地響きが起きた。隕石にヒビが入る。そして、黒黒とした影が目を覚ました。胸部の炉心は爛々と赤く輝き、ヒビのように黒い体に筋を伸ばしている。それは脈打ちながら高出力を供給して、蒸気と陽炎を立ち昇らせた。

 

 

「本稼働に必要なものは高熱と高圧。発達した炉心の()()()()には莫大なものが必要だ。」

 

 

漏瑚は右掌に輝く呪物の様子から理解した。

──伽藍に埋まる炉。術式に供給せずに体に流していた呪力。まだ不完全だったもの。それに火を入れるには──

 

 

「戦えば分かる。自然の熱。大地の熱。答えはそこにあったんだな。」

 

 

漏瑚は火炎を構える。渦巻いたそれは両手の前に小さく圧縮され──放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない 花御 陀艮」

 

 

 

「まだ 真人がいますよ」「ぶぅー」

 

「真人はまだまだ強くなる だから貴方は 真人を頭に据えたのでしょう」

 

 

「我々こそ 真の人間だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

領域が崩壊する。

中心に座するのは術師。手には至巓核炉を持ち、胸の炉心を赤々と滾らせて、歩き出した。

 

──まだ獄門疆を見つけていない。恐らく夏油が持っていることだろう。()()()()()見つけなければ。限界が来る前に。

 

胸部から徐々に赤熱していく線は体に罅を入れるように広がっている。粘菌による熱量の解放。術式の使用は辺りを自らの体諸共吹き飛ばすだろう。

 

手中の至巓核炉をじっと見る。顔を見上げると──

 

「ほんとに倒したんだ。たまげたね。だが──」

 

 

夏油傑が立っていた。すぐに構えをとり、油断なく見据えた。

 

 

「──放っておいてもよさそうだ。そのうち()()()だろう?至巓核炉は予想外だったが、計画には必要ないね。」

 

機嫌が良さそうだった。五条悟封印に成功し、上機嫌に喋り続けている。

 

「獄門疆は置いてけ。五条悟はこの世界に必要だからな。」

 

「私の夢想する世界には必要ない。それにもう君と会うこともないし。」

 

まともに相対する気はなさそうだった。逃げようとする夏油に向けて、掌印を形作る。結界内に閉じ込めるため──ッ!

 

 

 

 

 

「すぐに挑発にのる。伽藍の子は扱いやすいね。」

 

 

領域展開」「(りょ)域展開(いきてんかい)!!!

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