強き呪いは猛りて爆ぜる   作:ゾエア

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交わした熱い熱視線

 

──呪術師にはまともなやつがいない。呪い相手に必死こいて戦う鉄火場の人種。まず間違いなくイカれてる。そのくせ、保身に余念がねぇ上層部は危ない相手を下っ端にどんどん任せるもんだから大変なこった。そんな中任務をこなして生き残った人間の性質なんぞロクなもんじゃない。力を保つために蹴り合う御三家連中。保守派の息がかかった京都高専にも、仕方なく、半ば()()()()()()()()で通うようなもんだ。だいたい、ろくすっぽ学校に通ってねぇ呪術師家系のヤツが、今更呪術師を養成するようなトコに何が楽しくて──

 

 

どんな女が好み(タイプ)だ?

 

 

眼前の男はそう問いかけてきた。背丈は高く、190cm以上はあるだろう。服に収めた巨体はみるからに筋肉質で、ドレッドヘアも相まってかなりの威圧感を与える。額から左頬にかけて走る傷跡が強面を完成させていた。

 

「…初対面の相手に向けた質問じゃねぇな。」

 

耀の背丈は齢15ばかりの頃から著しく伸びるようになった。伽藍の男は平均して165cmに満たない身長だ。しかし耀は既に190cmにさしかかろうとしている。一族の中でも稀に見る体躯であった。鍛錬を重ねた肉体はますます耐爆性を上げ、術式行使による負荷をものともしない。

 

高専入学諸々の手続きを終え、学内へ挨拶にでも行こうかという途端にこの始末だ。耀は先の言葉を顎で促した。

 

 

「自己紹介が欲しかったか?一年の東堂!好み(タイプ)身長(タッパ)(ケツ)がデカい女!これ以外に何か聞きたいことでもあるか?」

 

「コレが同級生か。なかなか()()()学生生活を送れそうだな。一年の伽藍だ。伽藍堂の伽藍。そんでタイプって?」

 

「女の好みだ。性癖にはソイツの全てが反映される。つまらんやつは女の趣味もつまらん。この前聞いたやつは答えもなかった。お前はどうだ伽藍?」

 

 

耀は律儀に会話しているが、相手の口実作りに気づいている。立ち上る呪力。

男は返答次第で、いや返答があればそれだけで()()を起こすと。

巫山戯て返してもいいが、どうせ戦るなら怒らせて先手を誘おう。正当防衛でもなんでも、先に手を出されでもすればどうってことはない。流石に自分の弁が信用されるだろう。そうして耀は、一つ息をついて──

 

 

 

 

腕と腿がゴツい女

 

 

 

 

 

──瞬間東堂の脳内に溢れ出した

()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは光沢を持つ群青色の外殻を纏い、二足歩行する獣であった。棍棒じみた尻尾をピンと張り、前傾姿勢を見せる様子は獣脚類のそれだ。しかし一般的な獣脚類と違い、その前足は大きく発達している。鉄柱のような形状は打撃に特化した進化だ。さらに角のようにひとつ丸く突き出た頭殻も特徴的だ。腕や頭殻の先にゲル状の緑の物体を付着させ、それらは仄かに輝いている。

 

 

俺はこの獣だった。マグマ吹き出す活火山の火口付近に居を構える大型の雄。周囲に溶岩流が流れ落ちる広間で、俺は食物連鎖の頂点に立っている!!

そこに現れたのはもう一体の獣。俺に迫るほどの巨躯と鍛え磨かれた鈍く光る外殻。縄張りに雄が二頭対峙した。言葉はいらない。まもなくぶつかり合う!!

 

 

瞬時に迫る紺剛!!

初撃のタックルは互角だった。衝撃が火山を揺らす。すかさず首に噛み付く。

硬い!!牙は通らずとも芯を掴んだ。そのまま振り回す!!

 

脳に響く衝撃。返す拳に頭を撃ち抜かれた。

踏ん張りの効かない状況でこの威力!!

そのまま二撃目の鉄拳が迫る──!!

 

効かーん!!豪脚に力を込め受け止める。重さはこちらが上!!質量差で圧倒する!!

 

殴り合いながら転がり回る。外殻の硬さと一撃の重さでは負けている。だが!!こちらは手数で勝っている!!前腕をいなして蹴りを当てる!!体制を崩すと同時にマウントをとった!!

 

この瞬間俺の脳内CPUがハジき出した予測は…

 

 

 

勝利(ビクトリー)〟!!!!

 

 

 

 

 

 

 

────頭突きがマウントポジションを弾き飛ばした。

高く飛ばされた獣は放物線を描いた後に落下し、溶岩流とともに流れ落ちていった。縄張りを得たのは侵入者の方であった。そのまま獣は勝鬨をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「火山の頂き……か。」

 

男は呪力を練り上げながら構えをとる。

 

どうやら俺達は〝好敵手(ライバル)〟のようだな

「女の好みだけで?」

 

 

東堂はトップスピードで仕掛けてきた。予想できた一撃。耀は焦らずに防御し──

 

「──ッ!」

 

屋根の一角に吹き飛ばされた。煙と木くずが舞う。

 

「軽い!軽いぞ伽藍!!そんなもんじゃないだろうお前は!!」

 

東堂は制服を脱ぎ投げインナーを破り捨てる。

 

 

「……筋肉達磨が」

 

耀の沸点はそこまで高くない。

適当に一発()()()()()()()そこで終了の予定だった。

しかし諸々の準備と高専入学への愚痴。そこにゴリラからの一撃である。思っていた以上に堪忍袋を満たしていた。

高専内の呪力登録を済ませていたのも大きい。結界内で暴れても警報は鳴らない。

 

 

瓦が吹き飛んだ。

弾丸のように迫る藍色。

今度こそ現実でぶつかり合った。

 

「術式は勘弁してやるよ!」

「あの広間の続きをするぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正当防衛──なんて言い訳使えると思う?」

 

白いリボンで髪を留め、巫女服に身を包んだ女性がよく通る声を発する。

今年は加茂家の次期当主に、伽藍家の麒麟児と、中々のメンツが入学する。そんな中で早速()()()()()()2人を見ながら、これからの心労を予想し歌姫は深く息を吐いた。

 

2人は仲良く遊んだようだった。土埃にまみれた上半身裸の男はより一層目立つ。しかし何か納得したような、どこか晴れ晴れとした表情であった。

 

「どうやら術式による破壊力の上乗せも可能なようだな。その硬質化した拳は明らかに、何度も打ち鍛えた結果だ。」

「そうなりゃお前はもっと派手に吹っ飛んでる。呪力操作と戦闘センスは認めるが…。人間性はどうなんだよ。高専は歓迎会が賑やかなのか?お前の感性か?」「好敵手(ライバル)でいい。」

「距離の詰め方キモイな。普通名前とかだろ。」

「大体ねぇ!アンタ達派手に騒ぎ過ぎ!ボゴバゴ聞こえて何事かと思ったら!一年が暴れて止められそうにないってなによそれ!」

「ハイ!」

「何か申し開きが?」

「全部東堂君が壊しました!」

「そういうこっちゃないのよ戦闘自体やめろって言ってんのよ!」

 

 

なおも続くヒステリーに男達は耳を貸していない。

敷地内の惨劇は如何程か。いくらか漆喰の壁を拳で叩いた跡が見える。木片が散乱し、尖った先をこちらに向けている。吹き飛んだ石畳やぽっかりと穴の空いた校舎はお互いの破壊力を褒め称えるようだ。

 

 

「処分は後ほど伝えます!しばらく大人しくしとくこと!いいですね!!」

 

「高専ってのも大変なんだなぁ」

「ライブには行くぞ」

「あ゛ぁん!?」





結局このくらいの文量が限界でした。
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