身勝手(波導)の極意、ルカリオ   作:全智一皆

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序章「頂に至ってしまった者」

 

 

■  ■

 私の名はルカリオと言う。それ以外の名前はない。

 なんて、人間達が読む本の様な始まりを真似てみたけれども、だから何なのだという話しか。

 特段、私から何を語るでもなし。そうする必要も意味も、大してないのだから。

 私はただ、静かな時を過ごしているだけ。故に、他の誰かに語るべき事など何も無い。

 あぁ、だが。周りの事は知らないが、私自身の事について語る事は出来るか。

 自分で言うのも何なのだが、私は産まれた時から他の皆とは何もかもが違っていた。

 いや、それはあまり正しくないか。何もかもとは言ったが、私の姿形は他のルカリオ達と同じだった。

 言い直すなら、他のルカリオ達とは決定的に異なる点があった…か。

 だが、それを語る前に、まずは私達ルカリオの性質を話さなければ理解は難しいだろう。

 私達ルカリオは、人間達から波導ポケモンと呼ばれている様に、波導というものを読み取り、扱う事が出来る。

 波導とは、ありとあらゆるものから発せられる意思の様なもの。もしくは、単なる波と捉えても良い。

 私達はそれを知覚し、相手の姿や心情を認識する事が出来る。これが、ルカリオという種族が波導ポケモンと呼ばれる所以だ。

 私は、そこが違った。波導を操るという一点が、他とは異なっていた。

 私は常日頃から、一つの波導ではなく周囲にある全ての波導を感じ取っていた。

 大袈裟な表現をしてみれば、森羅万象全ての波導を感じ取っていた。

 それが原因なのかは分からないが、私は他の同族とは違いオーラの様なものを身に纏っていた。

 青白い気に全身は覆われ、同族が真紅の瞳であるのに対して私の眼は薄い白銀だった。

 それ故に、私は疎まれていた。誰もが近付けない程の波導を身に纏っていた私は、同族からも見放されていた。

 だが、別にそれを恨んでいる訳ではない。寧ろ正しい判断だと喜んでいた。

 私の様な存在は、まさしく世の理から外れた存在なのだろう。そんな危険物に近寄るのは自殺行為に等しい。

 同族が死ぬ事は、私にとってもあまり気持ちの良いものではない。無論、同族以外の者達が死ぬのもだ。

 故、私はたった一人でこの薄暗い洞窟の奥底に座って生きている。こうすれば、誰も私を見付けぬだろう。

 ただまぁ、この体の性質上、誰かが近付けば私はすぐにそれに気付いてしまう為、此処に居る事は大して意味のない事なのだが。

 それでも、他者が多い場所に居るよりはマシだろう。その所為で迷惑を掛けては、私が排除されかねない。

 もし、私を見付けた者が居るならば―――その時は、要相談と言うべきか。

 出来る事なら、心優しい人物である事を願おう。今出来るのは、そればかりだ。

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