こんな個性で人助けしてもギャグにしかならん気がするんだが 作:クロマ・グロ
先程の打ち合わせが終わった後、二手に別れた俺達は早速パトロールに移行する。
ただ俺は事前にサー・ナイトアイに確認を取って出久と通形先輩……いや、デクとルミリオンさんに隠密性の高いちびネコダラボッチと連絡用兼俺達の所にいる天空のネコに映像を投影する為のちびネコUFOを数匹送っていた。
俺達の方はあえて事務所に残り偵察用のちびネコUFOをマークしていた場所の全てに3匹ずつ放って死穢八斎會の動向を探っていた。
俺達が事務所に残ったままの理由としては天空のネコをプロジェクターと同じような扱いでちびネコUFO達の見ている光景を投影してより証拠集めに徹するためだ。
人による監視じゃどうしてもバレる可能性も高く限界もあるからな。
まぁサー・ナイトアイの個性ならむしろ気付かれる前に撤退するのは余裕だろうが。
そんなこんなで監視を続けているとサー・ナイトアイが俺に話しかけてくる。
「それにしてもこれだけの情報を貴様はいつも脳内のみで処理しているのか?」
「いや、さすがにいつもはもう少し少ないですよ。
ただ今回は脳内に直接じゃなくて天空のネコを介して映像として見ているのでかなり負担は少ないですよ。」
脳内処理に関しては思考を分割することでかなりの数が可能だがそれでも限界はある。
特に今回みたいな数に物を言わせて捜査するとなるとこうして映像として投影して視界で確認した方が圧倒的に楽なんだよなぁ。
とはいえ脳内処理に比べると情報処理能力はどうしても落ちるから場合によりけりな訳だが。
「んー、見た感じただの勧誘ばかりですね。」
「あぁ、だが解体前の構成員達を呼び戻すだけじゃなく別の所からも勧誘しているところを見る限り何か大きな事を仕出かそうとしているのは間違いないだろう。
だがやはり決定的な証拠となるものは死穢八斎會の内部まで探らねば得られぬか……。」
さすがに隠密性が高いとはいえ警備や警戒の厳重な拠点付近に近付くのはリスクがある。
もし気付かれた場合余計に警戒されてしまうからな。
するとデク達につけていたちびネコダラボッチ達がある人物達を発見する。
「っ!サー・ナイトアイ、バブルガールさん。
デク達の方で治崎を発見しました。」
「何?」
「今ちびネコUFOの視界にも映ります。」
俺はデク達方面のちびネコUFOの視界を写しているモニターを大きくする。
「現場の音声も拾います。」
すると画面の方ではちょうどデクが倒れた少女を助けようとしているタイミングだったが……俺はその少女にかなりの違和感を覚えた。
…………包帯だらけな上にかなり汚れていてかなり怯えている様子だった。
それに裸足というのも気がかりだ。
『ダメじゃないか、ヒーローに迷惑かけちゃあ。』
「っ!オーバーホール!」
『うちの娘がすみませんねヒーロー。
遊び盛りでケガが多いんですよ、困ったものです。』
……人が良さそうには見えるがヤクザなのには違いない。
この手の誤魔化しや演技もお手の物って訳か。
それにしても……。
「サー・ナイトアイ、治崎に娘がいるって情報……ありました?」
「いや、我々も掴んでいない。
おそらくは義理の娘、もしくは死穢八斎會の誰かしらの娘という事だろうが……それらしいものはやはり無いな。」
するとルミリオンはデクの方へと移動してデクにフードを被せる。
『あっ。』
『またフードとマスク外れちまってるぜ。
サイズ調整ミスってるんじゃないの?
こっちこそすみませんぶつかっちゃって。』
デクのやつ表情に出過ぎてたからな。
ルミリオンのフォローはとてもありがたいな。
『その素敵なマスクは八斎會の方ですね?
ここらじゃ有名ですよね。』
『ええ、マスクは気になさらず。
汚れに敏感でして……お二人とも初めて見るヒーローだ。』
『そうです、まだ新人なんで緊張しちゃって。
さっ立てよ相棒、まだ見ぬ未来に向かおうぜ。』
初めて見るヒーローだ……ねぇ。
あの二人はある意味世間でかなり目立っている二人だ。
それに対して初めて見るというのは若干怪しい。
それに加えて……汚れねぇ?
『どこの事務所所属なんです?』
『学生ですよ、所属なんておこがましいくらいのひよっ子でして。
職場体験でいろいろ回らせてもらってるんです。
では我々、昼までにこの区画を回らないといかんので……行くよ。』
『あ、はい。』
「…………明らかに警戒しているな。」
「正直デクはともかくとしてルミリオンは世間でもそれなりに注目されてます。
今は気付かなかったとしてもいつ勘付かれるかわかったもんじゃないですね。」
「ふむ……ネコマンダー、監視として尾行させろ。」
「了解。」
すると少女は行こうとするデクを強く掴む。
『い……行かないで……。』
『あ……あの……娘さん……怯えてますけど?』
『叱りつけた後なので。』
『行こう!』
『いや……でも……。』
デク!あのバカ!
俺は急いでネコダラボッチに感覚共有でデクの耳元まで移動させて小声で伝える。
「バカ野郎、今は引け!
そっちの少女に関しては尾行を付けとく。」
『っ!ごめんね……後から必ず助けに行くから。』
デクはマスクを付けて気付かれないように小声で少女にそう伝えると立ち上がる。
『ご迷惑をおかけしました。
それではお仕事頑張って……。』
結局少女は怯えた様子で治崎のもとまで戻り、路地裏へと踵を返していく。
もちろん尾行はつけるが……どこまでバレずにいけるかの勝負だな。
「はぁ……あのバカ。」
「ナイスフォローだネコマンダー。
デクめ……下手をすれば捜査に支障をきたす所だった。」
「いやぁ……ひやひやしましたねぇ……。」
それから少しするとデク達の方からも連絡が入り、一旦指示を仰ぐ為に帰還するとのことだった。
さらにしばらく尾行を続けていくと治崎達の拠点に到着する。
さらに白装束にペストマスクをつけた人物と合流し、先程の少女を抱かせて移動していく。
『最近の若者は一段と病んでるな。
玄野、風呂の用意をしろ。』
『へい。』
するとまた別のペストマスクをつけた組員と思われる人物が焦ったようすで治崎の前に出る。
『す……すんません若頭。
ちょっと目を離した隙にそのガキが逃走しやが……』
『掃除もだ。』
『へい。』
だが治崎はその組員に邪魔だとばかりに手で触れるとその瞬間組員は血だけになってその場で破裂していった。
「ッ!?!?」
「バブルガール……撮れているな?」
「え……えぇ……ですが今のは一体……?」
「奴の個性だろうな。
だが触れただけであの状態となるか……。
とはいえこの映像だけでは証拠としては弱い、いくらでも言い逃れは出来るだろう。
それにしても私の失態もあるな……事前に二人を"視て"いれば防げたな。」
「ですが尾行を着けることには成功しました。
二人も無事ですし今までに無い情報も得られてます。
プラスかマイナスかで言えばプラスでしょう。」
「あぁ……だが確実に警戒は強まっている。
注意せねばならぬな。」
治崎達がしばらく拠点を移動していくとおそらく一番奥のと思われる地下深くの部屋に到着する。
『壊理、わがままはもうよせよ。
お前は計画の核なんだ。
頼むからもう俺の手を汚させないでくれ。』
計画……?
『…………そこか!』
「っ!すみませんサー・ナイトアイ。
ちびネコダラボッチ及びちびネコUFO……全て消されました。」
どうやって気付いた?
他の探索系の個性持ちならともかく治崎に感付かれて消された。
…………よほど勘が良い……としか言いようがないが不可解だな。
それに嫌な予感しかしないな。
今回の事件……一筋縄じゃ行かなそうだ……。