こんな個性で人助けしてもギャグにしかならん気がするんだが 作:クロマ・グロ
「なっ!?」
「個性を壊す薬!?」
「えっ!?環大丈夫なんだろ!?」
流石のプロ達や他の皆も個性を壊すというとんでもないカミングアウトに黙ってはいられなかったようで一気にざわめき出した。
当然だろう。
こんな物が出回ってしまえば個性頼りのプロヒーロー達は一撃で戦闘不能に追いやられてしまう。
それだけじゃない。
もしこのクスリが完成してしまい個性の破損が永久的となってしまった場合それは人を守るヒーローを実質引退に追い込み、ただの市民……それも今の世の中では差別され普通に生きることすらも難しい無個性となってしまうからだ。
俺はこの薬の存在を知ってからすぐに対策を立てたが詳しい原理がまともに分からない以上その対策もどれだけ役に立つか分からない。
下手したらまたネコムートが暴走する可能性すらあるのだ。
「あぁ、寝たら回復したよ。
見てくれ、この立派な牛の蹄。」
「朝食は牛丼かな?」
天喰先輩は心配いらないとばかりに腕を牛の脚へと変化させて見せる。
というかこれだけでなに食べたかだいたい想像つく通形先輩って……まぁ付き合いが長いみたいだから当然か?
「回復するなら安心だな、致命傷にはならねぇ。」
「いえ、その辺りはイレイザーヘッドから。」
「俺の抹消とはちょっと違うみたいですね。
俺は個性を攻撃している訳じゃないので。」
確かに……あくまでも相澤先生は使えなくするというだけで個性解除後はすぐに使えるようになる。
だがこっちは食らえば個性因子にダメージを受けてしばらく使えなくなる。
回復するとはいっても何度も食らったりでもしたらどうなるか分かったものではない。
「基本となる人体に特別な仕組みがプラスアルファされたものが"個性"。
そのプラスアルファが一括りに"個性因子"と呼ばれています。
俺はあくまでその個性因子を一時停止させるだけでダメージを与えることは出来ない。」
「環が撃たれた直後、病院で診て貰ったんやがその個性因子が傷ついとったんや。
幸い今は自然治癒で元通りやけど。」
そしてサー・ナイトアイがついにこの弾丸の正体を聞き出した。
「その撃ち込まれた物の解析は?」
「それが環の体は他に異常無し、ただただ個性が攻撃された。
撃った連中もだんまり、銃はバラバラ。
弾も撃ったきりしか所持して無かった!
ただ、切島君が身を呈して弾いたお陰で中身の入った一発が手に入ったっちゅうわけや!」
「うおっ!?俺っすか!?
びっくりした急に来た!?」
鋭児朗……ちゃんと話聞いとけよ……。
「切島君お手柄やん。」
「かっこいいわ。」
「硬化だよね、知ってる!うってつけだね。」
「そしてその中身を調べた結果むっちゃ気色悪いもんが出てきた。
人の"血"や"細胞"が入っとった!」
っ!!!!
俺は今の言葉を聞いただけで全てが繋がった。
あの壊理と呼ばれていた監禁されていた少女……包帯だらけの体……そして治崎の口振りから計画の中核となっていると思われる事実……。
どう考えてもこの弾丸の中身は壊理ちゃんの肉体の一部だ!
「ええぇ……。」
「別世界のお話のよう……。」
「ああっ……。」
そして同じく正体に気が付いたのか通形先輩と出久が冷や汗まみれになって青い顔をしている。
「つまりその効果は人由来……個性ってこと?
個性による個性破壊。」
「うーん、さっきから話が見えてこないんだがそれがどうやって八斎會と繋がる?」
「今回切島君が捕らえた男……そいつが使用した違法薬物な。
そういうブツの流通経路は複雑でな、今でこそかなり縮小されたがいろんな人間、グループ組織が何段階にも卸売りを重ねてようやっと末端に行き着くんや。
八斎會がブツを捌いとった証拠はないけどその中間組織の一つと八斎會は交流があった。」
「それだけ?」
まぁ確かにこれだけではこの人数のヒーローを集める理由にはならない。
それにリューキュウと麗日さん、蛙吹さんがいる辺りそっちにも何か関係があるのだろう。
「先日リューキュウ達が遭遇したヴィラングループ同士の抗争。
片方のグループの元締めがその交流のあった中間売買組織だった。」
「巨大化した一人は持続が短い粗悪品を打っていたそうよ。」
「最近多発している組織的犯行の多くが八斎會に繋げようと思えば繋がるのか。」
「八斎會をどうにかクロにしたくてこじつけたような……もっとこうバシッと繋がらんかね。」
俺はナイトアイからの合図を受けて画像を切り替える。
治崎の画像だ。
「若頭、治崎の個性はオーバーホール。
対象の分解、修復が可能という力です。
分解、一度壊し直す個性……そして個性を破壊する弾。
治崎には壊理という名の娘がいる。
出生届もなく詳細は不明ですがミリオと緑谷が遭遇した時は手足におびただしく包帯が巻かれていた。
そしてその壊理という娘だが猫城の個性を利用した追跡によって八斎會のアジト地下深くの一番奥と思われる部屋に監禁されていることがわかった。」
俺はにゃんこの移した映像越しに撮影した壊理ちゃんの画像を出す。
「まさかそんなおぞましいこと……。」
「超人社会だ、やろうと思えば誰もが何だってできちまう。」
「何?何の話っすか?」
相変わらず話についていけてない鋭児朗達。
だがここでロックロックがイラついたような様子をまた見せる。
「やっぱガキはいらねぇんじゃねえの?分かれよな?
つまり治崎って野郎は娘の体を銃弾にして捌いてんじゃね?ってことだ。」
「「「っ!?!?」」」
「そっ……。」
「そんな……。」
三人はようやく今話している事がどれだけのおぞましいのか理解したのか青い顔をし始める。
「実際に銃弾を売買しているのかは分かりません。
現段階では性能としてあまりに半端です。
ただ仮にそれが試作段階にあるとして"プレゼンの為のサンプル"を"仲間集め"に使っていたとしたら?
確たる証はありません、しかし全国にわたる仲間集め、資金集め……もしも弾の完成形が完全に個性を破壊するものだとしたら……悪事のアイデアがいくつでも沸いてくる。」
「想像しただけで腸が煮えくり返る……!
今すぐガサ入れじゃ!」
だがロックロックはまだ甘く見ているのか不用意な発言をする。
「ケッ、こいつらが子供保護してりゃ一発で解決だったんじゃねぇの?」
「…………貴方は治崎の個性オーバーホールの適応範囲がどれだけのものかを知っててそれを言っていますか?」
流石に俺はこの人の態度に対して我慢の限界が来たので言い返す。
それにいい加減放置してたら母さんが先にキレそうだ……というかもうだいぶキレてる。
「…………。」
うっわ……すげぇ殺気……。
「あぁ?どういう意味だ?」
「こちらをご覧ください。」
「っ!まて猫城!それは!?」
サー・ナイトアイが止めるが流石にこれは事前に把握させてなきゃあまりにも危険すぎる。
女子達には悪いがここはちゃんと把握して貰わないと。
俺はとある映像を全員の前に投影する。
『す……すんません若頭。
ちょっと目を離した隙にそのガキが逃走しやが……』
映像で投影されたペストマスクの男は煩わしそうに振られた腕に触れただけで血液だけになって撒き散らされていた。
「…………っ!?!?」
「ここまでやれるような奴です。
真正面から作戦も無しに突っ込めばどうなるかはご覧の通りですよ。
出久はあの子を救おうと接触した、だが通形先輩はリスクを考えてあえて引くことを決断しました。
そして俺のにゃんこによる追跡でなんとかアジトの内部に侵入することには成功しましたが未だ彼女は監禁されたままです。
今この場で一番悔しいのは二人ですよ。」
「っ!!今度こそ必ず壊理ちゃんを!」
「「保護する!!」」
流石に出久と通形先輩もここまで言われてなにも言わずにはいられなかったのか急に立ち上がってその決意を口にする。
「そう、それが私達の目的となります。」
「…………ケッ、ガキが粋がるのも良いけどよ。
推測通りだとして若頭にとっちゃその子は隠しておきたかった核なんだろ?
それが何らかのトラブルで外に出ちまってだ。
あまつさえガキんちょヒーローに見られちまった。
素直に本拠地に置いとくか?俺なら置かない。
攻め入るにしても"その子がいませんでした"じゃ話にならねぇぞ。
どこにいるのか特定出来てんのか?」
この人……口こそ悪いが実際は結構この二人の事考えてるのか。
かなり冷静に状況判断が出来てる。
…………あぁ、これ勝己と同じタイプのツンデレか、誰得過ぎないか?
「確かに……どうなの?ナイトアイ。」
「問題はそこです。
何をどこまで計画しているのか不透明な以上一度で確実に叩かねばならない。
そこで八斎會と接点のある組織、グループ及び八斎會の持つ土地……可能な限り洗い出しリストアップしました。」
俺は再び投影する画像を切り替えて日本の地図に複数のマークがしてある画像を投影する。
「皆さんには各自その箇所を探っていただき、拠点となり得るポイントを絞って貰いたい。
一ヶ所は猫城のお陰で大方の内部構造まで把握できたが同じようなアジトが他にもないとは限らないし地下からの脱出ルートがあった場合既に移動させられている可能性が高い。」
正直ネックなのはそこだ。
確かにこの間の潜入である程度の内部構造は調べられたが全てではない。
それに脱出用のルートと思われるものも複数確認出来た。
「それで俺たちのようなマイナーヒーローが呼ばれたのか。」
「どういうことだ?」
「見ろ、ここにいるヒーローの活動地区とリストがリンクしてる。
土地勘のあるヒーローが選ばれてんだ。」
俺も記憶を洗い出してなんとか気付けたのだがこの地図に入っているマークの場所の全てにこの場にいるヒーローが必ず入るようになっていた。
マイナーがかなり居たからすぐに気付けなかったがおそらく出久はすぐにわかったんだろうな……。
「オールマイトの元サイドキックな割に随分慎重やな。
…………周りくどいわ!こうしてる間にも壊理ちゃん言う子泣いてるかもしれへんのやぞ!」
「落ち着きなさいファットガム!少し頭を冷やしなさい!」
「げぶらっ!?」
あ、母さんにファットガムがぶっとばされた……ってか壁にめり込んでるが大丈夫か?
「な……なにすん……セイントはん。」
ファットガムがピクピクと痙攣しながらそう言うがその疑問の答えをサー・ナイトアイとグラントリノが答える。
「…………我々はオールマイトにはなれない。
だからこそ分析と予測を重ね助けられる可能性を100%に近づけなければ。」
「焦っちゃいけねぇ、下手に大きく出て捕らえ損ねた場合火種が大きくなりかねん。
ステインの逮捕劇が連合のPRになっちまったようにな。
むしろチンピラに個性破壊なんつう武器流したのもそういう意図があってのことかもしらん。」
…………ステインの影響か。
確かにいまだに根強く残っている問題だ。
それにオールフォーワンの影響だって逮捕後にもまだ大きく残っている。
…………これは無視するにはあまりにも大きすぎる問題だな。