こんな個性で人助けしてもギャグにしかならん気がするんだが 作:クロマ・グロ
放課後の夜、寮で俺達はそれぞれの班に別れてまた話し合いを行っていた。
「てめえ走ってんだよ!俺に続けや!」
「いや、お前がアレンジすっから混乱すんだよ!」
「なら勝己がアレンジしてそれに合わせたのと元の曲のを一度試して聞き比べてみればいいんじゃないか?」
「あ、猫城それナイスアイデア!」
勝己は確かにアレンジこそしているが原曲のリスペクト自体はちゃんと存在しているしバランスを崩しすぎないように配慮はしている。
とはいえ初心者にアレンジをアレンジで合わせろは流石にハードルが高いから後で耳郎さんと相談して譜面を見直さないとな。
「耳郎さん、ご指導も本職さながらですわ。
素人の上鳴さんが1週間でコード進行までたどり着くだなんて。」
「別にそんな……ってか今日のお茶良い香り!」
「ん?どれどれ?」
俺は耳郎さんがやたらとテンションを上げているのを見て興味を持った俺はキャスリィとヒメユリ、ジャンヌを連れて彼女達の元へと向かう。
「っ!すっごく良い匂い!」
「美味しそう!」
珍しくキャスリィ達がかなりテンションを上げているな。
控えめな性格の彼女達が珍しい。
って確かにかなり高級感のある凄い良い香り……ってどっかで嗅いだことあるような?
確か学校の近くにこんな香りのする店があったような?
「これは……!とても良いお紅茶ですね。
とても高価な物ではないですか?」
「分かりますの!お母様から仕送りで頂いた幻の紅茶『ゴールドティップスインペリアル』ですの!
皆さんも召し上がってくださいまし!」
ん?今なんつった?それって確か紅茶の中でも本気で馬鹿げた値段のする最高級品種じゃなかったか?
「よくわかんないけどいつもありがとう!」
「よくわかんないけどブルジョア!」
相変わらずだな芦戸さんと葉隠さんは。
それにしても……。
「アイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイト僕とした事がそんなレアマイトを知らないなんて不覚も不覚グッズは……。」
出久……怖えよ。
流石にそれは誰でも引くぞ。
「デク君、ヤオモモちゃんのお茶飲まへんの?」
「画像ない動画で残っていないかアイテム付きオールマイトアイテム付きオールマイト……。」
「ひえっ!?」
麗日さんすらも引くレベルって……。
だがデクは動画サイトをひたすら探していると間違えて一つのある動画をタップしてしまったようでその動画が出久のスマホから再生される。
「紅茶の動画?」
「はっ!?」
「タイムリー、はい!」
「あ、ありがとう。」
確かに出久の動画にはやたらとこぼれた跡のある紅茶のティーカップが映ってはいるがこの動画はそんな代物ではない。
正直一番この近くでバカをやりかねない為に個人的に俺が警戒しているヴィランの動画であった。
『リスナー諸君はいつどんな紅茶を飲む?
私は必ず仕事前と後、仕事の大きさによってブランドを選ぶ。
そしてこれはロイヤルフラッシュ……つまりどういうことかお分かりか?』
『違いの分かるジェントル!かっこいいってこと?』
『次に出す動画、リスナー諸君だけでなく社会全体に警鐘を鳴らすことになる。
心して待っていただきたい。』
『あぁぁぁぁぁ!!!』
動画に映っていない女性の悲鳴のような歓声が聞こえた後に動画は終了した。
「短っ!」
「この人……。」
「有名な人?評価の割合えぐいけど。」
「そりゃヴィランだからな。」
「えっ!?」
動画には高評価0の低評価785となっている。
それにしても動画のタイトルにわざわざご丁寧に【犯行予告】と来たか。
「僕もなんとなくしか知らないけど迷惑行為で一部じゃ有名なヴィランだよ。」
「えっ。」
「何だかんだ動画まで出して捕まってないのは凄いんだけど次は何する気なんだろう。」
…………やっぱり嫌な予感がする。
文化祭前日、俺達は何事もなく文化祭の準備を進めていた。
今は夜中ではあるがリハーサルや練習を長めにやっておきたいのもあり、先生から特別に許可を貰っていつも以上に長く体育館を借りさせて貰っていた。
「もう体育館が閉まっちまう、最終確認通しでいくぞ!」
芦戸さんが手を叩き、リズムを作る。
それに合わせて俺とヒメユリ、ジャンヌ、キャスリィに加えてバックダンサーとしてネコジャラミ達を含めたダンス隊が踊り始める。
とはいえネコジャラミに任せてるとダンスの習得が間に合わない為にネコジャラミ達全員には俺の分割思考を感覚共有してある。
「いくよ!
トン!トン!ツー!トン!トン!ツー!パッ!」
だが毎回の如く天哉がカクカクとコマ送りのように動く……これはどうにもならなそうだな。
「で青山中央!緑谷はける!」
「ウィ!」
「ラジャ!」
「緑谷!まだ動きぬるいからグッグッ!意識!」
「ラジャー!」
正直最初は素人がいきなりやると言うのもあってかなり心配はあったが全体的にかなり形になってきている。
「緊張してまいりました。」
「本番で変なアドリブしないでね?」
「あぁ?」
「混乱しちゃうやついるから。」
「言い方トゲあんなぁ。」
「上鳴、お前だけではないぞ。」
バンド隊の皆は勝己や耳郎さん以外は皆若干そわそわしており、何も手に持っていないのにも関わらず演奏しているような手付きになっている。
「そんで緑谷は袖からすぐ天井行って!
青山をセットして!ロープで吊り上げる!」
「ウィーーーー。」
「そうそう!良い感じ!」
するとバンッ!と体育館の扉が乱暴に開かれ、外からハウンドドッグ先生が怒った様子で現れる。
「もう9時だろ!生徒は9時までダルォォォオ!!ワウワァァァアオオオ!!!」
「やっべ……帰ります。」
先生、人の言葉じゃなくなってきてます。
俺達は練習を切り上げて寮へと戻っていった。
これで寝て起きたらあとは文化祭な訳だが当日が一番警戒しなきゃいけないな……。
今のうちににゃんこ達を更に増やして雄英に放つとしよう。
だが寮に戻ると…………。
「ウヒャァァア!!眠れねぇぇぇええ!!」
「興奮マックスゥゥウウウ!!!」
「静かに!寝てる人もいるから!」
「みんな盛り上がってくれるだろうか。」
「そういうのはもう考えない方がいいよ。
恥ずかしがったり、おっかなびっくりやんのが……一番良くない。
舞台に上がったらもうあとは楽しむ。」
「お前めっちゃてれってれだったじゃねぇか!」
「あれはまた違う話でしょ!」
すると耳郎さんが俺のところまでやってくる。
「ねぇ猫城、前に言ったサプライズの件……どう?」
「問題ないが……ぶっちゃけ良いのか?歌詞はアレだぞ?」
「そこは猫城のにゃんこ達の演出でどうにかなると思う。
もともとのにゃんこ達にシュールなのが多いから。
兎に角期待してるよ。」
「分かった。」
実は二週間程前に耳郎さんから相談を受けてあの時披露した曲を使ってにゃんこ達をバックダンサーに俺達だけでのパターンもやらないかという話を受けていた。
正直な話問題自体は殆どなく、なんなら楽器の演奏に至ってもそれに最適なにゃんこがおり、にゃんこ達の進化を活かせばパフォーマンスも十分こなせると判断している。
ただ……曲がアレだからな……。
「耳郎さんの話、いろんなことに通じるね。」
「ウィ!
他が為を考えると結局己が為に行き着くのさ。」
「なるほど……あっ、ロープ解れてる。」
「ワオ!ずっと練習で酷使してたもんね。
僕らの友情の証じゃないか。」
「うん、あっいや危ない。
ごめん気付かなくて。」
「八百万に作って貰えば?ですわ。」
上鳴……お前は八百万さんの事なんだと思ってるんだ?
「ヤオモモもう寝てるよ!便利道具扱いしないの!」
「俺のことは充電器扱いするじゃん……。」
「これが男性蔑視……!」
「日頃の行いだ、諦めろ。」
上鳴と勝己、特に峰田は俺達のクラスの中でもかなりの問題児だからな……俺?自覚はある。
「僕あした朝一で買ってくるよ!
気付かなかったのは僕だし……朝練もあるしついでに買いたいものもあるし。」
「いやいや、本番朝10時からだぞ?
店って大体9時からじゃん。」
「雄英から15分くらいのとこにあるホームセンター、あそこなら朝8時からやってるんだよ。」
「結構ギリじゃん。」
俺は脳内に保存したマップデータを調べる。
確かにここは朝8時から……ん?そういやこの前八百万さんが飲ませてくれた『ゴールドティップスインペリアル』ってここの横にある喫茶店から嗅いだことがあったんだったな。
だが俺はこのタイミングであの時出久が間違ってタップして再生してしまった動画の事を思い出した。
『リスナー諸君はいつどんな紅茶を飲む?
私は必ず仕事前と後、仕事の大きさによってブランドを選ぶ。』
…………まさかな。