こんな個性で人助けしてもギャグにしかならん気がするんだが 作:クロマ・グロ
結局あの訓練の後、勝己は先生達に生徒指導室に呼び出されて説教を食らっていた。
あの訓練から数日間俺は狂乱の波動の瞬間的な出力の訓練を続け、一瞬だけではあるが俺の引き出せる狂乱の波動の出力をなんとか65%まで引き出す事に成功した。
反動覚悟ならなんとか75%も行けなくはないのだがちょっとでもオーバーすれば簡単に暴走する危険性があるからあまり使えないんだがな。
ただやはりにゃんこ達の指揮に関する訓練をどうしても疎かにせざるを得ない状況の為にコレをどうにかしたいと思っているとそのチャンスは思ったよりも早くやってきた。
俺達は今、A組とB組の合同授業で運動場γ……工場地帯を再現したエリアへと脚を踏み入れていた。
「ついにこの時が来たー!ワクワクするよねぇ!」
「葉隠寒くないの?」
「めっちゃ寒ーい!」
「根性だね。」
葉隠は俺のアドバイスで自分の髪を材料にして作ったヒーロースーツを着ているがまだ作るのに必要な量があまり足りてないのか下着のような形状だ……そりゃ寒い。
「あっ、猫城君私のコスチュームをセンサー越しで見てるでしょ〜?
もう、猫城君のエッチ〜♪」
「そう言いながら巨神ネコ化してマッスルポーズ決めるのやめろ……ふいうちでそれやられると吹くの我慢するの大変……ぶふっ!?」
だめだ……センサーで着ているコスチュームが下手に見えてしまうせいでムッチムチの巨神ネコの筋肉にビキニがピッチリと張り付いているように見えちまうせいで吹くのを我慢出来ねぇ……。
「私も冬仕様!カッコいいでしょうが!」
「ええ!」
「流石に寒くなってきたからね。」
「入学時と比べるとだいぶ皆のコスチュームも様変わりしてきたな!」
様変わりか……確かに俺のコスチュームも狂乱の波動の発現をきっかけに軍服の一部にスリットのような隙間をいくつも作り出して全身に狂乱の波動による新しい部位を作れるように調整している。
まぁ場所を考えてスリット開けないと色々とミッドナイトみたいな扱いになりかねないので表面からはかなり分かりにくいようにしてはいるがな。
「飯田それで夏耐え抜いたの凄いよな!」
まぁ天哉はフルフェイスのヘルムのあるフルアーマーだしそりゃ暑いだろう。
とはいえ天哉は基本的にクソ真面目だからな……。
「あ、かっちゃんも変えてる。」
「あぁ!?文句あんなら面と向かって言えや!クソナードが!」
勝己がいつもの5割くらい調子に乗った感じで出久を見下している。
こいつなんかあったのか?
「そのスーツ、防寒発熱機能付き?
汗線が武器のかっちゃんにとってとても理にかなった変更で素晴らしいと思……。」
「褒めてんじゃねぇ!!」
理不尽な……。
「でも緑谷が一番変化激しいよな。
最近またなんか付いたし。」
「やれることが増えてきたからさ。
凄いんだよこのグローブ、実は既に二代目なんだけど発目さん強度の調整までしてくれて。」
「あぁ発目な!」
発目……オトートとくんでまた何かやらかしてないよな?
俺はつい出来心でオトートに感覚共有をして発目達が何かやらかしてないか見ると……。
「「「ニャッスル?」」」
俺は視界に映った大量の白衣と制服を着た巨神ネコの集団を見てすぐに感覚共有を閉じた。
ミナカッタコトニシヨウ……。
「おいおい……。」
「「「ん?」」」
すると今度は俺達の正面から聞き覚えのあるねちっこい声が聞こえてくる。
「まぁ随分とたるんだ空気じゃないか。
僕らを舐めているのかい?」
「来たな、ワクワクしてんだよ!」
「フン、そうかい。
でも残念、波は今確実に僕らに来ているんだよ!」
すると声の主……B組の物間は身体を大きく仰け反らしてマッドサイエンティストにも見えなくないポーズと表情で俺達を見下し始める。
「さあA組!今日こそ白黒つけようかァ!!!」
そして物間はダメ押しとばかりに懐から一枚のプリントを取り出し始めた。
「ねぇねぇ見てよこのアンケート!
文化祭でとったんだけどさぁああ?
A組のライブとB組の超ハイクオリティ演劇!どちらが良かったか見えるぅ?
二票差で僕らの勝利だったんだよねぇ!
入学時から続く君たちの悪目立ち状況が変わりつつあるのさ!
ぎゃーっはははははははははははは!!!」
物間が取り出したプリントを見てみるとわずかにB組のが多いように見える……見えるんだがな……。
「マジかよ、見てねぇからなんとも言えねえ。」
「物間調べって時点で若干怪しいがそもそも正確な数値がこのプリントじゃわからない上にこれって多分票数100だよな?
流石にあの体育館の大きさと入場者の数考えると少ないと思うんだが?
つかそもそも争うためにやったようなもんじゃないしな。」
だが物間は聞こえてすらいないのか高笑いしながら続きを聞いてもいないのにペラペラと話し始める。
「そして今日!A組バーサスB組ィ!
初めての合同戦闘訓練!」
「黙れ。」
「キュウ!?」
「物間ァ!?」
相澤先生、物間の首が締まってます締まってます。
すると相澤先生の後ろからB組担任であるブラドキング先生がやってきて一人の生徒を連れてくる。
「今回特別参加者がいます。」
「しょうもない姿あまり見せないでくれ。」
「特別参加者?」
「倒す!」
「女の子?」
「「一緒に頑張ろうぜ!」」
鋭児郎と鉄哲の個性だだ被り組が綺麗にハモってやがる……。
そして特別参加者となる生徒が先生達の背後からゆっくりと歩いてきた。
「ヒーロー科編入を希望している……。」
「あぁ!」
「ああっ!」
ん?あの首元の装備……。
「普通科C組、心操人使君だ。」
「「ああーー!!!」」
出久と尾白の二人が心操を見て叫んだ。
「ヒーロー科に編入を希望……!」
「あれ?相澤先生の捕縛布?」
「マスクはオリジナルかなぁ?」
「よろしくな!」
「会話すると洗脳されちゃうんだよね?」
「初見殺し。」
「でもさ、緑谷かかったけど解いてたよな?」
そういえば確かに出久も無意識に発動したようだがそれによる自傷でなんとか解除していたな。
「正直まぐれ破りだけどね。」
出久はそう言って苦笑いをする。
正直心操の個性は俺ですら一度喰らえば勝機はほぼないだろう。
出久が苦笑いするのも無理はない。
実際体育館で組んだ時も安心感は凄まじかったからな……。
「心操、一言挨拶を。」
「心操人使です、何名かは既に体育祭で接したけれど……拳を交えたら友達とかそんなスポーツマンシップ掲げられるような気持ちのいい人間じゃありません。
俺はもう何十歩も遅れている……悪いけど必死です。
俺は立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい。
この場の皆が超えるべき壁です、馴れ合うつもりはありません。
よろしくお願いします。」
心操の目は以前のように何処か諦めていた様子はどこにもなく、とても澄んでおり、真剣そのものだ。
こいつもかなり良い方向に変わってくれたらしい。
良い宣戦布告だ。
俺達は全員拍手をして心操を迎え入れていた。
「おお、ギラついてる!」
「引き締まる。」
「初期ろき君を見ているようだぜ。」
「そうか?」
「あぁ。」
「いいね彼……。」
確かに最初の頃の轟に近いものはあるが俺としては全く真逆なように見える。
力がありすぎるが故に他人に対して興味を持たず自分一人で完結していた轟に対して今の心操は力が足りてないとわかっているからこそ何を使ってでも夢に向かって目的を達成して見せるという信念がある。
俺には心操のその気持ちがとてもまぶしく見えた。
「じゃさっそくやりましょうかね。」
「戦闘訓練だ!」
先生方がそう言うと俺達は一端それぞれの組で集まって説明が始まる。
「今回はA組とB組の対抗戦!
舞台はここ、運動場γの一角。
双方四人組を作り1チームずつ戦ってもらう!」
すると皆がルールを聞いて話始める。
「4人1チーム?楽しそうだね!」
「楽しそう!」
「心操を加えると42名、お互いに一チームずつ5人チームが出来る形でしょうか?」
「心操は今回2回参加させる。
ただし猫城は今回の訓練では全く別の形での参加となる。」
ん?どういうことだ?
「理由はいくつかある。
まず一つとして心操を今回複数回参加させたかったのもあるがそうなると必然的に余る一人が2回参加することになる。
だが実力のあるお前らが2回参加する権利が出てくるとどうしても誰を参加させても心操の相手チーム側が有利になっちまう。」
確かにそれはありそうだがプルスウルトラが基本のこの人達がそれで簡単に俺だけ特別扱いするとは思えん。
「もう一つとしては猫城、お前の個性ははっきり言ってオーバーパワーすぎて他のやつらの訓練に向かん、一方的に数で蹂躙した上で個性封じまであるとなるとはっきり言ってお前一人対クラス全員でもギリギリのパワーバランスだ。
流石に成長に繋がらんような訓練をする気はない。」
…………まぁ納得はできなくも無い。
とはいえ面と向かって言われると少し来る物があるな……。
「そして最後の理由だがお前に発現した2つ目の能力……俺達も気付くのが遅れたんだがあれの訓練と調査に集中しすぎてお前の最大の長所を伸ばす指揮能力の訓練を疎かにしてしまっていた。
これは俺達の怠慢でもあるがちょうどいいから今回を利用して対チーム戦闘と指揮能力の訓練を行うことにした。」
っ!願ってもない事だ。
俺も確かに最近こっちを活かすチャンスや伸ばす機会が少ないことは気になっていた。
だが別の形での参加となるとどうするんだ?
「猫城、お前には今回の戦闘訓練でお邪魔虫として2チーム両方に敵対する第三勢力になってもらう。」
「…………そう来たかぁ。」
俺は今回の訓練が他の奴らにとってとんでもない難易度になりかねない事を悟った。
とはいえ訓練でも手加減する気はない。
全力でやらせてもらうぞ……!