こんな個性で人助けしてもギャグにしかならん気がするんだが 作:クロマ・グロ
俺が電車方面に吹き飛ばされた車を全て保護した後出久達の様子を見てみると全ての車はタンクネコの上に着地させられており、出久は黒鞭をいくつも同時に射出しながら巧みに扱っていた。
さらに夏雄さんは勝己が白線を爆破で焼き切って救出しており、残す所はエンディングの無力化と逮捕だけとなった。
「お前の望みは!何一つ叶わない!」
「あぁそうだ、何一つだ!」
「うわぁぁぁぁあああ!?!?」
轟がエンディングに急速に近づいての炎の放出で大きく吹き飛ばし、再度他への被害が広がらないようにし、遠距離で巨大な氷塊を作り出してエンディングの動きを完全に拘束した。
「死ぬかと思った……!」
「あっ。」
「うぉぇぇ……!?」
「ケガはありませんか?」
「あぁ……助かった……!」
「君だよね?ありがとう!」
「はぁ……無事でよかったです!」
出久は大丈夫そうだな、俺の保護した車に乗ってた人は完全に気絶してしまっているから念の為病院で検査を受けてもらうとして……この車どうするべきか……いっそ病院まで運ぶべきか?
そんな事を考えているとようやく正気に戻ったのかエンデヴァーが顔色を変えて夏雄さんの元へと向かっていた。
「はぁはぁ!」
「おいあんた!」
「うっ、うう……。」
「あ?」
勝己は夏雄さんの介抱をしていたがエンデヴァーに視線を向ける。
するとエンデヴァーは勝己ごと夏雄さんを抱きしめた。
…………エンデヴァーも家族に対して愛情が無いわけじゃなかったようだ、やはり動きがかなり悪かったのは自分の行いに対する罪悪感と自責の念から来る迷いか。
実際本人からすればあの状況は気が気じゃなかっただろうからな。
ただ抱きしめている本人であるエンデヴァーは自分自身の行動に理解が追いついて居ないようで自分で行いながらも困惑している、やはり無意識の行動だったらしい。
「はっ、ケガは!?」
「ねぇよ!?」
「熱い……。」
ケガが無いことが分かるとエンデヴァーは再度夏雄さんを勝己ごと抱きしめる。
「あぐっ!?加齢臭……!?」
勝己は頭部から威力の低い衝撃だけの爆発を起こしてエンデヴァーの抱擁から脱出する。
「白線野郎は!?」
「確保完了。」
「あ……違う……お前らじゃ……ない。
駄目だ、駄目だああぁぁぁぁ!」
エンディングは泣きながらも脱出を試みているようだが体が一切動かせず、地面と接して居ない状態で氷塊に呑まれた為に個性も使えていないようだ。
「くそデク!猫野郎!モブは!?」
「"車に乗っていた皆さん"なら大丈夫!」
「こっちは気絶しているが外傷はない!後で念の為病院に連れていく!」
デクは嬉しそうに拳を握り笑みを浮かべる。
「完全勝利だ。」
「うるせぇ!」
「だぁ!?何で!?」
勝己はいつもの調子でデクを振り回していると若干調子に乗った様子でエンデヴァーへと体を向ける。
「フンッ!なんだっけなぁ?ナンバー1。
この冬?1回でも?俺より早く?ヴィランを退治してみせろ!?」
あぁ……こいつの悪い癖が。
負けず嫌いなのは良いんだが勝ってると分かるとすぐ調子に乗るんだよなぁ……。
「あぁ、見事だった。」
「あ……。」
「俺のミスを……最速でカバーしてくれた。」
「……急にしおらしくなりやがって。」
「かっちゃん!」
「もちっと悔しがれ。」
勝己は相変わらず素直な態度には弱いんだよなぁ……挑発だのなんだのは色々と自分から買ってく癖があるからその分真面目にされると逆に対応しにくいんだろうけど。
それに負けず嫌いと合わさって対抗心やライバル意識なんかも強いから相手からアッサリ認められると張り合いがなさ過ぎて逆に困るというのもあるのだろう。
「ん……。」
っと夏雄さんの意識が完全に戻ったか。
「うっ、離せ!」
夏雄さんがエンデヴァーを押し退けて後ろに尻もちを付くように離れる。
「…………悪かった。
一瞬……考えてしまった。
俺が助けたら……この先お前は……俺に何も言えなくなってしまうのではないかと。」
「えっ……?」
何も言えなく……か。
この言葉がエンデヴァーから出た時点でどれだけ関係が拗れているのかがよくわかる。
恐らく今エンデヴァーが最も恐れている事は家族が自分に対して正直になってくれないことだ。
彼は不器用だからこそ逆に夏雄さんのような正直な気持ちで言い放ってくれるのがありがたかったのだろう。
恐らく罪悪感から来るものでもあるんだろうが自分が原因であるというしっかりとした自覚があるからこそこんな歪んだ関係を受け入れてしまったのだろうな。
「夏雄、信じなくてもいい。
俺はお前達を疎んでいた訳じゃない。
……だが責任をなすりつけ逃げた。
燈矢も……俺が殺したも同然だ。」
あ、道路のど真ん中でやってるせいで詰まってる車からめっちゃクラクション鳴り始めた。
一段落したら俺の方から一旦場所変えてもらうように伝えるか……。
「疎んでたわけじゃない?
だったら何?俺はずっと燈矢兄から聞かされてきた。
俺が許す時なんて……来ないよ。
俺は……焦凍みたいに優しくないから。」
夏雄さんは涙を浮かべながらも薄く笑みを浮かべ始めている。
彼としてもとても複雑なんだろうな……恐らく冬美さんと同じでちゃんとした家族という関係に憧れもあったのだろう。
「それでも……それでも顔を出してくれるのは冬美と冷のためだろう?
冬美は"家族"に強い憧れを持っている……俺が壊したからだ。
戻れる、やり直せると浮足立つ姉さんの気持ちを酌もうと頑張っているんだろう。
お前も"優しい"んだ。」
「はっ……くっ……!」
夏雄さんは何処か悔しそうに唇を噛みしめながら涙を必死に堪えている
「俺を許さなくて良い。
許して欲しいんじゃない、償いたいんだ。」
「…………!お姉ちゃんすごく嬉しそうでさ
でも……!あんたの顔見ると思い出しちまう……くっ……!」
すると夏雄さんは泣きながら心からの叫びをあげる。
「なんでこっちが能動的に変わらなきゃいけないんだよ!
償うってあんたに何が出来るんだよ!」
「考えてる事がある。」
すると空気の読めないエンディングがさらに大声で泣き始める、口も塞いでしまおうか……?
「ああああぁぁぁあ!!!!」
「おい……!」
「やめろエンデヴァァァァアアア!
なんだその姿は!?やめてくれよぉぉ!
猛々しく傲慢な炎!まばゆい光!俺の希望が!やめろぉぉぉぉおおおお!!!
消えちまうぅぅぅぅ違う……!やめろ!!エンデヴァー!!」
ちょうどパトカーもこっちに到着したか……。
「あー、そのエンデヴァー、夏雄さん。
あまり水を差したくなかったんですがちょっと良いですか?」
「む?」
「流石に道路のど真ん中で話し合うのもアレですし場所変えません?
ヴィランの受け渡しとかは俺達がやっとくので……。」
「っ!そ、そうだな……すまない。
だが今回の事件は俺も少し気になることがあって取り調べを聞いておきたい。
夏雄、済まないが少し待っていてくれないか?」
「…………分かった。」
この後の対応を警察と連携してひとまず道路を使えるようにする。
その間に警察はエンディングの検査をある程度行っており、俺たちはその結果を聞いていた。
「白線塗料を操る個性をブースト剤で強化してた。」
「ブーストか……。」
「あぁ、だいぶ減りはしたがまだ市場には出回ってる。」
「…………まだ工場が残ってるのかもしれませんね。」
「可能性はあるな。」
「
全く闇は消えねぇなぁ。」
確かに……エンディングだけじゃなくガラスを操るヴィラン、さらにその前には脳無まで襲ってきているからな。
「だが光もまた消えることはない。」
…………その理屈で言えば光が強くなればまた闇も広く深くなっていく事になる。
だが俺はオールマイトとオール・フォー・ワンという2人の事例を知ってしまった以上この理屈を全く否定できないでいた。
やはり嫌な予感が拭えない……一体何が起きようとしているんだ?