肉風船、中身はチート   作:かりん2022

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第一章完

偉い人と話し合う事となった。

 

「あれ、準備するのすごい大変だったんだけど。大変な思いをしてきたにーちゃ達への慰労に使うのはいいけど、それ以外に提供するのはちょっと。そもそも使われてるのは軍事予算でしょ? 一般人は違うじゃん。軍人保養地星への出入りは各々の星の管轄だったよね?」

「しかし、要くん。皆、幸せになりたいんだよ」

「それはそうだけどさぁ。苦労してきた人を差し置いて、いいとこばっかりつまみ食いは違うよね? 軍人のセーフティネットまで使ってさ」

「わかっている。君が正しいよ、要くん。でも、今ダンジョンを取り上げたら、暴動が起こると思う……」

「取り上げなくても暴動は起こるでしょ。マナーの低下が著しいんだけど? あれは投げ出されたダンジョン攻略者の為の救済処置だったんだよ」

「それも分かっている。分かっているんだ……。ただ、ダンジョンに沸く一般市民を押さえつけることは不可能だよ。ダンジョンを楽しむ事は、一般市民にとってもダンジョンへの復讐なんだ」

「それで以前のダンジョンを軽くみる動きも出てるけど? ダンジョンで鍛えて犯罪を起こす層についても、取り締まれてないんじゃない?」

「降参だ、要くん。どうすればいいと思う?」

「まず、マーカーの徹底を。ダンジョンで少しでも恩恵を得たものは、一生ダンジョンの恩恵を得た者として、一般の人と区別する。そして犯罪を犯したものには上位冒険者の刺客を送る。これは上位冒険者の義務とする。これは差別じゃなくて区別だよ。ダンジョンで働いたかどうかなんて、自分の意思で選択できるんだから。その代わり、孤児の救済もしっかりする。ダンジョンで生まれた子供は、自分の意思で外と中、どっちで生きるか選べるようにする」

「う、うん」

「ダンジョン内でのマナー違反は、しばらくこっちで取り締まるよ」

「出来るのかい?」

「違反者はドロップ率を絞って生活が成り立たないようにして噂を流す。そしてマーカー者がダンジョンの外で働くのを支援する。ダンジョンは掃き溜めじゃない。マナー違反はこっちもいらないからね」

「それは……」

 

 内政をしていたわけではないが、神の頭脳として間接的に人々を導いてきたのである。

 

「すごい突き上げ喰らうだろうけど、大人が頼りにならないからね」

「申し訳ない……」

「だいたい、ダンジョンは公共のサービスであって、本当に狩りをしてるわけではないんだよね」

「そ、そうなのかい?」

 

 僕は呆れた。

 

「ダンジョンは、こちらで獲物も報酬も全てを用意してあげた、娯楽に過ぎないんだよ。規模は大きいけどね。カジノだって、賭け金を払う。ダンジョンはそれすらないんだ。命なんか貰ったって何も嬉しくないからね。好きで命まで使って遊んでるだけなんだよ。掛け金にもなりゃしない。無料ゲームをしているだけなんだよ」

「それなら、回復アイテムの量産も……」

「それやったら文明終わるよ。等価交換ってよく言ったもので、対価って重要な要素だ。これを壊すと、文明が死ぬ」

「そ、そうだよね」

 

 俺は内政はしたことがない。だけど、内政の方向性を導いて、魔道銀河帝国を作らせた男である。

 これくらいは、ね。

 

 本当はもっと首相のことを頼りたかったのだが、最初から俺が主導したほうが早かったかもしれないな。面倒くさいからってなんでも投げちゃダメだね。

 

 俺は最後にだめ押しした。

 

「忘れてると思うから言うけど、あれって俺の意思次第で撤収できる物だからね? 一人に頼るのは良くないよ。ダンジョン以外の文明も育てないと」

 

これは本当にそう。

 

「っああ、そうだったね。よく分かったよ」

 

 それから、しばらくして。

 僕は暗殺された。

 

 撃たれた僕を庇うにーちゃを狙う銃弾を、異能で撃ち落とす。

 

「なんで……!」

「この死を……防いで、やるほど、僕は、人間、が、好き、じゃない、からね。ダンジョン消すほど、嫌い、でもない、けど」

 

 俺は微笑んで囁く。

 

「にーちゃ、ダンジョン、好き……?」

 

 にーちゃが泣いている。

 にーちゃの返事を聞くことなく、俺は死んだ。

 俺が好きかは聞けなかった。優しい兄だった。その兄が、俺を太らせるように仕向けていたことは自明だった。

 弱い兄でもあった。でも俺は、そんな兄が好きだった。

 

 




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