ハリネズミと天才【完結済み】   作:妄言a〜

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1話飛ばして投稿していたことに気づかなかった馬鹿ですどうも、
いやぁ…まじで一瞬焦りましたよ、申し訳ないですけど一旦消しての連続投稿です!




嘘の使い所

 

「アイの付き添い?」

 

いつも通りパソコンに向かってカタカタと仕事をして、その間だる絡みしてくるアイの猛攻を退けながらもさっさと仕事を終わらせた明智は、ソファにぐったりと寝っ転がった状態で

 

「そうなのよ、社長は他に出る所があって、貴方仕事覚えが早いし、初めて1ヶ月経ってないのに主戦力として申し分ないから社長がね?そろそろ現場につれて行ってみてもいいんじゃないかって」

 

ソファから起き上がって

 

「いやいや、僕の立場って今のところただのバイトですよ?そのバイトにこれ以上の何を求めてるんですか?」

 

「まぁ…私の目の前でさっさと自分の仕事を終わらせてだらけきるようなバイトでは無いはね…」

 

ピクピクを頬を引くつかせて…

心情的にはものすごくイラついているのだが、仕事が早い、丁寧、一切のミスがない、割り振った仕事の量は一日やそこらで終わるものではなく、何日も掛けてやっと終わる物もある、

それをほんの30分かそこらで終わらせて暇そうにしている明智を見るのも精神衛生的に悪いのか、

あと普通にアイと痴話喧嘩をすぐ始めるのもある

 

「いやいや〜僕みたいなペーペーは裏方とかで十分ですよ」

 

「えぇ?先輩撮影来るの?」

 

どこで聞いていたのかひょっこりと現れて

 

「そうなのよ、裏方の作業だけじゃ分からないところも出てくると思うから1回現場の空気を知っておくって言うのも大事だし!」

 

「いやいや!あれですからね僕は」

 

「いいじゃん!はい決定!いやぁ〜先輩にかっこいい私を見せちゃいますか〜」

 

「そうね、ここはうちの主力がどれだけのものかこの小生意気な新人に教えるチャンスよ!」

 

明智が何とかして行きたくないアピールをするがそんなことはお構い無しに話が進んでいき

 

「分かるかぁ?ルビィ、これが安い賃金で働かされて店長が黒を見て白と言ったら白い…そういうイエスマンな生き物がバイトという存在なんだよ?ルビィ」

 

「ママッ…!のぉ!かっこいい所が見れるところに…ッ!行かないとか!ありえない…ッ!し!あとッ!暑苦しいから離れて!」

 

ルビィによっかかってだる絡みし始めて、相当に嫌なのか何とか引き剥がそうとしながら

 

じぃ〜っとルビィと明智を見つめて

 

「この前までそんなに仲良くなかったと思ったけど、仲良しになったんだね!」

 

「ママっ!ち、違うの!こ、これは明智がかってに!!」

 

「なんで不倫がバレた夫みたいな反応してるんだ?ルビィは」

 

アクアが少し離れたところから冷静に突っ込んでいて、ルビィに助けを求められては居るが関わりたくないのか一定の距離をキープ

 

「ハイハイ!遊んでないで支度して?」

 

 

「先輩、私のかっこいいところいっぱい見せちゃうからね?」

 

「ん〜?じゃあお手並み拝見と行かせて頂きますよ」

 

「いい加減っに…離れッろぉ!!」

 

べちんっっと乾いた音が事務所に響く

 

 

 

「アイさん入りまーす」

 

「苺プロダクションから来ました、アイです!よろしくお願いします!」

 

大勢の人、機材、それらの中を歩く時も我らが主力、苺プロダクションのアイは目立っていた、その横にミヤコ、その子供2人、そして明智の順番で入っていく

 

「おぉ〜今日はよろしくな?」

 

伸ばしっぱの髪、雑な髭に煙草の臭いを纏って監督が挨拶しに来る

 

「ぁ〜監督、今日はよろしくお願いします!」

 

「ぉぉ〜よろしくな、早熟コンビとマネージャーも久しぶりだなー」

 

顔見知りなのかお互い挨拶を交わしていると

 

「ん?そいつは?」

 

「ああ、彼は」

 

「うちの新しいマネージャー候補だよ!監督」

 

「へぇ?新しいマネージャーねぇ」

 

「明智乱歩と言います、よろしくお願いします」

 

きっちりと挨拶をして腰の角度も気を使い、できる限り真面目な印象を与えるように振舞って、後ろの方からぶふっと軽く吹き出す音が2つぐらい聞こえたのは明智は気のせいだと無視して

 

(ここで重要なのは意識されすぎないこと、真面目すぎず、どこにでもいるような新人っぽい雰囲気を纏って、あぁそういえばそんなやつもいたっけな?程度に収める)

 

「新しいの入ったのね、ま、よろしく」

 

「はい」

 

そのまま興味をなくしたのかさっさと行ってしまう

 

「うっわぁ先輩なんか似合わないね?」

 

周りにバレないような距離ででも明智にギリギリ聞こえるような声量で

 

「あのなぁ?僕がなるべく目立たないようにしてんのにお前さぁ、ここでの主役はお前なんだから、そろそろ始まるんだろ?とっとと行ってこいよ」

 

「かっこいい私見ててね?」

 

そう言って衣装を整えに行くアイを見送って

 

「それでこの後僕達何するんです?」

 

「挨拶回りとかよ」

 

「ふーんじゃあちょっと辺り見てきますね」

 

「あ、ちょっと」

 

静止の言葉も聞かずにさっさと言ってしまう

 

「はぁ〜」

 

 

 

とりあえずある程度みんなから離れて見ることのできる場所で、でも近すぎず、遠すぎず、

相手の表情を見れてなおかつこちらにあまり注目されない場所で人を俯瞰で見つめて

 

(現在婚約者がいる、けど隠れてほかの女と付き合ってんなあの人、ぁ〜あの人は二股かけてる、ホストに大金貢いでるなぁ…もうしばらくしたら色々爆発しそう、あの人は2回結婚して2回目の離婚調停中、あのカメラマンと脇役のあの子隠れて付き合ってるのか

あの女優…ふ〜ん…)

 

 

そんなふうに芸能人の闇と言うものを暴きに暴きに暴いてしっかりと現場の空気を堪能してボソッと

 

「あぁ…なるほど、だからわざとアイをぶつけるのか」

 

「ほぉ…それに気づくか?」

 

周りを観察していて周囲に気を配っていなかったとはいえ、突然横から話しかけられ思わず振り返ると、先程の監督が煙草を吸っていて

 

「お疲れ様です」

 

「ぁ〜そういうのいいから、お前猫かぶってやがったな?」

 

そうニヤニヤ言いながらタバコの煙を吐き出して

 

「ここいい場所だろ?ここだったら俯瞰して周りを見ることが出来る、撮影機材、裏方、役者の状態も全部な」

 

「いえ、僕はたまたまここに来ただけで、ミヤコさんに現場の空気を知ってこいと言われてきただけのペーペーなのでなんとも」

 

なんて言ってチラッと目線を向けるけれどどうやら通じないらしく

 

「教えてくれよ?なんでわかったんだ?今回の魂胆が」

 

「はぁ〜タバコ一本くれます?」

 

髪の毛をかきあげながらため息をひとつ

 

「うぉッ、突然雰囲気変わったな!」

 

煙草を一本もらって火をつけ煙を吐き出しながら

 

「そりゃ僕はただの裏方ですからね、裏方が目立っちゃダメでしょ、だから誰にも印象を持たれないようにしてたのに…まさかこんな凡ミスを僕がするなんて」

 

「へぇ…」

 

「ぁ〜まぁ…バレたのがあなたで良かったってのは少しありますね、それで?なんで分かったのかって話でしたっけ?」

 

「そーそー見た感じ誰かと話してる様子もなかったのになんで分かった?」

 

「今回アイの役目は2つ、ひとつは看板役者、ドームを成功させたアイドルが女優に転身、それで現在CMにもガンガン出てるし出演料も正直そこまで高くない、とりあえず出しといて損の無いカード」

 

一旦言葉を区切って煙を吐き出して

 

「2つ目の役目は現在実力を兼ね備えていて看板としても有効なあの女優をある程度潰すことが目的、看板としてはアイが完全に勝ってる、まぁそこに負けないだろうけど、正直演技だったら全然勝てない、でも、そんなの視聴者には関係ない」

 

「視聴者は確かにある程度演技を見ている、中には鋭い観察眼でその演技にどれほどの価値があるのかわかる人間はいる、けどそういう人間は絶対数が少ない、だからこそ画面の中で1番目立つ人間に食われる、しっかりとした実力があり、看板としても充分の役割を果たすことが出来るのにわざわざアイをぶつける」

 

「多方ほかの奴らはもっと安価であの女優を使いたい、だからこそアイをぶつけて食わせる、そうすることで作品としてのレーベルが保てないかも?と周りに思わせておいて、そこである程度の値段をふっかけて使い潰す」

 

そう言って煙草を踏み潰し、それを拾って差し出しながら

 

「これだから芸能界って言うのは好きになれないんだよ」

 

「まじかよお前何者だ?この一瞬でそこまで全部見通すとか…」

 

「明智乱歩、どこにでもいるただの天才ですよ」

 

 

「おもしれぇ…お前なんで裏方なんてやってんだ?お前だったら絶対経営者の方が向いてるだろ?」

 

「いやいや、そういう大人の皆々様の都合で回っていく世界に興味が無いので」

 

「お前…」

 

「役者はやりませんよ?」

 

「いやいや!お前だったら絶対いい画が取れるって!」

 

「いやいやマジで遠慮しときますって!そんなことより苺プロのアイをよろしくお願いします!」

 

ごねる監督をあしらいながら撮影が始まり撮影終了後

 

「興味が湧いたら電話かけてくれ」

 

「だからやりませんって」

 

名刺を渡される明智

 

「一体何があったの?」

 

「さぁ?なんか気に入られました」

 

 

そんなふうに監督に名刺を渡されたことも忘れたある日いつも通りの業務に当たっていると固定電話に着信があり

 

「はい、こちら苺プロダクションです」

 

ミヤコが電話の対応をしてる時なぜか嫌な予感がしたのかそそくさと退散しようとする

 

「先輩?どこ行くの?」

 

「いや…なんか嫌な予感がしてさ」

 

対応が終わったのか電話を置いて

 

「明智君…」

 

「僕ナニモキコエナイ」

 

「貴方にオファーが来たわ…」

 

ソファに丸まり耳を塞いで聞こえないフリをする

 

「はァァァ〜〜」

 

面倒事に巻き込まれる予感しかなく、さらにソファで丸くなる明智

 

「いやいや無理でしょ?あんなプロの集団に僕みたいな素人が入って行くとか絶対無理だから」

 

「えぇ〜そんなことないって〜!先輩だったらなんだかんだ言いながらムカつくぐらい完璧になるでしょ!」

 

「褒めてると見せかけてさりげなく攻撃してくるのまじでやめてくんない?」

 

「はぁ〜一体どうしてこんなことに…」

 

「いやいや、そもそも普通に無理ですよねミヤコさん?別に僕苺プロに所属してる訳でもないし」

 

「まぁ…そこはどうにでもなるけど…」

 

(どうにでもなるんか…)

 

「いいじゃん先輩!出ようよ〜!」

 

「はぁ?あのさぁ?めちゃくちゃ簡単に言うのやめてくんない?」

 

(いやいや確かに僕は天才だけどさ?正直演技とかしたことないし、やったことも、そもそも考えたこともないんだよ!さすがに無理だろ!)

 

「へぇ〜散々天才とか言ってるくせに出来ないんだ?」

 

「は?」

 

普段の明智だったならばこの程度の煽りでいちいち反応するような男ではなかった…が

 

「まぁ?先輩がいくら天才って言っても?正直演技とかだったら全然勝てる気しかしないし〜」

 

そうやって煽ってくるアイを見ると、ピキピキとダメな方のテンションが湧き上がってしまって

 

ピキッ

 

「ちょっと待ってろ」

 

そのまま部屋を出て言ってしまい、アイは煽りすぎたかな?と少し不安にミヤコはなんでこんなことになるの…そう言って頭を抱えて

 

そんな中ガチャっとドアが開き入ってきた

 

「あ、ちょっと言い過ぎちゃったな?ごめんねせんぱ……」

 

そこに居たのはアイだった、よく見ると服装は明智の物でメガネを外し、髪を上手い具合に崩して、服装も違う、顔はそもそもと男と女なため絶対的に違う、でも纏っている雰囲気はまさにアイ…完全無敵、嘘の愛でみんなを照らす一番星

 

「今日もお仕事頑張るぞぉ〜あ、みんなおはよ」

 

両目が輝き、一瞬アイドルの衣装に身を包んだアイに見えた…でもそれは一瞬で

 

「ぁ〜やっぱ女声はどうやっても無理があるな…まぁ…どうよ?これが僕の実力ってやつ?」

 

そういうと纏う雰囲気は普段と変わらない明智に戻る

 

「う…そ…今どうやったの…?」

 

「どうやった?人を観察して、理解、脳みそに100パーセント情報を持ってくるのが僕の得意なこと…あとは雰囲気、歩き方、髪型、そこに気を使ってトレースすれば」

 

また、雰囲気が変わって、一瞬でスーパアイドルアイの雰囲気を纏って

 

「好きな食べ物はナスのおしんこ!スーパアイドルアイだよ〜」

 

完璧なポーズで普段言わないようなことを言って明智以外の全員が吹いた

 

「どーよ?僕が普段からどれだけお前の嘘も本当も見続けてると思ってんの?出来ないわけないんだよなぁ」

 

「むぅぅ…ムカつくっ!先輩って本当にムカつく!この!天才!器用!なんでそんな簡単にできちゃうの!一瞬本気で私が2人いると思ったんだけど!でも、声はぜんっぜん似てなかった!」

 

「それは無理だろ!どう頑張っても女声は出せないなんでけど、お前のことなら世界で1番僕が知ってる、これだけは確かだ」

 

その発言にそっぽを向いて…

 

「ふ、ふ〜ん…ま、まぁまぁじゃないのかな?」

 

アクアとルビィにはさっきの発言が余程刺さったのかニヨニヨしてる推しの姿を目撃する

 

「明智って本当になんでもできるの?」

 

「なんでもはできないさ、できることだけ」

 

「は?何言ってんの?」

 

ネタが伝わらず、若者の冷たい目線がグサリと刺さる

 

「でも本当にママみたいだった!!」

 

「やっぱりなぁ?」

 

「でも声は変」

 

「それは許して?さすがにそこまでのトレースは難しいから」

 

「これは…絶ッ対に売れる!行けるわ!明智君行けるわよ!」

 

ずいずいと距離を詰めてキラキラした目で明智を見つめるミヤコ

 

「いやいやいや!そもそも社長の許可が出るかどうかわかんないじゃないですか!それにまだ出るとも決めてないし!」

 

「あいつなら何とか説得するから!」

 

「あいつて」

 

「ねぇ…先輩…」

 

「な、なんだよ…?」

 

少したじろいで

 

「出てくれないの…?」

 

「いや…だからさ?」

 

袖を意地らしく掴まれて、うるうるした瞳で見つめられて、明智にはこれが嘘だとわかる、そしてその嘘に飲まれるこのなんてないという自負もしっかりとある…が…

 

「ドラマに出るかっこいい先輩見たいなぁ…?」

 

「ッ…ぐぅッ…」

 

「お願い…先輩…ね?」

 

この日初めて明智は

 

「はい…出ます…」

 

アイの嘘に飲み込まれた

 

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