あの子の隣は僕のもの、高校一年生、何の変哲もない女子高生雪宮夕と同じく同じ1年の幼なじみ雨宮空の純愛恋愛漫画、というどこにでもあるような題材で10万冊以上の売上を誇る漫画、それの実写ドラマの2年の
篠崎蒼真と言うキャラクターを演じることになった明智自身の演じるキャラクターをとりあえず把握してみようと漫画を読み始めると
「うっわぁ…なんだコイツ…どんだけ属性詰め込めば気が済むんだ?」
ソファに寝っ転がりながら自身の演じるであろうキャラクターに対してすごい顔をしながらページをめくっていく
「えぇ?先輩どんな人の役やるの?」
「ん」
「どれどれ〜えーと…ぷッ…ぶっ……あはははははは」
漫画を渡されたアイが見ると、思わず笑って
「先輩似合わな〜!」
「似合う人間がこの世にいるのか?ってぐらい属性盛りすぎだろそいつ」
「確かに、ドSお金持ち王子様わがままイケメン?」
「あとそこに傲慢とかも追加しとけ」
「えぇ〜どうなるのか楽しみ」
「あのねぇ?他人事だと思って勝手なこと言うんじゃありません」
「でも先輩だったらどうにかしちゃうんでしょ?」
「まぁ…出る以上成功、大成功を収めさせてやるよ」
そんな啖呵を切ってしまった以上意地でも成功させなければ行けないのだが
「苺プロダクションから来ました篠崎蒼真役…明智乱歩です、よろしくお願いします」
「はい、よろしくね」
周りもドライというか軽い感じでさっさと次に行ってしまい、他の役者に挨拶をしても同じく軽くあしらわれる、本番までの時間でじっと周りを見つめて…
(なるほどね…まぁ当たり前か、まともな実績も活動記録もなくて配役自体も作者は渾身のキャラを作ったのかもしれないけど甘い雰囲気のこの作品に登場するにはキャラが強すぎて2巻以降は突然に姿を消す、で、撮影側からしたらこんなキャラクター消したかったけど原作者からの要望で消すことも出来なくて、なら最大限生かそうとした…おそらく僕という新人に出演のチャンスを与えることで貸しをつくり…見てるのはアイってことか…)
そう冷静に判断すると腹の底から黒い気持ちが込み上げる
(なるほどねぇ?随分とまぁ…って感じ、さすが芸能界ドラマ1本に一体どれだけ思惑が積み重なってる事やら)
わっるい顔で笑って
(まぁ…そっちの都合は概ね把握した…おそらくメインの奴らは演技力云々で選ばれてない、選ばれてるのは話題性があり、そして顔が整っている奴ら…)
じゃあ…まぁ…
(僕も僕のやりたいようにやらせてもらいますか)
「そろそろ準備お願いします!」
各々が自分のポジションに入り
「本番行きます!」
そしてそのまま芝居がスタートする
主人公でヒロインの夕と幼なじみの空のシーンから始まり、甘酸っぱいラブコメと言えばこれという王道のスタイル、だがしっかりと組み立てられたストーリーや丁寧なキャラ描写などなんの新鮮味もないこの原作がどうしてここまで売れたのかがしっかりと分かる内容、原作はいい…原作はいいのだが
(なんであんなに棒読みなんだ?表情が全然違うだろ、あと手振りがいちいち激しすぎ、名前呼ぶ時の独特な発音は、なんとかならないのか?)
夕役の役者の演技は申し分ないのだがそれにしても幼なじみ、喧嘩っぱやいツンデレ男子、真面目な優等生タイプなどキャラクター自体も非常に王道で、それでも絶対に外れることの内容な設定ばかりなのだが如何せん演技で全てを台無しにしている感じである
「次明智さん準備お願いします!」
「はい」
そのままスタート位置に立つ
そうしていると幼なじみ役の役者が近寄ってきて
「お前コネで役貰ったって?せいぜい足引っ張んなよ?」
「まぁ気をつけるわ」
(お前が空演じるの絶対だめだろ)
そう思いながらも本番が始まる
「夕?もし良かったら今日僕と一緒に」
その瞬間…空気が変わる
「あっれ?空じゃん、お前こんなとこで何してんの?まだ学校居たんだなお前wというかそのちっこい女誰?」
(肩で風を切る、背筋は伸ばして、顔には笑みを浮かべる、篠崎には自信がある、こいつは絶対的に女に対してモテると考えていて世界は自分を中心に周り、周りの人間は全員下、傲慢でナルシストで殊勝な志などない、そりゃこの作風の漫画だったら合わないキャラだよな)
「ッ、し、篠崎!」
「はぁ?いつ僕がお前に名前で呼んでいいって許可したの?というか質問に答えろよお前誰?」
そのまま夕の顎をクイッと持ち上げて顔をちかづける
「な、なんですか突然!し、失礼じゃないんですか!」
(でもまぁ?別に合わせる気ないけどな?、そーそーギア上げてこうよ、正直僕だって腹たってんだよ?この原作は面白い、でもくだらない一部の大人共のせいでクオリティがダダ下がりだ、あいつらからしたら僕は目立たないでさっさと役目を終わらせて退散して欲しいって感じだろうけどさ?僕からしたら知らないから、全部ぶっ壊す)
二ヘラァっと篠崎が笑いかけて
「僕のこと知らないとかお前マジで言ってんの?はぁ〜、まぁ、お前ちょっと面が良いから教えといてやるよ」
「…お、おい…篠崎…やめろよ…ッ!」
空の役者は演技と言うより何とか絞り出すように言葉を発して
「はぁ?お前は黙っててくれる?今こいつと会話してんだから…さぁ?」
ドンッっと小突いて転ばせる
「ッ!…いっててぇ…」
「空!ちょっと…離してください!」
ドンッと両手で離そうとする…台本通りであればそのまま距離を取って2人は帰っていくという台本だったが
明智は離れずさらに距離を詰めて
「ちょ!?」
「今僕と話してる時に他の奴に意識向けんなよ?」
(カメラの位置はだいたい把握…この辺に顔を持ってけば…)
「なぁッ!?ちょ、ちょっとやめ…!」
そのまま顔を近づけて…キスをする寸前でピタッと止まり
「本気でするわけないじゃん…騙された?」
ボソッと呟いてから
「僕の名前は篠崎蒼真…よろしくしといてやるから覚えとけよ?」
「は、、はい…」
明らかに演技ではなく素で反応してしまい、顔を真っ赤にさせてそのまま潤んだ瞳でまっすぐ見つめる…
「か、カット!!」
慌てて映像を止めて
「ちょっと!困るよ!台本にないことされちゃ!」
慌てて監督が明智に駆け寄って
「ぁ〜すいません、でもこのキャラクターだったらここまでやるかなと思って思わず、すいません、あ、実際にキスはしてないので安心してくださいね?」
後、と言って空役に手を差し伸べて
「ちょっと強めに押しちゃってごめんね?大丈夫だったか?」
「ぁ…あぁ…」
唖然とした顔で手を取ってゆっくりと立ち上がる
「と、とにかく今のは」
「今のままでお願いします!」
突然の大声を出しながら近寄ってくる
「ぁ、せ、先生来ていただけてありがとうございます!そ、そのまま…ですか?」
「そう、そうです!今の!今のままで!そうだった!このキャラを活かしきるならここまでやらなきゃいけなかった!でも私にそこまでこのキャラを理解することは出来なかった…き、きみ!!ありがとう!君のおかげで私が与えられなかった命が芽生えた!!」
そう言って明智の手を握ってブンブン上下に振り回して
「い、いえですが!このまま使うとなるとこの先のシーンに違和感が!」
「いいや!このまま使う!こんな素晴らしい演技をしてくれたんだからむしろ使わない方が申し訳ない!それにあなた!」
「は、はい!!」
夕役に突然方向を変えて
「さっきの顔!アレ良かったよぉ!?あれぞ正しく私が思い描いた夕っていうキャラクターの照れる顔!素晴らしい!演技であそこまで表現できるとは素晴らしい才能だ!!」
「あ、あの…ありがとう…ございます…」
少し複雑そうにしながら
「で、ですが先生!これをこのまま使うとなればその後に影響が!」
「いいや!このまま使う!使わないと言うのであればこのお話はなかったということで!」
「そ、そんな!せ、先生!!」
その後明智の出番が増えるわけでもなく何事もなく終了し、ドラマは早速放送明智の演技は原作を見ていたファンにも好評らしく
え?ヤバくない?突然キャラの濃いやつが来て鬱陶しかったけどあの人のアレ何?やばくない?
あんな初っ端からキスするシーンとか原作にないよね!?ありがとうございます!!
流石にあれはカッコよすぎる!!あんな人がやってくれるならもっと出番あっても良かったのにぃ!!
夕の反応がガチ過ぎてやばいだろあれ、あんな顔されたら惚れちゃうに決まってるじゃん
というかあれ本気でキスしてかなった?あんなイケイケオーラ全開のイケメンに突然アドリブのまじキス?そりゃ真っ赤になるよ!
いやいや流石にキスはしてないだろ、しかもアドリブで、でもキスしてた方がキュンってくる〜!!
というかこの役者さん誰?見たことないんだけど!
あんなの見せられちゃったら速攻でファンになっちゃうに決まってるじゃん!無理じゃん!
明智の初出演はなかなか好評らしく、一気に明智乱歩という名前は広がり始めた、
そして明智の初めての出演が成功に終わり、放送を見た視聴者の反応も悪くなくおおよそ好意的な意見が多い
「ふぅ〜何とか成功で収めましたよ」
「明智君は本っ当にムカつくぐらいなんでもできるのねぇ、でもとってもいい演技だったわよ」
「ありがとうございます」
「調べた感じ今のトレンドに乗ってるらしいよ?凄かったよ明智さん」
「トレンド?うっわぁ…なんか恥ずかしいような嬉しいような…ムズムズするんだけど」
「明智ってなんでもかんでも熟すからすっごいムカつく」
「ルビィ?たまには素直に僕を褒めてくれてもいいんじゃないの?初めての演技で結構緊張してたんだよ僕?」
そう合えばと
「あれ?社長もアイもまだ戻ってないんですね?」
「そうね〜仕事が結構長引いてるみたいで」
「早くアイツに見せてやりたい物ですね僕の活躍を、煽って来てたから今頃後悔してるんじゃないですかね〜」
珍しくテンションの高い明智
「今ならアイになに言われても笑って許せる気がしますね」
「いや…でもあれって…」
「アイに見せてもいいのかな…?」
何やら双子がボソボソ呟いてて
「はぁ〜でも結構緊張したんですよ?」
「そうね、なんでも上手くできるとは言っても初めての経験で慣れないこともあったろうから、お疲れ様」
そうやってみんなで楽しく過ごして
そのまま解散して家に帰ってベランダでタバコを吸いながら
(今までこんなに満ち足りた気持ちになったことって僕あったか?他人の中身を覗き込むことなんて簡単に出来て、でも正直この才能があったって使う機会がないから使わなくて、不貞腐れて塞ぎ込んでて…)
月に向かって煙草の煙を吹き出して
(それもこれもあいつのおかげだ…あの時あいつが話しかけてくれなかったら、強引に関わろうとしなかったら今の僕はないだろう)
「今度ご飯でも奢らないとな」
ピンポーン