ハリネズミと天才【完結済み】   作:妄言a〜

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簡単でちょろい天才子役

 

「明智さん入りまーす」

 

「苺プロ所属明智乱歩です、よろしくお願いします」

 

どこでも人間が忙しそうに準備に周り、現場の緊張感が高く、前に来た現場よりも相当力を入れているというのが準備の段階で理解出来て

 

「おぉ…本格的だなぁ…」

 

こんなところに呼ばれるぐらいには少し名前が売れ始めて来ているのを少し嬉しく思いながら周りをキョロキョロしてる時

 

「本日はお願いします」

 

幼い声ながらしっかりと口調で現場入りする子供が1人、赤い髪に赤い瞳、顔立ちは整っていて美形、有馬かなが撮影現場に到着した

 

「おぉ…実物可愛いなぁ」

 

明智自身シンプルにファンらしく、貰えるものならサイン欲しいなぁ…と考えるぐらいには有馬かなに入れ込んでいる

 

(だが待てよ…僕から話しかけるって絵面的にキツくない?20歳超えてるとかあの子にしたら普通におっさんだし…あぁ〜)

 

とか考えながら有馬を見つめている

 

「ぁ?はぁ?」

 

なにかに気づいたのか、だが撮影は始まってしまったので話をしに行くことも出来ず、そのまま一旦休憩に入り、飲み物を飲んで休んでいる有馬に

 

「お疲れ様です先輩」

 

「?……?わ、私ですか?」

 

最初は誰に言ってるのか分かっていなかったのか、辺りをキョロキョロ見渡して…でも目線はこちらに向いていると気付きびっくりして声を出す

 

「当たり前じゃないですか、なんだって芸歴が違いますからね…有馬先輩」

 

「せ、先輩…そ!そうよ!私は有馬かなよ!貴方なかなか見所があるじゃない!名前は?」

 

「僕の名前は明智乱歩ですよろしくお願いします」

 

ちっちゃい子にペコペコ頭を下げる成人男性という奇妙な絵面が繰り広げる

 

「あぁ…クリーム避けたり、お化け怖がってる人」

 

「知っていてくれたんですか、恐縮です…まさかあの重曹を舐める天才子役に知ってもらえるとは…」

 

ははぁっと幸福そうに言いながら

 

「10秒で泣ける天才子役!!あなたあの子の差し金!?」

 

大声で否定して

 

「おっと失礼、つい癖で」

 

「癖って…あんた私のこと全然ソンケーしてないでしょ!」

 

「いやいやしてますよ、ただ反応が面白いからからかってるだけで凄いとは思ってますよ」

 

「からかってるじゃないの!!」

 

声を出して疲れたのか肩で息をしながら顔を真っ赤にさせて

 

「大丈夫ですか先輩?これどうぞ」

 

「あ、ありがと、あなたなかなか気が利くじゃない」

 

差し出された飲み物を素直に受け取って

 

「尊敬してますけどちょっとガッカリですね」

 

「な、…何よ…」

 

少し暗い顔をして…

 

「だってビビっちゃってるじゃないですか」

 

「び、ビビってないわよ」

 

驚いた顔をしながら明智を睨みつける

 

「ビビってるって…だって前みたいにやらないじゃないですか」

 

「前見たいって…あんたも結局…」

 

「前の有馬かなは私を見ろって叫びながら演技してた…今は作品のクオリティがどうの、ここでは誰が1番注目されるべきかとかつまらないこと考えて」

 

「つ、つまらないって…」

 

「つまらないよ…有馬かな、僕は私以外見る必要ある?ストーリーとか他の人間とか気にしてる暇あんたあんの?って顔で演技する有馬かなが好きなんだよ」

 

「ス、好きぃ!?」

 

びっくりしたように思わずたちあがってしまい

 

「あーあでももうあんな先輩見れないなぁ〜ザンネンダナ〜」

 

棒読みでニヨニヨして、有馬を見つめて

 

「な、何よ…私は才能なんてないし」

 

「才能ないねぇ?じゃあ僕のことしっかり見てて下さいよ?先輩」

 

「え、う、うん」

 

そのまま本番が始まり

 

(見といてって何よ…あんただって昔の私…なんでしょ?今の有馬かなに何を求めてるのか知らないけど…今の私には…)

 

 

「君大丈夫?派手に転んだね?」

 

「こ、子供扱いしないで!私だって充分大人よ!」

 

ガラの悪い男が有馬とぶつかって、そのまま転んでしまい、そこを通りかかる明智との絡みから始まる

 

「えぇ?そんなにちっさい癖に…怪我はない?」

 

「ち、チッコくないわよ!」

 

そんなセリフは台本にない…思わず反応してしまい、キッっと睨みつける…けれどいつまで経ってもカットの声はかからない

 

「えぇ?僕と全然身長違うけどなぁ?大丈夫?というか怪我してるじゃん」

 

「い、今は転んじゃっただけで本当はあんたよりおっきいから!」

 

嘘だぁ〜なんて呟きながら荷物を纏めてひょいとお姫様抱っこして

 

「ちょ、ちょっと!何してるのよ!」

 

「えぇ?子供扱いが嫌だったんでしょ?ちゃんとレディとして扱ってるだけじゃん、あと怪我したんだったらちゃんと洗わないといけないしね」

 

(ここも違う…本来ならおんぶで運ぶし…こんなセリフない…こいつ、何考えてるのよ…私も思わず反応しちゃったけど…)

 

「よいしょ、とりあえず大丈夫かな?」

 

「ふ、ふん…余計なお世話よ」

 

「素直じゃないなぁ?まぁ傷は残らないかな?せっかく可愛いんだから傷は治しとかないとね」

 

「う、うるさい…ま、まぁ…その…」

 

なにか言おうとする有馬だがモジモジと顔を赤らめながら

 

「美人さんの助けになれて良かったよ」

 

「びぃ!…じん…」

 

突然耳元で近づいて

 

「才能のない有馬だったらついて来れないアドリブしちゃった?ごめんね?」

 

「ッッ〜〜〜!!!」

 

そのセリフに

 

「その…あのね…」

 

「うん…何?」

 

「あんたが良かったら…将来お嫁さんになってあげる」

 

ひまわりみたいな笑顔で笑う有馬に…

 

「ッ…う、うるせー、大人をからかうんじゃありません」

 

少しだけ演技じゃなく、本気で見惚れてしまったのは内緒

 

 

撮影終わり

 

「あんたっねぇぇ!!!」

 

「ごめんって先輩」

 

幼女に詰められている成人男性の姿がそこにはあった

 

「あれ!アドリブ!途中演技取れちゃってた!!」

 

「えぇ?演技じゃないのぉ?先輩だったらあのぐらい演技で余裕だと思ったんだけどなぁ」

 

「ま、まぁ…私レベルになるとぉ…じゃなくて!!」

 

「明智くん、有馬ちゃん」

 

スタッフに呼ばれて

 

「いやぁ…あれ良かったよ!有馬ちゃんもお転婆な子供がよく表現出来てたし、明智君も流石だね?相手を自分のペースに巻き込む感じ、やりすぎなければどんどんやっちゃって!」

 

「いえいえ、有馬先輩のおかげですよ、若輩の僕に色々教えてくれたんですよね?」

 

「ま、まぁね!!」

 

次もその感じで頼むよ?と言われそのまま2人から離れていく

 

「あんた…私の後輩って言うくせに生意気…」

 

「えぇ?でもいいって言ってたよ?」

 

「でもあんなの、他じゃ通じない…」

 

「通じる人もいる」

 

「え?」

 

明智を見上げて

 

「ここの監督は作品が良くなるんだったらある程度役者の好きにやらせていいって人、原作者も作品が良くなるんだったら原作にない演出をしても怒らない人」

 

「そ、そんなのなんで分かるの?」

 

「僕にはわかるから…まぁ…先輩のやり方が間違ってる訳じゃないよ?確かにみんなにとって都合のいい役者やればずっと正解できる」

 

しゃがんで…しっかりと有馬の目を見て

 

「これは1ファンからの勝手なお願い…僕は私を見ろって叫びながら演技する有馬かなが見たい…だから…たまにでいいから見せてよ」

 

「そんなに…見たいの?」

 

「僕が昔って言ったのは…今の君が周りを引き立たせるためだけに演技してるから」

 

「子役として…どんどん価値が下がってる私なのに…?」

 

「子役として有馬かなを見たことなんて1度もないかな?僕は…有馬かな…一個人として君を見てるよ」

 

驚いたように目を見開いて…明智の顔を…瞳をじっと見つめる

 

見つめられた所が熱くなる気がして…それを振り払うように

 

「しょ!しょうがないわね〜!可愛い後輩が言うんだったらやってあげるわよ!!」

 

「やっぱちょろいなこの子」

 

「ちょろくないわよ!」

 

そうだなる有馬を小馬鹿にしたようによしよし頭を撫でる明智

 

 

事務所のテレビで

 

「あ、重曹を舐める天才子役!」

 

「10秒で泣ける天才子役な、ルビィ、お前覚える気ないだろ」

 

間違えるルビィにツッコミを入れながらじっと眺めるアクア

 

「いやぁ、流石有馬かなだったなぁ」

 

「明智が人を手放しで褒めるって珍しいね」

 

「ルビィは僕をなんだと思ってるのかな?」

 

「性格が悪い」

 

「う〜んシンプル悪口、ただ僕が有馬かなが大好きってだけ」

 

じとぉっとした目で見つめられて

 

「明智ってロリコン…」

 

「違うよ、ただもったいないと思っただけ…有馬かなは才能がある、なのにそれが周囲のせいで潰れそうになってる…だから…僕としてはあの演技が見たくて今回焚き付けたわけだし」

 

さっきからテレビに食い入るように見ていたらアクアがそれを聞いて納得したのか

 

「あぁ…ここ原作と変えてるな…うっわぁ…最後の…すごいな」

 

「あれだろ?実は最後のあれを至近距離で食らった僕の反応若干素だから…」

 

「へぇ…明智でもやられる時はあるんだな」

 

「やっぱり…ロリコン…」

 

アクアはニヤニヤとルビィは冷たい目で明智を見つめて

 

「はぁ?違います〜ちょっとうっぉ…生有馬かなの演技すごぉ…可愛い…って思っただけデーす」

 

「本格的にやられてんじゃねぇか」

 

「この浮気者」

 

「浮気ってなんだよ!ち、違うから…違うからね?」

 

「帰ってきたらママに報告しないと」

 

「だ〜れだ」

 

「は…は…は…は…」

 

突如明智の視界が遮られ、柔らかい手の感触が顔に伝わる…声は優しくふわふわしていて

甘い匂いが鼻腔にほんのり香る

 

「ねぇ…だ〜れだ」

 

「お、おかえり…アイ、早かったね」

 

「うん、ずっと前からいたんだ、ただいまアクア、ルビィ♪」

 

「う〜ん誰だろうなぁ?僕分からないな〜全然わかんないわ、ちょっとわかんないから答え見ていい?出かけてきていい?」

 

ほんの少し力が強まった気が…いや全然強い力で顔を捕まれ圧力をかけられる

 

「イデデデデデ!」

 

「えぇ?わかんないのぉ?ほんとぉ?本当に言ってるんだぁ?あぁ、もしかして新しい子見つけたから私の事なんてもういらないって言う」

 

「待て待て!!何の話だ!?先輩か?先輩話か?」

 

「先輩?」

 

ルビィが不思議そうに声を上げて

 

「あぁ!有馬かな先輩だよ、僕より芸歴ながぃっでぇ!!力強!どんな握力してんだお前!」

 

「へぇ先輩なんだぁ?アイドルとして何年も先に芸能活動してる私より先輩なんだぁへぇ〜」

 

やっと拘束をとかれ、しばらく頭をさすりながら

 

「おかえりアイ」

 

「ただいま」

 

何事も無かったかのように挨拶する明智そして一応返すアイ

 

「今日もお疲れ様じゃあ今日も遅いし解散に」

 

「お家…行こっか、今日泊まりなよ?」

 

「ぇっとぉ」

 

「来て」

 

「はい…」

 

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