「先輩先にお風呂入っちゃって」
家に入って荷物を置いている時に言われ
「いやでも僕着替えとか持ってきて」
「あるよ?」
「あるの?」
「あるよ」
なんで?と疑問に抱いて少し考えてから
「あぁ、前僕が泊まった時のやつ結局回収してなかったなそう言えば」
「そうそう、だからお風呂入ってきちゃって」
「分かった」
そういいお風呂に行こうとする途中でアクアと目が合う…
「アクア君…」
「なんだ?」
「男同士の付き合いしよう」
「えぇ…」
「頼むから、お願いだから今度なんか奢るから」
「まぁ…いいぞ」
そう言われるとそのまま逃げるようにそそくさとアクアを連れていく明智、その様子をニコニコした顔で見届けたあと、こちらはこちらで…
(いえーい!!)
内心ガッツポーズをしていた、少し心を開いて頼ってくれるようになった明智、だが本格的にあの男を落とすには決定的に足りないもの…それは…家に泊めること、家に泊めさせるという考えではなく自然に…帰ってきた時ただいまと言わせるまで家に通わせてしまえばもうこちらの勝ち、そう考えたからこそのアイのあの演技!最近の演技は神がかっており、年々レベルを向上させている…完全に騙すことはできなくとも、少なくとも注意を傾いて時間内までに連れてきてしまえばこちらの勝ち!!が
(先輩ってルビィの時に思ったけどやっぱり小さい子好きなのかなぁ?私以外に本気で照れたとか言ってたし、演技ならまだしも…結構真剣に刺さったってことだよねぇ?ロリコン?やっぱり?先輩って中学の頃に私に話しかけたのって小さいから?へぇ〜)
それはそれ、これはこれ…いくら作戦を遂行するために決行したとはいえ心の中まで騙し切る事は不可能、グツグツと心の中で炎を燃やして、どうしてやろうかあの男と考え始める
(明智が今日泊まるのかぁ…ふ〜んまぁ別に?明智が泊まった所で全然何の問題もないんだけどね?でも、ま、まぁ…歓迎はしてあげようかなぁ?私ってほら?優しいから?ね?本当に困っちゃう)
嘘である、この女友達が家に泊まりに来るというイベントごとに内心ドキドキワックワクが止まっていないのである、友達が泊まりに来たらやりたいことをリストアップして
「いつかできるかなぁ♪」なんて考えるぐらいには友達とのお泊まりに憧れのあるタイプなのである
(初めてが明智っていうのがちょっと気に食わないけど…まぁ…いいかぁ!)
お風呂、身体を清潔にするだけでなくリフレッシュのために風呂に入り心と体の健康のためにこれ以上ない場所…そこで2人は…
「まじで怒ってると思う…?」
「いや、明智だったら分かるだろ」
「いやぁ…マジでわからん…全部じゃないんだよ、100%のうち95%分かる感じ?まじでヤバすぎる…あいつなんなの?」
「いや…僕に聞かれても」
切実だった…明智は過去の事を思い出していた、少し他の異性と喋っただけで機嫌が悪くなり、しばらく撫でていなければ機嫌が治らなかったあの日を思い出して…
「でもさぁ?ルビィと1個しか違わない子相手に嫉妬とかあるのか?」
「ぁ〜可愛いとか言ってたし、べた褒めしてたからじゃないのか?」
「マジで?あれだよ?犬可愛いみたいな感じだよ?」
「でも本気で照れてるって言ってなかったか」
しばらくの沈黙…
「言ったな…言ったわ…」
「まじなの?」
こくりと頷き小さく頷いて…
「やばかった…素直に言うと14の時だったら堕ちてたかもしれん…」
「それお前が中二の時じゃん、ダメじゃん…申し開きもないじゃん」
「い、いやでも直接何かしたとかじゃないからね!?なんもしてない、むしろ健全な関係よ?普通に有馬かなのことは1人の役者として好きって感じで」
「うわぁ…女たらしが言いそう」
ブーメランが突き刺さりそうな顔で言って
「アクアには言われたくないんだよなぁ…」
「いやいや…俺はまだ子供だから」
「中身おっさんだろ」
「ま、まだまだこれからだから!」
嘘つけ、とお湯を顔にかけて、やったな?とやり返して一通り現実逃避したあと
「俺そろそろ上がるからな」
「まって…置いてかないで…」
「いやのぼせるから…早めに上がってこいよ」
「あくぁぁ…」
頼れる相棒はさっさと上がって言ってしまう
まぁ…でもしばらくしたら上がらないとなぁ〜とぼんやりお湯に使って居ると扉越しにゴソゴソ服を脱ぐ音が聞こえて
(ぁ〜?ルビィ?いや僕に裸見られるぐらいであの騒ぎ様だからなぁ…)
とか何とか考えていて、ガラッと開けられた扉を横目で見た瞬間
「いつまで入ってるの〜先輩遅いから入っちゃった」
「お前まじ…?」
アイが乱入してきて、そのまま困惑してなるべく見ないようにしている明智を無視し、「ほら、詰めて詰めて」そう言って湯船に浸かる
「はぁ〜お風呂は人間の洗濯だよねぇ」
「まぁ…そうだな…」
「何してるの?散々見たくせに」
ニヤニヤ笑いながら見ないようにしてる明智を笑って
「お前さぁ!?」
「撮影次もあるの?」
慌てている明智を無視して話を切って
「ん?あぁ、まぁ何回かはあるぞ」
「じゃあ次から指輪…して?」
「ぇ…まじ?」
「なにか不都合でもあるの?」
そう言われると
「いや特には無いけどさぁ?」
「じゃあいいじゃん、虫除け」
「虫除けて」
「いいから…して?」
左手の薬指を撫でながら目をじっと見つめられる
のぼせた頭、目の前には意中の相手
いくら天才とはいえまともな思考ができる訳もなく
「はい」
素直に頷いてしまって、それを聞いたアイは満足そうに頷いて
「いつまで入ってるの?エッチ」
「お前からきた気がするんだけど?」
「ほらほら、ルビィも来るから早く出た方がいいよ」
「はいはい」
そのまま湯船を出て行きこうとすると
後ろから抱きつかれ…直の感触が明智を襲う
「先輩が私の事こんなふうにしたんだよ?」
「お前…さぁ」
なんとか理性を総動員させてお風呂から上がりそして…
アクアの前で崩れ落ちる
「ほんっっと…なんなの…」
うずくまってはぁ〜と顔赤らめて、それを冷たい目で見ながらお風呂に入りに行くルビィ
「もう色々負けてるだろ」
「負けてないから、まだギリセーフだから」
「どの辺が?」
アイが台所で料理している、それをソファで座りながらのんびり眺めて
「ままにさっきから視線向けすぎ…思春期の中学生?」
「いや違うよ、ただ…何となく落ち着くだけ」
そのまま立ち上がって台所に向かって
「なんか手伝おうか?」
「別にいいから座ってなよ?」
「いや、流石になんか手伝わせろよ」
「いいからいいから」
そう笑顔で言われてしまえば引き下がるしかなくて、そのままソファに戻る瞬間
「母親姿が板に付いてるな」
ボソッて呟きながらソファに戻って
「どう?先輩美味し?」
「美味いぞ」
「良かった〜」
もぐもぐと咀嚼する明智をじっと見つめて、にこにこして
「その拾ってきた犬がやっとご飯食べ始めたみたいな感じで見つめてくるのやめろ」
「なにそれ」
そんなふうに流れて言って、流石に皿ぐらいは洗わせろとアイを無理やり台所から追い出して
「良しと」
洗い物が終わり、これからどうしようか?と考えてると
「明智こっち」
ルビィがちょいちょいと手招きする
「どうしたルビィ」
そのまま部屋に入ると鏡張りのダンスレッスン用の部屋で
「私が踊るからオタ芸して!」
「えぇ?僕そういうのやったことないんだけど」
「ママの時ファンサとかしなかったの?」
「全くしてなかったな…というか1回?いや…2回ぐらいしかそもそもライブ見てないし」
それを聞くと信じられないと言った顔で
「お兄ちゃん!」
「まぁな、やってもらわなきゃ困る」
そこから明智に対しての特訓が始まった
5分後
「オタ芸って意外と面白いな?」
「本当にムカつくよなこいつ」
「教えがいというものが全くない」
完璧なオタ芸を披露する明智に複雑そうな顔を向ける2人
「じゃあ今から私が踊るから2人はやってね!」
そのままサインはbを踊りアクアと明智が2人でオタ芸してる時に思ったことがあるが…しっかりと最後までやりきって
「はぁ〜はぁ〜どぉ?明智あの後もちゃんと練習したんだよ!」
「まぁダンスは成長してるけどさぁ?」
なにか言いたいことがあるのか含みをもったかんじで
「言いたいことがあるなら言いなよ」
「下手じゃない?歌」
「ぇ…とぉ…」
「明智そこは触れてやるなよ」
「でもさぁ?あのまま気づかなかったらオーディションとかで踊って歌う訳でしょ?やっぱ早めに伝えてあげた方がいいと思うんだけど」
コソコソとアクアが明智に言うけれど、そもそもアクア自身の妹の歌のレベルが低いこと自体には気づいていて
「わ、私はこれから推してくれるみんなにちょっとずつ歌が上手くなるっていう成長?そういうドラマを提供出来るの」
「それ上手くならなきゃドラマ提供出来ないから無理そうだな」
「練習すればどうとでもなるでしょ!」
そうかぁ?とアクアに向くとアクアも特に何も言わない
「なんと言うか全体的にあれなんだよ、アイの真似しようとしてるけど音程があってないから変に聞こえる」
「変…私のアイドル生命絶たれた…」
ズーーンと沈んで崩れ落ちる
「まぁ練習でなんとかなるんじゃないのか?ダンスは上手いわけだし」
アクアの助け船に顔がパァァと明るくなって
「そうだよね!練習あるのみだよ!2人とも練習付き合って!ほら!もう1回行くよ!」
「えぇ…まだやるのか?」
「別にいいけど汗かいちゃうんだけど」
「乙女か!いいから!」
そう渋る男二人を無理やり練習に参加させて、そのおかげでルビィはオタ芸されながら踊って歌う楽しさを再認識し、ルビィの体力の限界まで付き合わされたふたりは、アクアの方はまだ何とかなったが、喫煙者の明智には相当答えたらしく、しばらくの間筋肉痛が酷かった
「あれ?先輩どこか出かけるの?」
子供も眠って、やっと開放された明智は子供のパワーを再確認しながら出かける準備をしていた
「ん?タバコ吸いに行くんだよ」
流石にここでは吸えないしなとタバコの箱を見せて
「いいよ別に灰皿も一応あるしさ」
「お前さ…やっぱ狙ってたろ?」
「バレた?」
呆れてため息をつきながら灰皿を借りてそのままベランダに行く…
「なんで着いてくんの?」
タバコを吸おうと火を付けようとした明智の隣に立って空を眺めていた
「えぇ?先輩のタバコ吸うところが好きだから?かな?」
「匂いつくから離れろって」
「じゃあもう1回お風呂入ったらいいじゃん」
おっ前さぁ…呆れながら煙を口に含んで、アイから離れた場所に煙を吹く
「私に吹きかけてもいいよ?」
「お前意味わかってて言ってる?」
「分かってたらどうするの?」
「悪い男に引っかかった売れないアイドルみたいだからやめようね」
「ドームにも立った伝説的な元アイドルでーす」
「うん、タチ悪いわ」
空を眺めながらぼんやりと…お互い特になにか喋る訳でもない時間、そんな時間を共有しているとなんだか明智と一緒に暮らしていて…なんて考えが頭をよぎる
「ああやって先輩があの子たちと仲良くしてくれるのは嬉しいよ」
突然明智に話しかける感じでもなく呟いて
「どうしたの突然?」
「だって私だったら嫉妬しちゃうかもしれないし」
「何言ってんだお前は、子供はなんも関係ないだろ?」
「そういうことサラッと言うの本当にやめて?あざとすぎる…他の子相手にもそういうこと簡単に言っちゃうんでしょ」
ジトっとした目で見つめて
「いやいや、そんなことはないと思うぞ?」
「どうだろうね?先輩って無自覚に女の子たらしこんでる感じするよ」
「ないから」
「有馬ちゃんだっけ?やっぱり先輩って小さい子好きなの?」
「違うって」
重なっちゃった?そう呟いて…明智を見つめるアイ…その目は優しくただ相手を包み込むように2つの星がじっと見つめる
「お前マジで、僕と同じぐらい天才か?頭悪い癖に」
「いちいち一言余計」
肘で横腹をつついて
「そうだよ、有馬かなには才能がある、でも周りのせいで潰れそうになってた、だから…ちゃんと見てる人は案外居るんだぞって教えただけ」
「ふーん…」
なぜか不満そうにぐりぐりと頭を腕に擦り付ける
「なんだよ?アイって機嫌悪くなるとすぐ暴力だよな」
「暴力じゃないし…私以外に優しくして、まぁ…それも先輩の良さだけどさ?他の子相手にデレデレしちゃってさ?」
不貞腐れたように頭を擦り付けて、ブツブツ呟きながら明智に攻撃し続ける
「デレデレ…はしてるな…優しく…、まぁ…考えようによってはしてるのか?」
「私の時は絶対こいつ面白そうだなって感じで呟いたでしょ?」
「バレた?」
「先輩はその時は私のこと可愛いって思わなかったって事なのかなぁ?」
二の腕をぐりぐり摘んで
「いでででで…違う…違うから」
「じゃあ何?」
それを聞かれると目を逸らしてなんと答えたらいいか分からないと言った顔で言いずらそうに固まって
「早く…それともなにか言いづらいことでもあるのかなぁ?」
「一目見た時…可愛い…なって…思ったから…思わず、口から…ボソッと…」
そう…つまり、
「気になる子にちょっかいかけたってこと?」
「ち、違う」
顔を赤らめてそっぽ向いて…明智は今、クラスに可愛い子がいるけど関わり方が分からない、だからちょっかいかけて構ってもらおうとする男子小学生みたいな理由を話したことによる羞恥心で顔が真っ赤になってしまう
「へぇ〜へぇぇ〜私のこと初めて見た時から可愛いって思ってたんだ〜へぇ〜」
ニマニマした顔でほっぺたをつんつんと突いてそれなら納得出来る、初めて会った時周りの人には普通に会話したり、勉強を教えたりしていたのにアイに対しては冷たく接して、突き放すように会話していた時のことを思い出してニマニマし始める
「ぁ〜うるっさ、まじでうるさいわ、本当にどうしようもなくうるさいわこの小娘」
「はいはい、そうやってまた私に構って欲しいんでしょ?先輩は可愛いなぁ」
「あ〜もう知らん、僕は寝る」
さっさとベランダを出ようとする明智に後ろから抱きついて
「最初は面白い人だな〜って興味あるな〜ってだけだったのに…先輩が私に本物を教えたんですよ?」
責任取ってくださいね?
そう耳元で言い終わると、フリーズする明智を置いてさっさと言ってしまう
明智は1人ベランダでもう一本タバコを付けて、なんとか冷静さを取り戻してから眠りについた