ハリネズミと天才【完結済み】   作:妄言a〜

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裸眼で見てよ

 

ここ最近の明智はドラマの撮影の為に多忙を務めていて、自宅から直接撮影現場に向かい、そのまま家に帰るという生活になっていて、今日も撮影現場に入る明智

 

「おはようございます」

 

現場に入り、挨拶してそのまま

 

「先輩おはようございます」

 

「あ、おはよう…近いわよ!!」

 

「いでぇ!」

 

いつも通り有馬に挨拶した明智、だがいつもであれば有馬が見上げる形の挨拶が、なぜか至近距離で明智に見つめられながら挨拶に朝イチの脳みそが処理できずに頭突きをしてしまう

 

「いてて…なんかすっごい近くなかった?」

 

「いやぁ…すいません」

 

「あれ?あんた眼鏡は?」

 

「寝惚けて落としたメガネを踏み抜きました」

 

「えぇ…新しいの買いなさいよ」

 

「いやぁ…めんどくさくて」

 

あんたねぇ…と呆れる有馬

 

「いやいや、別にドラマ撮影自体に影響はないですよ?」

 

「まぁ、問題ないなら別にいいけど…あ、台本でさ」

 

「はいはい」

 

そのまま有馬の説明を聞こうと近づいて隣に座る…

 

「いや…あのね?」

 

「どしたの先輩?」

 

「近いのよ!距離が!距離感がちっかいのよ!」

 

一旦距離を取りながら

 

「しょうがないじゃないですか、あ?もしかして嫌でした?」

 

朝一応お風呂入ったりしてるんだけどなぁ…と軽くしょんぼりして

 

「ま、まぁ…別にいいけど」

 

(こいつは小生意気な後輩!普段人のことを小馬鹿にしてくる嫌な男…まぁ…私のことを見てくれてるのは嬉しいけど…じゃなくて!!)

 

そう心に言い聞かせながら明智の顔が近づくのを何とか耐えて、お互いの演技の確認をしていく

 

「だからここわね?」

 

「はいはい、分かってますよ?カメラ的にも僕が引いた方が先輩が目立ちますからね」

 

「あんたも目立ちなさいよ」

 

「いやいや、先輩を引き立たせるのが後輩の役目なんですよ」

 

いつも通り、あってまだ少ししか経っていないがフランクに、そして年下だからという理由で子供扱いしないで対等に接してくれる明智は案外やりやすく、気軽に接することのできる相手としてありがたい…けど

 

(やっぱり近すぎる気がするんだけど…まつげ長…目つき悪いけど顔は普段ニヤニヤしてるから締まりないのよねぇ…)

 

そんなことを考えながらもそこはプロ、芝居に付いての確認が終わり、本番も特に問題なく、有馬かなの良さを引っ張り出して

 

「先輩今日もキレキレでしたね?」

 

「まぁね!まぁ、あんたも悪くなかったわよ?」

 

「先輩のおかげですよ」

 

「ま、まぁね!」

 

「明智さんいいですか?」

 

「はい」

 

スタッフに呼ばれ有馬と別れる、そんな明智をじっと見つめて居るとあることに気付く

 

(えぇ?何よ、普段私に対してニヤニヤしてるくせになんで他の人相手だと真剣な顔で対応してるの〜?え?私だけ?私に対してだけ?えぇ〜困るぅ〜!!どれだけ私のこと好きなのあの後輩〜!)

 

なんて考えながらニマニマとした視線を明智に向けている

 

「あ、あの…近いです」

 

「あぁ、すいません、眼鏡壊しちゃって…迷惑でした?」

 

「い、いえ…」

 

女性スタッフはドアップの明智相手に顔を染めながらもなんとか懸命に仕事を全うしている、そのまま伝えられたのか明智がてくてく戻ってくると

 

「先輩すいません、次のシーンの確認を…先輩?」

 

ブッスゥ〜っと不貞腐れた顔で明智を見つめる天才子役の顔があった

 

「距離近いわねぇ〜視力悪いって体のいい言い訳で顔近づけてお得〜〜」

 

「何言ってんの先輩?いいから準備しな?」

 

「まぁ〜あんたみたいに顔が良いんだったらあっちこっちからお誘いありそうよね〜」

 

「えぇ…あ、先輩」

 

ズカズカと準備するために歩いて行く有馬を呼び止めて

 

「何よ?」

 

「はい、飲み物」

 

「あ、ありがと…」

 

りんごジュースを渡して

 

「ちゃんと水分とってくださいね?」

 

「い、言われなくても分かってるわよ!!」

 

そのままさっさと歩き去ってしまう

 

「ツンデレってめんどくさいだけだと思ってたけど…僕の場合内心も分かっちゃうから可愛いな」

 

(ムカつく…ムカつく!どーせ色んな女の子垂らしこんでるんでしょ!)

 

そう思いながらもしっかりと水分を補給して本番に臨む有馬

 

そんな風に撮影は続き、明智は

「別に作らなくても、そんなに困らないからいいかなぁ…めんどくさいし」

という理由で眼鏡を新しく作らないで撮影に臨み

たまにはと帰りにヒョイと事務所に顔を出す

 

「久しぶりです」

 

「お疲れ様、撮影現場に顔出せなくて悪いわね?最近はどうなの?」

 

「まぁ、ぼちぼちですね、先輩は可愛いですし」

 

「先輩?」

 

思わぬ単語に?マークを浮かべて

 

「あ、有馬かなですよ芸歴だと僕より上ですからね、それに才能もありますし」

 

「へぇ…子供を先輩扱いする成人男性」

 

「いやいや、普通に接してるだけですからね?」

 

そんなふうに話しているとアイが気づいたのか

 

「先輩〜可愛い後輩に会いに来ないって何事〜?ん…」

 

「いや、なんだかんだ撮影忙しくてな?割と面白いか…何?」

 

明智に近づいたアイがピクっと止まり…クルクルと周りを回りながらスンスンと鼻を鳴らして

 

「他の女の匂いがする…」

 

「ええ?まぁ、スタッフの中には女性もいるけど」

 

「いいや、もっと長時間くっついてないとつかない感じ」

 

「えぇ?あ〜一応性別は女の子だけど子供だぞ?有馬先輩」

 

「先輩…?」

 

辺りの空気が凍り始め…アイの瞳が真っ黒に輝き始める

 

「そ、撮影の合間にお互いの出るシーンの確認とかのために台本持ち寄って意見交換してる」

 

「へぇぇ…というか先輩眼鏡はどうしたの?」

 

「壊れたんだよ、まぁ別になくてもなんとかなるしな、作りに行くのめんどいし」

 

まぁ文字見るのに苦労するけど、そこまで日常生活に支障はないからな〜と呑気に答えて

 

「へぇぇ…でも危ないから作った方がいいんじゃないかな?」

 

「確かになぁ」

 

じぃぃとアイの顔を見つめて…近い距離で、ジィィッと…ある程度見つめたあとなにかに気づいたのか

 

「ま、まぁ、やっぱりお芝居をする上で勉強になるって言うかな?やっぱり子役として芝居に関わってるから経験値が違くてさ!勉強になるんだよ〜!」

 

アイの顔を至近距離で見つめて何かを気づいたのか、突然言い訳するようにペラペラと聞かれてもいないことを言い始める

 

「ふ〜ん…」

 

それを聞いてまだ不満そうな顔を向けるアイ…明智の左薬指をすりすりと撫でて

 

「虫除け足りないかなぁ…」

 

そんなふうにボソッとつぶやくのを…明智はしっかり聞き逃さなかった

 

 

ドラマ撮影もいよいよ佳境撮影現場に緊張感が走り、

 

「よ、余裕よ、余裕よ!」

 

しっかりと影響を受けてある有馬かなと

 

「先輩なんかロボットみたいになってますね、おもろ」

 

普段通りの明智の姿があった

 

「誰がロボットよ!」

 

「何緊張してるんです?」

 

「し、してないし!」

 

少しづつ有馬かなという存在が薄れ始めて以降、今までの撮影では上手く立ち回ってほかの役者を輝かせることだけに意識を集中していたが、今回では明智に引っ張られ(せいで、とも言う)自分が輝く演技をしている…つまり、自分が何かミスをすれば作品全体に影響を及ぼしかねないと考える…小さい身体にそのプレッシャーは少し重たいのか、緊張して普段のキレがない

 

「自分がミスしたらとかなんか考えてます?」

 

「べ、別にそんなこと…」

 

「それか自分のせいで作品のクオリティーが落ちちゃうかもとか?」

 

「ぐっ…そうやって人の考えてること何でもかんでも当てるのやめなさいよ」

 

言い当てられてしまい強がりだとバレてしまったので顔が沈んでしまう

 

「そうよ、今までだったら周りを引き立たせる…それで他の人が輝いて、私はそれを支える…でも支えられる側も結構大変なのね」

 

「馬鹿だねぇ」

 

そう言われるとバッと明智の顔を見て

 

「馬鹿って…まぁ…最近落ち目だし…」

 

「あのさぁ?」

 

屈んで目線を合わせる…眼鏡がないためいつもより顔が近くて

 

「な、何よッ!」

 

「僕は自信満々に演技してる有馬かなが好きだ」

 

「‎ふぇ!?ス、好きぃ!?」

 

顔を真っ赤にさせる有馬を無視して

 

「プレッシャー掛かってようが、怖かろうが自信満々の有馬かなが見たい」

 

「な、なにそれ…勝手」

 

「そりゃ勝手だよ、僕は有馬かなのファンだからさ、大丈夫…僕がいる…有馬かなをきちんと見てるから」

 

(何よそれ!こんなに怖くてプルプル震えてる女の子に容赦なく自信満々に頑張れって…こういう時は優しい言葉をかけて慰める場面でしょ!)

 

まぁ…でも

 

「小生意気な後輩、しっかり私を見てなさい!あんたが好きな有馬かなって役者を!」

 

「そう来なくっちゃね?」

 

撮影するシーンは明智が他の女性と仲良くしているのを見た有馬が幼心に嫉妬してしまい強く当たってしまうというシーン

 

 

「ふーん…あの人と仲良いんだ、へぇぇ〜〜」

 

隣を歩きながらランドセルを持たせて、不機嫌そうに石ころを蹴る

 

「まぁ、仲はいいよ?同じクラスだしね」

 

「ふ〜んまぁ別にいいんじゃないの?私には関係ないし〜大人の付き合いってやつでしょ」

 

「子供のくせに妙なこと知ってるな、何?英才教育?」

 

「別に子供じゃないし」

 

「?どう見ても子供なんだけどなぁ」

 

「ッ!子供じゃない!!」

 

このシーンは本来茶化しながら明智が相手の女性に恋心を抱いているか確認するシーン、

見た目は幼いが、中身はしっかりと大人…

誰にも秘密を打ち明けられず、でも恋をしてしまった有馬が大人の余裕を持って、でも少しの嫉妬心を覗かせながら相手との関係を探るシーン

 

なぜか、気づいたら…言葉が零れて落ちてしまった、もう気づいた時には戻せずに、ドラマの撮影としてここにたって演じているというのが頭からなぜか抜け落ちてしまって

 

(あ、子供扱いされてるってことは分かってる…でもこいつは私を見てくれてる、周りの大人と違って子役の有馬かなじゃなくて、私…役者としての有馬かなを見てくれてる対等に接してくれる…今そんなこと気にしてる余裕ない…何とかしないと…このシーンは私の大人としての余裕を見せつける…あぁ…ダメだ…これじゃあ1回撮影止めないと…)

 

演技、と言うより思わず飛び出てしまった言葉、自分をしっかりと見てくれる…そんな人に出会って感情の制御が聞かずに、演技と分かっているのに反応してしまった、

何が天才子役だ、少し理解してくれる人間が居たからって感情を抑えられないで…これで天才と呼ばれるなんて許されない

不自然を自然に見せる…そんなこともできないくらい舞い上がってしまった…

 

 

「そんなちんちくりんなくせに何言ってるんだか」

 

いくら振り払おうとしても考えが纏まりついて演技に集中出来ないでいる有馬、撮影が中断されると思っていたら…明智がセリフを差し込み始める

 

「ほ、本っ当にレディに対するマナーがなってないわねあんた!」

 

「レディ?ランドセル姿が大変似合ってますねレディ」

 

顔を真っ赤にさせて

 

「に、似合ってないし!」

 

「似合ってるよ、大変お似合いですよお嬢様」

 

「茶化すな!」

 

そのまま足を蹴って…「いってぇ」と笑って

 

「あの人とは何でもないよ、本当にただのクラスメイト」

 

「そ、そうなんだ…へぇぇ…」

 

このヒロインはストーリーが進む事肉体に引っ張られていた精神が戻っていき、最終的に元に戻るという内容…つまり

 

(私のミスを咄嗟にアドリブにした…そのまま既存のセリフに繋げて、新しい一面を見せつつ原作の流れに戻した…?)

 

「これで満足?」

 

そう笑いかける明智に

 

「ま、まぁ、あんたみたいな奴に彼女なんて居ないんでしょうけどね!」

 

「ひっど」

 

で、でも…と顔を少し赤らめ…モジモジしながらなんとか明智の顔を見て

 

(本っ当に…小生意気後輩…私よりずっと歳上なくせに先輩扱いしてきて、いつもヘラヘラしてさ…でもしっかり私の事見てくれて…ミスしたらカバーしてくれる…本当に…)

 

「もし10年後も彼女が居なかったら…私が彼女になってあげようか?」

 

「はぁ?な、何言ってんの?」

 

そう笑う彼女に思わず照れてしまったという顔をして

 

「うっわぁ?顔真っ赤、何赤らめてるの?私子供なんでしょ?お兄さん」

 

他人とか関係ない、今私が演技をしてる…私が今最高に凄い演技をしてるから、見てよ?私の輝いた姿が見たいんでしょ?ほら、見なさいよ、ばーか

 

 

子供の笑顔、でもそこにしっかりと大人の女性としての何かを含ませた有馬かなは恋する乙女のように笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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