「先輩最近肥えて来たね」
その一言で明智の手が止まる、ホカホカの白米を箸で口に運ぼうとした動作が一時停止のように停止する
「な…何言ってんの?僕ってほら、あれだから、太りにくい体質って言うかさ?食べても太れなくてむしろ困ってるって言うか?」
何を言っているのか理解できない、いや…受け入れられないというふうに伝える明智の顔には冷や汗が浮かんでいて…
「ルビィ…アクア」
アイが2人の名前を呼び、アクアが明智の服をひっぺがし…
「あ、や、やめ…やめろぉ!!」
ぐにゅんぅ…ルビィが摘んだ瞬間柔らかいものが指に挟まった
「ぁ…あぁ…」
「おぉ〜明智だいぶ肥えたね」
「肥えたって言うのやめな?傷つくよ?ねぇ?嘘だよね?嘘って言って?」
信じられないと言った風にアクアに縋り付く
「まぁ…最近家来ること多いし、それで三食しっかり食べてるからじゃないか?」
そう、明智の普段の食生活は壊滅的…元々食べること自体が好きじゃなかった明智
必然的に食事の回数や量が減ることも自然なこと、食べたとしても栄養食を食べるだけで済ますことがほとんどだった、
そんな食事が苦手な明智であったが何故か、そう…本人にとって理由は分からないと思いたいので分からないと記載するが、
アイに対してドロ甘になっているため出された物は基本美味しく食べる
しかも規則正しい生活を強制されているため生活習慣が正しくなり、食生活も見直され…
明智は今、幸せ太りになっていた!
「うそ…だろ…」
「先輩はいつも美味しそうに私が作った料理食べるからねぇ〜」
ニコニコ笑顔で嬉しそうに笑うアイ
明智は立ち上がり決める
「ダイエットだ、痩せなければ」
炊飯器の炊きたてのお米をよそいながら決意する
「おら、普段僕は君たちふたりに付き合ってるんだから一緒に走ろう」
「まぁ、俺は別にいいけど」
「なんで私まで…」
アクアとルビィ2人を引き連れランニングに
アイはシンプルに仕事
「まぁ一人で走ったりしても続かない感じするから」
よし行くぞ、と引き連れしばらくして
「明智大丈夫か?ほら、飲み物」
「あ…はぁ〜はぁ…はぁ〜ありがとぉ…」
ダウンしていた、ルビィは公園の滑り台を堪能している
「な、なんでだ…」
「理由明白だろ、シンプルに運動不足」
あと煙草、冷たく言い放たれる言葉のどれもに思い当たる節がある明智
「というかそんなんでよく役者できるな」
「まぁ…基本1発でOK貰えるし、今の所アクションで呼ばれたりしてないからな…」
水を飲んで少し回復したのかため息をついて
「というかルビィやばいな、なんであんな底なし沼みたいな体力してんの?HP自動回復とか付いてる?」
「前におまえに言われたことをずっと守ってるんだよ」
そう言いながら隣に座って
「前?…あれから毎日こまめにやってるのは気付いてたけど…ここまで差が出てくるとは」
「バランスボール、最近バランスとるのめちゃくちゃくちゃ上手くなってるし」
そういえば前にバランスボールに乗っているルビィを軽く押した時、なんとか体制を整えながら文句を言っていたのを思い出して
「ルビィはあれだよな、今の自分の身体をめいっぱい楽しんでる感じがする」
「そうだな…」
「さりなちゃんみたい?」
「そうやってさぁ、俺が言わないようにしてたこと言うのやめろ」
「案外そうだったりするかもよ?」
「ないだろ」
そんな都合のいいことがあるわけない、それに…
「ルビィはルビィだろ」
「もっと単純に物事を考えれば良いのにさ?」
「見てみて〜こんなことできっっ!!」
そう言ってるとルビィが滑り台から足を滑らせ落っこちる
「うっわ、大丈夫か」
「バカかルビィ!」
血相を変えたアクアが飛び出して
「打ちどころが悪かったりしたら骨折だぞ!」
「な、ちょ、ちょっと落ちて擦りむいただけじゃん!」
「なんでこう考え無しなんだよ」
「なんでそんなに怒るの!!」
2人が言い合いを始めてしまい
「おいおい、とりあえず怪我何とかしないと、とりあえず水で砂利落としとけよ」
色々買ってくるからな〜とコンビニに走っていく明智
後に残された2人は、アクアが肩を貸して水で歩く時も特に会話はなく
「いて……染みる…」
「これくらいで済んで良かったよ、心配させるな」
「別に頼んでないし…」
「頼まれなくても心配するんだよ、家族っていうのは」
不貞腐れながらも大人しく水で洗われるルビィ
「はいはい帰ってきましたよ、とりあえずハンカチ渡すから拭いとけ」
そのままアクアは慣れた手つきで処置をして
「よし、痛んだりするか?」
「別に痛まないよ」
「やっぱ手馴れてるな?」
「やっぱ?」
「ぁ〜なんでもないぞルビィ」
とりあえずおぶって帰るかとルビィを背中に背負って
「帰ったら僕叱られそう」
「なんで?」
「かわいいかわいい娘が怪我してるからなぁ」
「あれはルビィがはしゃいだ結果だから自業自得だろ」
「アクア冷たい!!」
「冷たいんじゃなくて優しいんだよなぁ」
「どこが…?」
ルビィにそう言われるとニヤッと意地の悪い笑みを浮かべて
「だってあれだろ?自分の可愛い妹に何かあったら絶対に嫌だからな、兄としては妹が心配なんだよ」
「で、でもすっごい怒ってたよ?」
「感情表すぐらいお前の怪我に慌てただけだよ、愛されてますねぇ?ルビィ姫」
そうニマニマしてるとアクアもルビィも顔を赤らめて
「愛してる…」
「普通に心配しただけだからな、普通に!」
明智は身体に精神ってやっぱ引っ張られるものなんだな〜誤魔化し方が子供のそれなんだけど
「薄々気づいてるんじゃないの〜?吾郎先生」
ベランダでタバコを吸いながらアクアと話す、この光景も日常の一部として溶け込み始めている
「なんの話しだよ」
分からないフリをして、気付いていないと、考えていないと嘘をつく
「流石にあれは違和感タラタラ、演技としては0点だよ」
まぁ妹を心配する兄としていい線だけど
「ちょっと過剰だよ」
「それは…まぁ…俺もそう思ったけど」
「あの子は楽しんでる、今の自分の身体がどこまでも自由に、まるで翼でも生えたんじゃないかってぐらいに動き回れるのに対して」
そんなことは分かってる…わかりきってる
「そんなの非現実的だろ、どんな確率だよ」
「いやいや、自分がそもそも非科学的な現象に晒されてるじゃん」
「そんな都合の良いことがあってたまるか」
「そう?僕は童話寓話ファンタジー推理物、色んな物語を見るけど、基本的にはハッピーエンド、大団円で終わるのが好きだよ?」
「現実はそうはいかないだろ」
タバコの煙を吹いて、子供のくせにまったく夢のないことを語る五郎に呆れて
「大丈夫…僕はハッピーエンドが好きだから、まぁ…別にいいと思うよ、どうせ遅かれ早かれって感じだと思うし」
早めに言ってあげないと怖いよ〜女の子の感情の強さ舐めんな
そう言いながらベランダから出る
「あれ絶対実体験だろ」
そう言いながらベランダから出る、その時カラスが見ていることに気づかない
「ぁ〜いてて」
撮影の合間、台本を確認している時少し動く度に筋肉痛の痛みに襲われる明智
「どうしたのよ?」
そんな明智を心配する有馬
「いやぁ…最近ちょっと体重増えてきたから走ってるんですけど、痩せるには細かく筋トレしないと効率悪いっぽいからコツコツやってるんですよ」
「へぇ〜太ってるんだ、なんか意外ね」
体力ないと撮影きついんじゃないの?そう言いながら準備して
「基本的に1発でOK貰えるからそこまででもないんですよね〜今の所アクションもないし」
準備する有馬を手伝いながら
「まぁ、体力あって困るものでもないから付けときなさいよ」
「まぁ、コツコツやりますよ」
「ぁ、じゃあさ?」
「?」
公園
ブランコ、砂場、滑り台など子供向けの大きさの遊具が並ぶ場所、最近では近隣住民の苦情により遊具の数は減っているがここはその影響をまだ受けていないらしく、まさにこの状況にピッタリだった
そんなところで明智は今
「はぁ…はぁ〜ちょ…ちょっと待って…先輩…きっっつい…」
「ほら、まだセット終わってないわよ」
小さい鬼コーチによる指導を受けていた
「せ、先輩…きっつい…もう無理…マジ無理…」
「何言ってんのよ〜ほら!頑張りなさい!」
正直明智は今すぐ逃げ出したかった、というかシンプルにキツすぎる
有馬自信自分にストイックな所があり、それが他人にまで及ぼされる…そして遠慮を知らない無垢な笑顔で馬鹿みたいな火力で筋肉を炙るように引きちぎる
走り込み×10
「ほら全力で!!」
「ウッグォォォ…!!」
腿上げ100回
「1!2!1!2!ペース落とさないで!」
「し、死ぬ…まじ死ぬ…本気で死ぬ…んっぅぅ…無理無理無理無理ちぎれる…まじちぎれる!」
「今日はここまでね!じゃあ次の日はね?」
「ぇ…?え…?せ、先輩…?」
「頑張るわよ!明智!」
「あ、はい…」
有馬自身なぜ自分がこんなことをしているかの自覚はなかった、ただ
(ふん、こうでもしないとこいつと一緒にいる時間を作れないじゃない…?なんで私がこいつと一緒にいたい為に何かやってるのよ…?)
天才、才能があるそういくら言っても人生経験の少ない子供二人、世の中には色んな感情が溢れていて今自分がどんな感情に突き動かされているのか理解出来ていない、ただ一つだけ確かなことはある
だが…
「ほら、明智〜頑張んなさい!」
「ゥ、ウッゥォォ!!!」
ただひとつ分かること
(こいつ、私のことだいすきなのよねぇ♪普段小生意気な態度でひょうひょうとしてるこいつがヘロヘロになって必死に汗水垂らして…しかもわたしの言葉一つでカンタンに頑張っちゃう…気分いいわぁ♪)
その感情な名前は知らない…が、有馬かなは小悪魔でドSで
ファンが推しの為に行動するのを身をもって知った
アイに膝枕をされても何も文句を言わないぐらいに疲弊している明智
「先輩最近お疲れだね〜」
「なんか先輩に変なスイッチ入ってな…今すごいことになってる」
「へぇ〜じゃあ休んじゃえばいいのに」
「それはしない…先輩がなんか楽しそうだしな」
「そうやって何でも自分が飲み込んじゃうの?」
「そんなつもりは無いよ…」
そう言って疲れからか寝てしまう明智の頭を優しく撫でる
あぁこうやって疲れた時にしか甘えてくれない、そう考えながら彼の心の奥底のつぶやきを今日も聞いて…何とかそこから連れ出してあげたいと思った
母さん…ごめんなさい…
幼子のようにつぶやく明智の頭を優しく撫でる
過酷という言葉では言い表せない、
天使のような笑顔で悪魔みたいなえげつない追い込みをかける有馬
そんな状況でもやり遂げようと努力する明智はのちのちこう語る
「いやぁ〜まぁきついですけどね?めちゃくちゃきつかったんですけど、自分の推しに頑張れって言われちゃったら…ねぇ?再確認しましたよ、ファンは推しの奴隷なのだと」
そう表紙を飾った写真を撮った時に語ったという
半裸の明智がムキムキの身体をさりげなくワイシャツから見せるというポーズ
その後ニコニコ笑顔で明智が表紙の本を買った有馬は、
「この子私が育てたんですよ!」
と語ったという