ハリネズミと天才【完結済み】   作:妄言a〜

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親という生き物

「あっぐぅぅぁぁぁ〜!!!!!」

 

家のソファでバタバタと足を動かしている明智、まるでバタ足でそのままどこか遠くに逃げ出そうとしているのでは無いかと言うほどの勢いで足を動かし、周りの冷たい目など気にしない様子

そして当たり前のようにアイの家に帰宅している当たりしっかり調教の成果が出てしまっているということさえ、今の天才では気付くことも出来ない

 

「僕は絶対に悪くない気がしてきた…」

 

「なんというか…おめでとう」

 

アクアにポンっと背中を叩かれる

 

「まぁ、一応の対策はしたけどな?」

 

「対策?」

 

そういうとスマホを出してアクアに見せる

 

「ほれみろ、今世間の動きは結婚じゃなくて婚約って感じにしてる、僕はまだ負けてない」

 

なぜか勝ち負けの話になり始める明智を冷たい目で見るルビィは

 

「もう負けてない?だってママ言ってたよ?本気で嫌がってないから、ただのツンデレにしか見えないって」

 

「ぁぅぐぅ…」

 

「明智がとっとと腹括らないからこうなったと言うべきだな」

 

「僕が悪いのこれ!?」

 

「ふんふ〜♪ご飯できたよ〜」

 

「「「はーい」」」

 

当たり前のように定位置につきご飯を食べる、いつも通りの日常、日…常…?

 

「そういえば…僕今週自分の家に帰った記憶が無い…」

 

「えぇ?先輩の家はここだよ?」

 

「いやいやいやいや、え…嘘…まじ記憶ない…一人暮らしだったはずなのに…いつの間に…」

 

そう言いながら炊飯器に向かってしっかりおかわりし始める

 

「なんというか明智が居るのが普通になってきたな」

 

「うん、前なんて普通に洗濯物回収してたからね」

 

そう、明智は否定しているがアイの目論見通りしっかりとこの家自体に馴染み始めてしまっている

 

みんなが食べ終われば

 

「おら、食器を僕によこせ洗う」

 

朝には

 

「洗濯物締め切るぞ〜」

 

風呂掃除、トイレ掃除

 

「一番風呂は頂くからな」

 

思い出せば思い出すほど、明智はこの家で過ごした時間が普通に一人暮らしの家より長くなっていることを実感してしまう

 

「なんか…凄い馴染んでる、馴染み方が異常だよ僕…」

 

「えぇ?そんなことないと思うけどなぁ?」

 

嘘である、しっかりと狙った結果である

明智はなんだかんだ面倒見がいい男、マルチタレントとして活動しているアイが家事も両立させるとなると時間が圧倒的に足りない、それを同じく俳優として活動している明智はしっかりと把握、そしてご飯を作って貰っているのはシンプルにありがたいので必然的に手伝うようになり…気付いたらすっかりおなじみになってしまった

そしてそれら全てを分かっていて誘導したのが

アイという人間である

 

やることが終わりのんびりした時間、ベランダでタバコを吸っていると

 

「考え事?」

 

「ん〜?まあな」

 

煙を口に含んで、少し横にずれる…そこに当たり前のようにたって一緒に外を眺める

 

「お前のせいで僕の考えがひとつダメになったからどうしようかな〜ってさ」

 

「考え?あぁ、先輩はまだ死にたがりなのかな?」

 

「かっこよく死にたかったのに、今死んだらかっこ悪いだろうが」

 

「嫌だったらしないでいいよ?」

 

そう言いながら真剣な顔で見つめる

 

「嫌だったらそもそもお前と関わってない、分かってて言ってるだろ」

 

「バレた〜?」

 

ニコッと笑って明智に寄りかかり、匂い移るぞ、と言ってもどかないのでそのまま放置して

 

「でもまぁ、あいつは救うぞ」

 

「先輩って本当に損するよね」

 

「損って…ただ僕は運が良かっただけ、あいつにはそれがなかっただけ…ただそれだけだよ」

 

「またひとりで全部抱えて解決しちゃうの?」

 

煙草を灰皿に押し付けて

 

「そういうこと」

 

「もし私があっちいっちゃったらどうするの?」

 

「まぁ…お前がそれでいいなら」

 

そうやってまた、自分より人を優先する…いつもいつだって自分の考えじゃなくて人の考えを第一に考えて…自分の意見を押し殺す、あぁ、そういう所も好きだけど…きら…

 

「でも…まぁ…その、あれだ…やめて欲しいけどな?」

 

「え?」

 

「だから…もしそうなりそうなら…僕は止める…僕の所に居ろって…言ってお前を引き止める…」

 

そう言われて、しばらく何を言われているのか理解できなかったが、理解出来た瞬間に…にっまぁぁ〜と笑みを浮かべて

 

「えぇ〜先輩〜私の事好きすぎ〜」

 

「うるっっさ、マジでうるさい、本気でうるさいわこいつ」

 

ぁ〜うるさいうるさい、と言いながらベランダからとっとと退散する

 

「ん?」

 

スマホが振動する、誰かからメッセージが飛んできた

中身を確認すると

 

「うっわぁ…」

 

顔を顰めて仕方なく返信

 

「誰から〜?」

 

「父親だよ、あの野郎テレビ見てやがったな」

 

「そういえば先輩の家族にまだ挨拶してないや」

 

「挨拶〜?そんなの別にいいだろ」

 

「いやいや、ちゃんと先輩のこと貰いますって言わなきゃ」

 

「はぁ〜」

 

そして数日後

 

気品漂うレストランで正装をした明智は向かい合う

 

「久しぶりだな」

 

「どんだけテンション上げてんだよ、わざわざドレスコード必要な店予約しやがって」

 

文句タラタラ早速襟を緩めて座る

 

「恋愛なんて時間の無駄だ、なんて斜に構えてた息子がまさか結婚することになるなんて思わなかったからな」

 

「いつの話だよ、それたしか中学のときだろ?」

 

「いや、お前は大学に入っても言っていたぞ」

 

「忘れたね」

 

「お前の記憶力で忘れたは無理があるだろ」

 

溜息をつきながらグラスに注がれた酒を1口飲む

 

「それで?わざわざなんの用だよ?」

 

「息子に会うのに理由がいるか?」

 

「はぁ〜はいはい」

 

父親は明智にとって苦手な人間の1人だ、本来人目見ただけで全てを見透かすことの出来る明智は父親と母親この2人の中身だけは何をどうしても見ることが出来ない、それがなぜなのかについて理解している…だから尚更苦手なのだ

 

「それで式は何時にするんだ?学生のうちに結婚するのか?」

 

「はぁ?式?ぁ〜しないんじゃないか?あと卒業してからだよ、するならな」

 

「そういうのはきっちり決めておかないと後で文句を言われるぞ、結婚してから記念日の度にどうこう言われるぞ」

 

「警視総監様も嫁には勝てないのかよ」

 

そう言われると鼻を鳴らして

 

「当たり前だろう、部下を何人従えようと家に帰れば嫁相手に頭が上がらない、古より決まった世界だ」

 

「結婚ねぇ〜僕には現実味が無さすぎてなんともって感じだよ」

 

「まだ気にしているのか?」

 

あれはお前が悪くないと何度も言ったろう

運ばれた料理を慣れた手つきで口に運びながら

 

「気にしてるんじゃねぇよ、あれは僕の罪だ…僕のせいで母と妹と弟は死んだ」

 

「まったく…お前はあいつが心配で電話を掛けただけだ、そしてその電話を取った瞬間に信号を無視した車が轢いた、それだけだ」

 

ミスがあるとしたら、と言葉を続ける

 

「足で通える距離なのだから、その言葉を信じて送り迎えをしなかった私と、そもそもの話信号を無視した運転手の過失だ、あの時のお前に落ち度は無い」

 

「あるんだよ、僕は天才でありとあらゆることを正しい方向に持っていくことの出来る、どんな人間と戦っても必ず勝つ性能を持ってる」

 

どんなものでも僕は予想できるし的中できる、それなのに外した、そもそも遅すぎた

 

「お前は似ている、目元があいつそっくりだ」

 

「今顔の造形の話してなかったろうが!」

 

本当に苦手だ、気付いたら素っ頓狂な所に会話が流れていくし、キャッチボールをしようと優しいボールを投げてみても突然スライダーを投げてきて話がぐちゃぐちゃにこんがらがる

 

 

「そういえばどんな子なんだ?確か元アイドルで今はマルチタレントだったかな?お前みたいなめんどくさい奴にはああいうガンガン責めてくれる子が1番だと思っていたからな、孫の顔を早く見れそうで安心するよ」

 

「はぁ?流石に気が早すぎるだろ、まだ結婚すらしてないんだけど?あと孫っぽい顔なら見れると思うぞ?」

 

「何言ってるんだ?若いんだからやる事やってるんだろ、私は早く孫の顔が見たくてうずうずしてるんだよ、孫っぽいとはなんだ?」

 

「50過ぎたおっさんのウキウキはどうでもいいわ、あぁ、一応連れ子居るし」

 

「連れ子…??」

 

どんなことにも冷静に対応する父親の顔が困惑するのを見て少し気を良くする

 

「あぁ、確かあいつが16の時に産んだ子らしいぞ」

 

「さ、最近の若い子怖…」

 

お、お前はそれでいいのか?そう質問して、何とか冷静さを取り戻そうとワインを1口飲む

 

「あいつと関わるのに別になんの障害にもなんないだろ、僕は気にしてないよ」

 

「そうではなくてな…」

 

「?なんだよ?」

 

普段であったら相手が何を考えてるのか理解し先に答えを提示できる、でも明智は目の前の父親という生命体に対してはそれが出来ないので、のんびりゆっくりとした会話をしなければならない

 

「もう私はおじいさんになってしまったのか…ど、どんな顔をして会えばいいと思う?やっぱり怖いかな?」

 

「知らんがな、まだ5歳とかだから気にすんなよ、2人とも人懐っこいし」

 

「写真とかあるのか?」

 

「あぁ、確か前写真送ってきたような」

 

そう言ってスマホの写真をスクロールしていき、3人で幼稚園の看板の前で撮った写真を渡す

 

「おぉ、可愛いな…2人とも母親にそっくりだ」

 

「右がアクアマリン、左がルビィだ」

 

「突然宝石の名前を出してどうしたんだ?」

 

「ちげぇよ、今の会話の流れで察せよ、その2人の名前だよ」

 

2、3回明智の顔を写真を見比べて

 

「最近の子の感性はわからん…」

 

「それに関しては僕も同意する」

 

そんな他愛もない会話を繰り返す、本当に苦手だ…いくら頭を回転させてもなぜか目の前の人間は父親という情報と+の感情しかキャッチできない、父親と話している時の明智は天才でも、超人でも、化け物でもなく

ただの人間として会話している

そう思わされてしまうから…

本当に…苦手だ…

 

そんな会話を繰り返していたら時間はあっという間にすぎて

 

「今度都合が良い時に顔を見せに来なさい」

 

「まぁ、都合があったらな」

 

「なるべく早めにだぞ?やはり早く会っておいた方が甘えられる確率が上がる」

 

「分かったよ、一応話してみる」

 

「またな乱歩、身体に気をつけるんだぞ」

 

「そっちもな、親父」

 

そう言って別れる、特段いつもと変わらない、たまに会っては食事をして他愛ない会話をする…それだけ…ただそれだけの話

 

 

「ということで私結婚することになりました」

 

ビシッと宣言するアイ、青筋を浮かべながら何か言いたそうにする斎藤

 

「というわけじゃねーよ!!やるんだったらせめて事前にいえ!というかそもそもやんな!!」

 

「えぇ〜だってああやっておかないと先輩なんだかんだ言って逃げちゃうもん」

 

「あのなぁ…まぁ、俺としても明智に恩を感じてるぞ?あの時お前を助けたのは明智だ、それに…普段の仕事も的確でミスもないしそもそもスピードが早すぎるしな、ウチに居てもらわないと困る人材だよ」

 

そう言いながらため息をついて頭を搔いて

 

「別にそんな理由じゃないでーす」

 

「そんなもんは知ってるよ、あの時からだ、お前から本当の笑顔が減ったのは」

 

「何それ、何時の話か分かりませーん」

 

「あの時お前ら2人は二度と会わないような気がしてた…でもあいつは離れられなくて戻ってきた、それでお前もお前であいつのおかげで今楽しそうにしてる」

 

だから…まぁ…えぇーと、言いずらそうに頭をかいて、そして

 

「幸せになれよ、お前のわがままも無茶苦茶も全部受け止めれる男なんてそうそう居ねぇからなクソアイドル」

 

「うん…ありがと…」

 

ボソッと最後の方に何かを呟いたアイに

 

「なんか言ったか?」

 

「べっつになんも言ってないよ〜!!」

 

嬉しそうな笑顔で笑うアイとなんのことか分かってない斎藤

 

「ほら、先輩来たらパッ〜とやるんだから早くしよ!斎藤さん!」

 

「だから俺は斎…え?」

 

ちょ、おい、アイ!?今俺の事なんて呼んだ!?おい!アイ!おいって!!

 

 

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