「はぁ〜お疲れ様でーす」
いつも通り事務所に顔を出した明智、普段と違って言葉がへなへなしていて、猫背のまま入室する
「おつかれ、どうしたのよ?うわ…そのダンボール箱は何?」
ダンボール箱を抱えながら入ってきた明智を見てまた面倒事かと顔を歪ませるミヤコ
「いやいや、僕もなんでこうなったか分からないんですけどね?」
話は少し遡る
大学内で退屈な授業を受けて適当に本を読みながら過ごしていると
「お前モテモテだな」
「はぁ?何言ってんの突然」
隣の友達が小声で話しかけてくる
「お前がアイに結婚報告された時はめちゃイラッとして正直殺そうかと思ったけど」
「おいおい、物騒なことを言うのやめなさい、それで?モテモテってどういうこと?」
「まぁ、前々からお前はこの学校で有名だったんだけどな?なぜか今回の件で火がついて、ほれ」
一枚の紙を渡される、それは可愛らしいデザインの手紙で差出人の名前は書いてなかったが
「ラブレター?誰に対して?」
「お前だよ、お前」
「えぇ…」
話をよく聞くとどうやら所属しているサークルにも大量のラブレターが送られているらしく
「いやいや、なんで?普通に考えてまぁ…まだわからんけど結婚騒ぎが起こって爆発ってどういうこと?」
「まぁ、俺もよく分からないけどだいぶ溜まってるって言ってたから今度回収しに行ってやれよ?」
「うわぁ〜」
手紙をまじまじと観察して、ため息をついて
そして今に至る
「はぁ…まぁ貴方は今や雑誌の表紙を飾れるぐらいの有名俳優、そして元ドームにたったアイドルとの熱愛、女としてはそんな男の隣を歩けたらステータスup確定よ」
嫌なことを言いながら手紙の山をちらっとみて
「それでどうするのよ?その手紙の山、というかなんで手紙?」
「ぁ〜基本的に信用できる人間としか交換してませんし、直接告白されても断ります、そもそも大学に通うの自体稀ですしね」
まぁ〜貰い物なので一応中身は確認しますよ?礼儀なので、そう言って手紙を分け始める明智
「それをここで当たり前のように確認するのもだいぶ勇気あるわね貴方」
「えぇ?そうですか?」
手紙を一枚確認するとうわぁ…と顔を歪ませながら
そうやって一枚一枚確認作業をしていると
ルビィとアクアが帰ってくる
「ただいま〜何この手紙の山」
「これ?今どき珍しくラブレターですよルビィさん」
「うっわぁ…流石明智粉をまくのに余念が無いね」
「流石とか今言われても嬉しくないなぁ…まぁ」
「モテモテだな」
茶化すようにアクアが言うと、ペラっと一枚の紙を渡して
「そうだよ?まぁ、素直にモテてるなら僕としても嬉しいんだけどね」
「?…う、うわぁ…」
「なになに?こわ…」
渡された手紙の内容を確認すると苦虫をかみ潰したような顔で、後ろから確認したルビィもドン引きしている
手紙の内容はこうだ
私のことを覚えてますでしょうか?貴方に以前体調が悪い時介抱して頂いたものです、その時に感じました、私とあなたは運命なのだと…私は貴方に対して赤い糸で結ばれています!なのに貴方は結婚すると言われています…嘘…ですよね?私とあなたは既に結ばれている…それなのに…いえ、大丈夫、私だけが貴方をわかってあげれます…ね?ね?
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
「ひゃァァァ!!!!??」
終わりまで事細かにびっしりと綴られたラブコールに思わず悲鳴をあげてたたき落とすルビィ
「な、なんで?もしかしてこの手紙の中って」
「おそらくほぼこういうのだろうな…なんか、大学外からも集まったらしくてな?怖いよ…シンプルに恐怖なんだけど?ホラー苦手なんだけど?」
ガタガタ震えながら手紙を拾ってきちんとしまう
「なんというか…明智の通ってる大学って個性的だな?」
「いや…普通だと思うよ、というかこれ絶対外から来たやつだからね?こっわぁ…まじ怖い本気で怖いシンプルに恐怖」
そうやって戦慄しているとひょっこりアイが現れて
「何してるの〜?うわ、すごい手紙の数、ファンレター?」
「ラブレター」
「……へぇ…」
部屋の温度が少し下がったような気がするが明智がアイに手紙を渡すと
「こ、個性的だね!」
「まぁな!なんでだろう?僕って色物に当たる確率高い気がする、アイを筆頭にして」
「誰が色物かな〜?」
「勢いで爆弾発言かますようなやつは色物でも足りないだろ」
はぁ〜と言いながらも何とか手紙一枚一枚をしっかりと確認する
「人のこと色物扱いは…この相談を聞いてくれて嬉しかったですってなに?」
試しに1枚開いて中身を確認したのがそれを見せながら尋ねて
「あぁ、彼氏が浮気しててどうすれば〜って言ってたから、浮気の証拠叩きつけて学校内の評価終わらせたやつだな」
懐かしいなぁ…見ててこっちが胸糞悪かったからむちゃくちゃにしてやったよ
そう語りながら懐かしそうに手紙を受け取って
「へぇ〜じゃあこの勉強を教えてくれたおかげで大学に入れたって書いてるのは?」
「あぁ〜大学に通ってる友達の妹さんに勉強教えてさ、そのおかげで入れたって言ってたけど…まぁ本人の頑張りでしょ」
「へぇ…」
手紙の中は色物が多い、が…けれど確実に本気の感情が見え隠れしているのにしっかりと気づいて…また部屋の温度がだんだん下がっていいく
「ねぇ…先輩?」
「?何?」
「先輩ってなんでこう人の悩みの種にぶつかってダイレクトアタックしちゃうの?」
「攻撃はしてねぇよ、ただ僕の場合見えちゃうからまぁほっとくのもあれだしいいかな〜と思って何となく」
「その何となくで何人垂らしこんで来たのかなぁ?」
「垂らしって言うのやめない?シンプルにお礼の手紙とか…ぁ…」
そう言って取り出した一枚をただお礼したいだけっと言おうとして女物上品な香水の匂いがしたため止めて
「へぇ?これって割と高いやつかなぁ?こんな匂い付けた手紙出して食事に誘うのがただのお礼?ふ〜〜ん」
じっとりとした目で見られて…正直明智は手紙の内容の殆どはガチすぎて怖いやつか、色物…この二択だと思っていた、こんなふうに淡い恋心や、虎視眈々と狙ってくる手紙が紛れているとは思わなかった
「いやぁ…」
「前から言おうと思ってたけど先輩って誰彼構わず基本甘いよね?」
「そんなことないと思うけど?お、ほらこれなんて見てみろよ、子供だぞ?」
小さい子が好みそうな装飾を見つけて弁明するかのように手紙の中身を読み始めると
「将来結婚してください、だってぇ〜へぇ〜良かったねぇ?モテモテだねぇ?」
「いやぁ、あれだって…うん、子供ってほら年上とかに憧れ抱いちゃう感じじゃん?」
「ふ〜〜〜ん」
頬を膨らませて見つめてくる、明らかに演技…その演技を見抜けない明智ではない、が…見抜けるからなんだ、という話である
「あ、喜べ明智」
無言で手紙を漁っていたのか何かを見つけてそれを差し出す
「ん?へぇ…ほぉ…え、えぇ…僕って…モテるのか…」
「そうだよ、先輩はそういう自覚を…」
その手紙をよく見てみると、筆跡は力強く
短く丁寧な言葉使い、そして最後の名前の欄を見ると
「ゥ…うそぉ…僕ってそういう需要もあるの…?」
「なんか…あれだな、前半裸で表紙になってたの、あれを見て惚れたらしい、だから真剣にお付き合いかダメでも1度デートをしたいらしいぞ」
「確かにあの先輩はちょっとダメだよね、あれをするんだったらしっかり私の許可をとって欲しかった」
「許可ってなに?なんでお前に許可が必要なの?」
以前半裸で撮影した明智が相当バズったのかなんなのか、明智を表紙にするという謎のブームが巻き起こり、現在コンビニの雑誌の表紙は毎月必ず明智がどこかに潜んでいる
「特にこの両手を拘束されてる感じのは非常にダメだよね、なんでこんなの撮っちゃうの?私以外に見せちゃダメな顔してるよね?」
「別に誰かに見せる用事はないけど…なんかちょっとずつ過激になってるのは、うん…撮影する時のカメラマンは確実に向こうの人だよ」
その瞬間アイは明智に駆け寄って肩を掴んで揺すり始める
「せ、、先輩!!ダメだよ?まだ他の子に負けるのはいいの!でも、男子に負けちゃったら私どうすればいいの!?まだ性別が同じなら何とかなるけど、性別が違う場合はどうすれば!」
「や、やめろ!落ち着け!?僕は他人の趣味嗜好を否定する気は無いけど女性が好きだから…!!揺らすな!バカ!!」
そうやってアイが明智を揺すってる時にルビィも興味が湧いたのか手紙を漁り始めて
「ん〜?これ読めない」
「何見てるんだルビィ、うわぁ達筆な字だな」
うねうねとミミズが這ったような字で書かれており、手紙自体も和を思わせるようなデザインで、明智がそのまま受け取ると
「うわぁ…和紙…めちゃくちゃいい所の紙使ってるなこれ、ぇ〜となになに?簡潔にまとめると、結婚相手に家の孫はどうですか?現在孫は5歳、色っぽい美人に育つこと間違いなし…」
「お、お見合い先輩がお見合いに誘われてる」
まさかの交際をすっ飛ばしたいきなり婚約しませんか?とのお誘いにビビるアイ
「怖すぎる!シンプルに怖い…おばあちゃん落ち着いて?だって5歳でしょ?僕もう大人なの!気が早いってレベルじゃないって」
「明智ってなんか多種多様だよね」
「アイ落ち着いて、もうなんというかここまで来たらちょっと面白いと思いながら見た方がいいかもしれないよ」
呆れながらもなんだかんだちょっと楽しくなってきてる兄妹
「なんでこんなにバラエティーに富んでるの?」
「僕が聞きたいよ」
「というかこのおばあちゃんとはどういう知り合いなんだよ」
「えっーと確か祖父の殺害を疑われててその疑いを晴らした時のばあちゃんかな?というかなんで送ってきたんだよ」
「疑いを晴らす?そんな探偵みたいなことやってたのか?」
「ん〜?まぁ父親が警視総監だからコネでなにかと割り込みまくった」
「け!?」
「お兄ちゃんけいしそうかんって何?」
「警察のトップ」
「社長?」
「まぁその扱いで間違ってないかな?」
権力があるってそういうことかよと1人納得するアクア
「へぇ〜じゃあ挨拶する時ちゃんと正装した方がいいのかな?」
「そんなの気にする人じゃないから大丈夫だよ、最近の若者の感性について来れないおっさんだし」
ペラっとまた1枚確認すると五芒星が印刷された紙が出てきて…その真ん中に名称不明の毛が貼り付けられている
「ギャァァ!!!?」
思わず離してそれを拾おうとするルビィを慌てて止めて
「や、やめろそれは拾っちゃだめだ、ピュアで居てくれ、まだ世間の怖さをこんな形で認識しなくていいから!」
その言葉に?を浮かべるルビィと何が張り付いているのか理解してゾッとするアイとアクア
「先輩…悩みがあったら私になんでも言ってね?力になるよ」
「明智…その…頑張れ」
事態を理解してる2人に優しくされても心に響かず、ただわけも分からずポカンとしているルビィだけが唯一の救いだった
ある程度落ち着いて手紙の山を何とか全て片付けて一休みしているとミヤコさんにファンレターも目を通しておいて、と言われてそちらも片付けて
「純粋に応援してくれる手紙は嬉しいなぁ…」
そういうとシンプルなデザインの青い手紙を見る
「有馬先輩と共演した時の演技が凄かったです、ファンになりました…これからも応援します…うん…心が癒される…癒しだなこの子」
純粋なファンレター文字の書き方や言葉選びをとっても小学生くらいの子供にファンと言われて悪い気はしない、嬉しそうに笑って、この手紙だけはしっかり保存しておかないと思って
「落差がすごい…さっきまで散々酷いラブレターもどきを処理してた僕としては、こういう純粋な子の手紙を受け取れるのは嬉しい」
アイの家に帰ってからもタバコを吸いながら手紙の内容をもう一度眺めて
「この子ってさっき言ってたけど女の子か?」
隣にいるアクアが尋ねる
「ん〜?そうだよ、文字の書き方やセリフの使い方が女性的、紙の状態もいいな、先輩のファンだけど僕と共演している所を見てファンになってくれたのかな?」
そこそこ裕福な家庭で育ってて心身ともに健康、一直線で純粋、それが仇となってちょっと痛い目にあったり重たい所もあるだろうけどそれがこの子の才能かな?
そう独り言のように呟いて
「凄いな、手紙だけでそんなことも分かるのか」
「まぁね、だからさ実際に会った人間がどういう人なのか理解なんて簡単だよ?いい加減認めれば?認めると言うより、そろそろ僕がルビィに恨まれそうなんだけど」
「いや…分かってはいるんだけど、なんというかなかなか言い出しづらくて」
そう言ってどうするか悩んでいるアクアを横目でチラッと眺めながら煙を吐き出す
「あの子からしたらお世話になった人は既に死んでて、なんなら葬式も終わってる、一応メディアには出てないけど、どーするの?」
「ま、まぁ…」
「あーあ可哀想だなぁせっかく奇跡的に再会できたのに意気地無し男のせいで感動の再会に時間掛かっちゃう」
「前世のことだろ?だからまぁ、俺の事なんて忘れて楽しく暮らしてもらった方がいいような気が」
「そういうこと言っちゃう?絶対本人が聞いたらブチギレるってちょっと分かってて言ってない?天然?これが女たらしのテクニックなの?」
人聞きの悪いこと言うな!と明智に怒って
「いずれ言わなきゃとは思ってるけど、俺は」
「2人でなんの話ししてるの?」
ガラッと珍しくルビィがベランダに来て、タバコを見ると顔を顰めて
「タバコ臭い」
「そっちから来たのにそりゃないよルビィ姫」
「それで?何の話?」
「詳しくはアクアに聞いた方がいいと思うぞ」
そうなの?とアクアの方を向いて
「何の話?お兄ちゃん?」
「ぁ〜えっと…その…な?ルビィ…」
ご飯できたよ〜、何かを言おうと決心したアクアに少し身構えたルビィが待っていたら外から来たアイに中断される
「アイ今めちゃくちゃいい所だったんだけど?凄い惜しかった、なんでこうベストなタイミングで来ちゃうの?」
「えぇ?何?先輩は私のご飯食べたくないってこと?」
「いやそれは食べたいわ、食べたいです」
ぁーあ惜しかったな〜と煙草の火を消して部屋に入っていく明智、あとから続いて2人も入る
「結局なんだったの?お兄ちゃん」
「ぁーまた今度話すよ」
このタイミングで言ってもな…と思い
(やっぱり伝えない方がいいような気もするし、俺のことなんて忘れて新しい人生を楽しんで最高に可愛いアイドルになって欲しいしな)
そう考えながら部屋に戻る