ハリネズミと天才【完結済み】   作:妄言a〜

36 / 45
後輩=兄

 

先輩って夏休み暇?

 

こんな文言のチャットが突然送られよく分からずに撮影のない日を報告したら

 

じゃあこの日もし良かったら遊園地行かない?

 

そしてあれよあれよという間に

 

(来てしまった、前に家族と1回来たことあるけど改めて見ると凄い人ね)

 

軽くメイクを施され有馬かなとして認識されないように軽い変装をされた状態で入口の列に並んでいる

後ろを振り向くとアクアはいつも通り仏頂面で、ルビィは目をきらきらさせながら興奮を抑えられないらしい

 

そして誘った張本人は

 

「あっつぅ…夏ってまじでやばいなぁ、先輩熱中症怖いんで気をつけてくださいね?」

 

「分かってるわよ、子供扱いしないでよね!」

 

なんでこうなったのか

 

「なんか知らんが親父に遊園地のチケットを4枚貰ったわ、勿体ないから行こうぜ」

 

事務所でいつも通りグダグダしている双子に声を掛ける明智

 

「遊園地!遊園地ってあのジェットコースターとか!回転するコップに乗れるあの!?」

 

ものすごく目をキラキラさせたルビィが速攻で飛びつく

 

「おう、なんか知り合いがその関係者らしくてな?毎年配ってるらしい…でも特に使う予定もないから腐らせるのも勿体ないとこっちに回ってきた」

 

キャァ〜!!と黄色い声を上げて飛び跳ねるルビィ

 

「明智撮影とかはないのか?」

 

「ん〜?まぁ今の所調整してもらってないよ、もうそろそろ僕も卒業だしね?」

 

それは大学のための調整なんじゃないのか?という目で見つめられ、パソコンに向かい合って作業しているミヤコはため息をつく

 

「遊ぶのはいいけどあなた大学は大丈夫なの?」

 

「問題ないですね〜まぁ正直面白半分で入った感じなので、あと1枚はアイで〜あぁあいつ撮影だったな?」

 

現在マルチタレントとして成功を収めているアイは基本的に暇がなく

 

「うっぁぁ…私も…私も行きたいよぉ…」

 

後から伝えたらただを捏ねたがまた今度でいいだろと

ルビィはアイが居ない状態で少し寂しと思いはしたが初めての遊園地にテンションはMAX

アクアにへばりつきながらいつも以上にキラキラしている

 

そんなわけで余った1枚はどうするか、となった時に明智は

 

「あぁ〜有馬先輩は多分暇だろ」

 

そういう経緯でちびっ子3人に大人ひとりの状態になった

 

「なんかものスっっごい複雑なんだけどね!」

 

「ま、まぁまぁ良いじゃないですか?ちゃんと親御さんの許可も降りたわけですし」

 

「それが問題なのよ!」

 

有馬にとっても母親は気難しい人間で他人の話を聞いたりしないと認識しているのに電話を母が変わって会話していると嬉しそうに笑ったり、最初は高く他人ように声を作っていたのにいつの間に普段通りに会話していて、気が付いたら上機嫌の母に問題ないから楽しんできなさいと言われ送り出された

自身の親があれよあれよという間に丸め込まれてしまったのを驚いていた

 

「落ち着いてよ〜有馬ちゃん!今日は遊園地だよ!あの遊園地!絶対楽しいって!」

 

「あんたはなんでそんなに上機嫌なのよ」

 

顔を合わせるとどちらともなく(だいたいルビィ)から突っかかって行くはずが遊園地の魅力に取り憑かれたルビィにとってそんなことは関係ないのか上機嫌に有馬の手を掴んでブンブン振っている

 

「諦めろ、今日のルビィは一日中こんな感じだぞ」

 

理由は分からないがアクアも何故か少しほっとした様子なのを見てさらに訝しむ…がそうは言っても有馬にとっても今回は楽しみにしていた日だ

カレンダーに花丸を付けてまだかな〜♪

と心待ちにしていたのは内緒

 

早速開演しゾロゾロと列を作った集団が足並みを揃えて歩いていく

 

「とりあえずアクアは僕の手を掴んでルビィのこと離すなよ?先輩は反対の僕の手掴んでてくださいね」

 

そう言って差し出された手の感触を違和感を少し覚えて納得する

 

(そういえばこいつ結婚したんだった、結婚式のこいつはとっても楽しそうで笑顔で幸せそうだった…なぜか心が少し傷んだ気がしたけどきっと気の所為ね、というか意外と手が大きい)

 

そう考えながらも流れを崩さないように歩いて園内に入る

 

そこから先は非日常、まるで映画やドラマのセットのような空間にルビィと有馬は目を輝かせて

 

「うっわぁぁ〜〜!!すっごい!ファンタジー見たい!」

 

「す、凄いわね!!これ!!」

 

2人ともテンションが一気に跳ね上がり、有馬は途中生暖かい目で見られていることに気づいて顔を赤らめたが、ルビィにはお構い無し

あれに乗りたいあそこに行きたいと大はしゃぎしている

 

「待て待て、落ち着けお転婆プリンセス×2とりあえずどうする?軽く園内ぐるっと回ってみる?」

 

「こういう時は大人がリードしてくれるものじゃないかしら?」

 

先程のをなかったことにしたいのか、一端のレディっぽく振る舞う

 

「ぁ〜僕のは参考にしない方がいい、僕は友達と何回か来たことあるけど…基本的に景色ガン無視でアトラクションに乗りまくり、パレードのことをチャンスタイムと言う人間にこういう時の行動の指針を取らせては行けない」

 

「あんた…ここの楽しみ方ヘッタクソね…」

 

「良いんです〜楽しみ方は人それぞれ、思い思いに楽しめるのが遊園地でしょ、まぁとりあえずアクアに任せていいんじゃない?」

 

そこで話しかけられるとは思ってなかったのかルビィの手網を必死に握っているアクアは明智に顔を向けて

 

「いや、俺に言われても困るんだけど」

 

そういう時明智は顔を近づけて

 

「色んな女と来てるでしょ」

 

「来たことは…あるけど…さぁ」

 

じゃあ頼むと言われてしまえば仕方なく、貰った地図を見て

 

「こういうのはどういう風に楽しむかまず決めてから行動しないと、どんな風に回りたいんだ?」

 

「全部!全部乗る!全部見る!」

 

「私は…まぁ、あんた達に合わせてあげるわ!お姉さんだし!年上だし!先輩だし!」

 

「だ、そうですよアクアお兄ちゃん」

 

「はぁ〜とりあえず何か一つ乗って回るか」

 

そうと決まれば行動が早く、ルビィはウキウキでアクアがそれを何とか制御して、明智は少し後ろで有馬と一緒に歩いている

 

「先輩ははしゃがなくて良いんですか?」

 

「わ、私は別にそんなはしゃいでるわけじゃないわよ」

 

なんでこう丸見えの嘘をつくんだろうこの子、と思い売店に寄って買った物を頭にそっと乗せる

 

「?なにこれ?」

 

「やっぱこう言う所に来たなら被り物でしょ、先輩は猫って感じ」

 

「なんで猫?」

 

「寂しがり屋なくせに本心を隠して意地っ張りな所とかめちゃくちゃそっくり」

 

「誰が寂しがり屋よ!」

 

そう怒りはした物の特に外すことはせず、軽くつけ耳を撫でてふわっと笑う

 

「ぁ〜有馬ちゃんそれ可愛い!明智私にも買って」

 

「へいへい、ルビィは〜」

 

そういう時ルビィには兎、アクアにはフクロウ

 

「私うさぎさんだってぇ〜」

 

「よくフクロウなんてあるな」

 

「ぉ〜良い感じじゃんそこに3人並んで?」

 

3人を並ばせて写真をパシャリと1枚撮る

 

「後でアイに送っとこっと、先輩にも送るから後で母さんに見せてみ、きっと喜ぶよ」

 

「うん…!」

 

そして

 

「きゃァァァァァ!!!!!!!」

 

「…………………」

 

「ぇちょっと!?ここから落ちるの!?やめなさいよ!?降りる!!やっぱり私おり……ヒッャァァァァ!!!!!!」

 

「ぉ〜各々性格通りって感じだな」

 

身長制限のため大きな絶叫アトラクションには乗れないので小さい子供向けのジェットコースターに乗っている姿をパシャりと撮って

 

「うっわぁぁ!!これ回せば回すだけどんどん早くなる!!」

 

「ちょ、ちょっとまちなさい…と、止め…やめろぉぉ!!」

 

「ルビィ…早い…ちょっと…待て、うっ…はや……」

 

ルビィが勢いに任せて回転し続け、それに青い顔をして怖がっては居るものの楽しんでいる有馬と青い顔で小さくボソボソと本気できつそうにしてるアクア三者三様の様子を動画に収める明智

 

「ほら!かなちゃん!次あっち!あっち行こ!!」

 

「ちょっと!あんたが馬鹿みたいな速度で回し続けたせいでまだ足元がふらつくのよ!ちょっとまちなさい!」

 

「うっぷ…」

 

少し後からアクアを抱えた明智が2人の様子を眺めながら背中を撫でて

 

「大丈夫吾郎さん?三半規管よわよわだねぇ?」

 

「いや…あれに乗ったらお前もああなるからな…」

 

それにしてもと…アクアに飲み物を渡しながら

 

「いやぁ〜先輩は良くも悪くも流され易くて、ルビィは根の方は少し複雑だけど基本は単純明快、もう仲良しなお友達だな」

 

「まさかそれが目的か…?」

 

少し落ち着いたのかゆっくりと降ろされたアクアが明智に質問する

 

「ん?いや普通に勿体ないから来ただけ、あとは最近先輩の出番は減ってる、単純に事務所の方針がクソなのと母親が問題の根幹にある…けどまぁよそ様の家にズカズカものを言う訳にもいかないでしょ?こうやってリフレッシュの機会は与えたくてさ」

 

そう言い終わると

 

「おーい!あんまりはしゃぎすぎんなって、とりあえず一旦休憩しろ〜」

 

「えぇ〜〜」

 

「ルビィはしゃぎすぎよ…全く」

 

「だってぇ…」

 

しゅんとうなだれてしまうルビィに視線を向けて

 

「何も焦らなくても、この後もまだまだ乗ってないものや見てないものは沢山あるでしょ?とりあえず休憩にしましょ?」

 

ね?と差し出された手をうん、と頷き素直に受け入れるルビィ

その2人の様子を写真に収める明智

 

「仲良きことはいいことだねぇ吾郎さん」

 

「明智もしかして…」

 

なにか言おうとするアクアを遮って

 

「先生、僕は貴方のおかげで今こうして居られる、そして僕は貴方に恩返しは愚か僕自身のわがままを聞いてもらってる…だからさ?これから先色んなことがあると思う、その度に苦しんだり悲しんだりいいことずくめじゃないのなんて分かりきってる…でもさ?ちょっとは僕にも先生の背中を押させてよ?」

 

「明智…」

 

「それに意外と人って忘れるんだよね、だからこうして写真を撮る、写真を撮ってその写真自体を忘れて、部屋を片付けてる時にたまたま見つけて、そういえばこういうこともあったなって笑って思い出す…それが出来る人生はきっと楽しいんだと思う」

 

ほら、と見せた写真…そこにはキラキラと輝く星のような笑顔を向けるルビィの姿がそこにはあった、

その時ルビィが吾郎にはどのように見えたのか

明智は深く聞くことはしなかったらしい

 

「2人とも早く〜!!」

 

「置いてくわよ〜!!」

 

「はいはい分かったって」

 

吾郎さんも楽しめば?そう言いながら急かす2人を追いかける明智の背中が少しぼやけた気がした

 

「そういえば明智は何も乗ってないじゃん」

 

休憩のためにベンチを確保し、明智が買ってきたピザを食べて汚れたほっぺたで言う

 

「ん〜?別に僕はいいよ、楽しむみんなを見てるだけでシンプルに面白いし」

 

もうちょっと落ち着いて食べなさいよ、

ウェットティッシュで口を拭いて

それをぷくぅっと軽くほっぺを膨らませて見つめる有馬に気づいて

 

「はいはい全く手のかかる先輩ですね」

 

同じく頬を優しく拭うと

 

「よ、余計なお世話よ!」

 

最初は満足した表情だったがすぐに顔を赤くしてプイッとそっぽを向く

 

 

「な、何よそれ!私なんて急降下したり回転したりしたのよ!あんたもなにかやりなさいよ!」

 

「って言ってもさぁ?君たちに合わせてるから基本お子様向けだし?僕が乗るんだったらガチの絶叫系じゃないと物足りないって言うかぁ〜」

 

「ならいい所があるぞ?」

 

そうニヤッと笑ったアクアに全力で嫌な予感がした明智

 

そして

 

「おぉ〜本格的〜」

 

「な、なかなか風情があるじゃない」

 

「こういう時風情は使わないぞ」

 

わ、わかってるわよ!

会話しているちびっ子3人の後ろで青い顔をした成人男性が1匹居た

 

「無理無理無理無理…絶ッ対無理…ガチで無理だから!馬鹿じゃないの?あれ?夏だから肝を冷やすってやつ?馬鹿なの?冷やしたいなら水風呂に氷でも突っ込んで全力で寒中水泳のモノマネでもしとけよ!」

 

駄々をこね成人男性1匹に全力で冷たい目を向けるちびっ子3人という光景が広がっていた

 

「わ〜ママに話は聞いてたけど本気の本気で無理なんだね〜」

 

「明智はなんでこういうの苦手なんだ?だいたい驚かすタイミングとか全部分かるだろ」

 

「いやいや無理無理!ガチで無理…馬鹿なの?マジで馬鹿なの?絶ッ対に行かん!行くと言うなら3人で行ってきなさい!僕その辺で待ってるから!」

 

あまりのガチの拒否っぷりに3人は集まってコソコソと相談を始める

 

「どうする?いつもの明智の5倍は情けないんだけど?ちょっと面白いから後で写真撮っとこ」

 

「どうするのよ?あいつをここに入れるなんて難しいってレベルじゃないわよ?なんならあんなあいつ見たことないんだけど」

 

「俺に作戦がある…耳を貸せ」

 

そうコソコソと作戦を伝えるため2人の耳元に近づけると1人は顔を赤くして、もう1人はひゃん…と軽い声をあげるが何とか伝えきって

 

「ねぇ?お兄ちゃんいくら明智がチョロチョロだとはいえこんなので上手くいくの?」

 

「あぁ、さりなちゃんはよく分かってるでしょ?」

 

「ねぇ…明智」

 

モジモジしながら顔を少し赤らめて…その顔は少し悲しげに

 

「な、なんです?先輩?」

 

「明智は私の思い出作りのために今回誘ってくれたんだよね?」

 

「ま、まぁね?」

 

普段の態度とは違いまるで演技をしている時のような態度に嫌な予感がビシビシといや…明智の天才的な頭脳派既に何が起きようとしているか既に把握している…なのに目を離せない

 

「私…明智とも思い出作りたいな…ねぇ?ダメ?」

 

「で、でもね?僕こういうの苦手でさぁ?ほ、他!他だったらいくらでも付き合うから…ね?」

 

そういうと突然ポロッと涙を流して

 

「ぐす…ごめんね…明智の嫌がることって分かってたのにこんな無理なお願いしちゃって…グスゥ…酷いこと言っちゃったよね…」

 

「い、いや!?全然酷くはないよ!?むしろ先輩がそんな風に思ってくれてるのはとっても嬉しいって!」

 

「明智…お願い…一緒に思い出作ろ?私…明智ともっといっぱい仲良くなりたい…私のわがまま聞いて欲しいな?……だめ…?」

 

そう涙を溜めた上目遣いでうるうると見上げられてしまえば

 

「ファンはどこまで行っても推しの奴隷なんだよ」

 

「は…はい…」

 

「明智…!」

 

今度は打って変わって満面の笑顔、まるで向日葵が咲いたような輝いた笑みを見て

 

「言質とったわ!!」

 

先程のしおらしい態度など微塵もなくなり、涙もスっと引いてニヤッとした笑みを浮かべて双子に向かって勝利のVサインをする有馬

演技だとわかっている、嘘の涙だとわかっている、だが…どこまでいってもファンは結局推しの奴隷

推しのお願いを断れるファンなどこの世に存在しない

 

(まぁでも…一緒に思い出を作りたいって言うのは嘘じゃないって分かるからさ…)

 

そう思い、いい顔で笑った明智を見て

 

「チョロチョロ星のチョロリン」

 

「あいつマジで有馬に10億くれって言われても断らなそうだな」

 

一瞬で肝が冷えるような冷めた目で見つめる双子だった

 

そして

 

ガタガタ震えながら入場しようとする明智はなにかに気づく

 

「あれ?これって2人1組になって探索するってやつだから別れないと無理だぞ」

 

「本当だな、マップにもそう書いてる」

 

そして始まるのはどこと何処が組むのかを考え始める時間

 

「アクアは僕と組んだら後から大変そうだから、僕がお転婆プリンセスどっちかを引っこ抜くからどっちかを持ってけ」

 

「なんでそんなポケモンみたいな感じなんだよ、最初の1匹選んで冒険に出かけていかねぇよ」

 

そうなったので明智はよく観察し

 

「よしルビィ来て!お願いだから!先輩ノリに乗ったは良いけど自分もそんなにホラー得意じゃないんだけどな〜みたいな顔で震えてるから!お願い!」

 

先程から小刻みに震えている有馬と吾郎せんせと一緒に…キャ!なんてひとりの世界に入っているルビィを見比べてさっさとルビィを回収する明智

 

「ちょ、離れて!私はご…お兄ちゃんと一緒に行くんだから!というかなんで私!?かなちゃんのこと推してるなら守ってあげなよ!」

 

「いや無理無理無理!だってプルプルだもん今猛烈に後悔してるもん先輩!絶対ノリにノッちゃって降りれなくなってるだけだもんあの人、泥船でもちょろいから乗っちゃうもん!それに…」

 

「ルビィ相手ならもしもの時はルビィを置いてダッシュで逃げれば僕だけは助かる…」

 

「ほんっっとうに最低なんですけど!絶ッ対嫌!ほんっとうにこの男さいてーだよ!こんな可愛らしい女の子一人置いてのうのうと一人生き延びようしてるもん!」

 

「さっきから黙ってればいい気なもんじゃない!別に余裕よ!私にかかればこのくらい全く問題ないわ!行くわよアクア!!私たちの実力を見せてやる!」

 

「えぇ?ちょ、有馬、お前引っ張るな、分かった、分かったから!」

 

そのままムキになった有馬がズルズルとアクアを引っ張ていきルビィと明智を置いて行ってしまう

 

「明智…」

 

あぁ…やっぱり前世の記憶があろうと親子なんだなぁ…血の繋がりがあるんだなぁ…

そう、真っ黒な星を輝かせた目で見つめられた明智は悟った

 

「うぅ…あ、アクア…絶対に手を離しちゃダメよ?絶対よ?やっぱり年上としてあんたのことを守ってあげないといけないから、それだけ!それだけよ!」

 

「分かった、分かったからそんなに強く握らないでくれ」

 

「あ、ご、ごめん」

 

強く握っていた手を離すが、物音にビクゥとしてアクアに抱きつく

 

「何もいない…怖くない…ピーマンの方がよっぽど怖い…お化けなんてないし嘘だし」

 

「有馬…暑い」

 

「う、うるっさいわね!私はあんたを守ろうと必死なの!大人しく一緒に着いてきてもらうわ!」

 

いつの間にかアクアは銀行強盗の人質のような扱いを受けて暗い道を歩いていく

コツコツと2人の軽く小さい足音だけが響く廊下を歩いている途中

 

「なぁ、有馬って明智のことどう思ってるんだ?」

 

「な、何を当然聞いてるのよ!」

 

いきなりの質問にここが何処かを忘れてサッと距離を置いて

 

「いや明智と喋ってる時の有馬は自然体…?いや、楽しそうにしてるからさ」

 

「そ、そんなこと…」

 

自覚はある、明智と喋っている時はなんのしがらみもなくただの有馬かな、そして役者としての有馬かなを見てくれている

だからこそ安心して会話ができる

明智は結婚した、幸せそうに笑ってその時にチクッとした痛みを今も覚えている…そしてその感情がなんなのかまだぼんやりとしててしっかりと理解ができない…でももう手を伸ばしても届かないことだけは理解している…

居心地のいいあの人はもう他の人の場所なのだろうと

 

でも…それでもあいつは私を見てくれて、私を気にかけてくれて…それで充分…充分なはず…

 

「ま、まぁ…あいつは私のファンだし!ファンの対応も役者としての勤めよ!勤め!それに、私はあいつの先輩だから」

 

不思議そうな顔をして

 

「そんな感じじゃなかったけどな、もっとこう…なんて言うんだろう?兄…」

 

「やめて!」

 

立ち止まって大声でその先をかき消す

 

「なんなのよ…別にいいじゃない…私にとってあいつはそういう存在で…大事で…居心地が良くて…それだけ…それだけよ」

 

「なにか気に触ることを言ったなら悪かった…でも別に有馬を怒らせようとした訳じゃなくて」

 

「ただ、明智の前で笑う有馬、俺は可愛くて好きだぞ?って言うのを言いたかっただけだ」

 

「ぇ…?あ、あんた…ほんっっとバカ!馬鹿なの!ばーか!本気で馬鹿なんじゃないの!馬鹿よばーか!」

 

突然何を言い出してるのよこいつは!いきなり!突然!馬鹿なんじゃないの!可愛いとか!好きとか!簡単に口にして!欲しい時に欲しい言葉をかけてくる所はあいつそっくりなのね!

 

「ほら!バカなこと言ってないでさっさと行くわよ!」

 

「え?おいそんなにスピード出したら怪我するぞ?薄暗いんだからもうちょっとゆっくり」

 

うるっさい!と一言言ってそのままズカズカ歩き始めてしまうのを

 

最近の子の考えてる事はよく分からないな

 

と思いながら歩き始めるアクアには

 

「ほんっと…ばーか」

 

耳まで真っ赤に染った顔でこう呟いたのは聞こえることは無かった

 

 

「ぎょァァ!!!ちょ、ルビィ!まじで僕の手を掴んでてくれよ?!?置いてかないでねお願い!後でお小遣いあげるから、ほおぉ!?何今の、?はぁ?馬鹿なんじゃないの?ばーか!!」

 

「明智うるさい、驚かせる人が逆にびっくりしてるから」

 

なんでこうなったんだろう?本来の作戦であればせんせにベッタリくっついて甘えて、それで吊り橋効果を狙って距離を縮めようと思ったのに…まだまだ難しいのかもしれない

 

はぁ〜とため息をつきながら私はここに居るから落ち着いてって

 

「はぁ〜いやぁ良かったよルビィと来れて」

 

「何かあったら私を置き去りにできるから?」

 

「ん?まだそれ気にしてたのな?ぅぉぉ…なんだ今の骸骨…置いてくわけないだろ?」

 

(そんな震えながら言われても…)

 

ほんの少しの仕掛けや飾りにビクつきながら歩いている明智が何を言っているのか分からず歩きながら視線を向けて

 

「だってさ?先輩は僕の推しだし、吾郎さんにはこれ以上かっこ悪いところ見せられないからさ、ルビィと来れて良かったよ」

 

「何それ?私だったらかっこ悪いところ見られても良かったってこと?」

 

「そりゃそうだろ、友達に見せる姿なんだからさ」

 

「……………」

 

「えぇ?ルビィ…な、なんで黙るの?こ、怖いから!まじでやめて!こっ、こっわぁ!ちょ!手を離すなよ!絶対離すな!まじでぇ!」

 

こんなカッコ悪くてダサくていつもはもうちょっとかっこいい所も頼りがいのあるのにわざわざ私には見せていいって、その理由が友達だからって

 

「あっはは!!変なの!明智ってやっぱり変!」

 

「はぁ?何言ってんのルビィ!?突然どうしたの?と、取り憑かれたのか!?大丈夫か!?」

 

そんなわけないでしょ!なんでIQ3ぐらいになってるの

 

ほ〜んとカッコ悪くてマヌケで最低でデリカシーがない

でも私の自慢の友達

 

「ねぇさっきの手を絶対に離さないでよってフリ?もしかして誘ってる?」

 

「そんなわけねぇだろ!馬鹿か!」

 

えぇ〜どうしよっかなぁ?

 

そうからかって遊んで大きい手が強く握りしめて来るのをほんの少しだけ握り返して

ゆっくりと進んでいく

 

そして帰ってきたら

 

「あ、あんたのこと…ちょっとは認めてあげてもいいわよ」

 

「そうか?、ありがとな有馬?」

 

「なよ……」

 

「なんだ?」

 

「私のことは…かなって…呼びなさい…」

 

「?わかったよ、かな…これでいいか?」

 

「えぇ!!それで良いわ!!」

 

何があったのか分からないが仲良くなって…いや…少し怪しい雰囲気になっている2人をみてルビィはじっとりと黒い星の目で明智を責めるように見つめる

 

 

楽しい時間はあっという間に終わり、帰るためにタクシーに乗り込む

最初はあれが楽しかっただの、これは面白かったとワイワイと賑やかな会話が聞こえてきたがしばらくして振り返るとルビィと有馬が真ん中のアクアに寄っかかって疲れのあまり眠ってしまっている光景が広がっていた

 

それを見た明智は優しい笑みを浮かべてそっを写真を1枚とってアイに

 

ちびっ子3人組遊び疲れて寝ております

 

というチャットと共に写真を送り、チャットなのにやかましい反応に笑って返信する明智だった

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。