(ぁ〜マジでどうしよう)
ベランダでタバコを吸って考える、けれど自分が今手を出せることは何も無くていくら天才とはいえ時間が掛かり、かかった時間だけ取り返しのつかないことになると理解出来てしまう
「なんか悩み事か?」
悩んでる明智にアクアが声をかける
「まぁね?有馬先輩をどうにかしなきゃって感じ」
「あぁ…」
有馬かなは一時期明智と組むことで多少仕事を貰えてはいたが、それは明智と組んだ場合にのみ、有馬自身の役を見て判断している訳ではない
「このままだと先輩は…はぁ〜今からやろうとしても手は無い…いやあるけどさぁ?」
そう言ってチラッとアクアを見つめる
「なんだ?何するんだ?」
「アイのコネを使って〜とか僕の方の大人のコネを使えばできることがあるんだよねぇ、でもさぁ?アクアって役者やりたいの?」
「役者…か…」
1度演じた、あの時はアイのバーターのために出演したもののあれ以降特になにかに出た訳では無い…一応苺プロにはまだ所属まだ名前は置いてあるが
「でも俺には」
「うん…無いね」
キッパリと言われて少し苦笑いしてしまう
「まぁ無いって言うのは厳密には違うかな?でも有馬かなと同じくらいとは甘く見ても言えないかな」
「それはそうだろうな、合わせることはできても自分を爆発させるのがいまいち難しくて感覚が掴めない」
アクアは周囲に合わせることが出来る、監督やディレクターの望むとおりの役を演じることができる、それもひとつの才能
ただし
「僕が今アクアに求めてるのはちょっと違う」
「俺が明智の代わりになって有馬を引き立たせるってことだろ?」
その通りーとタバコの火を消しながら
「アクアは完全に理屈派の人間だからさぁ?感覚で言われても分からないでしょ?だったら全部理解して考えてそして全部見通して行動しないといけない」
それは…とてつもなく大変なことなのだろう、明智は一瞬でそれを物にした本物の怪物、だが人間がそれをするとなると大変なんて物じゃすまない
「カメラの位置、演出効果、セリフの意味、立ち位置…それら全部がなんのためにあるのか理解しろってこと?」
「その通り、アクアがもし役者をやるって言うならそれら全部を理解した上じゃないと…有馬かなっていう天才の隣には立てないよ」
「だんだん話が見えてきたんだけどさぁ?もしかして…」
「そ!というわけでアクアには有馬先輩の隣に立っても遜色のない、また彼女の魅力を引き出せる人間になってもらいマース!」
ドン引きの表情で明智を見つめるアクア
「だって言ったでしょ?僕を驚かせるって、役者になってよ、それで僕のおねがい…有馬先輩のために頼むよ」
「はぁ…もし僕が有馬レベルになったらどうなるんだ?」
「マジでびっくり仰天、それはつまりさ?天才の全速力に秀才が追いついたってことだから」
その一瞬のためだけに努力しろと言っているのかこの天才は…そう思うも自然と笑みがこぼれてしまう
「はぁ〜じゃあまずやることは」
「監督の所にレッツゴーだよ」
そこからアクアは小学生とは思えないほど忙しくなった、学校に通い、終われば監督の所に行って裏方のアレやこれらを学んでいく
「最近アクア忙しそうだね?大丈夫?」
「だ、大丈夫だよアイ…」
「いやぁ〜頑張れ〜」
呑気な明智にムカつき軽く蹴りを入れて
「でもアクアはとっても才能あるから大丈夫だよ!きっと立派な役者さんになるね!」
そう言われて抱き着かれてしまうと
奴隷としては頑張らなければと思ってしまうあたり、自分は単純なんだなとアクアは思ってしまう
「アクアの様子はどうです?」
「良くやってるよ、ほんと何者だアイツ?あんな小学生見たことねぇぞ」
監督の所に様子を見に来た明智
「まぁ〜彼は秀才ですからね、僕のやりたいことのために頑張ってもらってます」
「やりたいこと?なんだよ?」
「監督〜次のキャスティングなんですけどねえ?」
「お前…最低だな!」
監督が耳打ちされたのを聞いて
「いやぁ〜それほどでも?」
「褒めてねぇよ!たくぅ…まぁ俺も見たくはあるけどなぁ?」
でしょ〜!とわっるい大人が意気揚々と笑いあっている様子を見て
(明智ぜってぇ許さねぇ…)
心を燃やしているアクアだった
(これは結局僕のエゴなんだよねぇ?アクアにはああいったけど吾郎さんには才能がある、周りに合わせてっていうのがあるからかな?それとも過去の体験でそうなってしまったのかは分からないけど貪欲に貪るように知識を蓄える…有馬先輩が太陽だとしたらアクアは雲…太陽を隠すけど隠されたあと太陽を見たら何倍にも光って見えるように錯覚する…見せてよ…僕はそれが見たくてこんな無茶ぶりしたんだからさ?)
監督がキャストを選んだ時は多少驚かれたろう、1度しか経験がないアクアが選ばれ、そして有馬がそのヒロインとして抜擢された
「今度は負けないわよ私!」
「俺も負けるつもりは無いよ有馬」
「ぇ?えっと、うん…というか呼び方!」
「ハイハイかなかな」
「虫か!!」
そんなやり取りして撮影が開始される
最初は普通に開始されたはずなのに、少しづく違和感に気付く、おかしい…変だ…何がおかしいのか分からないけど漠然と感覚でアクアの演技に違和感を覚える有馬
(なんだろう?いつも以上にやりやすい…?やりやすいのは確かなんだけど…今回の主役はあんたなのよ?なのになんでそのアンタが私にスポットライトを当ててるの?それに感情だってオーバー気味、立ち位置も私と少し被るからこっちの調整が難しい…私のことを妨害してる…?いや、違う…)
その違和感の正体がなんなのか分からずモヤモヤしてしまう、そして今撮ったのはおそろくそこまで出来のいいものじゃないと肌で感じる
(気付けよ天才、俺がなんのためにこんなことしてるのか分からないってわけは無いだろ?俺が1年かけて学んだことを感覚でとか、空気感の違いを肌でとか言い出すんだろ?
それなら気づけるだろ?)
そうこれは喧嘩を売っているのだ、天才子役有馬かなにあろうことかアクアは喧嘩を吹っかけている、この程度も分からないのか?と
この程度もできないのに天才?と
端的に言うと
煽っている
それに気づいた有馬、本来であれば少しは気にはするだろうけれど感情を殺して演技に専念する、そういう生き方が染み付いてしまった…けれどアクアは違う、小さい頃に有頂天だった自分の鼻っ面をへし折った相手、ライバル意識がありこいつには何としても負けたくないと意識してしまったいたから…
(あっそぉ!そこまで私に出張って欲しいのね?どーせ明智かなんかの入れ知恵でしょ?そうやれば私が我慢できなくなって飛び出すと思ってる!ムカつくのよ!人の気も知らないで思いっきりやれって言って!こっちの気も知らないで、誰かに見てほしいから、必要とされたいから合わせてるのに…関係ないってぶち壊して!ほんっとあんた達似てるわね!!そっくりクリソツよ!!!)
そこから有馬かなの演技は変わった、変わったと言うより元に戻ったと言う方が正しい
私を見ろと叫びながら演技して、アクアのオーバー気味の感情表現にも合わせ、アクアの仕掛けた物全てに乗っかり自分を全部出す
その日の撮影が終了しアクアは汗をボタボタと垂らしながら飲み物を飲んでいると
「ほんっっと嫌になる演技するわよね!」
有馬が満足そうな顔で、でも文句タラタラで隣に座る
「明智に言われたんだよ、かなが輝く演技の為の影になれってさ」
「はん!どうせそんなことだと思ったわよ!全部用意してやったからあとは思いっきり暴れてくださいよ?お嬢様っていうのが気に食わないわよ!」
「あぁ〜あいつなら実際にそう言いそうだな」
苦笑いして肯定する
「まぁでもあんたのおかげで久々に本気の演技ができたわよ…ありがと」
「お礼なら明智に言ってくれよ、俺はただ」
そう否定しようとするアクアに有馬が何を馬鹿なことを言ってるんだこいつ?と食い気味に
「はぁ?何言ってるのよ?あんたの動き…全部計算に入れた上で動いてた、演技が好きで役者になるために努力した人の動きだったわ、そんなのが人に言われたからってできることのレベルを超えてるのよ」
「そう…か…まぁ…そうかもな…」
役者にそこまで興味はなかった、ただ漠然と自分に才能はなくてあるのは中途半端な武器のみ…それを使っても何倍もの強さの武器を研ぎ続けた天才には勝てない…そう思ってた…でも…
「アクア演技とっても上手だったね?将来は役者さんかな?」
幼稚園のお遊戯会…ただそれが終わったあとこう言われて褒められた…だから演技の道に興味が出てきて…
(明智のやつ…それ分かってて戦い方を学ばせたのかよ…)
はぁ〜とため息がつく…
「俺…自分に才能はないと思ってる…でも、かな、お前に負けたくない」
「ふ、ふ〜〜ん…まぁ…私に勝てるようになるには相当頑張らなきゃダメだけどね?」
ニヨニヨした顔でそう言ってそっぽを向いてしまう
映画が上映されると最初の伸びは悪かったものの、子役とは思えない2人の演技のレベルの高さに注目が集まり、有馬かなとアクア
2人の名前はしばらくの間トレンドの上位に食いこんだ
「おめでとう〜ぐぅぇ」
軽い口調で祝福する明智の顔を踏んずけるアクア
「なんでぇ?」
「ムカつく、そのほら?僕の思い描いてた通りになったろ?って顔が腹立つ」
「いやまぁ、予想はしてたけどアクア自身の頑張りでしょぉ?そんな卑下しなくても良いんじゃないの」
「分かってて言ったのか?俺に」
「まぁね…正直今あの密度で詰め込み続ければアクア、有馬先輩に勝てるよ?」
そう真顔で言われるとゴクリと唾を飲み込む
「今の有馬先輩もそりゃ凄いけどさ?まだ伸びしろがある、天才とはいえまだまだこれから、今を全速力で行けばアクアは先輩に勝てるかな〜って」
そうにっこり言われると尚更ムカついたので2~3発蹴りを入れておく
「ぐぅぇ…だって医者か役者どっちかでしょ?でも知識自体はあるわけだし、それに第二の青春なにかにチャレンジしといてそんはないと思うよ?」
「そういうの分かっててあの時無茶振りしたってことか…はぁ〜ムカつく…しかもやりたいことって分かってるかのように言ってくるのが尚更ムカつく」
「お兄ちゃん凄かった〜!!!」
「流石私の息子!天才!天才だよぉ!!」
半分涙目になりながらアクアに抱きつくアイと黒い笑みを浮かべながらも嬉しいのか抱きつくルビィ
「流石だよォ!!凄かったよォ…私感動しちゃったよぉ…ぅぇぇーん…」
「ちょ、アイ!?わかった、分かったから一旦離れてくれ!」
「お兄ちゃん?ねぇ?お兄ちゃん…最近かなちゃんと距離が近い感じがするかなぁ〜って?いやとっても演技自体は凄かったよ?私も感動しちゃったけどさ?なんであんなに距離近いの?ねぇ?ほぼキスしそうになってたよ?」
泣き疲れたり、呪詛を囁かれたり大変になりながらも
(ムカつくよ本当に…最初は有馬を引き立たせるためだけとか言ってたくせに、俺に火がついて負けたくないって思うってこと自体も計算に入れてたってことだろ?明智がみたいかなの演技も見れるし、俺の役者としての最高のスタートをさせた…狙ってたのか…分かったよ…いずれおまえのことも演技で圧倒してやるから覚悟しとけよ…明智)