あぁ〜難しい!まじで難しい!
あとこれが見たい!とかもしあればお願いしまーす
「そういえば貴方に新しい仕事が来てるわよ?」
そういうと1枚の紙を明智に渡すミヤコ、それを受け取って確認すると
「劇団のワークショップ?」
劇団ララライが行っている体験会、それにゲストとして参加して欲しいという依頼が明智に飛び込んでくる
「そこでゲストとして出てもらって少しでも劇について知ってもらおうって言うのが表向き、裏向きは」
「劇団側としても新しい才能は欲しいってことですか」
まぁ、そういう事ねとパソコンに向かいながら
「どうする?興味ある?今の貴方だったらある程度の仕事は選ぶことは出来るわよ?正直に言うとこの仕事はそこまで美味しい訳でもないし」
「ん〜まぁ前から劇団には少し興味があったので行ってみますよ」
少し悩んでから答えると、じゃあとスケジュールを調整を始めるミヤコ
(劇団…テレビ用の演じ方だったら絶対だめだよな)
そして
(つ、疲れた…)
劇団相手、テレビでしか演じたことのなかった明智が劇団の人間に受け入れられると思っていなかったのだが、思いのほか友好的に接してくれ、なんならファンも何人かきてサインを書くことになったりと1日中動き回り、やっと開放された明智は裏のベンチで休憩していた
(ふぅ〜案外受け入れてくれてたな、畑が違うと仲悪いって思ってたけど…いやぁ…まぁそれよりも)
視線を感じてサッとそちらを向くと、急いで隠れる小さな影がひとつ見えた
(ずっとなんだよな)
全員の視線は把握してるつもりの明智、だが常に全ての人間から注目されてる訳では無い
たまに目が合ったり、話かけるタイミングを伺ったりすると言ったもの…今注目している視線の主の見方に違和感を持つ
(ん〜なんというかただ眺めてるだけじゃなくて、見てる…視て、考えて…頭の中でイメージを膨らませてる感じかな?憧れとか羨望とかもあったけど…僕のことを観察してる…)
そう考えていると口元が自然と笑ってしまう
「ふぅ〜そろそろ帰ろうかな〜」
わざとらしく声を出して立ち上がる
「あ、あの…えっと…」
そうすると決心がついたのかモジモジしながら遠慮気味に話しかけてくる小さな女の子…
青い髪、青い瞳…可愛らしい容姿で将来は美人になること間違いなし…
目を伏せてはいるが明智を見て靴、服、立ち姿…振る舞い…それら全てを見逃さないように目は鋭い
「僕をずっと見てたよね?話があるのかな?」
目線を合わせて、なるべく優しい声色を意識して声を掛ける
「え、えっとぉ…ずっと気になってて…か、かなちゃんと…一緒に出てる時から見てて…」
そうおずおずと言うこの小さな女の子相手に
「へぇ…でもそれだけじゃないよね?」
「ぇ…?」
まだ化け物になっていない雛に好奇心が刺激されてしまった
「君が僕を見ていたのは確かにそれが理由だ、でもそれは半分…もう半分は違う…君は僕を観察していた、動作、立ち姿、雰囲気、服装、ありとあらゆる要素を見て僕がどんな人間か判断しようとした…でもそれじゃあ君の才能全部を活かした物にはなってない」
「ぇ…ぇ…才能…ですか?」
優しい雰囲気がなくなり、うずうずと新しい玩具をもらった子供のように目の前の小さな子供に向かう化け物
「そう、才能だ、君は僕と違って他人の全てが見えるわけじゃない、だから足りない物、見ることの出来なかった物を補う必要がある…君に必要なのは人生経験、そしてそれを補う方法は読書、それと長い人生を全速力で走ること」
「そうすれば…そうすれば私は…かなちゃんがあの時なんであんなことを言ったか、あの時何を考えてたか分かりますか?」
そう初めて目が合った、もしかしたら、自分の欲しい物が手に入るかもしれない…分からなかったことが分かるかもしれない、好きな人の考えが読み解けるかもしれない…そう考えてキラキラした目を向ける
それを向けられて…明智は…
「無理」
「ぇ…で、でも今…」
低い声でそう呟いて相手の目をじっと見る、それは相手の全てを見通して見透かして、まるで自分が人形で登場人物で、今目の前の相手から役や考え方を与えられる…それほどまでに見られているようなそんな感覚に陥る
「まず目線、何あれ?あれじゃあ私は今あなたの事を観察してますと伝えているようなものだ、あんなんじゃあ不審がって情報を落としづらくなるに決まってる」
相手の何が足りないか、何がいけなかったか、明智は今小さな女の子に向かって話しているのではなく、同等の相手として語っている
「目を配る場所も違う、顔は確かに情報の塊だ…でも顔以外にも見るべきポイントは大量にある、そして君の観察眼は素晴らしい物があるけど僕と違って君のはまだまだ精度が甘いしそもそも見落としもある、君はある程度心理学については勉強してるみたいだけど人間の心は心理学だけじゃない、寓話、童話、ファンタジー、はたまた画集…ありとあらゆる場所に人間の脳みその中身を見ることの出来る物なんて今の時代大量に転がっている…なんでそれをしないのか分からないな」
今明智は小さな女の子相手に話しているというのを完全に忘れている、将来自分と同じく化け物になれる素質を持っている目の前の子の見た目や年齢など関係なく、ただその才能の活かし方がなってないことが明智の中のなにかに引っかかっている
そうして一気に巻くし立ててしまえば…
ひっく…と声が聞こえる、その声に我に返って見ると…
「ご、ごめんなさい…私…私…」
「ぇ…?ぁ、あぁ!ち、違う!ご、ごめん!僕は君を責めてる訳じゃなくて!君は凄いものを持ってるからそれをどうすれば開花できるかを教えようとしただけで…」
気付いた時にはもう遅くて…慌てて慰めようとハンカチを渡したり、周りを見渡して誰も居ないのを確認して控えめに頭を手を置いて優しく撫でたりしたが
「わ、わたし…かなちゃんがすっごい輝いてるのが好きで…でも…かなちゃんは酷いことを言ってきたから…なんでそんな事言うのって、もっとかなちゃんらしい演技をしてよって、思って…それで…それでぇ…」
ボロボロと涙を零して心の内側を晒す子供にもうどうしようもなく自分がやらかしてしまったと後悔する明智
そうやってアワアワやっていると
「何してるの先輩」
思い切り後頭部を叩きながらアイが現れた
「いて!!な、何してるんだこんなところで?」
「私の事よりこの子の方が先でしょ?どうしたのぉ?ごめんね?この人子供なんだよねぇ…す〜ぐ興味があると惹かれちゃうんだ〜よしよし怖くないよ〜お姉さんがついてるからね〜?」
そう優しく抱き寄せて頭を撫でながら目を見つめていくと、不思議なことに子供は泣き止んでいき
「あ…アイさん…!」
「そうだよ〜?私の事知ってくれてるんだ?嬉しい!ありがとね!」
頭を撫でて、来ている服に書いていい?聞くとサラサラとサインを書いて
「ほら、先輩もちゃんと謝って?」
「ご、ごめんね?別に君を責めたわけじゃなくて…君には凄い才能がある…それは正しく使えば沢山の人間を笑顔にすることができるんだ…けど間違った使い方をすると危ないものでもある…だから…そのぉ…ごめん」
そう頭を下げて謝る明智をポカーンとした目で見つめる女の子
「私…かなちゃんのこと分かるようになりますか…?貴方みたいな凄いことが出来て、かなちゃんの隣に立って…あなたみたいな演技が出来ますか…?」
そう、真剣な眼差しで聞かれる明智は…相手の目を見る…今度は優しい目で見つめて…そして…
「うん、きっとなれる…君はいつか天才と呼ばれるようになって僕より凄い演技ができるようになる」
そういうと笑顔になり、そのままお辞儀をして戻って行った…
「先輩さぁ?」
「いや…あの…ねぇ?」
そ、そんなことより!と分かりやすく話題をすり替えて
「お前なんでこんなところにいるんだよ?」
「ミヤコさんが先輩のこと迎えに来るって言ってたからそれについてきたんだよ」
「な、なるほどなぁ…いやぁさっきはマジで助かったありがとな」
「いえいえ〜どうせあれでしょぉ?何か凄い物があの子にあって、それを見つけた先輩が好奇心を我慢できずに質問攻めして、暴かれたくない物全部ばらされちゃって泣かされちゃったんでしょ?」
そうじとっとした目で見つめられると何も言えずにそっぽを向いてしまう
「はい…大変申し訳ありません…」
「………このたらし…」
「たらしじゃねぇ!!」
ボソッと言った呟きにしっかり反応しながら明智とアイは迎えに来たミヤコの車に向かっていく
この時明智も気づかない
「そうか…私の見えている物は全部って訳じゃなくて、細かい見落としがあるんだ、だから間違えちゃったり、考えの矛盾が起こっちゃったりしてた…他のお仕事をしている人がどんな暮らしをして、どんなことをして、何を食べて、何を着て、普段どんな場所に行ってるのかも分からなかった理由がようやくわかった…知識、経験、発想…それが足りなかったんだ…」
キラキラと輝いた瞳で空を見上げる
この人明智は自身に迫る化け物を生み出してしまったことをまだ知らない