締まらない再会
2人だけの世界を作ってそこでうっとりしていると…後ろから水色の瞳を持った子供が…
「えっと…そこで倒れてる人…どうするの?」
「「ぁ、」」
アイは子供の前だということに気づいて、明智はたった今不審者を撃退したことにやっと気づきお互い名残惜しそうに離れる
「えっと…それでこの人は…確かりょーすけくん…かな?」
「ぁ〜まぁこいつもこいつで色々可哀想な奴でさぁ…とりあえず救急車と警察でも呼んでおけばいんじゃね?」
「可哀想って…アイが襲われかけたんだぞ!」
子供にしては必死に目の前の現実に起きた非現実的な状態を見て声を荒らげる
「何言ってるんだ?僕がいるのになんでこいつが危険なのか理解ができない」
そう言って刺された指を
「そういうのいいから」
ベチィッと弾いて
「いっでぇ!だからすぐ手が出るじゃん!というかさぁ?僕のおかげで助かったわけだからねここはひとつ僕にお礼をするのが礼儀ってものじゃないのかなぁ?」
「何言ってるのかアイよく分かんなーい」
「何可愛こぶってんだこいつ、もう20歳だろうがいい加減いっでぇ…!!」
余計なことを口にする度にシンプルな打撃が飛んでくる
「はいはーいアクア〜こんな教育に悪い人の言うことなんか聞いちゃダメですからね〜」
「はぁ?お前相手に教育云々言われたくないんですけど?」
「ほーらす〜ぐこうやって怒鳴って怖いねぇ〜」
「こっっのぉ…」
「ママァ…大丈夫?」
扉の向こうから赤い宝石のような瞳の女の子がこっそりと様子を伺うように見つめてきて
「大丈夫だよ〜ルビィー心配かけてごめんねいま悪い人は全員連れてってもらおうね〜」
「今僕のこともさりげなくカウントしやがったぞこの女」
はぁ〜っとため息とともに
「さっきはめちゃくちゃ素直で可愛かったのに」
ぼそっと呟いて
「ッッッ!!!」
ベッチィィ!!
「いっでぇ!!だからぁ!何?考えてもらっていいかなぁ?もうお前は子供じゃなくて大人なんですけど?シンプルに打撃の1発1発がめちゃくちゃ痛いのよ!」
「ほんっっとそういうところ考えられないの!昔から思ってたけどデリカシーってものが!!…」
「うるっせぇなぁ結局僕に見透かされて嬉しそうにしてたじゃんこのかまってちゃ…」
「「2人とも」」
「「ドームライブ」」
「ぁ…やっべぇ!おい!お前社長の迎えは!」
「え、えっとぉも、もうすぐのはず!」
「あぁ〜お前が変に絡んでくるから時間ギリギリじゃん!というかお前顔すっごいことになってるぞ早く治してこい!」
「こうなったのは誰のせいだと思ってるのかな?私誰のせいでこうなってるのかなぁ?」
この時2人は思った…
(あぁ…夫婦喧嘩は犬も食わないんだな…)
そこから社長と奥さんが来るまでギャーギャー騒ぎ立てて、そこに警察と救急車も加わって阿鼻叫喚
ドームにはギリギリ間に合ったという
その後ストーカー被害自体はあったもの子供やアイ達になんの被害もなかったのが幸いそしてドームは大成功になったのでみんなでどんちゃん騒ぎ
そんな中で
「…………………」
「ねぇ…あれって…」
「近寄っちゃダメですよ」
アクアが遠くに離され現在楽しい雰囲気の対極みたいな位置に正座する男と仁王立ちでその男を睨みつける完全無敵のアイドル…残念ながらライブが大成功で終わった顔では無い
「あの…」
「何?」
「みんな見てるから…一旦辞めない?」
「………」
「そのぉ…」
「…………」
「なんでも…ないです…」
さっきからこれの繰り返しでかれこれ30分程度正座したまま…しかもフローリングのためなかなかに足に激痛が走る
「説明しよっか?」
「説明…ですか?」
「なんで私から離れていったのかとか、突然現れたのはなんでなの?とかさ色々あるよ…ね?」
口調は完全に皆の知るアイなのだが…笑顔が…笑顔が違う…目の中の星が完全に真っ黒で笑ってない…
「あのなんそのですね…色々ありまして…ね…」
「説明」
「はい…」
ここから醜くもどうしようもないけど愛すべきアホの供述
「寂しく…なった…といいます…か…」
「は?」
みんなの内心(は?)
「何言ってるのかなぁ?アイ分かんないな〜あっはは」
「ひぇぇ…えっとですね…はい、その…さぁ…なんかお前が危ないっていうのは前々から分かってたから本格的に手を出さないと取り返しつかない事になるな〜っていうのは分かっててさ?正直それは二の次でさ?そんなことは僕がいればどうとでもなるしそんなもん置いといて…さ?
さ、寂しくなった…あの時お前は絶対凄いやつになるって言うのが分かってたから僕がお前の隣を一緒に並んで歩くなんてことをしたらそれが出来なくなるんじゃないかと思って、お前との会話とか関係とかそういうのは結構心地のいいものだったけど、やっぱりお前の目標の邪魔になるんじゃないかと思って…お前から離れた…でも…結局こうやってお前の憎まれ口を小生意気な顔を見たくなっちゃって…
だから…その…寂しくなったから…来てしまいました…
「ふーん…フーーーん…フーーーーーん!」
そっぽを向いて足をパタパタさせて
(ぇ?何この人?こんなに頭悪かったっけ?私のためにカッコつけて離れたって言ったくせに結局寂しくなって帰ってきたってこと?えぇ?馬鹿なの?先輩って頭いいけど本当にポンコツというか全然ダメダメというか…ぁ〜もぉ…ほんっっうに…ムカつく…こんなの絶対許せないはずなのに!申し訳なさと恥ずかしさのミックスみたいな顔でこっち見るのやめて!ぁ〜もぉ…)
アイは気づいてないが先程からチラ見しているギャラリーの大半は普段のアイだと見ることの出来ないだらしない顔でニヨニヨしていてそれを必死にこのアホに対して見せないようにしている構図
(こいつらバカップル化してんな)
(まぁ同じ女として同情しちゃうかなぁ…)
(うっわぁ…もしかしなくてもあの時話題に出てたのってアイのことだったのか?いや…まぁ…多分推しのこんな顔見られるものじゃないから役得…なのか?)
(はぁ?なんなのあの男?パッと現れたと思ったら突然完璧で最強のアイの唇奪うわサイテーなこと言い始めるは…でも推しのあんな顔見たことない!!!くやじい!!私だって推しにあんな顔させたぃ!!ずっるぃ''!)
「あ、アイさん?」
「何…」
ムスッとなんとか表示を取り繕ってはいるけど口元はにやけてすぐに解けてしまいそうなのをなんとかきつく結び直して
「あの…す、直ぐにとは言わないのでてゆーかもし良ければ…仲直り…とか…しません…か?」
「ふ、ふ〜ん先輩は私と仲直りがしたいってことなんですね」
(あれ?アイが敬語?しかも先輩?えぇ?この男アイの先輩なの?こんなすごいアイドルに先輩って言われて敬語使われてんの?あの時置き去りにしとけば良かった…)
「ゥェェァーーーンマッマ〜〜〜〜!!!」
ここでルビィーがぐずり出して中断
「ぉ〜よちよち〜」
(やっべぇ…どーしよ…やっぱ無理か…?いや…でもあいつが本気で許さないんだったらそもそも家に入れてもらってないし会話もできてないよな…わ、わんちゃんあるか?)
そう思ってちらっとみると
べぇぇ〜〜〜〜〜
目が赤い方の子供が思いっきりべろ突き出して小馬鹿にしてきてた
(はァァ?えぇ?何?何今の?うっそだろ?今子供完全に僕のことバカにしたよね?おいこら!そいつ精神年齢いくつだ!明らかに含みを持って人間をバカにする時の顔つきだったろ!)
しかもしっかりアイにバレない位置なので何も言うことができず
(まじで何者だよあの子こえーよ!ていっぅかめっちゃムカツクゥゥ!!的確にムカつく顔してくるんだけど!絶対あれ中身子供じゃないだろ!確実に子供じゃない何かが入ってるだろ!)
「よし!そろそろ時間も遅いし僕は帰」
「座ってて」
「はい…」
なんとかこれを機に帰ろうとしたけれどあの子供に向けられた優しい笑みではなく絶対零度の眼差しで座ることを命じられる
(な、なんて拷問だ…赤子にバカにされ…す、気になってる人には冷たい態度で命令され…)
ポンッ…と手を置いてくれる青い目をした男の子…
「あの…大丈夫…?」
「ぁ…やっぱりあれだよな!男同士の友情って僕あると思うんだ!僕の名前は明智乱歩!君は?確かアクアだっけ?」
「うん…僕の名前はアク」
「愛久愛海だよ」
その横でアイが被さるようにつぶやく
「アク…ん?アクアマリン…?」
「………うん…そうです…アクアマリン…です」
悲痛な顔で自分の名前を言う子供にグッとくるものがあって思わず抱きしめて…
「大丈夫だから…正確な年は忘れたけど正式な理由があれば名前変更できたと思うから…その…頑張ってな?アクアマリン…ぶっふぅぅ…」
「ふん!」
唯一の味方になりえそうだった存在すら自分の敵にしてしまう男…
「ごめんって違うから!ちょっと水族館が頭の中を横切っただけだから!」
「えぇ〜私は愛久愛海ってとってもいい名前だと思うけどな〜」
「お前まじ?お前もし次があった時は絶対お前が名前をつけるなよ…」
「何言ってるのかなぁ〜?絶対先輩より私の方がセンスいいから!」
「はぁ?そんなわ…は?え?ぼ、僕…より?
」
「そうだよ〜絶対私の方がセンス…いい…と」
自信ありげに答えて言ったが途中で自分が何を言い出したのかしっかりと理解して顔を真っ赤、顔から煙の出る勢いで
「そ、それって…その…つまり…2人で…な、名付ける機会が…」
わざわざ分かりきったことを言い始めるのもこの男の悪い癖
アイの顔はさらに真っ赤になり
「ほんっっとぉ!…バカ…」
いつものように軽口が飛んできてなんなら軽い暴力が飛んできて、それでいつも通りの空気感になるはずだったのに、
お互い顔を赤く染めてそっぽを向いていた
しばらくして子供たちは眠りにつき大人は酒盛りで酔い潰れ、ベランダで
「いやマジで…申し訳ないと思ってる、あの時僕がするべきだったのは…お前の隣に居たいって素直に口にすることだったと思う」
お互いによりかかり顔を見ないようにして星を眺める
「それで?結局寂しくなって帰ってきちゃったんだっけ?」
「グゥ…そ、そうだよ、お前みたいに騒がしくて小生意気な後輩なかなかいないからな、忘れられるわけなかった」
「なにそれ〜先輩にとってうるさくて生意気なだけだったの?」
寄りかかって…顔を近づけて潤んだ整った顔で、綺麗な瞳で見上げてくる
あぁ…
「わがままで可愛い後輩だったよ」
「…ふ、ふーん…本っ当に効かないんだね」
自分を嘘で固め仮面を被った、それでもやっぱりこの人には全然効かなくて
「当たり前だろ?僕がお前の嘘に騙されることは無いよお前がどれだけ最高の嘘をついても僕は絶対本物を引きずり出すからな」
「ほんと〜?」
「あぁ、ほん…」
その言葉を言い終わる前にアイが胸元に顔を埋めて抱きついてくる
「じゃあ…これにも騙されないで…もう二度と遠くに行かないで、連絡先交換して…私が連絡したらすぐ既読つけて…つーわしたい時はすぐ電話出て…他の子と遊ばないで…笑わないで…」
「私を…ほぉって置かないで…」
そう言ってグリグリと頭を擦り付けて…
「私だけ見てて…」
「分かったよ、わがままだよな相変わらず」
(嘘は最高の愛ってお前は言うかもしれないけど…残念ながら僕だけは騙されてやらないからな)
そう言って抱きしめ返す