『ジェアッ!!』
(とにもかくにも、まずは色々試す!)
キングジョーとゾーイの間に割って入ったウルトラマンフォス。
ゾーイの奮戦も遠目に見えていたので、真っ向からの力押しでは到底ダメージが通らないと判断。
が、だからこそキングジョーの『弱点』らしき部分も見えて来た。
『シャア!』
『ぬうっ……!?』
正面からのパワー対決では不利と判断し、振り回されるキングジョーの腕を避けながらヒット&アウェイを繰り返す。
幸い、装甲とパワーはとんでもないが、スピードは言うほど高くはない。
つまり、しっかり予備動作を見ながら戦えば、つけ入るスキも見えてくる。
突き出されたキングジョーの右腕を避け、手首を掴みながら担ぎ上げる。
いくらパワーとウェイトがあろうと、投げ技にとって重要なのはタイミングと重心だ。
パンチのためにキングジョーが前かがみになった瞬間を狙い、腕を抱え込みつつ腰と背中で担ぎ上げる。
あとはテコの原理で一回転だ。
『ジュワァッ!!』
『のあああっ!?!?』
黄金の巨体がダイナミックに宙を舞い、そのまま背中から叩きつけられる。
コクピットの中のザルドが、シャアザクにキック食らった時のアムロ並みにがくんがくんと揺れた。
それでもなんとか揺れる視界を無理矢理整え、キングジョーの上体を持ち上げようとした瞬間……。
「させるかボケカスコラぁ!!」
立ちあがろうとしたキングジョーの頭部にトゥーキック。
そのまま顔面に当たる部分にストンピングをかます。
地球上では3分しか変身できないという弱点を補うため、ハヤトとフォスはギリギリまで変身せずに近くまで全力疾走してきたのだ。
故に、ゾーイとキングジョーの戦闘も遠目ながら見る事が出来た。
「投げられた後、起き上るのにやけに手間取ってたからな!
起き上るのに時間がかかるのか、あるいはそもそも起き上がれないのか……。
どっちにしろ、このまま起き上る前に仕留める!!」
五度、六度、七度とウルトラマンフォスの足裏がキングジョーのボディに振り下ろされる。
手加減も容赦もない、勝機が見えたのなら一気呵成に攻め立てて終わらせるための動きだ。
M78星雲人の力を引き出す才能は高くないが*1、代わりに戦闘センスはかなり高い。
何かの格闘技でもやっていれば大成しそうなほどに、ハヤトは『暴力慣れ』していた。
『ぐお、こ、この……調子に乗るな!』
『ジュアッ!?』
「うお、あぶねっ!?」
キングジョーの頭部から、フォス目掛けて熱線『デスト・レイ』が放たれる。
それを咄嗟に飛びのいて避けたフォス/ハヤトであったが、ストンピングが中断したスキを突いてキングジョーが分離。
4つの円盤に分かれたスーパーロボットは、フォスの周囲を一定の距離を保ったまま包囲。
ぐるぐるとフォスを中心に円運動、どれかを狙って攻撃してきても回避に移りつつ残り3つがカバーできる間合いを保っている。
「くそぉ、ちょこまかフワフワと……!?」
『焦るなハヤト、負けるぞ』
「分かってる!だが……うわっ!?」
4つに分離した円盤の内、常にフォスの背後を取った一機だけが熱線で攻撃。
咄嗟にそれを回避し反撃に転じようとすれば、残り3機がそのスキを突いてくる。
一気にこちらを攻め落とすのではなく、安全な距離を保ちながらフォーメーションとコンビネーションで詰めてくるのだ。
「ええい、こうもつるべ打ちにされたんじゃ……!」
『無理に近距離を保つな、間合いを開けて仕切り直すぞ』
「わかってるさ!」
放たれた熱線をあえて大胸筋バリアで防ぎ、返す刀で牽制のスラッシュ光線を放つ。
元々撃墜するための攻撃ではない、円盤の包囲を乱し、その穴を突いて脱出するための反撃だ。
放たれた光線を事も無げに円盤は回避したが、それによって緩んだ包囲網を突破。
すぐさま体制を立直した所で、円盤が合体。キングジョーとウルトラマンフォスが睨み合う。
「……ん?待て、今何か違和感が……」
『来るぞ!弾幕で押してくる!』
「ああもう! ……何か弱点とか知らないのかよ、フォス!」
『私の現役時代は、キングジョーなんて名前しか知られていないロボットだぞ、無茶を言うな』
先ほどの投げ技を警戒したのか、デスト・レイを中心とした中距離戦に切り替えるキングジョー。
更に頭部のボルトのような部分から電流が迸り、一直線にウルトラマンフォス目掛けて飛んできた。
すぐさま横っ飛びにジャンプすることで避けたものの、弾幕の密度・威力の差が歴然である。
何かないかと、自分と融合しているフォスの記憶から『使えそうな能力』を検索し……。
「これだ!『ウルトラバリヤー』!!」
説明しよう!ウルトラバリヤー(別名・リバウンド光線)とは。
ウルトラマンの四角い枠を作るような手の動きと共に発生する、分厚いガラスのようなバリアである。
攻撃を防ぐだけでなく、ふせいだ攻撃をそのまま跳ね返すこともできるのだ。
飛んできたデスト・レイと電流をウルトラバリヤーで受け止め、それをそのままキングジョーへ反射する。
『甘いわ!』
しかし、キングジョーに直撃するその瞬間、再びキングジョーが円盤へと分離。
惜しい!と思わずフォスが呟いてしまうが、これこそハヤトの狙いであった。
「そこだ!」
『ダアッ!!』
ザルドの操る円盤が再度フォーメーションを組む前に、出の速いスラッシュ光線が円盤の一つに直撃。
ドゴンッ!と音を立て、円盤から小さな爆発が起きる。見るからに有効打が入った。
『む……?』
『なんだとっ?!クソ……!』
「やっぱりか……装甲で完全に守られてるのは『合体時』だけ!
さっき円盤を撃った時、あの円盤はスラッシュ光線を『避けた』!
食らってもまるきり平気なら避ける必要なんてない!つまり……」
慌てて合体したキングジョーに、腰を落とした構えで向き合う。
「さっき跳ね返した熱線と電撃も、アイツは分離して避けた!
つまり、あの瞬間にも『避ける理由』があったんだ!
熱、電撃……あるいは『攻撃が当たるとまずい場所』!」
『なるほど、仮に部位だとして、普通に考えれば比較的脆そうなのは……』
「『関節部!!』」
そう、キングジョーの弱点は『3つ』。
1つ目は、倒れたら分離合体以外では起き上れない事。
2つ目は、分離中は装甲やバリアによる防御が不完全になり、内部機構に攻撃が当たる事。
3つ目は、合体中であろうと『関節部や装甲の隙間は比較的モロい事』。
先ほどの分離回避も、跳ね返した熱線が腕の関節に近いコースを取っていたからこその緊急回避。
その判断自体は正しかったが、それがハヤトとフォスに弱点を教えてしまった。
『……だが、あまりエネルギーの余裕はないぞ。どうする?』
カラータイマーが鳴りだすまであと数十秒程度、大技を連発すればさらに早い。
分離中を狙うのなら分離回避を誘う必要があるし、装甲の隙間を狙うのはシンプルにリスクが高い。
どちらを狙うにしても高難易度、楽な道など1つもない。
「決まってるだろ、そう言う時は……」
ブォン、と右手の手刀にスペシウムが集中・形成。
輝く緑の刃となって、ウルトラマンフォス最大威力の技、『フォスライトカッター』が繰り出される。
それをゆっくりと構え直し、腰だめに据える。
イメージはヤクザ映画でたまに見る、ドス構えた鉄砲玉だ。
「……当たって砕け、だ!ヒーローが砕けちゃいけないからな!」
『なるほど、一理ある』
元々、長々と作戦を練る時間もなければ、色々と試す余裕もない。
はっきりいって、最悪なのは『円盤状態でひたすら逃げ回れれる事』。
変身が解除されるまでに仕留めきれなければ負け、仕留めきれても中で操縦しているザルドを逃したら負け。*2
即ち、最短でキングジョーを撃破しつつザルドごと叩かなければならない。
(勝負は一瞬……いざっ!!)
『ジュアッ!!!』
『くっ、ナメるな不完全体!!』
カラータイマーを点滅させながら突っ込んできたフォスに対し、後退しながらデスト・レイと電撃を発射。
やはりフォスの活動時間に限界があるのは見切られている上に、接近戦で投げられる事を警戒しているらしい。
ひたすら射出系の攻撃をぶっ放し、格闘戦の間合いに入らせないよう立ち回る。
「二の矢は撃てない、ここで決める!!」
『シャアアッ!!』
それに対し、左手から放つスラッシュ光線で電撃だけを相殺。
デスト・レイだけはギリギリで回避しながら、後退するキングジョーへ一気に距離を詰める。
ぐう、とコクピットの中で呻いたザルドは、咄嗟に分離飛行のレバーに手をかけた。
(そうだ、意地になって相手をしてやる必要などカケラもない!
ヤツの攻撃に合わせて分離し、エネルギーが枯渇した所を包囲!
円盤四機による一斉射撃で一気にカタをつけてくれる……!)
にやり、と、底意地の悪い笑みでザルドの口元が歪んだ、その瞬間!
『……だあああああぁぁぁ!!』
『なっ、うおお!?』
先ほどまでグロッキーだったゾーイが、最後の力を振り絞ってキングジョーに吶喊。
背後から組み付き、分離機構が発動しないように無理やり抑え込む。
元々彼女が使う予定だった兵器だ、マニュアルどころか設計図まで真面目に読み込んでいる。
要領は悪くても、真面目で勤勉。そんなゾーイだからこそ、どこに組み付いて妨害すれば分離できなくなるかも頭に叩き込まれていた。
『き、貴様、ゾーイ!?離せ、離ッ……』
そして、デスト・レイと電撃による弾幕を一時中断し、ゾーイを両腕で引きはがそうとしたときには、全てが遅すぎた。
一瞬で眼前に迫ったウルトラマンフォスが、刹那の間に緑光色の刃を滑り込ませる。
まるで魚を捌くときに、骨の隙間に起用に包丁を通す寿司職人のように。
『バカな……で、出来損ないの工作員と宇宙警備隊に、わ、私とキングジョーが……!?』
信じられない……そんな困惑と驚愕のせいで、キングジョーの機体内部を駆け巡るスペシウムの本流から避難するのが一瞬遅れる。
そして、その一瞬が命取りとなった。
『バカな、バカなああああぁああぁあ!?!?』
コクピットにまでスペシウムが流入し、ザルドの体を一瞬で消し飛ばす。
キングジョーの内部回路を余すところなく焼き尽くした高エネルギーは、そのまま各所の装甲の隙間から噴き出した。
なにかヤバイと感じたのだろう、ゾーイも這う這うの体でキングジョーから離れ、距離を取って振り返る。
各所がショートしたせいか、しばし奇妙な挙動を繰り返した後、ぴたり!と『気を付け』の姿勢で停止。
そのままゆっくりと仰向けに倒れこみ……直後、大爆発と共に粉々に砕け散った。
『……何事も、作戦通り上手くはいかないものだな』
「ああ、特に他人を出来損ないと罵るようなヤツはな」
爆発の煙がもうもうと上がるのをみながら、そんなことを呟くフォスとハヤトなのであった。