どうにか変身できたウルトラマンフォスをしり目に、同じくどうにか海岸から逃げ出したコユキ一行。
しかし、本来ならば宇宙化猫の思考妨害エネルギーはかなりの広範囲に拡散する。
海岸にいた観光客の避難も、こうもスムーズにいくはずがない。
それどころか避難したコユキ達も含めて普通に効果範囲であり、テレパシーがあるとはいえフォスとハヤトにアドバイスなどできようはずもない。
その秘密は、この場にいるもう一人のウルトラマンにあった。*1
「やはり、あの3匹の怪獣は思考を錯乱させるエネルギーを発しているようですね……ギリギリでバリアが間に合って幸いでした」
「ゾーイお姉ちゃん、そのブレスレットなあに?」
「これですか?これは私の故郷で開発された潜入調査用デバイスです。潜入調査する以上、思考や記憶を読まれたり乱されたりするのは致命傷になりますからね」
そう、元・宇宙潜入工作員という経歴であるゾーイは、この手の能力に対する対策装備を宇宙船から借りパクしていたのである。
ザラブ星の最新技術で作られた万能デバイスは多種多様な機能を持ち、その中には読心や精神操作に対する耐性を付与する機能もあったのだ。
そしてこれは変身後も有効……つまり、身長数十メートルはあるザラブ星人をすっぽり覆えるほどの障壁を張ることができる。
その機能を使って避難する観光客を正気に戻し、急いで海岸から離れさせたのだ。*2
「とはいえこのデバイスは私用の1つきり、フォスに貸してしまったら今度は私が足手まといになってしまう……」
「? お姉ちゃんがやっつけちゃだめなの?」
「え゛っ、いや、そのぉ……このエネルギーへの対策ができたとしても3対1は厳しいといいますか、何と言いますか……」
(言いたい!テレパシー経由で見た感じあの3匹に私が突っ込んでいったら瞬殺だって言いたい!それに『もう一つの理由』もありますし……!)
無論、ミユキに危険が迫れば秒で変身して立ち向かう覚悟はある。
が、別にゾーイは心の底から正義の味方というわけではなく、仲良くなった地球人が巻き込まれるのやイヤだから、というふわふわした理由でウルトラマンをやっているだけの元工作員だ。
無鉄砲さよりも『確実かつ安全に目的を遂げる』という思考の方が強い。
つまり、本質的に『臆病な性格』であるゾーイからすると、なんの勝機もなく突っ込んでいくようなマネは可能な限り避けたいわけで。*3
(普通に強いんですよあの三匹!?思考干渉能力に、破壊力抜群の光線技、おまけに三匹同時!下手をしなくてもキングジョー以上の強敵!)
巨体同士の戦いということもあって、海岸から避難したこの場所でも戦闘風景は見えている。
未だに本調子とは程遠いウルトラマンフォスに対し、3匹の怪獣は波状攻撃を仕掛けてきた。
次々と放たれる破壊光線を間一髪で避けてはいたものの、ついに一発が直撃。
その一発だけでウルトラマンフォスに多大なダメージが発生している時点で、タフさではウルトラマンフォスに大幅に劣るゾーイだったら下手すれば即死だ。
ホントのホントにいざというときまで根性と勇気を絞りだせないのが、彼女の長所であり短所でもあった。*4
「と、とにかくもう少し距離を取りましょう。ここも安全とは……ん?」
(あれ、今あの3匹こっち向いてません?)
これも完全な偶然だが、ウルトラマンフォスと三匹の怪獣の直線上に、避難した面々がいたのである。
ウルトラマンの背後に民間人がいてウルトラマンが回避行動できずに攻撃を食らう、よくあるパターンだ。
『ニ゛ャーッ!!』
「あっぶね!」
「ちょおーい!?!?」
そして当然、頭パッパラパーのパラッパラッパー状態なハヤトとフォスにそんな気遣いができるはずもない。
寧ろ放たれた光線を本能で回避できただけでも、現在のコンディションなら十分以上である。
とはいえ、フォスを通り過ぎた光線はゾーイ達のいる地区にまで届き、運悪くそこにあったビルを粉砕。
幸い周辺の人間もビルの住人も避難していたものの、結構な量のガラスや瓦礫が飛んでくる。
咄嗟にゾーイが半球状にバリアを展開、一行を包み込んだ。
「私がいなかったら死人出てましたよこれ?!わかってます?いや分かってませんでしたね!
本当に厄介ですねこの毒電波!アイツの頭にアルミホイルでもまいてきいましょうか!?」
「いや、そんな一部のアレな人が信じてる謎理論を実行されても……あ、バリアはありがとうございます」
テレパシーに集中していたコユキは咄嗟に避けるのが間に合わず、バリアが無ければ瓦礫が直撃していた可能性も高い。そう……。
「だ、大丈夫かケインーッ!?」
「オゥ……オオゥ……」
「……あれ!?ゾーイさんあっち(メトロン星人)は!?」
「あ、すいません。このバリア機能まだ使い慣れてないんです。多分穴があったんですね、失敗失敗」
「ゾーイお姉ちゃんこんなところでポンコツ発揮しなくていいんだよ!?」
頭部に瓦礫が直撃し、くるくると目を回してぶっ倒れているメトロン星人『ケイン』のように。
どうやらバリアの展開イメージを『巨大な手のひらで周囲を覆う』ようにしたせいで、『指の隙間』のように半球に穴が開いていたらしい。
その部分に丁度瓦礫が滑り込み、さらに丁度真下にいたケインの頭部に直撃。
ミユキが『わぁ、いたそぉ』と思わず言ってしまうほど大きなタンコブができており、ハチマキさんに介抱されていた。
「分かって来た……宇宙とは……ゲッターとは……」
「ケイン!それは多分わかっちゃイカンやつだぞ!?」
「どうしよう、ケインさん完全に目を回しちゃってるよ……昔のマンガみたいにくるくる星が回ってるもん」
「比喩表現じゃなくて本当に回ってますね……いや、ならば解決方法もハヤトの家で読んだマンガのソレのはず!」
え?とコユキとミユキが疑問の声を上げたが、時すでに遅し。
仰向けでくるくると目を回しているケインの頭部を見下ろす形で、ゾーイが仁王立ちする。
ブロンド爆乳水着美女が仰向けの自分を見下ろしてるという、地球人の男にとっては眼福極まる光景である。
が、メトロン星人な上に意識もハッキリしてないケインには何の影響もなく……。
「勢いよくナナメ45度ッ!!」
「へびゅんっ!!?」
「「「な、なにをするだァーっ!!?」」」
ゾーイの空手チョップがいい感じの角度でケインの頭部にブチ当たった。
それもこれも『古い機械を叩いて直す』シーンをハヤトの部屋にあったマンガで読んでしまっており、なるほど地球ではこうやるのか!と妙な学習をしてしまったせいである。
そもそも相手は地球人じゃなくてメトロン星人だし、機械じゃなくて生物だし、ザラブ星の医療技術は明らかに地球より上だろうし。
ありとあらゆる意味でツッコミ所満載の行動なのだが、読者諸君はしばらくこの小説の更新が無かったからといって、重要な要素を忘れてはいけない。
ザラブ星人ゾーイはこの小説でトップの天然ボケポンコツお姉さんである、と言う事を。
「よし!」「よし!じゃないんですよおバカ!」「あいったぁ!?」
満足げな表情で豊満な胸を張るゾーイに、ミユキちゃんのツッコミローキックがクリーンヒット。
スネを抑えてひいひいと跳ねまわっているゾーイを放置して、割と危ない速度でチョップが入ったケインに駆け寄る一同。
口(どこが口かよくわからないが)から『おぼぼぼぼぼ』とヤバげな声が漏れていたが、不意にカッ!と目を見開き。
「思い……出した!」
「何を?前世の記憶?」*5
「違いますよお嬢さん、そんなあるかどうかも分からないモノではなく……失っていた記憶を、です」
「う、失っていた記憶、って……」
(あれ、それってマズいのでは?)
スネを抑えて涙目になっていたゾーイだが、ミユキとケインの会話を聞いて若干顔色が青ざめる。
そも、ゾーイはケインの正体を『自分の上官と同じ、地球侵略のゲームに乗った4人の内の誰か』と予想していた。
下っ端であったゾーイは他の3人の宇宙人・宇宙怪獣の正体も知らされていなかったので、あくまで予想でしかなかったものの。
メトロン星人のような高い科学力を持つ宇宙人が偶然この時期に地球を訪れ、そして記憶喪失状態で遭難している……なんて楽観的な意見までは持っていなかったのである。
最初に考えていた『ウルトラマンフォスの援軍に向かわないもう一つの理由』がソレだ。
(このメトロン星人が本当に記憶喪失なのか、本当だとしても突然記憶が戻らない保証もない。
そんな状態でミユキ達と行動させるわけにはいかないとこちらに同行しましたが……!)
まさかこのタイミングで記憶が戻ってしまうなんて!と本人は戦慄しているが、
読者諸君はご存じの通り、ケインの記憶が戻った原因はゾーイのナナメ45度空手チョップなので10割自業自得である。
いつ暴れ出しても取り押さえられるよう、巨大化用の装置に手をかけたゾーイの前で、未だにふらふらする頭を軽く手で押さえながらケインは語り始める。
「そう、あれは今から数日ほど前……ザルドの失敗を見届けて、私に手番が回って来た時だった……」
それは一人のメトロン星人が、なんやかんやのピタゴラスイッチの果てに、海の家で焼きそばを焼くようになるまでの回想であった。
ルビコン3で傭兵やったりホグワーツに入学したりしてましたがひと段落したので投稿。
これからは週1~2投稿……できたらいいなー()