君は、このソラを飛べる。   作:ボンコッツ

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謀略の始まり

 

【某県某市 自衛隊駐屯地】

 

 

「しかし、有名になったもんだなぁ、四号も」

 

「『正義の巨人、ウルトラマン』……マスコミもいろんな見出しを考えるもんだ」

 

 

宇宙怪獣『ベムラー』の襲撃から数日が経過し、世間は夏真っ盛りの八月上旬。

 

そんな中、自衛隊駐屯地の食堂でカレーライスを食べながら談笑する自衛官が二人。

 

名を『真木 舜一(まき しゅんいち)』『倉島 剛(くらしま たけし)』

 

先日のフォスVS強化ベムラーの戦闘でフォスを援護した二人であった。

 

昼食休憩の時間に、今では新聞でもニュースでもSNSでも話題になった『あの巨人』の事を思い出す。

 

自衛隊内部でも銀の巨人……『ウルトラマン』への対処は紛糾している状態だ。

 

一号や三号*1と比べれば、明らかに二号や四号*2は人間に味方する動きを取っている。

 

とはいえ、自衛隊としてはあんな巨大生物の『善意』に期待するわけにもいかない。

 

本当を言うと、とっとと即応体制にして『次』に備えてほしいのが現場の人間の総意だが……。

 

 

「野党がイロイロ言ってくるだろうなぁ、絶対に」

 

「軍靴の音がー、とか言われるな、確実に」

 

 

だが、仮に自衛隊の総力を結集したとして、この中では比較的マシと思われている『一号(ベムラー)』ですら討伐は困難*3だという結論が出つつあった。

 

四号……フォスの攻撃によって爆散したベムラーの肉体だが、その一部が遺留物として現地に残っていたのだ。

 

当然、細心の注意を払ってそれらを採取。自衛隊とも縁の深い大学等で分析したのだが……。

 

 

「タンパク質があることから生物であることは確か。

 だが、未知の分子配列に加えて、現在地球上で確認されてるどんな合金よりも強固。

 あらゆる硬度基準で見ても、戦闘機や戦車に搭載できる兵器での有効打は困難、か」

 

「核弾頭ならワンチャンあるみたいだが、飛行速度も推定でマッハ4~5。

 現行のジェット戦闘機が平均マッハ2って所だ。なのにあの質量で高速飛行。

 核配備されてない日本の兵器で有効打を与えられるモノは限られるぞ」

 

 

バンカーバスターでも叩き込めれば別だが、アレは元々対地用の兵器。

 

マッハの速度で動き回るモノにピンポイントで当てられるようなモノではない。

 

となると、現状自衛隊の打てる手は……。

 

 

「災害時の避難誘導を参考に、次の巨大生物が現れた時の対策をするしかない」

 

「後手後手ときたか。イヤになるな、毎度の負け戦は」

 

「天災みたいなものだろう?人類が勝てるのは遠い未来っていうのは一緒さ。

 やれることをやるしかない。自衛隊(おれたち)はそういう立場だろ?」

 

「……お前の退役申請が保留された事に関しては?」

 

「駐屯司令はスネを机の角にぶつけてぶっ倒れろ」

 

 

例の巨大生物出現から、自衛隊内部では退役志願者がちらほら出始めているのだ。

 

真木に関しても、元々退役の意思を伝えていたのに『国家の有事だから』ということで退役届を保留されている。

 

職業選択の自由もクソもないな、と愚痴りながら、今日のメニューであるカレーライスをまとめてかっこんだ。

 

 

「俺はもう少し食べるけど、お前はどうする?」

 

「そうだな……時間はまだあるし、売店でちょっと買い物でも……」

 

 

その時、自衛隊駐屯地に鳴り響くサイレン。

 

緊急事態を知らせるソレに、食堂にいた全員が一斉に立ち上がる。

 

訓練で染みついた動きのままに、各々がやるべきことに最短で動いた。

 

真木と倉島もまた、直属の上官から指示を受けるために疾走。

 

即応体制を整えつつ、『何が起きたのか』『何をするべきなのか』を確認したのだが……。

 

 

「きょ、巨大生物二号と、さらに巨大生物『五号』が出現!?」

 

「グラウンド・ゼロって気分だな……」

 

 

しょっぱなから、自衛隊に対処できる問題を軽々超えたモノが飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【某地方都市郊外 山林地帯】

 

 

『念には念を入れて生命反応を探りましたが、やはりベムラーは失敗しましたか。

 まあ、ヤツの小さな脳みそでは当然ですが……』

 

ハヤト達の住む街にある山林地帯、開発の進んでいる区画よりだいぶ奥へと踏み込んだ場所で、新たな悪意の芽が育ちつつあった。

 

光学迷彩によって外部からは視認できなくなった宇宙船の中で、一人の『異形』がほくそ笑む。

 

首が無い銀色の頭部、どこか樹木を連想させる皮膚に包まれた人型の肉体。

 

【ザラブ星人】……それがこの宇宙人の種族名だ。

 

第8銀河系にあるザラブ星出身の宇宙人であり、宇宙の各地で文明のある星を滅ぼして回っている【宇宙工作員】の一人だ。

 

優れた知性と科学力を持ち、様々な特殊能力も備えた凶悪な宇宙人である。

 

個体名【ソーイ】は、己の考えた恐ろしい計画を回想した。

 

 

(あのM78星雲人……地球人がいうところの『ウルトラマン』。

 奴が同一個体ということを知っているのは、我々と本人だけ。

 そして、あの不完全な融合体にしかなれないということは……)

 

 

フォスの放つスペシウムの波長を解析することで、最初に現れた『完全体』と、ベムラーを倒した『不完全体』が同一個体だと断定。

 

エネルギー量の減少や各種データから、現在は不完全な形態でしか戦えないと推察。

 

この『2つの姿が存在するが、地球人は同一個体と知らない』ことを最大限利用した計画を思いついたのだ。

 

 

(まず、最初に現れた時の姿……地球人の言う『二号(完全体)』の姿に化ける。

 その姿で私の持ち込んだ旧式の侵略兵器を破壊し、いかにも『正義の味方』だと思わせる!

 次に『四号』の姿に変身し、街を破壊することで地球人とウルトラマンの連携を断つ!

 ウルトラマンの名声をそっくりそのまま頂きつつ、ヤツを孤立無援にする!)

 

 

ザラブ星人の特殊能力はいくつかあるが、その中でも最も代表的なのは『変身能力』だ。

 

『原作』の過去に現れたザラブ星人も、それを利用してウルトラマンに化け、地球人とウルトラマンの信頼関係を破壊する作戦を取ったのである。

 

ザラブ星人ゾーイはそれに加えて、今までウルトラマンの作り上げた『正義の味方』というイメージをそっくり奪う作戦まで立てていたのだ。

 

ゾーイにとっての目的は『ゲームに勝つこと』。そして、ゲームの勝利条件は『最も広い範囲を征服する事』。

 

暴力で押さえつけるだけではなく、友好的になった国を裏から支配する布石も打っておけば、

 

表(侵略)と裏(謀略)の両方から領土を増やす事ができるのだ。

 

 

(さて、このゲームには時間制限もあります。作戦はサクサクと進めねば。

 この作戦を成功させれば、私を侮っていた母星の者達を見返せるのだから)

 

 

……ザラブ星人ゾーイは、ザラブ星人としてはかなり若い個体である。

 

宇宙工作員としても新人に毛が生えた程度のキャリアであり、地球侵略についてもザラブ星からの命令でやってきただけだ。

 

他の宇宙人や宇宙怪獣も目を付けている星ということで、最悪の場合、地球をめぐっての『四つ巴』になることをザラブ星は危惧。

 

ベテランの工作員を直接送り込むのではなく、ベテランはあくまでバックアップに徹し、

 

評価がイマイチな新人を最前線へ送り込むことで、最悪の場合は『損切り』できるようにしたのだ。

 

だからこそ、ザラブ星人ゾーイは『己を侮った連中を見返してやる!』とモチベーションが高いのである。

 

 

(なにより、いざという時の『切り札』も作戦本部から預けられている。失敗するはずがない!

 さあ、私の栄光の第一歩が、このマッチポンプ作戦から始まるのだ!)

 

 

ザラブ星人の特殊能力の1つである『透明化』を使い、乗って来た宇宙船から少し離れた山中に気づかれないよう移動。

 

念には念を入れて、人間に近いサイズのまま一度『二号』に変身し、それから透明化を解除した。

 

何処からともなく手鏡を取り出したゾーイは、まるでお色直しでもするかのようにそれを覗き込み。

 

 

(うんうん、よし。しっかり化けられてますね!これならば地球人も見破れないでしょう)

 

 

事実、ザラブ星人の中でも変身能力に長ける個体だったようで、ゾーイの変身体とフォスの完全体は瓜二つだ。

 

少なくとも、これを外見で偽物だと判断できる者は地球人にいないだろう。*4

 

作戦の成功を確信すると、ニヤリと笑みを浮かべながら巨大化能力を使用した。

 

 

『ジェアッ!!(……でしたよね?掛け声は)』

 

 

山林の中に出現した『偽ウルトラマン』が、いつもより若干低い声で掛け声を発しつつ着地する。

 

あとは破壊しても惜しくない旧式の侵略兵器を起動し、それを撃破することで己を本物の『二号』とアピール。

 

しばらくしたら『四号』の姿で破壊工作を行い、正義の二号と悪の四号という構図に持ち込むのだ。

 

そんな計画図を頭の中で描きながら、一歩だけ前に踏み出し……。

 

 

さくっ、という音と共に、ザラブ星人ゾーイの足の裏に何かが突き刺さった。

 

 

『ジェアアアアァアアァァッ!!?!?』

(あいっだあああああぁあああぁ!?)

 

 

右足の裏をおさえてぴょんぴょんと跳ねまわり、ひー、ひー!と過呼吸になりながら痛みを必死に堪える。

 

人間で例えるなら、画鋲とかレゴブロックとかを思いっきり素足で踏みつけたようなモノだ。

 

そりゃ不意打ちでカマされれば絶叫もする激痛である。

 

外見は変わらないが、実際は人間で言う涙目状態になりながら、どうにかこうにか体制を立直す。

 

 

(作戦の一歩目からなんですか!?地球人の建築物程度なら踏みつぶせるはずでしょう!?)

 

 

一体何を踏んづけたのかと地面を見てみれば、地面から『トゲ』のようなモノが生えている。

 

よくよくみるとそのトゲは『ドリル』のように回転しており、しかもタケノコも真っ青な速度で成長している。

 

そして、その『トゲのようなドリル』を中心にズゴゴゴゴゴ……と地響きが伝わって来た直後。

 

爆発するような音と共に、謎の巨体が地面から飛び出してきた。

 

 

『ギョアアアアアァアアアァァァアアァアァ!!』

 

『…………えっ。 えっ?』

 

 

……ところで、諸君らはフォスが何のために自分の力を子孫に残したのか、覚えておいでだろうか。

 

彼は『将来地球に迷い込んできた巨大生物』や『地球に眠っている原生生物』に対処するために、あの力を残した。

 

つまりこの世界の地球もまた、地下深くや海底の底に『怪獣』と言っていい生物が眠っている。

 

 

『ギュアアアアアァァァァ!!』

 

『ぎゃあああああああああ!?』

 

 

ドリル型の頭部を回転させ、ゾーイ目掛けて突き出し追い回す『新たな巨大生物』。

 

その名は巨大生物『第五号』……もとい、『ウラン怪獣ガボラ』

 

ザラブ星人ゾーイの巨体が着地する振動を感知し、縄張りを犯されたと勘違いして飛び出してきたのだった。*5

 

 

 

*1
ベムラーと強化ベムラーの事。外見が違いすぎて別個体と思われている。

*2
フォスの完全体と不完全体の事。こちらも別個体と思われている。

*3
不可能ではない。が、強化ベムラーになられると米軍呼んでこい案件になる。

*4
もちろん、当人であるハヤトとコユキを除く。

*5
人間の重機程度なら大して反応しないため、50m近い巨体である巨大化状態のザラブ星人ゾーイがその重量でうっかり縄張りの真上に踏み込まなければ、目覚めるのはもっとずっと先であった。





謀略の始まり(上手く行くとは言ってない)
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