君は、このソラを飛べる。   作:ボンコッツ

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数奇な出会い

 

「町内会のアルバイトの募集に、こんな人数が参加するとは……。

 ウチなんてアルバイト募集の張り紙張ってても一人も来ないぞ」

 

「あはは……まあ、今回は色々事情もあるからね」

 

 

八月上旬に突入し、うだるような暑さというこの国の風物詩が襲い掛かって来たある夏の日。

 

ハヤトとコユキは、町内会が募集していたアルバイトに応募し、手配されたマイクロバスに乗って麓の山道を走っていた。

 

毎年この季節になると、このあたり一帯ではかなり大規模な花火大会が開催される。

 

始まったのが江戸時代だか明治時代だか二人はすっかり忘れてしまったが、元々祭りの歴史などに興味はない。

 

目当ては河原沿いに並んでいる屋台の列とか、そこから少し登った所にある広場で見る花火とか。

 

今回申し込んだように、バイト代に加えて祭りの屋台で使えるクーポンが出る町内会のアルバイトであるとか。

 

 

((薄暗くなった場所で二人っきりの時のイイ雰囲気とか……!!))

 

 

二人そろって異性との青春を楽しんだ経験なんて皆無同士なので、こういう機会がくるとウブなネンネじみた妄想がよぎるのもまあ、仕方ない。

 

両者ともにこのアルバイトに参加しているのだ、夏祭りに出るのもほとんど確定したようなもの。

 

アルバイトが終わり、解散するタイミングでいい感じに声をかけよう!とお互いに考えているが……。

 

 

((でも断られたらどうしよう!!))

 

 

まったく同時に同じような方向で不安になっているあたり、無駄にお似合いの少年少女である。

 

お互い片思い同士、つまりは両想いな関係なのだが、それはそれとして互いに経験値少なすぎて中々関係が進展しないタイプである。

 

後方保護者ヅラしてるフォス曰く『これはこれで甘酸っぱいのでよし』とのこと。

 

子持ち通り越して子孫持ちのM78星雲人は格が違った。

 

そして、こういう時に一歩踏み出すのが苦手な面々が取る選択肢は1つ。

 

 

((よし、とりあえずバイトが終わるまではバイトに集中しよう!))

 

 

秘儀・先延ばしである。後ろに浮いてるフォスが『あちゃー……』って感じに額を抑えているが、二人からは見えていない。

 

ともあれ、今日のバイトのために応募してきた地元の高校生や大学生を乗せたマイクロバスが、祭りの予定地である河原に到着する。

 

この川の向こう側で花火が打ち上げられ、こちら側の岸からそれを見学する、という構造だ。

 

川からある程度離れた場所には屋台が並ぶ予定で、より花火をじっくり見たい人は整備された山道を登った先にある広場まで行く者もいる。

 

今回のアルバイトは、屋台の設置に必要な資材等の荷物運びと……。

 

 

「じゃ、俺は荷物運びの方に行くよ」

 

「うん。それじゃあ、お昼ごはんの時に合流しようね。私も美雪(ミユキ)と一緒に広場に行ってるから」

 

 

毎年この時期になると、こちらも町内会主催で小学生向けの『こども自然教室』が行われているのだ。

 

主な引率は学校の教師や町内会の大人が行うのだが、参加者が上限近い年等はアルバイトを追加して子どもたちに目が届くようにするのである。

 

川遊びにちょっとしたハイキング、あとは広場でお弁当を食べて、レクリエーションなどを楽しんで帰るだけ。

 

そんなシンプル極まる自然教室だが、このあたりの小学生にとっては貴重な夏の思い出だ。

 

え、今時は家でス〇ッチでスマ〇ラやポケ〇ンやってる子供ばかりだろって?

 

知らん、そんなことは俺の管轄外だ。

 

というわけで、駐車場で一端別れ、ハヤトの方は資材置き場と屋台設営予定地を無限ループする仕事に取り掛かり。

 

コユキの方は、自分が入院してからふさぎ込みがちな妹の『ミユキ』を連れて、子供でも泳げる河原の方へ。

 

他のマイクロバスから降りて来た子供たちが、即席の着替えスペースで水着に着替え、河原できゃあきゃあと騒いでいる。

 

コユキの仕事は、飲み物等が入ったクーラーボックスの管理と、終った後に使うタオルなどの準備。

 

そして当然、子供たちから目を離さず、何かあったらすぐに担当の大人に声をかけることだ。

 

 

(このあたりは深くないけど、子供たちが遠くに行っちゃわないようみてないとね)

 

 

何より……と視線を横に向ける。

 

水着に着替えることもせず、水切りで遊ぶ子供にも合流せず、子供たちにイマイチ混じり切れずにいる妹を見やる。

 

河原のすみっこにある岩の上に座って、ぼやっと子供たちを眺めているのだ。

 

元々大人しい子ではあったが、コユキが入院した日からふさぎ込む事が増え始めた。

 

何か理由があるのかと問いかけてみても、要領を得ない答えしか返ってこない。

 

だからこそこうして自然教室に誘い。普段と違う空気でそれとなく聞き出してみようと思ったのだが……。

 

 

(うう、姉妹喧嘩もしたことないから、こういうときどうしたらいいかわかんない!

 で、でもなんとかしなきゃ。私はお姉ちゃんなんだから!)

 

 

良くも悪くも姉妹揃って大人しい性格なのもあり、今まで大きなケンカの経験もなかった。

 

どちらも両親からは『手間のかからないよいこ』とみられているフシすらある。

 

それでも何かしなきゃ!とどうにかこうにか腹を括り、バッと顔を上げ……。

 

次の瞬間、据わっていたレジャー用のイスから転げ落ちるほどに地面が揺れた。

 

 

「きゃっ!?え、な、なに!?」

 

 

周囲もにわかに騒がしくなり、教師や係員が川にいる子供たちを慌てて呼び戻す。

 

地震?とスマートフォンで地震速報を見ようとしたが、その前に今の衝撃の正体が明らかになった。

 

子どもたちの一人が気付いたのだろう、河原からも見える遠くの野山を指さす。

 

それに釣られるように、周囲にいた人々がその方向を向いた。

 

 

「あ、ウルトラマンだ!」

 

「え……えぇ~~~!?」

 

 

まさかと思いながらその方向に視線を向けたコユキが見たのは、フォスの『完全体』そっくりな巨人。

 

頭部がドリルのようになっている四足歩行の怪獣も現れ、突きかかってくる怪獣の攻撃を必死に避けている。

 

が、無邪気に喜んでいる子供たちや、しばしポカンとした後にいそいでマイクロバスを使って非難する準備を整えている大人たちをヨソに。

 

コユクの頭の中は「なんで?!」でいっぱいであった。

 

 

(あれが『不完全体』ならわかるよ!?ハヤト君が慌てて変身したって事だし!

 だけど、ハヤト君は『完全体』にはなれないはず!」フォスがそう言ってたもん!

 じゃあ、あの巨人は何!?誰が変身して……いや、それよりも!)

 

 

今のコユキは、フォスとの融合を解除された一般人だ。

 

エネルギー体になったフォスと話す力は残っているが、変身もできないし、戦う力もない。

 

すぐに妹を保護して逃げないと……と思い、妹であるミユキが座っていた岩に目を向けるのだが。

 

 

「……え、あれ!?ミユキ!?」

 

 

いつのまにか、ミユキの姿は何処にも見当たらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、盛大な不運でウラン怪獣ガボラと遭遇するハメになったザラブ星人ゾーイだが。

 

 

『いい加減ケツを追い回すのをやめろドリル頭!

 なんでそのドリル頭で私のケツを執拗に狙ってくるんだ!?

 私のヒップラインがそんなに魅力的か!?ありがとうございます!死ね!*1

 

 

未だにガボラとの追いかけっこが続いていた。

 

偽ウルトラマンの姿のまま、必死に突き出されるドリルを避けつつ逃げ回る。

 

元々ザラブ星人は謀略向きの種族、直接戦闘までとんでもなく強いというわけではない。

 

優れた科学力と頭脳、様々な特殊能力特殊能力を持つが、戦闘に特化した種族には敵わないのだ。

 

 

『あ、頭に来た……まずはお前から躾けてあげましょう!』

 

 

とはいえ、いい加減追い回されて頭に血が上ったのか、ドリルを避けて大きく跳躍。

 

そのまま飛行能力を使って上を取り、手から放つ光弾でガボラの背中を攻撃する。*2

 

変身前の能力を変身後も使えるように微調整し、いかにもM78星雲人の使う必殺技のように見せかけているのだ。

 

 

『ギュルアアアアァアアァ!?』

 

 

背中に大きなダメージを受けたガボラが、思わず頭部を覆っているドリル型の殻を展開。

 

花のように開いた空の中から、怪獣らしい頭部が現れ、絶叫。

 

ガボラの尻尾側に着地したゾーイだが、もう一発!と両手を向けた瞬間。

 

 

『ギャルアッ!!』

 

『ごはぁ!?か、顔は、顔はやめろ!』

 

 

ガボラの振り回した尻尾が頭部を直撃。

 

横に一回転させられて、そのまま地面に倒れこむ。

 

痛みに暴れていたガボラにとっては、まさしく偶然が産んだ千載一遇。

 

ゾーイの方に振り向き、口から必殺の『放射能光線』*3を放とうとする。

 

 

『さ、させるか!このドリル頭!』

 

『ギュアッ!?』

 

 

ほとんど咄嗟と言っても良かった。

 

なにやらヤバそうな光を貯めこみ始めたガボラの口目掛け、ゾーイは己の右手を思いっきり突っ込む。

 

その状態で、先ほども使った光弾を使用。ガボラの口の中で数回の爆発が発生した。

 

 

『ギュガアアアアアァアアァ!?!?』

 

『ハア、ハアッ……お、おととい来なさい!』

 

 

余りの痛みにもんどりうって転げ落ちたガボラは、おびえたようにゾーイに背を向ける。

 

素早く頭部のドリルを再展開し、5秒もする頃には地中深く潜ってしまっていた。

 

それこそ、人類の科学技術ではどこまで深く潜ったかもわからないほど深い地中に。

 

 

『と、とりあえず、本物のウルトラマンが来る前に撤収しなければ。

 今の私では逃げ延びる事も難しい……あの野良怪獣め……』

 

 

一方のゾーイも、ガボラとの戦闘で体力も気力も使い切ってしまっていた。

 

とにかく一刻も早くこの場を離れたいが、透明化や飛行能力をバンバン使えるほどのスタミナも残っていない。

 

なので潜伏を重視し、肉体を人間サイズに縮小しつつ、こっそりと飛行能力でその場を離れる。

 

後で宇宙船に戻って回復装置を使おう……そんな事を想いながら、山林地帯から川を下り、幾分下流まで降りて来た。

 

 

『はあ、はあ……へ、変身』

 

 

万が一地球人に見つかっても紛れ込めるように、偽ウルトラマンの姿から地球人に近い姿に変身。

 

ゾーイの性別である『女性』に合わせ、宇宙船で収集したデータから作り上げた地球人のモデルを被せる。

 

ブロンドの髪に、豊満な体。顔立ちは控え目に言っても美女のソレだが、衣服はジャージ。*4

 

……参考にしたのが大量のハリウッド映画やグラビア雑誌だったせいで、完全に西洋人種の外見になってしまっている。

 

衣服に関しては、この周辺の文化に溶け込むためにポピュラーなモノを選択したらしいが……そのせいでアンバランスさが余計に目立つ。

 

 

(とりあえずどこかで休息を取って、最低限回復したら宇宙船に……)

 

「……お姉さん、ウルトラマン?」

 

「……え?は!?」

 

 

河原の茂みに隠れて偽ウルトラマンから地球人に変身したゾーイの後ろから、誰かが声をかけてきた。

 

間抜けな声を出しながら振り向くと、河原の岩陰に隠れていた小柄な少女が一人。

 

色々ありすぎて周囲の警戒を疎かにしていたせいで、近くに潜んでいたのに気づかなかったのだ。

 

 

……これが、ザラブ星人『ゾーイ』と、地球人『佐藤 美雪』の数奇な出会いである。

 

 

*1
ちなみにテレパシーのような方法でわめいているため、人間には聞こえない。

*2
ミサイルやロケット弾らしい。つまりエネルギー攻撃に見せかけた科学武器である。

*3
文字通り、大量の放射能を含んだ光線。

*4
FGOの『謎のヒロインXX』に近い。ただし衣服は上下もっさりジャージ。 え、なんで金髪美女なのかって?ババリューさんリスペクトだから。

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