side火野有美
夏休みになってから数日、宿題は瞬殺したので…私は学校外に行こうと思う。方法はポイントでその権利を買収する、それだけらしい。
「ホントにそれでいいの?」
情報源は千早だから信頼できるけど、一応確認する。
「ああ、有美は絶対行きたがるという確信があったからな。予め訊いておいた。誰か誘うのか?」
本来なら私と千早、それと翔と帆波の4人で行く予定だったけど…そうだ。
「綾小路を誘うのはどうかしら?アイツ文字通り世間知らずだし」
情勢とかは普通に知ってそうだけど。
「そうなると坂柳も誘うべきだな。ついでに雪と志郎も…いっそのこと身内全員で行くか?」
「そうしましょ…で、1人どれぐらい支払えばいいの?」
「1日の外出につき3万ppだ。8人で5日出るつもりだから120万の出費になる」
結構高いわね…でも私達の資金ではどうってことない。
綾小路に連絡しよっと。
プルルル…
『どうしちゃ、ひにょ』
………はい?
「何を
『表情筋マッサージだ…笑顔の練習をしてたら痛くなったからな』
あー、なるほど…そういえば最近してるって有栖から聞いたわ。
「実は学校外に数日行こうと思ってるんだけど、アンタも来る?」
『外に?なんでだ?』
「ちょっと旅行したり、実家に帰ったりするわ。メンバーは身内だけよ」
『…旅行か。写真でしか見たことがないからな、面白そうだ。オレも行く』
よし、勧誘成功ね。
「じゃあ日時は後で連絡するから、5日分の服を用意しといて」
一応学校外に行く際には制服で敷地を出入りするというルールがあるけどね。
「行く気みたいだな」
「そうね。人生初めての旅行だし、相当楽しみだと思うわよ?」
さて、他のヤツらにも連絡してと。
ーーーーー
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ーー
ー
当日、私達は外出する権利を買うことで貰った認証カード…と荷物を持って校門まで来た。
「カードをこちらにスキャンして下さい」
受付の人が言う通りにすると、ピッという音と共に『認証完了 期限:5日』という表示が出た。これで晴れて校門を出られるワケね。
校門を出る。うーん…3年間の拘束期間を経て自由になった身ならばさぞ感慨深いものがあると思うけど、私達の場合は4ヶ月も経たずに出てるからね。特に何とも思わないわ、精々久しぶりに見た光景だな〜としか。
「それで、オレ達はどこに向かうんだ?」
綾小路に質問される。それを見た帆波は少し呆れた顔をする。
「綾小路君に言ってなかったの?」
「まぁ、ね。とりあえず私の"実家"に帰るわ」
「そうか「おいまて有美、お前の実家じゃねぇだろ?」…そうなのか?」
千早にツッコまれた。なんで?何かおかしなことでもあった?
「有美が言ってる"実家"ってのは…
"俺の実家"なんだよ!」
「………???」
そう、つまり千早の家だ。でも実家なのは間違ってないわよね?実質私のでもあると思うんだけど。
綾小路は宇宙猫状態になっている。おーい戻って来い。
「有美さん…流石にそれは違いますよ。いくら貴女と七隈くんが付き合ってるとはいえ、そこは第2の実家などとは言えども実家そのものではないですよ?」
「それに君の実家には弟がいるんだろ?会いに行かないと寂しくなるんじゃないか?」
有栖が諭し、それに志郎が同調する。
「…はぁ、そうね。千早の実家に行くわ」
「そ、そうか」
どうやら綾小路は宇宙猫から解放されたようで、元の無表情に戻っている。
…あ、そうだ。
「翔、アイツに連絡とってくれる?」
「アイツ?…ああ、アイツか。テメェがやれ「やらないと帆波にアンタの秘密を…」…チッ、わーったよ」スッ
翔は面倒くさそうにしながら学校用じゃない方のスマホを出した。よし(現場猫感)
「アイツって誰のことです?」
有栖が訊いてきた。あら、会ったことあるハズだけど。
「ヤクザ」
こう言えば分かるでしょ。
「…なるほど、彼ですか」
「火野、お前ヤクザと関わってたのか?」
「人づてにね。ヤクザにしては余りにもいい奴らだけど」
なんでヤクザやってるか分からないくらいには…っと。
私はカバンを漁り、何かを取り出す。
「綾小路、はい」スッ
渡したのは…黒髪のカツラと伊達眼鏡とカラコンだ。変装用である。
「私はホワイトルームのヤツらに目を付けられてるだろうし、アンタがいると分かったら確実に手を出してくるから…それで一旦変装して」
「…分かった」サッ
綾小路はカツラをかぶり、カラコンをつけ、眼鏡をかける。うーん…
「別人とまではいかないけどパッと見分からないね」
帆波が私の意見を代弁した。…でも目の色が変わってる時点で印象はかなり違うわね。普段ハイライトがほとんどないし。髪型もセンター分けじゃなくなってる。
「………(変装している清隆くんもいいですね)」じー
……見ないふりをしておくわ。
ー
ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー
バスに乗り、電車に乗り、数時間後。私たちは千早の実家に着いた。途中スパイらしき人がいたけど、全力で走ったりして撒いた…翔がアイツに連絡したから、もう追いかけられることはないだろう。
ピンポーン……カチッ
『はーい……ええっ!?』
インターホン越しに女子の驚いたような声が聞こえる。
「よっ、4ヶ月ぶり。開けてくれる?」
『え、あ、はい!』ピッ
ガチャッ
中から黒髪ロングの女の子が出てきた。眼鏡を掛けている。
「久しぶりだな、千代」
この子は千代、千早の妹で中二だ。
「久しぶり兄貴…って、どうしているの!?しかも友達もいるし…もしかして!」
何かに気付いたようだ。
「全員揃って退学したの!?」
「んなワケあるかぁ!?」
威勢のいいボケに対して威勢のいいツッコミがぶち込まれた。この兄妹仲良いわね〜。でもこのまま続けられてもアレだし、止めよう。
「2人とも落ち着いて。…上がっていいかしら?」
「あ、どうぞ…」
スタスタ
家に上がってリビングまで行き、各々がソファーに座る。
「飲み物とかいります?」
「麦茶で」
「コーラ」
『水』
「ミルクティーで」
「炭酸水」
「いちごオレある?」
上から順に私、千早、綾小路と志郎と雪、有栖、翔、帆波だ。…恐らく全部あるわね。
「分かりましたー」スッ
ガチャッ、コポコポ、コトン。
「どうぞ。…それで?どうやって戻って来たの、兄貴」
「それはな…」
ー説明中ー
「なるほど、ポイントで出る権利を買ったと。凄いですね、高育は」
ある程度割愛しながら説明すると、千代は納得してくれたようだ。
「ええ、流石就職率100%の学校…とは思いました」
頷きながら有栖が言う…意味深な言い方するわね。
「所で、これから何かするんですか?」
千代が私の方を見て訊く。まぁ隠す必要もないし言うわ。
「一旦私の家で有太に会ってから、アイツ…"みずき"に会いに行くわ」
「ふーん」
興味なさそうね、自分から訊いてきたクセに…まぁいいわ。
「じゃ、ちょっと有太に会ってくる。アンタ達はココで待ってる?」ガタッ
「そうするよ、移動で少し疲れたし」
ぐてっとする帆波。
「テメェの弟なんざに興味はねェ」
いつも通り口が悪い翔。
などなど、とりあえず待っておくようだ。
「20分ぐらいで帰ってくるわ」
有太には…そうね、コレを渡そうかしら。とある物を持って、私は千早の家を出た。
文字数は少なめですが、ちょうど良かったのでここで区切ります。
次回もよろしくおねがいします。
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