…元からですね。
side火野有美
自分の部屋から有太の所に戻ったタイミングで、有栖からメッセージが来た。
『水村みずき君が来ました』
自分から来たの!?と思いながら有太と別れを済ませ、千早の家に戻る…鍵は開いたままだった。
「施錠しなさいよ千代…ん?」
ガヤガヤ
廊下の向こうが騒がしい…確実にいるわね。
…あ、そうだ。いつものアレをやろう。私はすっと息を吸って、大声で言った。
「最初はグー!」
途端に、騒がしさが消える。
「ジャンケン─」ガチャッ
勢いよく部屋の扉を開けた先には、見覚えのある金髪がいた。みずきだ。
「いっ!?」バッ
みずきは私がやろうとしている事に気付いたのか、顔面を腕でガードしている。狙い易い的をありがとね!!!
「ドーン!」
…ドゴォ!
みずきの両腕に右ストレートをお見舞いした。
「痛え!?」ドサッ
「お久、みずき」
これが私の彼への挨拶だ。期間を置いてから会う度にやっている。
「姉御、久しぶりだな…って痛えよ!?」
ノリツッコミ乙。
「半年振りに見たな、ソレ」
翔から呆れ顔でそう言われる。まぁ、仲良いとはいえ滅多にやる事じゃないしね?
それは置いといて。
「わざわざ自分で来たの?翔が送った時間までまだあるでしょ?」
一時間弱程あるハズだ。
「俺が会いたくてたまンねぇんだよ、だから直で来てやったぜ」
私に会いたくてたまらない?ふーん…
「何よソレ、新手の告白?私は千早がいるからね、ごめんなさい」
「違ぇよ!?」
みずきを弄るの楽しいわね。
「有美、そこまでにしろ。本題に入りな」
「それもそうね、丁度ココに綾小路とかがいるし」
「?」
綾小路が『オレ?』と言うかのように自分を指差す。
「みずきと会って話したかった事は、ホワイトルームの内部や外部の情報…そして潰す際の経路などについてよ」
「なるほど、だからオレか」
納得した表情の綾小路。両隣にいる志郎と雪は僅かに顔を顰めていた。
「清隆サンには俺達が考察する経路が実行可能なのか、自身の経験から出来る限り指摘して欲しいんだ…因みに、襲撃時期は約2年後を予定してる」
「2年か…少なくとも内部構造が変わることはあまりないだろうな」
それは良かったわ、仮に変わるなら時期を早める必要があるもの。
「まず、ホワイトルームの正確な位置だ。東京の○○山の奥地にある事は特定で分かってるが、面積がどうしても分からねぇ」
住所を特定するだけでも千早と氷華組の情報部が協力して三日三晩位置情報をハッキングし続けてやっと割り出せるレベルだ、相当厳重なセキュリティを配備している。
本当にクソだけど政府関連の機関だし、やはりと言った所だろう。
「そこにいるチビ柳さんに訊いても知らないだろうし「みずき?」…へいへい」
流石にこのタイミングで弄るのは辞めて欲しい。
「コホン。…それで、綾小路。詳しく説明出来るかしら?」
綾小路は少し考えた後、返答した。
「出来るぞ。紙をくれ、図で説明する」
「紙ね…あった、はい」スッ
紙を渡すと、綾小路は近くに置いてあったペンを持って素早く建物の外観や内部の構造を事細かに描き始めた。
「………ッ!」
心なしか雪が小刻みに震えている。図面を見てトラウマを想起してしまったのだろう…しかしそこで綾小路は空いてる手で雪の頭を撫でた。
「トラウマを刺激してるようなら離れてもいいぞ?」
「あ、えっと…うん」サッ
頭を撫でられるか絵を視界から離すかを天秤な掛けた結果、後者が勝ったようだ…少々名残惜しそうな顔をしてるのはさておき。
「………」
私はふと、外に数人分の気配を感じた。殺意は感じないので恐らく氷華組の組員だろう。みずきのガードマンかしら?
そう考えている間もペンは止まらず、徐々にホワイトルームの内部が写し出される。
「おお…」
「こりゃ、たまげたなぁ…まるで印刷物じゃねぇか」
千早とみずきが図を見て感嘆の声を上げる。私も綾小路の画力と記憶力に感心していた。
「図に表してある通り、面積は○○ヘクタールで出入り口は3つ…全て警備員が配置され、監視カメラも至る所に設置されている。侵入するとしたらカメラの映像を差し替えた上で警備員を気付かれる前に無力化する必要がある」
「スパイ映画のような戦略だな」
「そうなるのは必然よ、物理的にソレ以外出来ないんだから」
「確かに」
綾小路は次に内装を指差し、説明する。
「奥にある数部屋が実験室…ホワイトルーム生が人生の大半を過ごす場所だ。ココで例のカリキュラムを受け、人工的な天才か廃人かのどちらかになる」
天才になったとしても綾小路のようにほぼ無感情になるんだから…倫理観を全部捨てたようなカリキュラムね。というか成功例が綾小路しかいない。他全員が廃人またはそれに近しい状態だ…あ"あ"反吐が出る。
「実験室までの経路も全部監視や警備員付きだろ?」
「あぁ、内容が内容故に脱走者は1人も出せないからな」
「なら潜入は出来ても子供達を逃がす事は出来ないな……」
「…1つ、考えがあるわ」
『?』
全員の視線が私に向く。
「目的としてはホワイトルームを『潰す』こと…だから、潜入そのものはする必要ないんじゃないかしら?」
「…どういう事だ?」
「例えば──」
ーーー
私が作戦を伝えると、『有美らしい』と言うような表情をされた。まぁ私らしくはあるわね、思考回路的に。
「じゃあ一旦姉御の作戦を元にする…って事でいいのか?異論は?」
静寂…異論はないようだ。
「なら、話はここまでだな」
ドサッ
肩の力を抜く…空気が一気に軽くなった。ずっと黙ってた帆波や有栖は気を休めるように体勢を崩した。
「ハァ…頭を使うのはガラじゃないわね」
「嘘付け、ちょいちょい頭を使いつつパワーで突っ込むのが姉御の強みだろ?」
「うっさい…」
頭を使うとパワーで突っ込む、既に矛盾してないかしら?
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
その夜。みずきは帰ったが組員は何故かまだ外にいた。何故いるか訊いてみると、『姉御達を守っとけ』とみずきに指示されたらしい…取り敢えず寝袋と軽食を差し入れしておいた。
「部屋決めジャンケンするよ〜!」
寝室は3つ、人数は千代を含めて9人。一部屋3人になる計算だ。
「男女混合で寝るのですか?」
「…あ。でも男子4人だから1人女子と同じになるよ?」
「まずはソレを決めてはどうです?」
千早、志郎、翔は少し嫌そうに…綾小路はいつもの無表情でグーを構える。
『最初はグー、ジャンケン…ポンッ!』
千早→パー
志郎→パー
翔→パー
綾小路→グー
「Oh…」
見事な一人負けね。ついでにその後やった女子の結果は…
部屋1
私、千代、帆波
部屋2
有栖、雪(+綾小路)
となった。何これ、神の悪戯か何かかしら?
男1人とそれに恋してる女子2人が同じ部屋に泊まったら、寝るが寝る(意味深)になっちゃうわよ…?大丈夫そ?
「有美さん」
「?」
「………」ニコッ
…もしかしなくても心読まれた?
ホワイトルームの内装はほぼ自己解釈です、そして有美の作戦については実際やるまで伏せさせて頂きます。ご了承下さい。
次は寝る(解釈次第)所と、二年生編に出るある男を出す予定です。お楽しみに〜。
所で…縦読みって、面白いですよね。
次回もよろしくおねがいします。
一年編で完結として良いか
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良い
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良くない
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いつか二年編を書くなら良い
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結果だけ見る(作者の判断に任せる)