頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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今回の連続投下はここまでです。


Area-22「D.U.シラトリ区近隣公園 #芸術的爆破 #ノブレスオブリージュ #恐怖」

 D.U.シラトリ区の避難所となっていたシラトリ近隣公園では、ペロロ・ミニオンによる避難所襲撃に備え、ヴァルキューレ警察学校の生徒や、炊き出しを行っていたゲヘナ給食部の生徒たちによる避難誘導が行われていた。

 

 その最中、ハルナも逃げずにできることをしていた。

 

「荷物は捨て置かせなさい!機材も降ろし出来る限り、年配の方や傷病者、と小さな子供は車両で避難を!」

 

 風紀委員会、万魔殿の生徒たちは普段の強力な指揮権の下ではなく、ほぼ志願し給食部の護衛を買って出た生徒たちがほとんどであり、ヴァルキューレの生徒たちのように統制の取れた動きはできなかった。

 

 そこを見かねたハルナが、テロリストの気配など漂わせず、高貴たるものの務めと言わんばかりに声を上げ、右往左往する生徒たちをまとめ上げようとしていた。

 

「あ、あなたは美食研究会の……!」

 

「テロリストが何の真似だ!」

 

 当然、風紀委員会の生徒も、万魔殿の生徒も素直には従わない。ハルナはこうなることなど見越していた。ナギサやエリカの前では見せることが少ない、ゲヘナでも最悪と言っていいテロリストとしての姿。これまでしてきたことにハルナは後悔こそないが、今ばかりは貴族の子女として、邪魔となっていた。

 

「そのようなことを仰られている余裕がありまして?我々には今、この状況で出来ることがあるのです。力あるものが何もせずに右往左往としていられるとお思いで?」

 

「……っ……偉そうに。我々がテロリストの言葉に従うと逆に思っているのか!」

 

「なればわたくしに言われるまでもなく、動くべきではなくて?少なくとも、風紀委員会はこの状況でヒナさんが何も指示を出さないことはないでしょう」

 

 風紀委員会の生徒たちはハルナの言葉に何も言えなかった。右往左往としていたのは事実であり、この場にアコやイオリ、チナツなどの幹部たちがいればすでに避難誘導に協力をできていたはずだった。

 

「……わかりました。みんな!ウチのトラックに動けない人たちを乗せよう!」

 

 風紀委員会の生徒はハルナの言葉を受け、行動を始めた。元より最悪の治安であるゲヘナで治安維持活動を行う彼女たちはハルナの言葉そのものを聞き入れられないわけではなかった。

 

「なっ!?貴様ら、いいのか!?議長に報告するぞ!」

 

「私たちは風紀委員会です!ヒナ委員長だってきっとこうするはずですから!」

 

 行動を開始した風紀委員会に、万魔殿の生徒は歯噛みする。その姿を見たハルナは意地の悪い笑みを浮かべ、見下すかのような視線を万魔殿の生徒に向ける。

 

「よろしいのでして?これであなた方が風紀委員よりも出遅れた結果、風紀委員会のおかげで被害が減ったとなれば、あの議長がどのように思われるか…」

 

「き、貴様ァ…!おい!風紀委員会に遅れをとるな!議長はともかく万魔殿の名に傷がつけばイブキちゃんの将来にかかわる!」

 

 そこは議長でなくていいのか、とハルナは一瞬呆けたが、動きはしてくれたことに感謝し、息を吐く。

 

「うふふっ、迫真の演技でしたね、ハルナ」

 

「……演技ではなくてよ、アカリさん」

 

 ハルナの後ろに控えていたアカリが茶化すようにハルナへ声をかける。差し迫った状況であっても、飄々としたアカリの態度は崩れなかった。ハルナはアカリとそれなりの時間、行動を共にしてきたがこのような世界の破滅を前にしても普段通りであることに、心強さと改めて底知れなさを感じていた。

 

「ノブレスオブリージュ。そんなものは犬に喰わせておけばいいと思っていそうでしたが、喰わせるには重いとでも思っているのですか?」

 

「わたくしは正義を騙っているわけではなくてよ。それに、そのような下品な物言いは少々、あなたといえど度が過ぎていますわ」

 

「そんなつもりはなかったんですけどね。まぁ、実際、何がどれだけ来るかはわかりませんけど、警察の焦り方からして……相当なものが迫ってきているのでしょうね」

 

 アカリはハルナの前に立つ。その手には使い慣れた、アクセサリ満載のアサルトライフルがある。

 

「…………常々思いますが、アカリさん、あなたは悪魔らしいですわね」

 

「ハルナ。悪魔というのは契約を違わないのですよ」

 

 悪魔は契約を違わない。それは、ゲヘナでは密かに伝わるものであり、とある集団のことを指す。表舞台で話題になることはなく、一部の上流階級や裏事情を知るものだけしか言葉にすることがない、事実。

 

「それに、かの温泉開発部部長のような力はないのです。ハルナ、私があなたを救うようなこと、ありましたか?」

 

「そういえばありませんでしたわね」

 

 ハルナはくすりと笑う。ハルナとアカリは同級生であり、対等な友人だった。決して誓約で結ばれた関係ではない。ゆえにアカリは奔放に振る舞う。

 

「私は私のためにしか動きません」

 

「だから、この状況でこのようなことをするわたくしを見ていると?」

 

「まさか。ただ私は、ここで働いて先生に後で見合った報酬をもらおうとしか考えていませんよ」

 

 アカリの言葉の裏側がどんなものであるかハルナにはわからない。それでも、ハルナはこの友人がこれからハルナのしようとしてることを察して、この場にいるのだと理解する。

 

「イズミさんとジュンコさんは?」

 

「お二人はフウカさんの手伝いを任せています」

 

「後輩想いですね」

 

「わたくしがそんなに優しく見えて?」

 

「でなければ、あの狛犬さんに目をかけられいませんでしょう」

 

 ハルナの頬が僅かに紅潮する。アカリはニヤリと笑った。

 

「茶化すものではなくてよ」

 

「そうでしたね。馬に蹴られるのは御免です」

 

 ハルナは肩にかけていたスナイパーライフルを手に取る。ハルナはこの公園に何が来るのかはヴァルキューレの生徒から聞き出せていた。曰く、波のような怪物の大群。到達すれば公園は容易く呑み込まれるという。

 

「おそらく、避難は間に合わないでしょう」

 

「わかっているのに急がせているのですか」

 

「………努力が無駄になると、わたくしは思っていませんわ」

 

「無駄死にとなるなら、私は退きますからね」

 

「引き留めはしませんわ」

 

 らしくもないハルナの覚悟を持った表情に、アカリは困ったものだと嘆息する。悪魔すら堕落させるあの“犬”はなんたるものかとアカリは思う。

 

「さて、やるからには無策とはいかないですよね」

 

「えぇ。幸いにもこの公園への道はよく整備されていますわ」

 

「なるほど。いつもと変わりないことをすると」

 

「わたくしたちに出来ることをするだけですわ」

 

 ハルナの手には、どこからか手に入れたのかプラスチック爆弾があった。

 

 

 

 

 

 

 

 ペロロジラとKAITEN FX Mk.∞の衝突は僅か3分で決着が着いた。結果はペロロジラの敗北であり、これで最後の虚妄のサンクトゥムが破壊された──はずだった。

 

「空が晴れない……!?そんな、ペロロジラは倒したのに!」

 

 シャーレの作戦本部内で、大窓から空が赤いままであることにユウカは悲鳴のような声を上げる。他の面々も、あれで終わりではなかったのかと驚く。そんな中、先生は冷静にヒマリヘ問いかけた。

 

「ヒマリ、本体はアレじゃないね?」

 

『お察しの通りです。おそらく、ペロロジラ内の核をあの群体の中に紛れ込ませているのでしょう』

 

『反応が多過ぎてこちらの設備でもどれが本体か不明よ。トキ、聞こえて?アビ・エシュフの状態は?』

 

『シャーレに着陸しましたが、物質巨大化装置の発射後、制御OSにエラーが走って起動と強制終了を繰り返しています。行動不能です』

 

 群体の中から本体を探し出す手間を省くため、リオはトキのアビ・エシュフのキャノン砲で薙ぎ払うことを考えたが、度重なる戦闘と規格に合わない装備の使用でアビ・エシュフは限界を超えたのか使用できなくなっていた。

 

 この報告に先生も苦い顔をする。

 

「相手は本当に悪辣だね。カヤ、避難状況は?」

 

「ゲヘナのトラックによる避難も加わっていますが現在4割弱です!」

 

「あの群体の到達はあともうちょっとだし、これは確実に間に合わないよ」

 

 カヤの報告、モエの現状分析に先生はいよいよもってこれは大人のカードしか手段はないと判断する。

 

 作戦本部内に暗い空気が流れる。色彩側からすればまさに乾坤一擲、生徒たちから見れば致命的な一手。キヴォトスに出来る限りの出血を強いる本物の悪意だった。

 

「…………みんな、悪いけど少し──」

 

『こちら草鞋野!敵集団先頭がビルの崩落に巻き込まれた!』

 

 覚悟を決め、先生が大人のカードを使うために立ちあがろうとした瞬間、エリカの緊急の通信が室内に響く。何事かと全員がモニターに目を向ければ、確かにエリカのボディカメラからの映像で、シラトリ近隣公園に繋がる道路の沿道にあるビルが倒壊していった。

 

 芸術的とも言える崩落の仕方であり、互い違いに道路を塞ぐのに十分なビルを次々と破壊していることが一部の生徒にはわかった。

 

「美食研……というか、その部長でしょ、あれ」

 

「まさか…!あのテロリストが…!?」

 

 カヨコは手口で、ビルの倒壊がハルナによるものであるとわかり、アコは最悪のテロリストが手を貸すなど理解できなかった。ナギサは、友人であるハルナが高貴たる者の務めを果たしたのだと胸が熱くなった。

 

「いやあ、避難指示も出してから全然経ってないのに芸術的だねぇ……ちょっと憧れちゃうね」

 

「えっ」

 

「おっと冗談、冗談。防衛室長」

 

 モエの発言にカヤは耳を疑ったが、モエが緩い態度で冗談だといい、そうですよね、と胸を撫で下ろす。先生は絶対冗談じゃないなと内心笑っていた。

 

『今の爆発で4割にペロロの数は減りました。なかなかやりますね』

 

『……けれど、それでも本体の判別はまだ不可能よ』

 

『ただ、到達時刻を少しだけ遅らせることには成功しています。この分なら退避はギリギリ間に合うのでは?』

 

 おそらくハルナが行ったであろう時間稼ぎは、少なくとも先生たちに僅かな猶予を与えた。

 

「しかし、本体を叩かなくてはあの群体は止まらないのですよね」

 

『えぇ、桐藤さんの言う通りです。数は減ったとはいえ、それでもまだ十二分過ぎる数がいます。放っておけばサイズダウンしたペロロジラとして再構築もあり得ますね』

 

『物質巨大化装置はもう使えないわ。今の群体の状態で仕留めなくては』

 

「けれどヒマリ部長、会長、ウチにこれ以上手立ては……」

 

『……ウトナピシュティムを出せば』

 

『待ってくださいリオ。それこそ相手の思う壺でしょう。相手は確かに切り札とも云うべきものを一つ切ってきました。ですが、相手の喉元にこちらは届いていないのですから、ここでアレを出すは早過ぎます』

 

 ヒマリはリオの案を却下する。先生も頷いていた。未だ敵の全容も不明となればキヴォトス側の切り札である“宇宙戦艦“を出すのは後がなくなってしまうことを意味する。

 

『……せめて、ピンポイントで“悪意”の塊を感知できれば』

 

 セイアが溢した苦し紛れの言葉に、カヤがハッとする。

 

「それです!エリカさんならできるのでは!?」

 

 その場にいる全員が「え」と声を漏らした。カヤは立ち上がり、力説する。

 

「エリカさんの経歴を皆さんご存知ないのですか!?彼女はこれまで何度も事件が起きる現場に居合わせたりしているんですよ!きっとわかるかもしれません!そういうの!」

 

「ウチの会長さんそんなトンデモ能力あるの…?」

 

 明らかに無茶振りとわかるカヤの発言にモエは怪訝な顔をするが、ナギサもそうかもしれないと思っていた。

 

「エリカさん聞こえますか!?私です!カヤです!あのペロロたちの中から本体を撃ってください!」

 

『防衛室長!?待ってください。私にそのような能力はありません!』

 

 が、それはエリカ自身によって否定される。そんな都合のいい能力など、あるはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『エリカさん聞こえますか!?私です!カヤです!あのペロロたちの中から本体を撃ってください!』

 

「防衛室長!?待ってください。私にそのような能力はありません!」

 

 カヤちゃんからとんでもない無茶振りが飛んできた。そんな能力があればとっくにやっている。

 

 ビルの崩落の感じからして、おそらくハルナが発破をしてくれたのはわかる。なんとか道路が見える位置からペロロの群体を確認すればかなりの数が減っている。それに足止めされたからこれなら避難所からの退避も間に合うかもしれない。

 

 で、そこからあのペロロを倒さないといけないわけで、作戦本部の通信回線は開きっぱなしにしてたわけだけど、そこでカヤちゃんからの今の無茶振りである。

 

『しかし、いつも勘で事件現場にいたのでは?』

 

「それは経験則のほうが大きいです!」

 

 確かに、事件が起こりそうと先回りすることはあったけど、オカルティックなパワーによるものじゃなくて、事件が起こる予兆というものを周囲から見取ってのものだから、百合園さんのようにほんとに第六感的な勘で動いてるワケじゃない。

 

 命の危険が迫った時は獣人特有の予感、みたいなものは感じるけど。

 

「エリカちゃんどうする?」

 

「どうするもこうするも……」

 

 ミカさんからの問いかけに、何も答えはない。今の私にそんな力はなく、やるなら捨て身で突っ込んで暴れるしかない。ハルナたちがどうしてるかはわからないけど、あの子のことだ。時間を稼いだ時点で退避してるだろうな。

 

 けれども、このまま何もしないわけにもいかない。現状、敵に一番近いのは私たち。動けるのは実際のところ私だけ。そして、倒すにはあの群体の中から本体を見つけ出せば銃弾の一発で決着は着く。

 

「ごめん、エリカちゃん。やっぱり私のせいで」

 

「ミカさんのせいじゃないよ。……先生の言う通り、相手が悪辣なだけ」

 

 人に害を成すことに特化しているような相手の動きは厄介この上ないけれど、手口としては有効というのがわかってしまう。

 

 どうすればいい。今の私にできることはないのか。ミカさんが、ハルナが頑張ったんだ。それに応えなくちゃ。

 

「ミカさん、ちょっと降りて」

 

「いいけど……」

 

「少し、考えさせて」

 

 ミカさんを降ろす。そうしてから、銃を今一度見る。この銃では、一撃で多数を倒すことはできない。正確に、一発で敵本体を仕留めなければ、向かったところで呑み込まれて引き潰されるだけだ。

 

 トリニティの校章は赤い空に負けず、金色にきらりと光っている。

 

 相手は集団だ。仮にそれが暴徒で、扇動しているものがいると考えろ。あの集団は囮を使ってまで何かを害そうと動いている。つまり、明確な意志のようなものを持っているかもしれない。

 

 虚妄のサンクトゥムが生み出した敵に、思考はないと私は思っていた。けれど、もしかしたら何らかの意思が介在しているかもしれないとペロロジラには思わされた。

 

 囮を使い、更に群体まで使い本体を隠す“臆病さ”。この“犯人”はどういう思考をする。

 

 

 

──部長!?どうしたの!?

 

──ひ、ひぃ!?に、逃げろ!あれは風紀委員長と同じだ!

 

 

 

 屈強に思えた集団が、恐怖する存在を目にした瞬間、瓦解する。あるいは“首魁”が別の反応を見せる。そうだ。もしかしたら、これならいけるかもしれない。

 

「ミカさん、悪いけど付き合ってくれる?」

 

「……へぇ、何するの?初めて見たよ、そんなエリカちゃんの──悪い顔」

 

「え、そんな顔してる?」

 

「してるしてる。ナギちゃんが見たら泣いちゃうかも?」

 

『ミカ?』

 

「じょーだんだって」

 

 ミカさんは私の話を詳しく聞く前に乗ってくれるのか、もう戦えないはずなのに銃を手に取っていた。その気丈さは、どことなくナギサちゃんとよく似てる。なんだろう、高貴な人が持つべき義務というか、自負というか。なんて言えばいいのかわからないけど、ミカさんがトリニティの生徒会長であることを裏付けるような姿だった。

 

『エリちゃん、無茶するわけじゃなくて、作戦があるんだね?』

 

「はい、先生。上手くいくかは全く保証できませんが、試してみる価値はあるかと」

 

 私は先生をはじめ、作戦本部にこれからしようとしてることを伝える。すると、やっぱりというか、明星さんがすぐに反応してくれた。

 

『ふむ。悪くないですね。本体がいるということはあの群体の9割は無人操縦のようなものです。草鞋野さんの推測が正しければいけるかもしれません』

 

『これがヴァルキューレの生徒さんなんですね……』

 

 アヤネちゃんも感心してくれている。ちょっとこそばゆいけれど、この作戦は間違いなくヴァルキューレ時代の経験から来ている。相手に意思がある以上、私の警察官だったことは無駄にはならない。

 

「みんなオッケーな感じかな。じゃ、エリカちゃん。とっとと済ませよ」

 

「………ああ。すまないが」

 

「大丈夫。だって、エリカちゃん、絶対守ってくれるよね」

 

 ミカさんからの信頼に私は応えないわけにはいかない。

 

「当たり前だ。これより、草鞋野、聖園の二名はペロロの群体排除に移ります」

 

 私はミカさんを今一度抱えて、再び飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 悪意を宿した群体はビルの破壊を以ってしても止まることはなく、倒れたビルの瓦礫を乗り越えて未だに侵攻を続けていた。その様を、遠目でハルナは見ていた。

 

「まさかアレでも止まらないとは」

 

「ん〜本物の化け物みたいですね」

 

「……ですが、時間は稼げているはずですわ。わたくしたちはここまで、退きましょう」

 

「そうですね。もう爆弾はありませんし」

 

 ハルナとアカリは十分役目は果たせたとその場から動こうとした。が、アカリの目に、群体の進行方向に人影が見えた。

 

「あれは」

 

「どうしたのですか。まさか人でも?」

 

「はい、ハルナ」

 

 どういうことだとハルナも目を向ければ、確かにペロロの群体の前に、人影がある。まさか逃げ遅れた住民なのか、と思ったが目をこらせばそれが違うとわかる。ハルナも知っている生徒がいる。

 

「ふふっ。まさか私たちが何もしないと思ってるのかな★」

 

 ミカが、そこにはいた。既に特大な隕石を降らせたことで体力は削り取られ、並の生徒程度の動きしかできない、ペロロの群体とは戦える力がないにも関わらず、ミカはまるでこれから大暴れするのだと言わんばかりの余裕の表情を見せる。

 

 その登場の仕方に、これまで立ち塞がる全てを呑み込もうとしたペロロ・ミニオンたちが動きを止めた。

 

「あははっ!怖いんだ?へぇ、ただのキモい鳥頭かと思ったらそういう知能はあるんだね」

 

 ミカは煽る。相手に意思があるならと。

 

「ここから先に行きたいんでしょ?無理無理。ここであなたたちは、おしまい」

 

 ゆらりと、ミカの手にあるサブマシンガンの銃口がペロロ・ミニオンへと向く。

 

「いくら数がいても、もう一度あんなの落とされたら、もう耐えられないでしょ?」

 

 脅しながらミカは嗤う。絶対的な力を持っていると。ミカの口が、続けて開く。

 

「──聞こえる、私を呼ぶ声が。聞こえる、星の呼び声が」

 

 それはまさしく、ペロロ・ミニオンたちには死を告げる詩。二度と詠い切らせてはならない、二度と落とさせてはならない。動きを止めていたペロロ・ミニオンたちが、一斉にミカへと飛び掛からんと動き出す。

 

 その群体の後方で、彼女は待っていた。

 

「見つけたぞ。悪意の塊を」

 

 ソレは、自身を射抜く強烈なまでの死の予感に動きを止めた。そのまま、群れの中にいればよかったものを、振り向いてしまった。

 

 赤い空の下にいるにも関わらず、その蒼い瞳は陰らずに“犯人”を追い詰める。

 

「化け物に警告などしない。終わりだ」

 

 一瞬。群体の中で違う、逃げようとするかのような素振りを見せた。それが致命傷となって、ペロロジラの核を宿したペロロ・ミニオンは、瞬く間に距離を詰めたエリカの手にあるライフルの銃口を突きつけられていた。

 

 ならば群体を集めて巨大化すれば、と動こうとするが、その前にその身を弾丸で貫かれる。正確に、弾丸は身体の中にある核を撃ち抜く。

 

 そうして、悲鳴も上がらず、ペロロ・ミニオンの群体は嘘のように雲散し、その場から消え去る。

 

『……第六サンクトゥムの反応消失!エリカさん、ミカさん!やりました!』

 

「……よかった」

 

 ナギサの歓喜の声に、エリカは笑顔になり、ミカも同じく笑みを浮かべていた。

 

 すると、空が急速に色を塗り替えていく。赤く、昼も夜もなくなっていた景色が、青いどこまでも突き抜けていく空へと戻る。

 

「これは、空が……!」

 

『虚妄のサンクトゥムを破壊したことで、キヴォトスを覆っていた色彩のエネルギーを削げたのでしょう』

 

 ヒマリの言葉に、エリカはついに乗り切ったのだと理解する。少なくとも、喉元に突きつけられていたものを取り除けたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、それは敵を完全に退けたことにはならない。

 

「…………」

 

「え……?」

 

「シロコ、先輩?」

 

 青空を取り戻し、歓喜に沸くシャーレの作戦本部に、前触れなく彼女は降り立った。憂うような表情と共に。

 

 




お読みいただきありがとうございます。次回はまた未定です。
いつも感想、ここすき大変励みになっています。ありがとうございます。

というわけで虚妄のサンクトゥム編は終わり、ついに戦いは宇宙へ……。
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