頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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コユキもっと書きたかったぜ…

感想やここすきたくさんありがとうございます!!


Area-07「闇オークション会場 #脱出 #白兎 #正義実現委員会」

 会場は混乱の極致だった。正義実現委員会に応戦したのは客のうち実に半分以下。そのうちに私たちもいる。完全に違法行為というか、これがティーパーティーに伝わろうものなら私はシャーレすらクビになってしまうだろう。今回はまごうことなき違法捜査だ。

 

「戻りましたわ」

 

「ちょっとこんな時にどこ行ってたの!?」

 

 いつの間にか私から離れてしまったハルナが戻ってきたので、リロードも兼ねて一旦席に隠れて彼女の方を見れば、黒崎さんが競り落とした永久凍結バナナを脇に抱えていた。

 

 おもいっきり窃盗である。ついにハルナの決定的犯行の瞬間を押さえた……が、逮捕権が今の私にはない上にヴァルキューレの生徒じゃないのが痛い。

 

「ハルナ、ようやく私に逮捕されに来たわけ?」

 

「まさか。別にわたくしは盗んだわけではありませんわよ」

 

「どういう理屈!?」

 

「エリカさんの追っている白兎の回収がまだお済みではありませんのではなくて?これとあの白兎が揃ってミレニアムに戻れれば問題ないでしょう?」

 

 理屈はわかったけど、そもそも盗品の疑いのある品だし、それを競り落としたのも間違いなく横領したお金。ハルナが絶対落とすというのであれば、これは間違いなく帰り道で黒崎さんを強請るつもりだ。そして、その帰りには私がついていない。

 

「本当にハルナは現行犯逮捕させてくれないね」

 

「わたくし、何も悪いことはしていませんもの。最初にお会いした産地偽装エビフライのレストランを爆破した時からそうでしょう?」

 

 いやあれは……そもそも最初にハルナが爆破しようとしてたって噂があって私が張り込んだらちょうどハルナがお店に入って、追って入ったらまさかの噂を聞いたレストラン側がハルナを袋叩きにしようとしていたという事件だった。

 

 あそこで、実際爆破されたのがこれまで問題あるお店ばかりだったので、もしかしたら不正を正そうとしてる生徒だと私がハルナを勘違いした……のがハルナの言う“産地偽装エビフライ使用レストラン事件”だ。

 

「あのときのエリカさんはかっこよかったですわね。拳銃と警棒だけでわたくしを庇いながらレストランが雇っていたPMCを制圧したのですから」

 

「不正をしている人たちに容赦をしないだけだよ」

 

 どこのPMCか知らないけどあのときの連中弱かったし。思えばあれからだ。ハルナがやたら私と出会うようになったの。

 

「って、昔話してる場合じゃないんだけど!?」

 

「それもそうでしたわね。今度はわたくしが援護いたしますわ。エリカさんは白兎を押さえてください」

 

 ハルナが言いつつ、ドレスのスリットから拳銃を抜く。本当に護身用の銃なので、威力は期待できないもの。足止めをするには心もとない。ただ、さっきから正義実現委員会は徐々に包囲をせばめようとしてるけど、会場がステージ以外真っ暗なせいで、上手く行っていないみたいだ。

 

 これなら私も顔を見られずに動けるかな。幸いにも相手は夜目が利く私と同じような種族の子がいないし。私は席の影に隠れつつ、できる限り素早く動く。黒崎さんも応戦している。使用しているのは小柄な彼女には似つかわしくない機関銃だ。

 

「黒崎さんだね?」

 

 必死に応戦している彼女に近づいて声をかけた。接近に気が付かなかったのか、黒崎さんは驚いたように肩をはねさせた。

 

「びくっ!?いや、ち、違いますよ、私は白兎で」

 

「……私はシャーレの草鞋野エリカです。あなたを連れ戻すように早瀬さんから言われてここまで来ました」

 

 小声で黒崎さんに伝えれば、彼女はまたわかりやすく顔を青くした。

 

「え、バレた…?なんでぇ!?」

 

「すぐに帰るよ黒崎さん。とにかく今はトリニティでセミナーのあなたがいることがバレるのはまずいの」

 

「ど、どうしてですか?そりゃ他の自治区で捕まっちゃうとめんどうくさいですけど」

 

「めんどうくさいだけじゃ今回は済まないの。あなたはトリニティとミレニアムに戦争してほしいの?そうなったら、傷つくのあなたの先輩たちだよ」

 

 はあ?という顔を黒崎さんがする。まさかとは思うけど、この子はトリニティがどういう状況か知らないの?

 

「君は今のトリニティが厳戒態勢なの知らないの?」

 

「確かに妙に厳しいとは思いましたけど、何かありました?」

 

「今のトリニティはある条約の締結のために外部からの流入に凄い厳しい目を向けてるし、他校の生徒が問題を起こせばただ捕まるだけじゃ済まない。それにあなたは他校の生徒会の生徒。幹部であるあなたが、ここで問題を起こせば……トリニティがミレニアムに戦争を吹っかけてもおかしくないんだよ?」

 

 かなり大袈裟に言ったけど、私が真剣に言うと、ひゅっ、という息が聞こえた。黒崎さんの顔が青ざめるけど、さっきまでのものとは違う。本当に深刻なものだと気がついたようだ。

 

「戦争になれば、早瀬さんや生塩さんが傷つく。そのときにあなたは責任を取れるの?」

 

「先輩たちが傷つくのは……嫌です…」

 

「なら、こんなところ抜け出さないと。いいね?」

 

 納得してくれたのか、黒崎さんは頷いてくれた。私は彼女を連れて、ハルナがいるところまで戻る。

 

「お待たせ」

 

「待っていませんわ。……あら、白兎さん、随分と元気がなさそうで。おいたが過ぎましたわね?エリカさんに叱ってもらえるのは貴重ですわよ」

 

「茶化さないの、ハルナ」

 

「ふふっ、つい。しかし、どうするのですか?突破しようにも、あの数は厄介ですわ」

 

「そりゃそうだけど」

 

 ハルナの言う通りで、突入してきた正義実現委員会の数は凄まじい。一個中隊以上は確実にいる。これまでの情報通りなら、ここが最後の取り締まり対象の場所なのだろう。本腰を入れて徹底的にやりにきているのが明らかだ。

 

「というか、ハルナは知ってたの?」

 

「先生から教えられていましたわ。なんでも、先生はつい先日の夜、正義実現委員会の副委員長から近々大規模な取り締まりをすると聞いていたそうで」

 

「どうして、教えてくれなかったの」

 

「教えればあなたは焦るでしょう?」

 

「こんな状況じゃ逃げようもなくなるでしょ!」

 

 ガスッ、と盾にしていた席が削れる。いや、本当にまずい。このままだと私たち全員逮捕だ。けれども、悔しいことにハルナの掌の上だ。彼女の言う通り、正義実現委員会が来るのを知っていれば、私は焦ってオークション開始前に黒崎さんを捕まえようとしたかもしれない。黒崎さんがこうも素直に従ってくれているのはきっと今は逃亡のために選択肢がないからだ。

 

 おまけに、さっきから黒崎さんはハルナの抱えてる永久凍結バナナに視線がいってるし。バナナに釣られるウサギとは一体。

 

「もちろん、何も考えていないわけではありませんわ。彼女たちはSRTではありませんし、正直に踏み込んでくれましたので」

 

「そりゃ、SRTだったらもう私たち全員無力化されてるよ。けど、だから数を揃えてるんだよ?」

 

「そんな古臭いやり方は通用しませんわ。これからの時代は」

 

 ハルナはそう言いながら、黒崎さんの服の中をまさぐって何かを取り出す。黒崎さんはハルナが永久凍結バナナを持っているせいかおとなしい。ハルナの手に現れたのは見たことがない球体の手榴弾のようだった。

 

「これ、説明してくださる?」

 

「えぇっと、ウチで試作中の手榴弾でして…モード選択で、上空で散弾を降らしたり、ただの爆弾として使えます」

 

 黒崎さんの持っていた手榴弾?のようなものはまさに今の状況に打ってつけの装備だったようだった。ハルナは微笑む。

 

「流石ですわね。思った通り、素晴らしいものをお持ちで」

 

「え、えへへ、それほどでも」

 

「ふふっ、兎鍋はやめておいてさしあげましょう」

 

「ひっ」

 

 まだ引っ張ってたんだ…そのネタ。

 

「では、これを投げたら正面突破です」

 

「え?正面?」

 

「このお屋敷への急襲は綿密に組まれていますわ。そう、隠し通路の先に待ち構えているぐらいには」

 

「なるほど」

 

 つまり、正面にいる彼女たちはなんでこんな鉄壁の布陣を敷いているのかといえば、彼女はいわば囮のようなものなのだろう。さっきから包囲を狭めているのはそのため。そして、背後を見れば司会が何人かのVIPを舞台裏へ逃していた。

 

 だから、正面の戦力はこれが全て。絶対抜かせないためのこの数。なら、彼女たちを抜けば真正面から堂々と逃げ出せるわけだ。

 

「煙幕は当然お持ちでしょう?エリカさん」

 

「もちろん。ちゃんと、コンビニで買える奴だよ」

 

「参りましょうか」

 

「お願い」

 

「え、え?どうするんですか?」

 

「黒崎さん、私の手を握って?」

 

「は、はぁ?」

 

「それと、煙幕を抜けるまでは目を瞑って、息を閉じて。私を信じて一緒にきてほしいの」

 

 真剣に彼女に訴えかければ、彼女は覚悟を決めたのか私の手を握ってくれた。

 

「こうなればもう一蓮托生です!お願いします!」

 

「よしっ。やろう、ハルナ!」

 

「えぇ!」

 

「「せーの!」」

 

 私とハルナが同時に手に持ったものを投げた。当然、これまではなかった反撃で、相手は面食らう。

 

「伏せるっす!」

 

 指揮官らしき子の声に、ほとんどの反応が遅れる。相手は冷静じゃない。包囲殲滅の陣形をとったのは追い込むためだけじゃない。彼女たちはおそらく、経験の浅い子たちだ。ヴァルキューレで射撃訓練を見ていたことがあるからわかる。構えられてもブレてるし、再装填にわずかに手間取っている。それを補う形で、この陣形。指揮官の子が選んだこの作戦は本当によくできてる。

 

 けど、相手の戦力を完全に把握していないのなら、選択すべきじゃなかった!

 

「うわっ!?煙幕!?」

 

「な、なんで天井から銃撃が!?」

 

 悲鳴が上がる出口付近。うまくいった。

 

「いくよ!」

 

「はい!」

 

「えぇ!」

 

 私たちは駆け出し、煙幕の中を突っ切る。

 

 うまく倒れた正義実現委員会の子を避けて、私たちは地上へとつながる廊下に逃げ出せた。

 

「よし!」

 

「や、やった!?抜け出せた!?」

 

「仕上げですわ!」

 

 ハルナはダメ押しとばかりに何かを会場へ投げ込んだ。それは一本のダイナマイト。流石にやりすぎ、と思ったらそれは爆発と同時に…かなりの量の煙と火花を出した。

 

「ジョークグッズですわ」

 

「……安心していいのか悪いのか」

 

 おもちゃのダイナマイトのダメ押しはかなり聞いたのか、一階のエントランスに出た時には静かになっていた。屋敷の扉を開けると、突入してきた正義実現委員会にやられたのか、ドローンや使用人たちが倒れていた。

 

「とはいえ、走って逃げたらいずれ追い付かれますわよ」

 

「あ!見てください!あそこに車があります!」

 

 黒崎さんが屋敷の駐車場を見つける。うぅ、これ以上罪を重ねるのはちょっとやだな、と思いながらも背に腹は変えられない。

 

「エリカさん、あの車なら罪悪感は少ないでしょう?」

 

「いや、どの車も変わらな……あ、いや、あれならいいや」

 

 私を気遣ってか(?)ハルナが勧めた車は一台の高級車。ただし、側面にはカイザーグループのロゴが。アビドスを陥れた人たちのものだ。

 

 黒塗りのその高級車に私たちは駆け寄るけど、問題はどうやって鍵を開けるかだ。窓ガラスを割って入るしかないか、と思ったけど、する必要がなかった。

 

「こんなの鍵なんてかかってないですよ!」

 

 黒崎さんがスマートウォッチの空間投影モニターを操作すると、ガチャッ、と車のロックが外れる。

 

「ついでにエンジンも!」

 

 さらにエンジンさえかかってしまう。す、すごい、これが生塩さんの言ってた黒崎さんの才能!?ハルナもこれには驚いたのは手に口を当てていた。

 

「ありがとう!二人とも、乗って!」

 

 私が運転席に座って、二人は後部座席に。私はすぐに車を出し、駐車場の出口のバーをふっ飛ばしながら屋敷から離れる。ハルナの読み通り、こちらには正義実現委員会はいなくて、なんとか私たちはオークション会場から逃げおおせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後の話をしよう。あの日、私たちがオークション会場から逃げ出していた頃、先生たちも大変な目に遭っていた。アリウス分校という過激派のトリニティ総合学園への襲撃を第三次試験の前に防いだらしい。その中で明らかになったエデン条約を妨害しようとした生徒──まさかの生徒会長の一人、聖園ミカさんを捕らえ、アリウスにヘイローを破壊されそうになった桐藤さんを救ったとのこと。

 

 聖園さんに関しては私が何かを言う立場じゃない。先生の話を聞いて、彼女は先生に任せた方がいいと思った。

 

 補修授業部は学園を救った後に無事試験を突破、落第は防がれた。よかったけど、なんだか、自治区一つを揺るがす大きな事件に巻き込まれていたんだなと、終わったあとに思った。もちろん、このことは連邦生徒会に報告したけど、公表はされない。エデン条約を進める両校を思って、七神代行が隠すことを決めたと先生から聞いた。

 

 黒崎さんは屋敷から逃げたあと、さらにハルナが車でミレニアム近郊まで送ったらしい。早瀬さんから無事帰ってきたと報告を受けた。その際に泣いてお礼を言われたので、本当に黒崎さんのことを心配したのだと思う。

 

 今回の支援要請も無事終えられた。私と先生は誓った通りに、お互いの役目を果たせたのだ。そういえば、あのとき正義実現委員会に顔を見られたと思ったけど、会場が暗かったのも手伝って見られていなかった。よかった。

 

「──それで?これが永久凍結バナナかい?」

 

「えぇ、中のバナナを取り出していただけると助かります」

 

「なんで私が立ちあってるの?」

 

「あなたの協力なくして、これは手に入りませんでしたのよ」

 

「共犯者にしないでよ」

 

 よかったのだけど、まだ話は終わっていなかった。そう、永久凍結バナナの解凍だ。

 

 結局、ミレニアムへの帰り道でハルナは黒崎さんを“説得”し、永久凍結バナナを譲り受けたらしい。……またしても彼女は私の見えないところで悪事を働いたようだった。ただ、相手が横領の常習犯なのがなんとも言えない。

 

 いつもの制服に着替えたハルナを伴って、私はミレニアムのエンジニア部にやってきていた。私たちを出迎えてくれたのは部長の白石ウタハさんだった。白石さんはハルナとはまた違った美人な人で、ファンも多いらしい。確かにイケメンって感じだ。

 

 そんな彼女はハルナの頼みをわりと快諾してくれた。こういう意味不明な物品は興味があるとのこと。

 

「まずは耐久テストからしようか。ちょうど、威力を試したいものがあるんだ」

 

「……あの、解凍していただけますのよね?」

 

「もちろん。ただ、永久凍結ってぐらいだから、まともな手段では取り出せないと思う。だからまずは、砕いてみよう。──アリス」

 

 白石さんが呼んだのはさっきからものすごいウキウキした様子で待機していた髪が床につくぐらい長く、制服に着られているぐらいの小柄な子。先生が以前、支援要請で出会った不思議な子、ゲーム開発部の天童アリスさんだった。

 

「エリカさん、彼女の持っている…あの機械は?」

 

「レールガン」

 

「聞き間違いでしょうか」

 

「レールガンだよ。宇宙戦艦用の装備だって」

 

 ハルナがもう一度、天童さんを見る。明らかにあんな小柄な子が持てないはずの巨大な装備を天童さんはぶんぶん、剣みたいに振り回している。もはやあれで殴れば砕けるのでは?

 

「アリス、溶けない氷なんて初めてみました!高レアアイテムです!」

 

「そうだよ、アリス。だからちょっと、これを砕いて中のバナナを取り出して欲しいんだ」

 

「任せてください!アリス!氷を砕きます!」

 

「どうされるのですか?」

 

「こうします!」

 

 天童さんはそれはもう、いい笑顔で、これ以上ないぐらい楽しそうに振り回していたレールガンを“構えた”。

 

「砕くのではなくて!?」

 

「魔力上昇、フルチャージ!いきますっ!」

 

「お、お待ちになって!そんなものを撃っては!」

 

「古代のオーパーツと最新の科学…!見せてくれアリス!私たちの成果をッ!」

 

 ハルナの静止もむなしく──。

 

「光 よ ────!!!」

 

 ──天童さんの持つ“剣”から放たれた光は理不尽にもハルナの永久凍結バナナを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 流石に可哀想だったので、ハルナには帰りにパフェをおごってあげた。少しだけ機嫌を直してくれた。永久凍結バナナがどうなったって?吹き飛ばされた先で確かに氷は粉々になっていて、バナナ自体は取り出されていた。ただし、焼きバナナ……どころか炭化してたよ。

 

 氷自体は本当に溶けなかったので、エンジニア部が回収していた。

 

「うぅ…まさかあんな……簡単に……」

 

「まぁしょうがないよ。誰も砕いたことのないものだったし、加減なんかわかりっこないよ」

 

「………わかっていますわ。あの方たちに悪気がないのは」

 

「ハルナ」

 

「なんですか」

 

「ありがとう。助けてくれて」

 

 私は頭を下げた。シャーレの生徒として、彼女の協力がなければ更にトリニティは混迷を極めていたと思うし、黒崎さんも無事では済まなかった。私が頭を下げたことにハルナは驚いたようだった。

 

「あなたが頭を下げるとは」

 

「ハルナがいなければ、私はもう居場所がなくなってたし、ミレニアムもトリニティも、ただじゃ済まなかったから」

 

「そのお礼は受け取っておきましょう」

 

 ちょっとだけ気恥ずかしい。この子にはヴァルキューレの頃から振り回されてばかりだ。だけど、生徒として向き合えば、この子は確かに悪いこともしているけど、同じぐらいその下にはいいところもたくさんあった。

 

 私はようやく本当の意味で、シャーレの生徒になれたのかもしれない。

 

「パフェ、おいしかったですわ」

 

「どうも」

 

「ふふっ、次も刺激的な場面でお会いできることを期待していますわ。エリカ」

 

 最後に彼女は私を呼び捨てて、格好つけてお店から出て行った。まったく、と苦笑いしながら私は彼女の座っていた席を見た。そこにはメモと文鎮代わりに置かれた透明な石……いや、手に取ればそれは冷たく、表面をさわれば水が手につくのに、形を変えない。永久凍結バナナの氷だった。

 

「暑い夏が始まりますから、どうかお気をつけて……こんなものもらってもしょうがないのに」

 

 融けない氷を差し込む陽の光にかざせば、とても透き通っていてまるで宝石のようだった。

 

 

 

 今度こそ、この支援要請の幕は閉じた。

 

 

 

 私の頑張りは結実し、黒崎さんを救うことができた。

 

 

 

 再びいつものシャーレの日常に戻る。

 

 

 

 ハルナの言う通り、生徒たちが楽しみにしている夏がすぐ側までやってきていた。

 

 




終わりです!

エデン条約編本編に最初は絡ませようとしましたが、今後バニチェ単体に主人公を絡ませて描ける自信がなく、加えてどうにもヴァルキューレ感が抜けない主人公にシャーレの生徒として事件に挑ませたくてこねこねしてたら書き上げていました。

次の章の序盤までは連続で更新が続きますのでよろしくお願いします
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