園児が一人いなくなった。ココナさんの荷物を運ぶ手伝いをし、梅花園を訪れた私たちの前で起きた事件だった。
取り乱した梅花園の教官からココナさんが事情を聞き取り、行方不明になった状況を確認した。
「本当に、申し訳ありません……ほんの、ほんの一瞬、目を離してしまったんです。そのうちに、園の外に出てしまって……」
当該の園児一名は園の庭で遊んでいたうちの一人だったが、見守り役の教官が他の園児に話しかけられた際、庭から目を離した隙にいなくなっていたという。他の園児が言うには園の庭の隅にイノシシ?のような動物が紛れ込んでいて、それが外に出ていったのを見て追いかけてしまったという。
「そもそも梅花園の外に出るなんてお庭には壁があるじゃないですか」
「それが、その動物が壊していたみたいで、子供一人抜けられるぐらいの穴があったんです」
「……はい?おかしいですっ!だって、うちの壁はちょっとやそっとじゃ壊れないはずなのに!」
外壁の穴から出てしまったというが、それがありえないとココナさんも声が乱れる。悠長なことをしている暇はないが、その穴は見るべきだろう。
「失礼します。その園児の捜索、シャーレにも手伝わせてください」
協力を申し出る。報告をしにきた教官が初めて私たちを見て、一体何者と怪訝な目を向ける。ココナさんは私に向き直り、迷うことなく口を開いた。
「お願いします!」
「ココナ教官!?この人たちは」
「先生の生徒さんですっ!」
「先生……あの人の…!?」
問答や自己紹介の時間は惜しい。私は意識を切り替え、口を開く。
「聖園、直ちに園児が抜け出した穴を確認。捜索を開始する」
「はーい。ミヨちゃんも連れてく?」
「人手は多い方がいい。桜井さんもよろしいですか」
「は、はい!」
胸騒ぎがする。子供が動物を追いかけて飛び出した。よくある話のはずだ。
だが、いつもより物凄く弱々しくも、私の奥底から“誰か”が言っている。早く探せ、取り返しがつかなくなる前にと。
「ココナ教官。シャーレ以下3名、これより捜索に入ります。そちらの方、その園児が抜け出した穴を確認したい」
「えっ」
「案内してあげてください!私もシュン教官に連絡してみます!」
「わ、わかりました!こちらです!」
ココナさんは携帯を取り出して、お姉さんに電話をしつつ先に駆け出した別の教官についていく。私たちも続いた。部屋を出て、園児たちを刺激しないようにか、少し庭の隅、影になるところを走っていく。
すると、かなり頑丈に見える壁が見えた。明らかに外敵からの攻撃を防ぐためのものであることが一目瞭然。とても子供が取り壊せるものではない。そこに穴は、確かにあった。
「こちらです!」
「なにこれ。こんな綺麗に抜けるかな、私でも」
そこにあった穴はくり抜かれたというには断面が粗いが、突き抜かれたにしては綺麗なものだった。ミカさんが言葉を漏らしたように、明らかにおかしい。
「……うん。うん。だからシュン姉さんも……わかった。門主様にお願いを……」
「エリカちゃん、これどう見る?」
「無理やりこじ開けたにしては綺麗すぎる。何者かが意図的に開けた可能性が高い」
「だよね」
しかし意図的にとはいえ、何が目的で?梅花園に危害を加えようなどという外道な真似をする相手がいるのか。
「草鞋野さん。その、まさか始まったのではないでしょうか」
「どういうことですか、桜井さん」
「………交流会は確か、明日からですよね」
「まさかこれが妨害と?」
「………確証も何も。ですが、もし私が混乱を起こす側であれば……それに、先ほどのココナさんのお姉さんが交流会で何か重要な役割を与えられていたら」
まさかな。聞けるか?
「ココナ教官。知っているなら教えてほしい。あなたのお姉さまはどういった役割で玄龍門に呼ばれたのですか」
「ぇ!?ちょ、ちょっと待ってください。あ、ごめん、シュン姉さん。その、シャーレの生徒さん……うん。姉さんがなんのために玄龍門に呼ばれたのか教えてほしいって……ダメ?そうだよね……」
ココナさんが私に目配せしながら聞いてくれるがやはり教えてはくれないか。そうだろう。先生との面識があっても、私とはない。
「……いいの?うん…そっか、今先生と……うん……うん……う、えっ!?」
本当に、本当に先生の信頼というものはすごい。今、電話の向こうの相手は先生といたようだ。運があまりいいとは言えない私にしてはツイている。ココナさんはお姉さまが何を玄龍門に頼まれたのか聞けたようだ。彼女は一度携帯のマイクを手で覆うと、私に伝えてくれた。
「その、シュン姉さんは交流会の警備……門主様たちがいる場所が見えるところから狙撃手として怪しい人がいないか監視を任されていたそうです」
当たってほしくなかった推理だった。しかし、桜井さんの推理がなければこれがただの捜索で終わってしまうところだった。僅かな時間でよくも彼女はここまで……。
「ありがとうございます。ココナ教官。お姉さまにお伝えください。かならず我々シャーレが大切な生徒を見つけ出しますと。聖園、桜井さん、いくぞ!」
「了解。それじゃあ、やろっか」
「はい。微力ながらですが、お手伝いします」
おそらく、時間はない。これが交流会潰しの始まりなら、ここでまず相手の出鼻を挫かなければ意味がない。そして、相手はココナさんのお姉さまの役割を本人に伝達される前に知っていたことになる。
「聖園。悪いが先生に電話を。おそらく玄龍門内部に交流会の警備体制を漏らしたものがいる」
「だろうね。電話するね」
私たちは駆け出す。一刻も早く、見つけ出さねば。
『──だって。あのちびっこ門主によろしくね、先生』
「わかった。ありがとう、ミカ。教えてくれて」
『どういたしまして。でも推測の域は出ない、ってミヨちゃんも言ってるから』
「それでもだよ。こっちはこっちで動いてみるからよろしくね」
ニコを送り出して、六和閣を出ようとしたところでバッタリシュンと出会ってお茶しつつ話をしていたらミカから電話があった。直前にシュンが取り乱しかけるほどの事態──園児が行方不明という連絡がココナちゃんからもあったらしく、それが明日の交流会妨害の前触れでは、というのが桜井ちゃんの推測だそうだ。
たかだか交流会……エデン条約と比べれば本気で阻止するほどのことかと思うんだけど、エデン条約だってアリウスはあのババァに唆されたわけで。
ふぅ。なんだか、ややこしいことになってきた。
「シュン。大丈夫?」
「先生。すいません、これからもう一度門主様に謁見して事情を話します」
「このあとはどうする予定だったの?」
「執行部長と打ち合わせの予定でした。ですが、子供達に何かあったとあれば」
「私でもそうするよ」
今にも飛び出したいのに、段階を踏もうというシュンは本当に……前の山海経での支援要請では梅花園が密輸に利用されたこともあって気が気でないはず。それでもこうして冷静でいられるあたり、本当に立派だ。
大人として今の私にできることはとにかく山海経の動きをスムーズにすることだろう。こういうときのためにシャーレの看板ってもんがある。
それに謁見してからでは時間がかかる。キサキとのホットラインはあるんだからこの場で私が電話をすればいい。何より、ミカから伝えられた内容が本当ならば私たちが動いていることを悟られないようにすべきだ。
ミカには悪いが、補修授業部のあの一件の時、ミカがそうだった。玄龍門内部またはそれに近しい人物が裏切りものなら同じようにこちらの動きが筒抜けになっている。子供がやるにしては随分と嫌な話だ。
携帯を取り出し、キサキにコールする。すると、珍しく2コールぐらいで応答してくれた。
『なんじゃ、先生。何か忘れものでも?』
「ごめんキサキ。ちょっと急ぎの要件。まず聞いて」
『……よい。其方がそこまで言うのであれば聞こう』
キサキに梅花園の園児が行方不明になったこと、そして、それが交流会の護衛役であるシュンを妨害する目的ではないかと簡潔に伝える。
『そこまでやるか、今回の相手は。わかった。妾も動く。広報部長へ今回の交流会の調整は任せていた。先生は妾と広報部長に状況を確認。シュン教官は梅花園に戻るように』
「伝えるね。今から戻るからよろしく」
『すまぬ。またもこのような』
「キサキ。私に申し訳なさを感じることはないよ。君が何か過ちを犯したわけじゃあないんだから」
『……そうさな』
「じゃあ切るよ。門番の子に言っておいてね」
『うむ。追い返さないようにの』
これで私はサッと六和閣に入れるかな。シュンは電話の内容が聞こえていたのか、私を見て頷き、駆け出して行った。それで私は広報部長って子とこのあと会うわけか。まさかその子が情報を漏らしてることはないだろうね。
キサキの人を見る目は私以上だろうから、大丈夫なはずだ。
動く前に、ニコたちにも状況を伝えなくてはね。
「なんだぁ?子供がいなくなった?」
「はい。それに、これが交流会妨害のテロの一種ではないかと」
「オイオイ……どうなってんのよここ」
先生を通して草鞋野先輩が遭遇した事件を聞き、志真副局長に伝えれば額を揉んでいました。……私は先生と別れ、志真副局長と闇バイトのアジト捜査を開始しようとしていたタイミングで。
何かが始まったと、先輩ほどの勘がなくてもわかってしまう。
「志真副局長。こちらも草鞋野会長の支援に」
「いや、待て。ちょっとだけ」
先輩の捜索を手伝うことを進言するも、志真副局長は私を手で一度制す。なぜ。
「……………うし。こっちはこっちのやることを続ける」
「しかし」
「こういうとき、だいたい糸は全部根っこが同じもんだ。どうせ姉貴とバッタリ会う」
彼女は言い切った。私たちは私たちのすべきことをし、そうすればその先で先輩と同じ道へ行くと。……落ち着け、吉野ニコ、FOX2。私はSRTの生徒だ。見誤ってはいけない、成すべきことを。
ユキノちゃんに言われたではないか、らしくないと。先輩のことが心配などと、何様なのだろう。先輩は、大丈夫だ。
でも、悔しいという感情がささくれみたいにあった。目の前の志真副局長は、先輩のことを知っている。信頼している。絶対に先輩が何もかも切り抜けて、事件を解決してくれると。私は……。
「で、納得したか?吉野」
「……すいません。大丈夫です」
「いいって。っと、そういえば学年的には吉野のが上だもんな。ちょっと生意気だったか」
「いいえ、階級的には副局長である志真副局長の方が上です。それに、今の私はシャーレの生徒として支援要請を受けていますから」
「じゃ、このままで」
「それでこれからどちらを」
「姉貴たちが捕まえたトラックのナンバーから山海経の輸送会社所属なのはわかってる。足が残るってのに盗難車だったり、天ぷらしてないのはモノホンだよ」
なるほど。ということは………先生の言うとおり、おそらく闇バイトの件は山海経の中に巣食う何かのシンパが組織的にやっていることなのだろう。それが申谷カイの熱狂的な信者なのか──それとも、現体制に嫌気が差している生徒たちによるものなのか。
「ではその輸送会社に?」
「いや、そいつが出入りしてた物流センターに行く。なんでも、あのトラックはそこからどこかにトレーラーでモノを運ぼうとしてたんだと」
「いつの間にそこまでの調査を……」
「山海経だってネット環境はあるんだ。ちょっとバイトさんに頼んだのよ」
おくびもなく彼女は違法捜査をしたことを明かす。ヴァルキューレの公安局、もっとも正道にいるはずのそこで、その場所の副局長という立場でありながら彼女は全くそれを気にせずにいる……私は衝撃を受ける。
そうだ。先輩がアビドスで遭遇した違法採掘の事件も、民間人の協力者に潜入捜査をさせていた。志真コノカ……この人は。
「……どした?」
「いえ、その」
「あからさまな違法捜査をしてるのは嫌か?」
「…………嫌というわけでは。ただ」
「ハッキリ言い過ぎってか。SRTじゃあるまいし、確かにウチがこんなことすんのおかしいけど、自分で犯した法は自分でケリをつける。これだけは絶対にあたし、守ってんのよ」
とても警察のものには見えない、ただの女子高生が持っているスクールバックの持ち手を彼女は両腕に通して背負った。
「それができなきゃ公安局の資格はねぇ。……ま、そういうわけだから。事件は解決すりゃいいのよ」
警察官としての本文。市民の安全を、日常を守り、起こる事件を解決する。そこに手段は関係ない。ただ、着地点が同じ一つの場所、明るいところに辿り着ければいい。志真副局長という人はそういう人で、だから先輩は信じているんだと私は理解した。
園児が行方不明になってからもう6時間以上が経過していた。日は落ち、ミカさんと桜井さん、そして私は未だに山海経の梅花園から離れた山の中にいた。梅花園にいたという獣の足跡は山岳方向へと向かっていたからだ。
「エリカちゃん。もう日が暮れたよ」
「……わかっている。しかし、こうも見つからないとは」
「焦ってる?」
「焦ってはいない。しかし、急がなくてはいけないのは変わらない」
雑木林を抜け、一度山道の中に出た。遭難することはないが、この闇夜の中、手の中の懐中電灯だけで捜索を続けるのは困難だ。そんなことはわかっているのだが、急げ、急げと私の心が急かしている。
「私はいいけど、ミヨちゃん、忘れてない?」
「……!」
しまった。私は何をしているんだ。桜井さんの厚意に甘えて彼女をこんな長時間の探索に付き合わせてしまった。私が振り返れば、桜井さんは疲れが明らかに見える。真面目な彼女はそれを見せないようにしてくれているんだ。
「桜井さん!ごめんなさい!私、あなたのことを考えずに…!」
「いえ、大丈夫です。これぐらい……」
「いやいやミヨちゃん。ちょっと疲れてるでしょ。エリカちゃん。少なくともミヨちゃんは帰らせようよ」
気丈な振る舞いを見て、私は自分を殴りたくなった。……一度、桜井さんをホテルに戻さないと。それに、ここまで探して出て来ないのなら、この付近ではないのかもしれない。
園児を探しているのは当然ながら私たちだけではない。玄龍門や、梅花園の教官たちも捜索に参加してくれている。
「桜井さん。歩けますか?」
問い掛ければ、彼女は申し訳なさそうに首を横に振った。彼女のローファーは泥に汚れているし、ソックスも点々と黒く泥がはねている。この状態になるまで着いて来てくれた彼女に感謝と自身への怒りが湧く。
また視野狭窄になっている。
「すいません、桜井さん。背に乗ってください。一度下山します」
「……申し訳ないです」
「謝るのはこちらです。あなたのことを考えずに……」
屈んで、桜井さんを背負う。彼女の体温と柔らかさが背中に触れる。何時間も歩いたのに、私の顔の横にきた桜井さんからは甘い香りがした。うぐっ……これ、だいぶクるやつだ。……汗の匂いが変換されて獣人の本能的なのにきてる。ハルナ並だ。
こんなときにこんな馬鹿な反応をしている場合じゃない。ただ、こうなると様々な感覚が鋭敏になる。余計に背中からの感触が生々しく詳細に脳が処理する。
「草鞋野さん……?どうされましたか?もしかして、その、汗とか」
「いえ、大丈夫です」
ぞくぞくぞく、と耳から体が震えそうになった。早く降りなくちゃ。捜索を再開しないといけない──。
立ちあがろう、その瞬間だった。敏感になった耳が音を捉える。がさがさと、何かが動く音。動物だ。
次に、鼻に伝わったのは………ッ!?
「聖園!2時方向!」
私は叫んだ。ミカさんは即座に反応し、私の指示した方向に銃口を既に向けていた。茂みの中から何かが飛び掛かる。イノシシ大の大きな影。ミカさんは容赦無く射撃した。暗い山の中、ミカさんのサブマシンガンの銃口から迸る光りが数度、その場を照らした。
どしゃ、と獣がミカさんの側に落ちて倒れる。そして、獣は煙を発して一瞬で蒸発した。
「…なにこれ……!?」
ありえない。まさか、そんな。
「という、金木犀の匂い?エリカちゃん、今の」
ミカさんからの問いかけに、私は答えられない。頭が混乱していた。なんでアレがこんなところにいる。いるはずがない。あれは、滅んだはずだ。あの街と一緒に。
「草鞋野さん、もしかして今のは昨晩、あなたが話してくれた黄金の一滴の、バケモノですか」
そうだ。桜井さんの言うとおりだ。あれは、キュドモス。黄金の一滴により生まれた怪物。この世界に存在していけないもの。
「うそ、今のが?というか、あんな飛びかかってくるの?」
「……そうだ。見境なく。だから存在してはいけないんだ」
「なんでそれがここにいるの」
「私が知りたい…!あれは、あの怪物どもは、もういないはずなのに」
どうすれば。アレが山海経にいるなんて。もう、そんな手送れな状況に今はなっているの…!?もしそうなら、私は今すぐにでも、キュドモスの発生源を突き止めないといけない。
けれど、行方不明となった園児、彼女が追った獣がキュドモスならもっと急いで探さないといけない。もし襲われてその子が大変な目に遭っていたら。
頭がぐるぐるとしていると、背中から桜井さんが離れた。私はハッとして振り向くと、しっかりと立っている桜井さんがいた。
「桜井さん……?」
「私は、大丈夫です。もう少し探しましょう」
「ですが」
「……草鞋野さんの背中に寄りかかって、少し元気を分けてもらいましたから」
柔らかな笑みを浮かべる桜井さんに、私はなんと声をかければいいのかわからない。
「本当にいいの?ミヨちゃん」
「はい、聖園さん。少し、甘えてしまっただけですから」
「ふーん……ま、痩せ我慢ってわけでもなさそうだし、もう少し頑張ろっか」
「はい!」
私は立ち上がる。気を遣われているのは私だってわかる。……キュドモスが出て来た以上、これは桜井さんに巻き込まれたのではなく、桜井さんを巻き込んでしまったことになった。
「桜井さん。ごめんなさい。……あの事件に関係したことに、巻き込んでしまって」
「そんなっ、私がそもそも山海経に連れて来たんです。草鞋野さんが気にする必要は」
「そうそう。それに、それ言うなら私は巻き込んだのいいんだ?」
「うっ」
………ミカさんにしたってそうだ。あの忌々しい事件を既に知ってしまった彼女に、相棒として隣で戦ってくれている彼女に、私は甘えすぎている。
阿呆な思考をするのは止めよう。今これから私がすべきことは、行方不明者の捜索だ。
「で、さっき撃ったのが例のキュドモスだけど、あれってネズミが元だったりするんだよね?撃ってすぐ消えるってどういうこと?」
さっそくミカさんがキュドモスについて聞いてくる。……私が知っていることは少ない。先輩の花屋の下にある研究所は全てを捜査する前にあの樹が生えてしまったのだから。
「私も詳細はわからないよ。ただ、完全に変異したのは生物というか、別の何かに変わってるみたい。耐久を超える攻撃を受けると霞みたいに消えるの」
「本物の怪物ってこと……?信じらんない」
「現実だよ。梅花園の子がアレを追いかけて行ったならもう一刻の猶予もない」
「あれ、肉食だったりしないよね」
「そこは大丈夫だ」
人を食うようなバケモノではないのが救いか。ただ、あれの体当たりは馬鹿にできない威力がある。園の壁を破ったのもキュドモスだろう。
「……ふぅ。あれが出て来たのはあの茂みのあたりからだったな」
キュドモスが出て来た茂みには獣道のようなものがある。より鬱蒼とした木々が生え、さらに深い山の中へと続いている。その先に何かあるのではないか、これまでの経験から来る警察官としての勘がそう問いかけてくる。
「行くの?エリカちゃん」
「少しでも可能性がある方向に私は行きたい」
「りょーかい。ミヨちゃんも頑張ろっか」
「はい。早く、園児さんを見つけないと」
私はライフルを手に取り、彫られているトリニティのマークに触れる。どうか子供は無事でいてほしい。トリニティの校章は僅かな月明かりに照らされてきらりとした。
お読みいただきありがとうございます。ここすき、感想、大変励みになっています。
ちなみにコノカが頼ったバイトさんはチーちゃんです。
主人公ちゃんと身体的な相性が抜群にいいのはハルナとミヨです。
本作ではケモ耳生徒に大なり小なり匂いとかそういったもので本能が刺激されて感覚が鋭敏になるといった設定があったりします。特に主人公ちゃんは相性がいい子が近いと強く反応が出てしまうタイプ。
次回はしばらくお待ち頂けますと幸いです。