頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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今日からイベントだぜ…!
ハナコほしいな…。


Area-04「ヴァルキューレD.U.第12管区署 #釈放 #面会 #無罪放免」

 ヴァルキューレの施設に着いたのは夕方も陽がくれる直前だった。予定時刻から三十分ぐらい過ぎてしまったけど、先生が事前にカンナちゃんに伝えてくれていたみたいで、怒られはしなかった。

 

 留置所、というかD.U.の一区画にある所轄署で、そこの警備課の応接間に私と先生は案内された。

 

 そこにいたのは私の知る二人の生徒だった。一人目はカンナちゃん。変わらない様子で、勤務中なせいか私に向ける目は対外向けのものなので特に向こうから声をかけてくることはない。寂しいような、懐かしいような。

 

 そして、もう一人は……防衛室の不知火室長。いい香りのコーヒーを飲みながら彼女は優雅に待っていた。不知火室長も変わりない様子で私たちを見るとはにかんで見せた。

 

「先生、それに草鞋野さん。お待ちしていました。どうぞお掛けください」

 

 不知火室長に促されて私たちが対面に腰掛ける。カンナちゃんは不知火室長の横に座った。何故か妙な緊張感があった。先生も普段通りに見えて、なぜか声を出さない。カンナちゃんもだ。

 

 不知火室長を見れば何故か彼女と目が合った。すると、彼女がこの緊張した空気に割って入った。

 

「すいません。自己紹介もまだでしたね。先生、私は不知火カヤ。連邦生徒会で防衛室長をやっているものです」

 

「よろしく、カヤ。防衛室って、エリちゃんがいたところだね」

 

「それは……えぇ。諸事情ありエリカさんにはシャーレに行ってもらいましたが。元気にされているようで何よりです」

 

 不知火室長は私を見ながら言った。私が防衛室から追い出された時、不知火室長は特に私に何か言ってはこなかった。防衛次長以下からの話があり致し方なく、と申し訳なさそうに言っていたね。

 

「お久しぶりです。不知火室長」

 

「はい」

 

「新しい豆ですね」

 

「流石ですね!わかりますか!……こほん。お仕事の時間でなければ草鞋野さんとこのコーヒーについて語りたいところでしたが、今はあまり時間もありませんし、本題に早速入りましょう」

 

 嬉しそうな不知火室長を見ると彼女も相変わらずのようだった。もし仕事の空き時間ができたら今度はモモトークを送ってみよう。

 

 それで、本題。先生から事前に聞いてるけどRabbit小隊への処遇だよね。

 

「Rabbit小隊については処遇を先生へ一任致します。これは事前にお伝えした内容と代わりありません。元より、連邦生徒会の説明不足でもありましたから。生徒への対応を怠った我々にも責任があります」

 

「ありがとう、カヤ。けど、本当にいいの?」

 

「はい。いずれにせよ、SRTからの転校手続きは当面一時停止中ですから」

 

 え?なにそれ。初耳なんですけど。

 

「不知火室長、すいません。何故手続きが停止中なんですか?上手く行っていないというのは聞いてましたが」

 

「一部のSRT生が廃校と校舎の撤去決定に反対のためにデモをしましたので。ヴァルキューレ側がSRT生の無条件の全受入れに待ったをかけている、というものですよ」

 

 カンナちゃんの方を見れば頷く。事実らしい。説明してくれるのかカンナちゃんは口を開いた。

 

「デモは先日のRabbit小隊だけではありません。ディンゴ小隊、ポッサム小隊、エキドナ小隊、クオッカ小隊も未届でデモを別の場所で起こしました。ただし、Rabbit小隊と違い装備は持ち出せていなかったのか、ただの座り込みデモだったので解散はさせました」

 

 まさか他にもデモを起こしていた子たちがいたなんて。

 

「そこで警備局長がSRTの受け入れに待ったをかけました。命令に従わない可能性のある生徒を受け入れるのは慎重にすべきだと」

 

 こうなってしまってはヴァルキューレの言い分は正しい。不当な行いをしているのは今はSRTなのだから。けれども、私はミヤコちゃんたちの言い分もわかっている。君たちはいらないといきなり言われ、居場所を奪われた彼女たちが声を上げるのは当然の権利だ。

 

 彼女たちの否定を私はできない。手段はダメだけど、その願い自体を認めないわけにはいかない。

 

「一年生では飛び抜けて優秀な小隊であるRabbit小隊は間違いなくエリートです。そんな彼女たちもこのままでは学園の撤去が始まれば生徒ではなくなり、どこにも属さない浮いた存在になります。それはキヴォトスにとって大きな損失です。ですから先生、彼女たちのことをお願いしたいのです」

 

 不知火室長の真剣な声音に先生は少し考えた素振りをした。どうするつもりなんだろう。

 

「それなら、彼女たちのことをしばらく私の責任で、自由にさせてあげられないかな」

 

 先生の提案は事実上の無罪放免だった。生活安全局、警備局、公安局に被害を出してしまっているにも関わらず。私もヴァルキューレとしては許してはいけないとは思う。でも、許す、許さないという話ではなく、シャーレとしてはまだ彼女たちには更生の機会はあると思う。特に月雪さんの話を聞いていると。

 

 カンナちゃんは先生の発言に眉を顰めた。

 

「理由が立ちません、先生。デモを起こした他の4小隊と違い、RABBIT小隊はヴァルキューレの3局へ被害を出しています」

 

「カンナ、彼女たちの釈放は連邦生徒会の説明不足を端としているとお話した通りです。その後の処分は実際に公園で彼女たちを制圧した先生に任せると決めたではありませんか」

 

 不知火室長が困ったような声音でカンナちゃんに言い聞かせるように言う。

 

 元より、急な閉鎖で生徒を路頭に迷わせてその後のケアもできず、一方的に権利を奪ってしまった連邦生徒会としてはSRTへ負い目があり、しっかりと対応すればそもそも今回のデモは起きなかった。だから、今回は見逃すという生徒会の判断。

 

 しかし、ヴァルキューレからすれば公務執行妨害という正当な拘束理由があって、事件化し、法による処分を下す必要がある。真っ当な警察組織として果たさなくてはいけない役目。

 

 私がもしヴァルキューレの生活安全局副局長としてここにいたら、カンナちゃんを援護していただろう。当時の私ならそもそも自分の部下に被害を受けていたわけで、RABBIT小隊を釈放する理由が見つけられない。これは原因と結果の話だ。だから、本来は結果であるヴァルキューレの判断を元に話を進めなくちゃいけない。

 

 そして、原因と結果を受けての回答はシャーレに今、与えられている。

 

「発言、よろしいですか」

 

「エリカさん?はい、いいですよ」

 

 私の発言を不知火室長は許可してくれる。カンナちゃんは私を見ていた。睨んでいると言ってもいい。

 

「尾刃公安局長の発言は尤もです。ヴァルキューレを含む生徒会管轄の警察組織において、正義を為すべきSRTがあのようなことを起こしてしまったことは取り消せない過ちであると思います」

 

「………エリカさん、それはつまり、生徒会の判断は誤っていると?」

 

「いいえ、不知火室長。正しくも、誤っているというわけではありません。連邦生徒会の判断はあくまで、原因の追求であると思います」

 

「ふむ………それで?」

 

「原因として、連邦生徒会の説明不足によるものがあり、その結果、彼女たちが過ちを犯しました。本来であればここで処分を法に任すところを、そのようにさせてしまったという面もあり、情状酌量の余地があるのではないかと連邦生徒会は考えています。

 

ただし、実被害を出している以上、ヴァルキューレと協議をしても結論が出ない。だから超法規的な権限を持つシャーレへ、キヴォトスの行政府たる連邦生徒会が判断を委ねた。不知火防衛室長、この整理でよろしいでしょうか」

 

 言うなればこれは“爆弾”の押し付け合いだ。制御不能な暴力装置を誰が持つのかという貧乏クジを引くための。

 

 そして、生徒を想う先生に判断を委ねれば当然、彼女たちの身柄を引き受ける。誰が描いたシナリオだかわからないけど、悪辣と言っていい。そして、だ。私がこれから言う事で、きっとカンナちゃんとはもう、友達ではいられなくなるかもしれない。

 

 不知火室長はほんのわずかにあまり普段は見せない翡翠色の綺麗な目を見せて感心したような表情を出していた。

 

「聞いてはいましたが、草鞋野さんの整理はわかりやすいですね。はい、その通りです」

 

「わかりました。私も先生の判断に同意します。彼女たちには更生の余地があると思います」

 

 彼女たちと向き合うシャーレの生徒である以上、私は先生と同じ答えだ。カンナちゃんが信じられないような表情をしてから、私をキツく睨んだ。ごめんね。

 

「ふふっ……そうですか。しかし、先生、最後の確認ですが、本当に処罰を与えなくていいのですか?」

 

 不知火防衛室長がまるで先生を試すかのように聞いてくる。先生は即答した。

 

「うん。やってしまったことは消えないから、それはいずれ償わないといけないと思う。けれど、彼女たちが、生徒たちが望まない未来に行きたくないというのなら、私は生徒を支えるよ。だから、“今回”は釈放してあげてほしい」

 

「なるほど、“次は”ないということですね。カンナ、そういうことで今回は納得しましょう」

 

 カンナちゃんはかなり納得してない様子だけど、ぎこちない様子で首を縦に振った。

 

「では、先生、エリカさん。RABBIT小隊のこと、どうかよろしくお願いしますね?」

 

「うん、任して。それと、もしよければこういうことはできるのかな?」

 

 何やら先生には考えがまだあるらしい。私は先生の考えに耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 釈放。そう伝えられた時何かの間違いではないかと思った。公安局、警備局、そして生活安全局の3局に対して攻撃を行なってしまった私たちが無罪放免になるとは思っていなかったから。

 

 牢屋から出されて、私たちは今いる施設のロビーへと集められていた。小隊員たちは手荒な真似はされなかったのかみんな一昨日に見た時と変わらなかった。ミユが私の姿を認めると駆け寄ってくる。

 

「ミヤコちゃん…」

 

「ミユ、大丈夫そうですね」

 

「………うん」

 

 私を心配してくれている。平気だと私が微笑んであげればミユは安心したようだ。サキやモエは不機嫌そうにこちらを見ているけれど、私は二人に歩み寄る。

 

「無事でしたか。二人とも」

 

「フンっ。あんな尋問でもない取り調べで参るか」

 

「まぁ、久々に屋根があるところで寝れたのはよかったよ」

 

 大丈夫そうだ。けれど、結局、私が小隊長として指揮を上手く取れなかったからこの結果となった。一発の銃弾がこの結果を招いた。このキヴォトスにおいて、銃弾ほど軽く飛び交うものはない。だけど、そのたった一発が大きく私たちの今後を変えてしまったかもしれない。

 

 どれもこれも、全て私が統制を取れていなかったばかりに。

 

「申し訳ありませんでした。私の責任です。私がもっと上手くやれていれば」

 

「はぁ?なんでそういう話になるんだ。学校が閉鎖した時から別にお前は小隊長でもなんでもないんだから」

 

「ですが……」

 

「そうそう。責任とか言われてもミヤコは取れる責任なんてないでしょ?」

 

 事実だった。今の私が何かできるのだろうか。責任を取る?……言葉ではいくらだって言える。それは無責任な発言も同義だ。悔しかった。私が何も言えないでいると、ミユが唐突に私の背後に入って気配が薄くなる。誰かの足音が二人分聞こえた。

 

 一人は不規則で、もう一人は非常に訓練された等間隔の足音。私が目を向ければ、こちらに近づいてきている二人の姿が見えた。

 

 先生、そして――草鞋野エリカ。

 

 私のかつての憧れで、失望して、怒りさえ覚えていた相手。それなのに対話を求め、銃口を私に向けなかった彼女は、公園で別れた時に最後見た絶望した表情とはうって変わって明るい表情だった。

 

「やぁ、みんな」

 

 先生が声をかけて、私たちは黙った。サキとモエは強い敵意さえ抱いている。彼女たちがなぜ現れたのかは見当がつく。誰も反応しないのなら、私がするべきだろう。

 

「なぜこちらに?先生」

 

「君たちの処分を伝えにね」

 

「釈放後に伝えるってことはなんだ。執行猶予付きってところか?」

 

 不機嫌であるのがよくわかるサキの声に先生は苦笑いした。

 

「まぁ、近いかな?ただ、これといって何がどうという処罰はないよ。だから全員、このまま釈放」

 

 この時ばかりは小隊未満の結束力しかない私たち全員同じ反応をしていた。唖然とする。本当に、無罪?それで、釈放?

 

「ありえません。……罪を犯した私自身が言うのもおかしいですが、道理がありません」

 

「連邦生徒会とヴァルキューレから君たちの処遇を一任されてね」

 

「釈放して私たちをそのあとどうするのですか」

 

 取引があったのなら、私たちに何をさせたいのかもしれない。SRTの力があればシャーレの力は増すだろう。もしそうだったとしても私は従うつもりはないけれど、先生に問う。でも、帰ってきたのはまた驚きの答えだった。

 

「え?何もさせないけど……」

 

「そんなわけあるか!じゃあ本当に無罪放免じゃないか!?」

 

「話がうますぎない?」

 

 サキとモエの反論に先生は困ったような顔をする。今度は代わりに草鞋野さんが口を開いた。

 

「けど、シャーレとしては生徒のサポートをするだけだから。今日はもう帰っていいよ」

 

「SRTに帰れるのか?」

 

「それはちょっと難しいかな」

 

「……流石にそれはないか」

 

「けど、どこに帰れって言うのさ?私たち寮もなくなってるんだけど」

 

 SRTが閉鎖されている以上、私たちは住むところがない。モエの言ったことに先生は即答してくれた。

 

「なら、シャーレに来てもいいよ。シャワーとか泊まれるような施設もあるし」

 

 心が一瞬だけ動く。けれど、それをしては私たちが何故デモをしようとしたのか意味がなくなる。

 

「いいえ、結構です。私たちはSRTの廃校が撤回されるまで引きません」

 

「これに関してはミヤコと同意見だ。誰が敵の施しを受けるか」

 

「そーそー、そうやって塩を送って後でおいしく頂こうってわけだ」

 

 ミユは何も言わず私の手を少し強く握っていた。同じような気持ちらしい。

 

「うーん、本当に何もすることはないんだけどね。じゃあ、元の公園に戻ってキャンプでもする?」

 

 また意味のわからないことを言い出した。始めたのは私たちで、不法占拠をしていたことは間違いない。それを行政側である先生が勧めるのは意味がわからない。流石に混乱しそうになる。

 

「待ってください。仮に本当に釈放で、何らかの情状酌量があったのなら、何故もう一度不法行為を働けと言えるのですか?」

 

「待って待って、ミヤコ。ちゃんと今度は正式にできるようになってるから」

 

「え?」

 

 先生が懐から何か一枚の用紙を取り出す。それを私に歩み寄って渡してくる。紙面には「子ウサギ公園キャンプ場使用申請」と書かれていた。キャンプ場の使用申請書…?正式にって、普通にキャンプ場を利用しろということですか。

 

「なんだこれ、こんなのあったのかあの公園」

 

「私たちが陣地にしたところから少しズレたところだねぇ」

 

「……けど、偵察した時は誰もいなかったよ…?」

 

 デモをするにあたり、先んじて公園内の偵察をしたけど、子ウサギ公園は人が誰もいなかった。再開発地区とは聞いていたけど、子ウサギタウンはそれにしても人が少なすぎた。だからこそ、一般市民への影響が少ないと選んだ場所だった。

 

「元からあの地区ってさ、人が全くいなくなってるからキャンプ場もほぼ誰も来ないし、公園の管理所も今は閉まってるからキャンプ場の使用申請もしようがなかったんだ」

 

「それでは効力がないのでは……?」

 

「だから連邦生徒会の文化室に言って、あの公園の管理を一時的にシャーレにしてもらったんだ」

 

 もう一度書類を見れば、確かに申請先がシャーレになっていた。何故そこまでしてくれるのか。私はわけがわからず先生たちを見た。

 

「珍しく先生が超法規的措置を使って管理を委任してもらえたんです」

 

「意味がわからない。なんのメリットがあるんだ」

 

「いや…特には?風倉さん、仕事が増えるだけだね」

 

「なんなんだあんたら…」

 

 草鞋野さんの解答にサキが本当に困惑した声を出していた。わからない。だけど……私はみんなの前に出て、草鞋野さんと向かい合った。今は私たちに銃はない。お互いにできるのは言葉を交わすことだけ。

 

 あの時の続きを、しようと思った。

 

「……まず、草鞋野さん。ごめんなさい」

 

「月雪さん……」

 

 謝った。ひどい事を言ってしまった。私たちと向き合おうとしてくれていたのが今ではよくわかる。だから、先生が何故道理が通らない事を言っているのかも理解できる。この人たちにはおそらく裏がない。

 

 釈放も本当で、このキャンプの申請だって、私たちがデモを続けるために取ってきたのだろう。

 

「私はあなたが犯した罪が事実なのかは知りません。けれど、あの時私たちと対話を試みようとしていたのは嘘ではないと思いました。あなたのその気持ちを踏み躙るような真似をして、ごめんなさい」

 

 知らない。私は草鞋野エリカという人を知らない。憧れていたヴァルキューレ最高のお巡りさん。それしか知らない。彼女の為人を私は直接目にしたことがない。そのような相手に銃を抜き、責め立てるような言葉を突きつけることは……正義じゃない。

 

「……顔を上げて、月雪さん」

 

 優しい声だった。私は従って顔を上げる。草鞋野さんは私がかつてニュースで見た時のように穏やかな表情でそこにいた。

 

「私たちは君たちが望まない道を強制しないよ。これからどうしたい?」

 

 けれど、伝えられた言葉は身に纏ったヴァルキューレのものとは程遠くて、私は今、かつて憧れ裏切られたと思った相手ではなく、一人の先輩から声をかけられていると思った。草鞋野さんは……草鞋野“先輩”は言っていた。

 

 

 

――どうか先生に話してみてほしい。生徒の私では力になりきれないなら、大人である先生に

 

 

 

 信用はできない。信頼もまだ。それでも、現実として今私たちは自分達の意志で選ぶ事を許された。選択。あのときこうできた、こうすればよかった。取ってしまった選択肢は覆らない。草鞋野先輩たちに銃を向けてしまった“罪”は消えない。

 

 それでも尚、前に進んでいいのであるなら。

 

「………先生。私はあなたのような大人は“信用”できません。それは変わりません。ですが、私たちの意志を尊重するというのであれば。この申請書を使わさせて頂きます」

 

「おい!ミヤコ!お前はSRTに戻りたくないのか!?こいつの提案に乗るなんて…!」

 

「サキ。私たちは、なんですか?」

 

「はぁ?」

 

「私たちはSRT特殊学園の生徒です。“正義とは、正当な権限のもとに行使されるべき権利である”。SRTの理念を踏み躙るような行為を、私はこれ以上できません。業腹ではありますが、場所を貸してもらえるというのであれば、それに従うべきです」

 

「………しかし」

 

「ま、そもそもデモをするならちゃんと申請すれば良かったわけだしね。キヴォトスだとまずそんな申請するやついないけど」

 

「モエ!知ってたならなんで言わなかった!?」

 

「え?だって聞かれなかったし」

 

「お前っ、ほんと…っ!」

 

「とにかくっ!決定事項です。先生、明日にでも申請に伺います。シャーレのオフィスに行けばいいんですね?」

 

 場所の貸与申請、小隊員の掌握、SRT復活……やらねばならないことはたくさんある。

 

 それらをやりながら、見返りも求めない、変な大人と先輩のことを見極めてみようと思う。私たちが進む道の先を行く彼女たちを。

 

 私の問いかけに、先生は頷いた。

 

「待ってるよ」

 

「私も先生と待ってるよ、月雪さん」

 

「お願いします。……それと、草鞋野“先輩”。名前で構いません」

 

「そうなの?それじゃあ、ミヤコちゃん。よろしくね」

 

「はい」

 

 まるで聖人のようだった。あれほどまでのことを言われてもなお、私たちと向き合おうとしてくれる彼女が。

 

「お茶ぐらいは出すから、みんなで来てくれてもいいよ?」

 

「誰が行くか!」

 

「敵地に行く奴がいると思う?」

 

「はははっ…元気いいなぁ、みんな。うん、じゃあ待ってるよ。申請」

 

 ひとまずは一度戻ろう。今の私たちがやりたいことをやりに、あの公園へ。

 

 




正直この二話は難産でした。

また続きは今度!しばらくお待ちください!
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