今回はミヤコ視点です
一晩経って、私はシャーレへと足を運んだ。申請書を出すためだ。それにしても、ひどく静かで誰もいない。シャーレ周辺は再開発地区じゃないはずなのに元から人が少ないみたいだった。
事前に申請を出しに行くと連絡はしていて、その時にエレベーターでそのまま上がっていいと言われたので、迷わずエレベーターに乗り込んだ。携帯を取り出す。来る時に一応はみんなを誘ったけど来なかった。
エレベーターが先生のオフィスのある階に止まり、エレベーターを降りて私はオフィスの前にたどり着く。シャーレの部室と札が出ていた。
「月雪です。申請を出しに来ました」
「どうぞ〜」
ノックと共に名乗り、目的を告げると先生のものでもない、草鞋野先輩のものでもない声が聞こえた。なんだかものすごい気だるげな声だった。……誰だろう。ただ入っていいというのであれば入ろう。私は意を決して扉を開けた。
「ん?お、ミヤコきたね。いらっしゃい」
「おお〜〜、なんだか可愛いウサギさんだねぇ」
ピンク色の髪をした小さな子がオフィスの中のソファでくつろいでいた。見たことがない制服で、どこの生徒かはわからない。クジラのぬいぐるみを抱えていて、年下のように見えるのに喋り方がまるでおじさんのようだった。
「………そちらの方は?」
「おっとごめんね。私は小鳥遊ホシノだよ〜」
「小鳥遊さんですか。初めまして。SRT特殊学園1年、月雪ミヤコです」
小鳥遊ホシノと名乗った彼女は「よいしょ」と体を起こしてこちらに挨拶した。彼女は一体何故ここにいるんだろう。オフィスの中を見渡しても草鞋野先輩の姿が見えない。
「エリカは今日、ミレニアムに行ってるよ」
「別に草鞋野先輩がいない理由は聞いていませんが」
先生が私の内心を読んだかのように言ってきたのは気に食わないが、私は先生へ歩み寄る。小鳥遊さんが緩い表情でずっと私を追っていた。全く表情に表れていないのに警戒心をうっすらと感じる。彼女は先生のなんなのだろう。草鞋野先輩という補佐がいながら。
持っていた申請書を先生に突き出す。
「申請書です。お願いします」
「ほい、受け取るよ。……はい、受付」
渡してすぐに先生は内容も確認せずに受付印を押して返してきた。届出じゃなくて申請書のはずなのに無審査でいいのか。ありえない。
「え、審査とかは」
「いる?」
「これは申請書です。となれば然るべき決済を取らなくてはいけないのではないのですか?」
「いやここシャーレだから。決裁権は私が持ってるし、シャーレの管理物なら私が部長で、私の判断で終わりだよ」
先生が「何を言ってるのかな」と言いたげな不思議そうな顔をしていた。何故だろう、無性にイラッとくるけど、言ってることは正しいので私は堪えた。
「せっかく来たんだしお茶でも飲んでく?」
「結構です」
サキではないけど、敵地で出されたものを飲むような迂闊な真似を私がすると思うのだろうか。これ以上いてもしょうがない、先輩もいないとなれば私はここから立ち去ろうとした。
「まぁまぁそう言わずに〜、おじさん、若い子とのお話に飢えてるんだよね〜」
漂ってきたのは甘い、頭の中に訴えかけてくるココアの香り。ソファの前に置かれた背の低いテーブルの上にある電子ケトルからお湯がカップに注がれ、そこから湯気と共に私の鼻に届いていた。
くらくらしそうになる。寮から追い出されて、そのような嗜好品とは無縁だった。SRTのレーションは決して美味しくはない。モエがどこからか入手したものを稀に食べていたがとっくに在庫は尽きて、今はギリギリのところだ。釈放後から水しか飲み食いできていないせいで、かなり辛い。
まさか、先生たちは知っていたのでしょうか。私たちの状態を。それでこのような真似を。
「何の真似ですか、先生。私をこんな試すような――」
「あ、ちょっと待って電話だ。はいもしもし、シャーレだよ」
私が怒りすら向けて先生へ目を向ければ、先生は私のことを遮って電話を手に取った。
「お〜、イズナ。久しぶりだね。どうしたの?今暇?というかモフれる?」
セクハラで現行犯逮捕してやろうかと思った。私は思わず装備の中から先生へ使用しても問題ない警棒を取り出そうとしたが、次に発した先生の言葉で私は固まった。
「は?ウサギ耳っぽいヘッドセットした狙撃手が私を狙ってたから捕まえた?今から連れてくる?」
ウサギ耳を模したヘッドセット。私の知る限り、今私がしているものしかなく、そして狙撃手となるとそれは間違いなくミユしかいない。何故ここを狙っていたのか。そして、あのミユがどうして捕まったのか。彼女のステルス性は並じゃない。SRT以外で発見なんてそうそうできることではない。
「へ〜、私が気がつかないなんてすごいね〜その子」
小鳥遊さんが欠伸をしながらそう言った。まるで自身の能力に絶対の自信がある物言いに私は身構える。まるで気がつかないうちに全方位から銃を向けられているかのような悪寒が襲った。
「手荒なことはしてないよね?…特に抵抗してないから抱っこしてくるのね。わかった、はーい」
先生は電話を切った。私は恐る恐る、口を開いた。
「今のは、誰から」
「キヴォトス最高の忍者からかな」
忍者。にんじゃ。NINJA。
混乱する。忍者なんて存在しない。現代の忍者とも言えるスパイはいるかもしれない。まさか、シャーレが明かしていない諜報員の類だろうか。先生が申請書を出させたのは私たちをハメるためだろうか。やっぱり大人は……!
「あー、ミヤコ、たぶん今考えてるようなことは全部ないから大丈夫だよ」
「何を白々しい…!先生、やっぱりあなたのような大人は嫌いです!子供を騙して、期待させて!」
私は催涙弾を手にしてこの場から退こうと思った。けれど、手が動かない。
「シャーレのオフィスは銃火器使用禁止だよ〜」
「っ!?」
いつの間にか真横をとられ、小鳥遊さんが私の手を押さえていた。小さな手なのに、ビクともしない力の強さ。穏やかな表情の中で太陽と月のようなオッドアイが私を間違いなく咎めていた。
「ありがとホシノ。ミヤコ、たぶんミユのことだから、心配してこっちを見ていたんじゃないかな」
「知ったような口を…私たちをどうするつもりですか」
「いや、何もしないよ。ミユを見つけたのも百鬼夜行の子で、偶然じゃないかな」
こうも懐に入られて抑えられれば抵抗しようもない。私は致し方なく手を緩める。そうすれば小鳥遊さんは手を離す。油断したところを反撃したかったけど、恐らくは小鳥遊さんはかなりの実力者。私は一旦、両手を上げ、機会を窺うことにした。
それから数分後、エレベーターが上がって来た音がした。
「あるじどのー!イズナです!」
バタンっ!と大きな音が背後で鳴り、振り向けばそこにいたのは――FOX小隊の先輩方を思い出すような見事な狐耳に、先輩たちには生えていないモフッとした尻尾。セーラー服をベースに綺麗な花柄の着物を羽織って、苦無などを各所に装備した間違いなく“くノ一”つまりは“忍者”だった。
その忍者がミユをお姫様抱っこしており、ミユは銃を抱えたまま目を回していた。
「おや、ホシノ殿もいらしたのですね!」
「おひさだねぇ、イズナちゃん」
小鳥遊さんとは知り合いらしい。イズナと名乗る生徒はミユを先ほどまで小鳥遊さんが座っていたソファに優しく座らせて、まるで好奇心旺盛な子犬のように私に駆け寄ってきた。
「あちらの方と同じ制服ですね!イズナは久田イズナといいます!以後、お見知り置きを!」
「ど、どうも、SRTの月雪ミヤコです」
「はい!よろしくお願いします!ミヤコ殿!」
いっそ馴れ馴れしいまでの久田さんの勢いと様子に私は毒気を抜かれてしまった。ミユもあの様子だと乱暴をされたわけでもない。彼女は私への挨拶のあと先生に駆け寄った。人懐っこい大型犬のようだ。
「主殿!」
「いらっしゃいイズナ。それにしてもなんでミユを連れてきたの?」
「主殿をあちらのビルから狙っていましたので!」
久田さんが指を差したのはこのオフィスから見える高層ビルだった。ただ、見えると言ってもかなりの距離で、ミユ以外では不可能な距離だ。そして、狙撃の態勢に入ったミユを見つけた久田さんは一体なんなのか。
「あー、たぶん狙ってたんじゃなくて、そっちのミヤコが心配で見ていただけじゃないかな。ミユ、そうだよね?」
「ひっ…ぁ……うぅ…このまま私たちはまた捕まるんだ……もう終わりなんだ……」
「ミユー?大丈夫だよー?」
銃を抱えて小さくなっているミユが気の毒だった。私がミユへと近寄ると、特に小鳥遊さんは止めてくることもなかった。
「ミユ、RABBIT4。何故狙撃をしようと?」
「あ、え、み、ミヤコちゃん……ち、ちがうの…ミヤコちゃんが心配で…」
額に思わず手を当てた。先生の言った通りだったらしい。私のことを想ってしてくれたのは個人的に嬉しく思うけど、統制が取れていない証拠でもあって複雑な気分になる。
私はまた同じことを繰り返していた。見極めていこうと決めたでないか。
「……先ほどは大変無礼な発言をし、申し訳ありませんでした」
「ううん、いいよ。これから慣れていこうね」
先生は本当になんとも想っていないのか笑顔だった。緊張感が抜けた瞬間、ずっと漂っていたココアの匂いが強烈に私を誘惑する。ミユもびくびくしながらもココアから目を離せていなかった。
「ココアですか!美味しそうですね!」
「イズナちゃんも飲んでく?」
「是非!」
小鳥遊さんが久田さんに聞いて、そのついでとばかりに私たちへ視線を向けてくる。生暖かい視線に、私はうめくしかない。
「うぐっ……」
「まぁまぁ、毒が入ってるわけでもないからさぁ、おじさんとお茶していこうよ」
「それは……」
「それにさぁ、ずぅっと気を張ってても疲れちゃうし、ここにいる時ぐらいは休もうよ」
ね?と小鳥遊さんは声をかけてくる。私よりも幼く見えるのに彼女からも草鞋野先輩のように先に既にいる人のように感じた。まるで私の中にあるしこりを溶かしていくような空気感に、耐えることはできなかった。
「お邪魔にならなければ…お願いします」
「ほい。じゃあ先生勝手に色々使うよー」
「ご自由にどうぞ〜」
私は何をしているんだろう。申請書を出してすぐに戻るつもりだったのに、よく知らない生徒二人を前にココアを飲んでいる。…このココア、おいしい。
「いや〜おいしいね〜。エリカちゃんのオススメなだけあるよ」
小鳥遊さんが言うにはこのココアは草鞋野先輩のオススメらしい。せっかくなので、私よりは彼女を知っていそうな小鳥遊さんに色々聞いてみるものいいかな。
「あの……小鳥遊さんは草鞋野先輩とは…」
「ん?エリカちゃんとはシャーレとの共同任務でねー。どしたの?知りたいの?」
「いえ、その…私は世間の評判でしか知らないので…先輩のことを」
「なるほどね〜。じゃあせっかくだし、おじさんの武勇伝ついでに話をしてあげようかな?先生、この前のは話していいかな〜」
「いいよ」
先生から了承の声が返ってきた。先生は何をしているのかと見れば、デスクに向かって仕事をしているようだった。時折私たちをちらりと見ていて、気にかけている。
「じゃ、エリカちゃんと一緒にカイテンジャーって連中を追ったんだけど――」
そこから語られたのは草鞋野先輩が小鳥遊さん……話の途中で彼女がアビドス高等学校の生徒会長であることがわかって、通りで実力者だと納得した……と一緒に行ったというカイテンジャーに対する調査任務だった。
連邦生徒会からの支援任務というSRTが本来担う役割を代わりに請負って、かつSRTと違い正規の手続きで自治区の長へ許可をとりそこで任務へ向かう。草鞋野先輩はそういった手続きを大切にしているようだった。
そして、凶悪な指名手配犯であっても警告を行う姿勢。ヴァルキューレでなくなっても、真っ直ぐなのは彼女の性分なのかもしれない。
「それならイズナも話していいですか!?あれはそう、イズナがまだ主殿たちと敵対していた時のこと…」
続けて、久田さんからも話が続いた。
百鬼夜行は独自の文化が強くて、あまり触れ合うことが多くない。研修の任務で赴いたことはあったけど、深くは知らない。そんな地で空想の筈の存在である忍者の久田さんの話はまるでドラマのようだった。
騙され、正義と思い最初は先生と草鞋野先輩に銃を向け、何度かの対峙を経て久田さんは先生と草鞋野先輩に諭されて、雇い主に反旗を翻したそうだった。
ただ、話を聞いていると久田さんの実力はとてもただの1生徒とは思えない。草鞋野先輩を一度死角から襲ってノックアウトしたらしい。忍者…恐るべし、とでも言うか。
「あの……えっと…あ…ど、どうして、私を見つけられたんですか……?」
ミユが恐る恐る久田さんへ問いかけると、久田さんは楽しそうに答えてくれた。
「たまにあのビルは先生を覗き見る不届き者がいますから!」
「え……」
なんだろう。それは聞きたくない情報だった。どうやら、ミユが選んだ場所がよくなかったらしい。久田さん曰く、もう一人あそこをよく“利用している”生徒がいるらしく、そっちは望遠鏡で先生を見ていて、何度か出くわして注意しているらしい。
「いつも悪いね。あの子も悪さをしてるわけじゃないんだけど、他の子もいることがあるからね」
「いえいえ!主殿の安全を守るのもイズナの役目です!」
「頼もしいよ」
わかりやすいぐらいに久田さんの尻尾が揺れていた。だんだんと、彼女が可愛らしく見えてきた。共感したくないのに、先生がモフると言っていたことが理解できてしまう。たぶん、あの尻尾は相当フカフカだ。
「おっと、話を戻しますね!それで、エリカ殿に教えてもらった言葉にイズナとても感動しました!まるでドラマの正義の味方のようでして!」
「どんな言葉なんですか?」
「“正義とは、正当な権限のもとに行使されるべき権利である”!イズナ、正義についてとても考えさせられる言葉でした!」
呼吸が一瞬、できなかった。
久田さんがFOX小隊の先輩たちと同じ、狐族だから、私の記憶が生々しく蘇る。
――月雪小隊長。1年生最優の君達にこの言葉を預ける。SRTの正義を貫くのに大切な理念であり、私が目指す理想がくれた言葉だ。
――はっ。心して聞きます。
――“正義とは、正当な権限のもとに行使されるべき権利である”。絶対の正義は存在しない、しかしそれでも己の正義を示すための言葉だ。SRTの正義は揺るいではいけない。だからこの理念を心して任務に挑め。
頭の中がどうにかなりそうだった。その言葉は、それは、七度先輩が教えてくれたものだった。絶対の正義はない。しかし、絶対の正義を示さなくてはならない矛盾を取り払うSRTの理念の根っこ。
それが、何故、
草鞋野先輩から教えられたように出てくる。
「そういえば、エリカは百鬼夜行でイズナに会ったとき、後輩たちを思い出すって言ってたね」
「確かに言っていました!といってもイズナ、忍者なので特殊部隊とはちょっと違いますが」
呼吸が浅くなる。嘘だ。嘘だ。そんな、だって、彼女は……。
なんとか、声を出そうとすると、ひどく震えた。
「あの、草鞋野先輩の後輩、というのは」
「写真がありましたね!主殿、見せてもいいですか!?」
「え?別にいいけど、それよりミヤコ、大丈夫?調子悪そうだけど」
「問題ありません」
久田さんが草鞋野先輩のものと思われるデスクにある写真立てを持ってくる。その身のこなしが素早く、特殊部隊とはまた違う非常に洗練されたものであることがわかる。写真立てがテーブルの上に置かれ、私は頭が真っ白になった。
「あれ?ニコ先輩…?」
「ミユは知ってるの?」
「はい……とっても優しくて……私にもよくしてくれて……先輩の……FOX小隊の副隊長さんです……」
「いやはや、エリカちゃんこんなに可愛い子と写真撮っててモテモテだねぇ」
写真の中で、見たこともないぐらいニコ先輩が草鞋野先輩に懐いている様子を見せていた。ヴァルキューレ警察学校の校章がまだある制服で今よりも若干、落ち着いた表情の草鞋野先輩は、私が知っている“安全局の狛犬”としての姿だった。
「先生。この写真、どこで」
「確か、エリちゃんがSRTに研修に行った時だったかな。エリちゃんって強いでしょ?だから色々やったんだって」
繋がってしまった。考えれば考えるほど、辻褄が合う。疑惑を向けられる前の草鞋野先輩はSRTのように凶悪犯罪を防ぎ、かならず正義を示す姿を見せ、シャーレに身を置いてもなお、正規の手続きを踏む様はまさに“正義とは、正当な権限のもとに行使されるべき権利である”を体現している。
「……月雪ちゃん大丈夫?顔色悪いよ」
「だい、じょうぶ、です」
気持ち悪い、気持ち悪い。吐き気がする。
私は、何をしたんだ。
彼女に何を言ったんだ。
――あなたの存在そのものがヴァルキューレに正義がないことを証明しています
もし隣にミユがいなければ、私は今この場で吐いていたかもしれない。それぐらいに、私の草鞋野先輩への仕打ちがどれだけひどいものか理解してしまった。ぬるくなりつつあるココアをぐいっと飲み込む。甘いはずのココアに何故かビターな苦味を感じる。
「……ふぅ。すいません。お腹が空いていたので、気持ち悪くて」
本当のことと、嘘を混ぜて私は無理やり笑顔を作る。うまくごまかせているだろうか。久田さんは誤魔化せた。けれど、小鳥遊さんと先生は誤魔化しきれていない。
「そうなの?それなら何か食べてく?先生、何かある?」
「よければ近くの定食屋さんから出前頼もうか。もちろんミヤコたちだけじゃなくて、サキとモエの分のおみやげもさ」
「いえ、それは……」
「おじさんもお腹へっちゃったな〜、先生、頼んで」
私の言葉が続く前に、被せるように小鳥遊さんが言った。私の心を見抜いている。しかし、不思議と彼女のそれは不快に感じない。むしろ、私をよく理解し、同情ではなく“そうしてあげないといけない”と先生や草鞋野先輩に近いものを感じる。
生徒会長、つまりは指導者としての性なのだろうか。ミユを見れば、ココアを小動物のように飲んで、既に温かい飲み物のせいで空きっ腹が強く感じられているのか、食べ物が来るということに目を輝かせていた。
「オッケー。じゃあお土産の分も含めて頼んでおくよ。いなり寿司でいいかな?」
「お、いいね〜。ちょうどここにはお狐様もいることだし縁起いいんじゃな〜い」
「ほ、ホシノ殿!そんなイズナはお稲荷様のようなものじゃ」
「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん」
強引なぐらいの気遣いが、今の私には有り難かった。自分の中にある大切なものを自分自身で折って、粉々に潰してしまったかのような感覚があった。私は知っていた。デモも正規の手順を踏めばいいことを。それでは効果は薄いと、自覚した上で罪を犯した。
草鞋野先輩の理念を曲解して私たちはデモをしようとしていたのだ。私たちは間違いなく正義を語るには相応しくなく、私自身が、草鞋野先輩に正義を示されるべき存在だった。
「ミユ」
「………ミヤコちゃん?」
「帰ったら、みんなで話をしましょう」
「え…?」
小声で、ミユに伝える。今一度見直さなくてはいけない。私たちが本気でSRTを復活させるのなら、その方法を。SRTであり続けるのなら、その資格を示さなくてはいけない。本来は誰しもがあるべき“権利”を以って正義を示すために。
なんかミヤコ冷静すぎないか、と思いますが本作ではデモ後に3日ほど勾留されてるせいで考える時間が結構ありました。
イズナは好きなキャラでなかなか登場させる機会がないのでここで出てきてもらいました。身体能力で忍術をやってみせるあたりキヴォトスでも凄まじい強さだと思います。