どっちとも”肉”の描き方すごいよね…と思ってる夏です。
オデュッセイアの占領地となってしまったエリアを迂回し、私たちシャーレのキッチンカーはほぼ整備されていない峠道を通ってアウトランド・リゾートへ入ろうとしていた。道はガッタガタだし、倒木も平気で放置されていてここ数年使われていないことがわかる。
「ほいっ、と!」
「エリカさん、すごいですね。こんな大きな木を片手で……まるでミカさんみたいです」
「そうかな?ありがと」
道を塞いでいたふっとい木を退けたらナギサちゃんが随分と感心していた。ハルナもそこまで太く無ければ木ぐらい飛ばせるし、ナギサちゃんはあの椅子を引きずってるところからすると馬力があんまりない感じなのかな。ナギサちゃんの仕事からして特にそれで問題はないと思うけど。
「それにしても、ここまで整備が回っていないとは。トリニティではありえません」
「…ふぅ。ゲヘナでもありえませんわ。元々はレッドウィンターの衛星学園だったと聞きますが、どうしてここまで困窮を?」
ハルナも他の瓦礫などを退けて、やっぱりこのひどい状態を不思議に思ったようだった。
「みんなありがと〜!」
先生は私たちが進路を確保している間、車を走らせてもらっている。
「ひとまず塞がれてた道は開いたから前に進みましょうか。先生!代わります!」
先生に呼びかけて私は車に戻ると、運転席に座って、ナギサちゃんとハルナも座席に戻った。舗装はひび割れ、落石などもあるのかガードレールは破壊されている。いくら困窮したといっても、ここまで自治区内の整備がままならないのは珍しい。それこそ、アビドスぐらいだろうか。自治区内の維持管理ができないレベルまで陥ったのは。
「最新のナビにも乗っていますから、廃道もされていないです。先生、この自治区の元にあった学園のこと知ってます?」
「一応、資料は見たことあるよ。オレンジパウンド高等専門学校っていう、工業系の学校だったね。レッドウィンターの衛星学園の中では特に問題もない普通の学園だったけど、私がくるちょっと前ぐらいから急に学校の資金難に陥って、最後はレッドウィンターに身売りした形だね」
「おかしくはありませんか?仮に学園がただ破産してレッドウィンターへ編入されたのであれば、何故オクトパスバンクが土地を?」
ナギサちゃんの言うことはほんとその通りで、なんで一企業が学園の自治区の土地を持っているのかよくわからない。ペーパーカンパニーっていうぐらいだから何かある。
「…………」
ハルナは考えてるのか黙ってる。裏社会のやり口をよく知ってるハルナなら、何かわかるかもしれない。
「先生、それで、ここの生徒たちはどうなったんですか?」
「生徒たちはみんなレッドウィンターに無事転入してるから大丈夫だよ。とはいえ、その子たちからすれば、今の状況はあまり気持ちのいいものじゃないだろうね」
そもそも、転入してるのであればトモエさんが絶対事情を聞いてるはずだけど、それを言ってこない。ということは、私たちに不都合ということだ。もしくは、トモエさんがそれを私たちに教えれば、事態を思い通りにコントロールできなくなるか。
うーん、ますますわからなくなる。こういう類の政治ゲームは得意じゃないんだよね。
「ナギサちゃん、私は政治のこととかよくわからないけど、どう?」
「私もよくは………ただ、佐城トモエが先生やエリカさんに依頼をするのみで、核心に触れなかったことは、そうすることでレッドウィンターにメリットがあるからでしょう」
トモエさんからすればチェリノちゃんのためにすぐ問題を解決したいはずだから、シャーレを頼って遠回りなことをする意味がわからない。トモエさんは一体私たちに何をさせようって言うの?
「エリカ、とにかく今は進もう。考えても真意はわからないよ」
「それもそうですね、先生」
まずアウトランド・リゾートにすら入れていないのに、こんなこと考えてもしょうがない。道は相変わらず険しいけど、少しずつ走れるようになりつつある。急カーブを右に曲がると、徐々に道が降り始めた。峠を越えて、この元オレンジパウンド高校の自治区に入ったみたい。道路脇に自治区境界を示す緑の標識が見えた。
「無事自治区には入れたみたいです」
「あの平地を除けば峠道……自然の防壁ですわね。この自治区は」
「黒館さんの仰る通りかと。レッドウィンターは平野部が多いですから。このような山岳地帯を手に入れたのは他の学区と抗争があった場合便利に働きます」
「ふふっ。物騒ですわね」
「あっ……ごめんなさい。つい癖で……」
「いえ。政をされておられる桐藤さんがそのようにお考えになるのは、仕方のないことだと思いますわ」
車内でハルナとナギサちゃんの二人が話すと突然空気が上品になりすぎてすごい。私なんか二人と比べたら一般家庭だし、先生もたぶんお嬢様とかではないと思う。世界観が違うもんなぁ。
――コンコン♪
「ん?」
聞き覚えのある可愛い狐の鳴き声が聞こえたので右の窓の方を見た。
「は?」
「え?」
私と先生が間の抜けた声を出した。窓の外に何故かイズナちゃんの顔が逆さまであった。……いやいやいやいや!?
「きゃっ!?」
「え、エリカさん!?」
思わず急ブレーキ。イズナちゃんはその衝撃をうまく使って私たちの車の進路上に降り立った。着てる服、というかホットパンツに水着、サンバイザーにいつものサブマシンガンを手にしたどうみても夏満喫中といった様子。確かにこの地区は異常気象で暑いけど、水もないところであんな水着を…?
「ごめん!みんな!けど、なんでイズナちゃんがここに?」
「ほんとだね。ちょっと話聞いてみようか」
先生がシートベルトを外してドアを開けた。もちろん私たちも続いて降りる。嫌な予感がする。私は相手がイズナちゃんであるにも関わらず、今の武器であるアサルトライフルを手にした。もちろん、セーフティーを外して。
「イズナ、どうしたのこんなところで」
「主殿!どうです!?イズナ、夏バージョン!」
「可愛いよ。ビキニ似合ってるね」
「えへへっ、ありがとうございます」
いつも通りのイズナちゃんだ。でも、なんで、どうしてここに?
「イズナちゃん、久しぶりだね」
「エリカ殿!お元気そうで!エリカ殿たちもこちらに遊びに?」
「うん。イズナちゃんも?」
「いえ、イズナはちょっと事情がありまして…」
苦笑いするイズナちゃん。事情ってどういうことだろうか。
「それにしても、そちらの方はどちら様でしょうか?エリカ殿と同じ制服ですから、ヴァルキューレの方とお見受けしますが」
おっと、ナギサちゃんにやっぱり触れてきた。ナギサちゃんはビクッとして少し硬くなりながらも、ものすっごくへたっぴな敬礼をして答えた。
「ほ、ほんかんはナギサ、です!」
「ふむふむ、ナギサ殿ですね!イズナは百鬼夜行のイズナです!」
イズナちゃんは人見知りしないし、たぶんこんな時じゃ無ければナギサちゃんにもぐいぐい来てそうだなぁ。あとはハルナだけど……流石だね。ちゃんとハルナもいつものスナイパーライフルを持ってるし、いつでも撃てるね。
「エリカさんはお狐さんを誑かすのが得意なのですね」
「誑かしてないよ」
まるで私が狐っ子を侍らせてるみたいに言うのやめてよ。ナギサちゃんに誤解されるし、それはどっちかというと先生だよ。
「イズナさん、と言いましたか。わたくしはハルナ、と言います。どうぞ、よろしくおねがいしますわ」
「ハルナ殿ですね!どちらの学校の方なのですか?」
「ゲヘナですわ。百鬼夜行には何度か足を運ばせてもらっていますの。百夜堂という素晴らしいお店がありますし」
んっ?今、ハルナの発言の中でイズナちゃんの耳がピクっとした。何か、何かが引っかかったな。イズナちゃんと正面からやりあったら負ける。私は間違いなくその確信がある。私、自分でも不器用で、パワーでゴリ押しするタイプなのはわかってる。
だから、身体能力だけで変わり身の術をやってのける異常な敏捷性のイズナちゃんとはすこぶる相性が悪い。
前に戦った時、私は奇襲を受けて、イズナちゃんに気絶させられたけど何も一撃じゃない。まるで分身しているかのような超高速での全方位からの打撃と銃撃――つまりは一人での多重包囲攻撃を受けて沈黙させられた。
「ねぇ、イズナちゃん」
「なんでしょうか、エリカ殿」
「百歩譲って水着なのはわかるよ。ここ暑いし。けどさ、なんで私たちの車を見つけてここにいるのかな。ここ、正規ルートじゃないよ?」
私の指摘に、イズナちゃんは困ったように苦笑いするだけだ。先生もようやくおかしいことに気がついたのか、イズナちゃんに一歩近づいた。
「イズナ、どうしたの?何か用があるんでしょ?」
「はい、主殿!その、あの〜、支援要請をしたくて」
「言ってみて」
支援要請…その言葉が出て私は少し気を抜く。わざわざここに現れたということはきっと探していたのかな。となれば、急を要する支援要請。私たちシャーレならば聞いてあげなくてはいけない。
「エリカさん、いいのですか?」
「ナギサちゃん。私たちはシャーレだからね」
私たちにも目的はあるけど、助けを求める生徒を放っておくことは絶対できないのでナギサちゃんの懸念は聞けなかった。
「今、イズナはお祭り運営委員会のシズコ殿を手伝っておりまして」
「シズコもここに来てるんだね」
「はい」
シズコちゃんといえば、イズナちゃんと出会うきっかけになった支援要請を出した百鬼夜行の子だ。委員会の部長で、猫被りがちだけどハルナも認めるスイーツ作りを初めとした料理家としての優れた才能に加えて、お祭り運営委員会を束ねるだけの興行力を持ったすごい子だ。確かにあの子ならこの場所で何かをしようとすればできるかもしれない。
そんな子の手伝いを何故イズナちゃんが?イズナちゃんは忍術研究部所属で、関係ないよね?
「イズナちゃん、なんでシズコちゃんを手伝ってるの?」
「なんでもここ、アウトランド・リゾートに百夜堂のふらんちゃいず?を作るそうで!イズナは陰陽部のニヤ殿から手伝いを頼まれました!」
陰陽部。百鬼夜行の生徒会に相当する組織で、しかもニヤというと名前は聞いたことがある。生徒会長だ。会ったことはないけど、ヴァルキューレ時代にかなりの食わせ者だって噂を聞いてる。
「そうなんだ。イズナ、それでどうして私を探してたの?」
「そうでした!それで、イズナ、先生に来てほしくて!シズコ殿たちが大変なことになっているんです!」
「大変なこと?」
「とにかく、一緒にきてください!」
「うーん、そうしたいのはやまやまなんだけど、流石に私の身体は3つもないからなぁ」
珍しく先生が断ろうとしている。内容によるだろうけど、同時に何個も支援要請には応えられない。それはそうだ。だからこのまま、とはいかないだろうな、と私は意識を変えた。同時に目の前の忍者の空気が変わったからだ。
「主殿ぉ!そこをなんとか!」
「どうしよ……」
「ぐぐっ……本当はしたくありませんが……!シズコ殿からは手段を選ぶな、と言われていますので!」
「えー……シズコ、何がおき――ぐえっ」
本当に僅かな、瞬きした時には目の前からイズナちゃんが消え、先生からカエルを潰したような変な声が出て、先生も消えた。代わりに、トタンッ、と音を立てて私たちの背後にあるキッチンカーのキャビンの上にイズナちゃんはいた。先生を抱えて。
うーん、無理!イズナちゃんには勝てないなこれ!
「な、なんですの、彼女は」
「一瞬で先生を攫ってあんな位置に!?」
「流石キヴォトス最高の忍者だね」
「「忍者!?」」
お嬢様ズが声を揃えて驚いていた。忍者なんて物語の中でしかいないはずの存在だもんね。けどイズナちゃんは本当の忍者だ。存在しないはずの存在。だからここまでの力があるのかもしれない。
「先生を離してください!」
ナギサちゃんが遅れて銃を抜いた。咄嗟に抜いてるせいか構えがあまりよくない。
「ナギサ殿!申し訳ありませんが、暫し、先生をお貸しください!イズナたちには先生が必要なんです!」
「それは私たちだって…!」
「ふふっ、どうしてこう、わたくしの前に現れる狐さんは強引なのでしょうね?」
誰のことを言ってるんだろうハルナは。
これはもう無理だ。イズナちゃんと敵対する方が時間のロスがたぶん大きい。先生もそれをわかってるのか、ほぼ諦めモードで、私に「あとはよろしく」と言わんばかりの表情をしてる。とりあえず頷いておいた。
「では、申し訳ないですが、一度失礼します!」
「警告しますっ!動かないでください!う、撃ちますよ!?」
いやまずいって。
「桐藤ッ!撃つなッ!」
「ひぅ…!?」
「行きますよ主殿!しゅばばばばっ!」
はぁ…やってしまった。けど、言わないとナギサちゃん撃ってたし、しょうがない。イズナちゃんはあっという間に木々の向こうへ消えていった。先生という大人を抱えてあの身のこなし。本当に敵わない。
ナギサちゃんは私に怒られたせいかものすごくビクビクして羽がしおっとしていた。心が痛い。
「ごめんナギサちゃん。でも、あの状態で撃ったら先生に当たる可能性もあったから」
「……そ、そうですよね。むしろ、こちらも申し訳ありませんでした」
「ううん、こっちこそ。むしろ、ちゃんと警告してくれてありがとう。その子を撃つときは絶対に警告をしてからにしてるってこと、ちゃんと覚えてくれたんだね」
銃を貸す時に伝えたことをちゃんとナギサちゃんが覚えてくれていたので嬉しかった。ありがとう、と笑って返してあげると、ナギサちゃんはホッとして、少し頬を赤くして「はい!」と応えてくれた。
「………こほんっ!それで、どうするんですの?」
わざとらしくハルナが咳払いして言ってきた。いや、先生拐われたけど何も悪党に拉致られたわけじゃないしさ。
「どうするもこうするも、先生はしばらくイズナちゃんたちの手伝いでいなくなったから、私たちだけで行くよ」
「手伝い……どうみても拐われていませんでしたか?」
「こればかりは同感ですわ。本当に大丈夫ですの?」
「二人の疑問もわかるけど、イズナちゃんは、ほんっとうにめちゃくちゃ良い子だから大丈夫」
このキヴォトスではむしろ天然記念物クラスのいい子だと思うよイズナちゃん。私たちと前に戦った時もいい子すぎた結果騙されたわけだし。シズコちゃんについてる限りたぶん大丈夫だろうし、ここは我慢するしかない。
それに、先生がいない状態での任務は何もこれが初めてじゃない。
「先に進もうか。時間も有限だからね」
車へ戻るように促し、私も戻る。二人は素直について来てくれた。
3人とも乗り込んだので車を再発進させた。
峠を下ってアウトランド・リゾート内に入ったと思ったら、私たちを出迎えたのはまるでアビドスのように砂漠に呑まれた何かの都市だった。巨大な像があったのか、砂の中から顔と左腕だけが見えていた。
「どうなってるのこれ」
「確かに暑いですが、砂漠化するような場所ですの?ここ」
当然のように車はここから先へ進むなんてできない。道がそもそもない。後ろを振り向けば鬱蒼とした木々があって、自然豊かな山が聳えているのに降りたらこんな砂漠だった。文明でも滅んだの?と言わんばかりだ。車を降りれば、湿気がないカラッとした“熱さ”…があると思ったらわりと普通の夏の暑さ。アビドス砂漠で感じたものとは違う。
「そういえば、こんな映画がありましたね」
「どんな映画?ナギサちゃん」
「宇宙を旅していた人類が迷い込んだ原始時代が、実際は一度人類が滅んだ未来の地球だった……なんて映画が」
「もはや古典の映画ですわね。桐藤さんはそういったものも嗜まれるので?」
「えぇ。おやすみを頂いた時に、どうしても時間が余るときは」
「悪くない余暇の過ごし方ですわ」
いやいや、峠を抜けたら文明滅んだ未来だった、なんてある?……宇宙戦艦(の主砲)が存在したり、忍者がいたり、永久に溶けない氷があるからありえるのかもしれない。
「それにしてもこの顔、見覚えが……」
「ゲヘナの確か……あぁ、そうですわ。マコト議長ですわ」
「その人ゲヘナの生徒会長だよね?自分の学校の会長うろ覚えって」
「ゲヘナ生はこんなものですわ。むしろ、生徒会、万魔殿のイブキさんが生徒会長と思っている生徒すらいますわ」
ゲヘナって良くいえばとても奔放で自由な学風だけど、悪く言えばもはや学校とは?となってるのはあると思う。トリニティとは昔は血で血を争うような抗争もあったみたいだけど、正直なところ、現代ではハイソなお嬢様学校と超絶不良校って感じだよね。
もちろん、昔の流れを汲んだ過激派が双方にいるからエデン条約は決して無意味じゃない。
しかしそれにしても……自分の学校の生徒会長すら把握してないとは思わなかった。
「マコト議長の像なのはわかりましたが、何故こんな砂漠に呑まれているのでしょうか」
「わかりませんわね。それこそ、もしかしたらここは未来のゲヘナなのでしょうか」
「いやいや。そんなことないって」
よく見ればこのマコト議長の像、たぶん石造りのだけど、表面はまだまだ綺麗でつい最近できたものだとわかる。砂埃だらけだけど。気候からしてもこれ、砂漠化したわけじゃなさそう。じゃあこの砂はなんだってなるけど。
「二人は砂漠行ったことある?」
「ありませんわね」
「私もないです」
「そっか。砂漠ってこういう湿気がある暑さじゃないんだよね。もう、こう“渇ッ!”って感じの熱さでさ」
「そうなんですか?」
ナギサちゃんは本当に純粋だ。ハルナもまぁ……砂漠似合わないし、現状一番大きい砂漠のアビドス自治区ってハルナが興味を向ける美食、柴関ラーメンぐらいしかない。
ここの暑さはなんというか、砂浜に近いかな。
「ビーチの暑さに近いかな、ここの暑さは」
「なるほど、言われてみればそうですわね。いっそのこと、水着になります?」
「ハルナは持ってきてるの?」
「いえ、全く」
「ナギサちゃんは?」
「ヒフミさんを保護するためですので、そのような装いは用意していません」
「だよね」
一応、私とナギサちゃんが着ているのは夏用なので半袖になってるし生地も通気性がいいものになってるので見た目ほど暑くないけど、暑いものは暑い。水着になるのはさっきのイズナちゃんみたいに涼しそうでありだ。
今回の支援要請も出発まで急だったので水着なんて用意できてない。夏後半のどこかで先生と海とか行きたいな……。
「一応先生にここの状況を報告しておかないと」
ともかく、進んだ先で街が砂に呑まれてましたってことを先生に伝えようと携帯を取り出したら画面右上に「圏外」の文字が。うそ、ここ基地局すらないの?ないか…こんな砂に呑まれちゃったら。
「どうしたんですか?エリカさん」
「圏外だよここ」
「まさか……わたくしのもですわね」
あれ?これマズくない?
「エリカさん、どうしましょうか」
「うーん。前に進むしかないよねぇ」
こんな砂まみれのところにずっといてもしょうがないので少しでも前に進むしかない。幸い、多少の起伏があるけど、砂丘みたいにアップダウンは激しくないからものすごい遠くに別の地区が蜃気楼の先に揺らめいて見える。なので歩き続ければ到着するはず。
歩きながら、この場所の謎も解き明かしてみよう。
「ハルナ、ちなみにあの車はレンタカー?」
「まさか。中古ですがちゃんとわたくしの持ち物ですわ」
「そっか。事が済んで回収できればいいけど、ダメだったときは弁償するよ」
「エリカさん、そんなこと気にしなくてよいのですよ。わたくしの好きで私はあなたを手伝っているのですから」
気にしないで、と言われてるけどいくらハルナ相手でもそこは私気にするんだよ。万が一何かあったら先生に相談しよう。元はと言えば、先生が頼んだわけだし。
「ナギサちゃん、行くよ?」
「あっ、はい。ただ、その前におひとつ……聞いてもいいですか?」
「ん?いいよ」
「エリカさんと黒館さんはお付き合いされてるのですか?」
何故かナギサちゃんからよくわからん話が出てきた。いやいや、ハルナと私が付き合う?ないない。確かにハルナはいい子だし、お家柄も悪くないし、なんだか私を助けてくれるけど、テロリストだよ?
「ハルナ、私たちの関係はそんな感じじゃないもんねぇ?」
否定しようとハルナの方を見たら何故か明後日の方向を向いていた。どうしたの?
「ハルナー?」
「…………エリカさん」
「なに?というか向こうに何かあるの?」
「いえ、何も。ただあの雲……エビフライに見えません?」
意味不明なことを言ってるけど、ハルナが指差した方向にある雲は確かにエビフライのような形だった。もしかしてハルナお腹減ってる?
「ハルナ、朝ごはんちゃんと食べた?」
「もちろん食べていますわ。それよりも、あの雲、エビフライですわね」
「それはわかったよ」
暑さでおかしくなったのかな。こんな短時間でそれはないか。
「ふふふっ……すいません。変なことを聞いてしまいましたね。先に進みましょうか、お二人とも」
妙に誤解されたような気がしなくもないけど、ナギサちゃんの言う通り前には進まないとなので、雲を凝視ししてるハルナの背中をポンっと叩いて私は前に出た。
「ほら、行こう?」
「は、はいですわ!」
なんでテンパってるんだろうか。私は歩きつつ身につけている装備に異常がないか確認し、右手に持ったアサルトライフルを構え直してこの無限に続くかのようなビーチを進み始めた。
イズナとの相性最悪主人公(戦闘的な面で)。射撃の命中率はいいですが、そもそも撃つ前にやられるのでエリカではイズナに勝つことが大変厳しいです。
ちなみにハルナはナギサがエリカに堕とされないかとめちゃくちゃ気が気でない状態です。