頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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今回の連続投稿はここまで!

ちなみに今回初登場の某議長について先に言っておきますが作者は結構好きです。


Area-05「アウトランド・リゾート 無限ビーチ #水辺どこ #砂漠? #開発地区」

 砂漠ほど暑くはないけど、日陰がないから日差しが厳しい。レッドウィンターの自治区とは本当に思えない真夏日だ。日焼けに関しては一応日焼け止めを塗っておいて、念の為持ってきていた日傘はナギサちゃんに渡している。

 

 ハルナもしれっと日傘を差していて準備がいいことで。

 

「水分の補給はしっかりね。もし体調が悪くなったらすぐに言うんだよ、二人とも」

 

「これぐらいでへこたれませんわよ」

 

「まぁハルナは意外とタフなの知ってるから」

 

「……それは褒められているのでしょうか」

 

「さぁ?」

 

 テロリストやってるハルナは食が細かったり、体つきも細いけど実際のところ結構タフなんだよね。伊達に一度もヴァルキューレに捕まってないだけある。問題はナギサちゃんだよ。私たちみたいにこういう強行軍に慣れてるわけがない。この子は後方指揮官なんだし。

 

 私が目を見やると、まだ平気そうだけど暑さを我慢してるのか、前にトリニティで会ったときとちょっと近い含みがあるような顔だ。

 

「ナギサちゃん?」

 

「どうしましたか、エリカさん」

 

「少しでも体調に違和感を感じたら言ってね。休むから」

 

「お気遣い、ありがとうございます。まだまだ平気ですよ」

 

「無理だけはしないでね」

 

 よく目を配ってあげないとね。

 

 この砂地を歩いてるけど、時折建物の残骸が見えるぐらいで、最初のマコト議長の像以外のハッキリとした構造物は見えない。なので特にここがなんだったのか手がかりを得る方法がない。

 

 こんな一面埋まってるなんてまるで砂が滝のように降り注いでしまったかのような形だけど、そんなことありえるのかな。というか、ここにいたであろう生徒たち、まさか生き埋めになんてなってないよね……?

 

「むっ」

 

「どうしましたの?耳をピコンとして」

 

「ちょっと静かに」

 

 私たちの足音以外に、ようやく何かが耳に届く。人の足音ではない、何か車両。この砂漠だから無限軌道だ。それが2、3台。方角は私たちが進んでる北から10時の方向。北西から。

 

 視線をそちらにずらせば、砂煙を立てているのが見える。

 

「二人とも、武器はいつでも使える状態に」

 

 指示をして、臨戦態勢に。おそらくは戦車。今回は盾を持ってきてないから先制攻撃されたら二人を庇えない。

 

 ハルナにスコープで相手を見てもらおうと思ったら既にやってた。

 

「わかる?」

 

「ゲヘナのⅢ号戦車ですわね」

 

「やっぱりここ、ゲヘナ生が開拓してるところなのかな」

 

 ゲヘナ所属の戦車がいるってことで、ここがゲヘナの開拓地なのはもう完全に間違いないかな。徐々に戦車が近づいてくる。ハルナの言った通り、ゲヘナで運用されてるIII号戦車で間違いない。主力はⅥ号戦車だけど、こういう砂漠とかなら軽いし扱いやすいはず。

 

「ゲヘナの戦車隊は優秀と聞きます。気をつけてください、エリカさん」

 

「了解だよ、ナギサちゃん」

 

 一応、ヴァルキューレにも今の情報は伝わってた。特に、ゲヘナ戦車隊の指揮官が乗ってるⅥ号戦車はとんでもなく強いって聞いた事がある。もしその子が乗り換えて指揮を取っていたら厄介だ。

 

「桐藤さん、そういえばトリニティは戦車隊の話は聞きませんわね」

 

「トリニティでは正式な戦車隊はありません。その代わり、全学年クラスに備品として戦車を配備、誰でも使えるようにしています。特にヒフミさんはドライバーとして大変優秀で…」

 

「ヒフミさん、という方のことを本当に大切にされていますのね」

 

「えぇ」

 

「………恥ずかしげもなくよく言えますわね」

 

「愛とは、語られない詩とも言いますが、告げておきませんといつ言えなくなるかわかりませんから」

 

 お嬢様方、結構余裕だなぁ〜って雑談を聞き流しながら警戒は緩めない。流石に他校の持ち物だからやらないけど、もし襲われたら撃破しなくちゃいけない。素手でやるのは時間かかるし、壊してシャーレに請求行くの嫌だから話すのだけで済むといいけど。

 

 ついに戦車がやってくる。私たちを向こうも認識してるのか、ある程度の距離(だいたい5mぐらい)のところで相手は止まってくれた。ゲヘナの校章が見え、間違いなくゲヘナの戦車だ。

 

「ナギサちゃん、出来るだけ目立たないように、私に被るようにいてね。あと帽子はちょっと深めに」

 

「は、はい」

 

「ハルナは私と一緒にナギサちゃんに被ってね」

 

「わかりましたわ」

 

 一応、外交問題を避けるためにナギサちゃんを目立たないようにする。まぁ何か聞かれても新人ってことで通そうか。

 

 止まった戦車の1台目のキューポラが開く。ヌッと出てきたのは随分身長が高いこんな真夏なのにマントまでつけた銀髪の人。

 

「ようこそっ!我がマコトランド改め、スーパーゲヘナビーチへ!」

 

 めちゃくちゃさっき見た顔!ゲヘナの羽沼マコト議長!?なんでこんなところに!?

 

 え、というか待って?ここやっぱり砂浜ってことなの!?

 

「ん……なんだ貴様らは。ヴァルキューレの警官二人に、ウチの生徒だな」

 

「お会いできて光栄ですわ。羽沼議長。三年の黒館ハルナですわ」

 

「……………?」

 

 ものすごいハルナを凝視してるけどまさか自分のところの生徒をご存知ない?学年的にもたぶん同じだよね?

 

「まぁいい。それで、お前たちがこのビーチの客第一号というわけだな」

 

「あの〜、一ついいでしょうか」

 

「キキキッ、いいだろう。客人は持て成さないとな。私は今、気分がいい、なんだ?」

 

「ここ、元はさば…ビーチじゃなかったですよね?」

 

「あぁそうだ。元は最強のリゾート、スーパーマコトランドだった」

 

「何故ビーチに?」

 

 気になったので聞いてみたら、マコト議長は何故か少し視線を私たちから逸らした。落ちこんでる?

 

「イブキ……いや、身内からビーチで遊びたいと言われてな……だからアビドス砂漠から持ってきた砂で全て埋めた!どうだ、こんな広いビーチは見た事がないだろう!?」

 

 ちょっと、この人もしかしたらバ……思い切りが良すぎる人なのかもしれない。あとアビドス自治区にこの人勝手に侵入して砂持ってきたのかな。勝手に自治区に侵入されたのホシノちゃんにバレたらこの人ボコボコにされません?

 

「確かに見た事がありませんわ。それでここではどんなサービスを受けられるのかしら?」

 

「サービス?なんだそれは。遊べ、今ここで!」

 

 いろんな命令を受けてきたけど、遊べって命令は流石に初めて聞いたよ。まぁ、私たちが遥か未来に飛ばされたとかじゃなくてよかった。

 

「遊ぶのはいいですけど、ここ、ビーチって言うぐらいだから水辺あるんですか?」

 

「当たり前ではないか。このビーチの先にはこのアウトランド・リゾート一の遊泳場である湖がある」

 

 なるほど。なら、この先に行けばまずナギサちゃんの目的である阿慈谷さんに会えるかもしれないね。

 

「わかりました。とりあえず水辺まで行って遊びたいと思います。では」

 

 なんだか面倒臭い予感がするので私はマコト議長たちをすり抜けようと一歩踏み出そうとした。が、耳に届く砲塔の駆動音。ピタリと私は足を止めた。

 

「どこに行く。このビーチで遊ばないつもりか?」

 

「いえ、ですから水辺に」

 

「ここで遊べ」

 

「何故ですか?」

 

 これはダメかもしれない。マコト議長へ視線を向ければなんとも支配者ですと言わんばかりの表情だった。愚問、とでも言うのかな。

 

「お前たちに理由を問われる筋合いはないな」

 

「………やはりゲヘナは……」

 

 ん〜〜!?これ逆にナギサちゃんに悪印象植え付けてるし私が外交問題のタネ作ってるよ!?こりゃまずい!どうしよ、とハルナの方に助け舟を求めたら、ハルナはしょうがないですわね、とウィンクしてくれた。顔がいいから似合うの腹立つッ!

 

「大方、羽沼議長のことですからわたくしたちがここで遊んでるのをイブキさんに見せるのでしょうね」

 

「ギクっ!?」

 

「え」

 

 ナギサちゃんが困惑に満ちた声を漏らしたけど私もおんなじ声が内心でた。どういうこと?

 

「議長、イブキさんはこの砂浜をお気に召さなかったのではなくて?」

 

「ギクククッ!?」

 

 ものすんごい図星突いてる!?

 

「そうして、遊んでいればイブキさんにもどうだ、と勧めるつもりなのでしょう」

 

「き、貴様…!まさかトリニティのスパイか!?」

 

「いいえ、まさか。わたくしの“神秘”をご存知ないわけではないでしょう?そこから考えればトリニティに与することなどありえませんわ」

 

「知らん!」

 

「はい?」

 

 神秘…?なんの話?何かの格的な話なのかな。ただ、それはマコト議長に通じなかったようで、言い切られてまさかのハルナの鳩が豆鉄砲を受けたような表情に笑いそうになる。ハルナもこういう顔するんだ…。

 

「……あの、本当に彼女はゲヘナの議長なのですか…?」

 

「ナギサちゃんの気持ちちょっとわかるかも…」

 

 あと、イブキって子が本当の議長というか生徒会長って噂されるのもなんとなくわかる。

 

「ここまで従わないということは貴様らもしや、同じリゾート開発権を持つ“リゾート狩り”か!?」

 

「なんですかそれ?」

 

 初耳の単語だった。開発権は持ってるけど、リゾートを狩りって何。

 

「そうだな?そうだろう!やはりな!」

 

「あ、あの、ちょっと待ってくれないかな!?私たちそんなリゾート狩りだなんて」

 

「イロハがいないのが痛いが、我がゲヘナ戦車隊の練度はキヴォトス最強!貴様らはここで砂風呂を楽しんでもらう!」

 

「強制砂風呂ってそれもはや生き埋め……」

 

「行くぞおぉぉ!」

 

 まいった。勝手に相手がヒートアップして戦闘態勢に入っちゃったよ。とりあえずナギサちゃんだけでも抱っこして一旦撤退しないと。守りながら戦車三台は無理。相手が動き出す前にナギサちゃん抱えよう、なんて思ってたら私たちの影からスッと出たナギサちゃんが私の銃を構えていた。

 

「ナギサちゃん!?」

 

「ここを越えればヒフミさんがいるというのであれば!警告します!動けば撃ちます!」

 

『そんな豆鉄砲がこの大蛇丸に通じるものか!』

 

「ネーミングセンスがありませんわね。彼女」

 

「ハルナ余計に煽らないで!あとナギサちゃん流石に無茶!」

 

 全員冷静じゃない!助けて先生!っていないし!どうしようどうしようっ…!

 

『ん?よく見れば有翼か。ヴァルキューレで有翼の生徒など聞いた事がない。さては貴様トリニティ生だな!』

 

「えっ…!?」

 

『図星かっ!つまりそこのも含めてやはりトリニティのスパイか!』

 

 変なとこ鋭いなこの人。確かにその通りだ。0じゃないけど、本当にトリニティ出身のヴァルキューレ生は珍しい。ゲヘナもだけど。逆に獣人多めな百鬼夜行自治区の子が多かったりする。私も生まれは百鬼夜行自治区だし。

 

 もう、どうしようもないかもしれない。なら――。

 

『容赦するな!全車撃て!地獄の果てまで撃て!』

 

 やっば、発砲してくる。……しょうがない。

 

「ナギサちゃん、貸して」

 

「エリカさん…?」

 

 半ばひったくる形でナギサちゃんの手から銃をとって、私のアサルトライフルを代わりに押し付ける。そうして、マコト議長の乗る車両。一番正面のIII号戦車運転席の覗き穴へ銃口を向けた。

 

「警告する。動けば発砲する」

 

『だから効かないと言っている!』

 

「警告を無視し、こちらへの攻撃の意思ありと判断。発砲する!」

 

 構え、照準。トリガー。一発放って銃弾はしっかりスリットに吸い込まれた。途端にマコト議長の戦車がガックンと動きを止める。運転手の頭に命中したみたい。気絶……まではさせられてないけど、たぶん怯んだかな。

 

『なにぃ!?おい、大丈夫か!?2、3号車!反撃しろ』

 

「撃ちたくなかったのではなくて?」

 

「ナギサちゃんに撃たせちゃうと、やっぱり後で何かあったときにね」

 

 ハルナが呆れたような声で言ってくるけどしょうがないじゃん。とりあえず、戦闘は避けきれない。しかも今回はこっちから撃った。戦車を脅しに使われたから不可抗力、ってことで。

 

「え、エリカさん。まさかあなたから撃つとは」

 

「ヴァルキューレじゃないからね、今は。それに、ナギサちゃんは帰ってエデン条約も進めなきゃだし。……彼女たちもやりすぎだけど友達のために動いてるだけってわかったでしょ?」

 

 やってることはともかくとして、イブキという子のためにこんなことをしでかすあたり、マコト議長は友達には甘いのかも。そう思えば、悪逆非道なゲヘナの長、というよりはイメージもだいぶ違う。ナギサちゃんが今後、ゲヘナをこれ以上嫌いになることがないように。

 

「……格好つけて……わたくしもこう見えていたのでしょうか……」

 

「ハルナ、何か言った?」

 

「いいえ、何も。来ますわよ!」

 

 残りの2台が本格的に動き出す。左右への展開。十字砲火狙いなのが見え見えだけど、動きに無駄がない。流石にゲヘナの議長の近衛だけあるのか、かなり優秀な子たちみたいだ。やるしかない。

 

「ハルナ!やれる!?」

 

「あなたのためならいくらでも!」

 

「それなら左翼の一台よろしく!履帯壊すだけでいいから!」

 

「任されましたわ!」

 

 ならこっちは右翼の一台…っと!

 

「ひゃっ!?」

 

 展開しながら砲塔を向けて、撃ってきた。初弾で当ててくるコースで私はひやりとする。咄嗟にナギサちゃんをお姫様抱っこして飛んだ。次弾装填までの隙はあるので着地して、ナギサちゃんを下ろそう…としたけど、耳がゾクっとしてもう一回飛んだ。

 

「きゃぁ!?」

 

「もう動ける…!流石に甘くないね…!」

 

『まずは貴様たちからだ!』

 

 麻痺させたはずのマコト議長のIII号戦車がもう動き出した。ふざけてるけどこの人たち強いかもしれない。

 

「ナギサちゃん、砂吸い込まないよう、舌を噛まないように口は閉じててね!」

 

「は、はいっ」

 

「あと怖かったら目も閉じて!」

 

 おそらく一番技量が高いのは私たちに襲い掛かってる車体に“02”と書かれてる車両だ。なので私はナギサちゃんを抱えたまま相手に正面から吶喊した。

 

「エリカさん…!?」

 

「接近戦に持ち込めば!」

 

 砲口がこちらを捉える。直撃コース…だけど、砲弾は飛んでこない。何故ならば、私たちの背後には真っ直ぐ迫ってきているマコト議長の車両があるからだ。真っ直ぐ敵を追う、車長の性格がモロに出てる。

 

 なら、ぶつけてでも、というつもりなのか信地旋回でこちらに相手は車体を向けると砂を巻き上げながら加速する。一人ならすれ違いざまに砲身へスモークグレネードを入れるけど、この状態じゃ無理。

 

「ぶ、ぶつかって……!?」

 

「大丈夫!」

 

 ギリギリまでのチキンレース。根負けを先にしたのは――私。でも、ギリギリで側面に入るように避けてしまえば、相手は戦車。咄嗟にこちらへ向くことなんてできない。ナギサちゃんの足を抱えていた手を一瞬離して、腰につけていた普段は使用しない装備のピンを親指でかけて引き抜き、無限軌道の機構の中に投げ込む。そのまま砂の上にナギサちゃんを抱きしめる形にして庇う。

 

 バギャンッ!と鉄が何かに引っかかって部品が弾け飛んだ音が響く。幸いにも何もとんでこなかったみたいなので顔を上げて突っ込んでいた戦車を見れば、見事に無限軌道に何かが絡まって履帯が外れていた。

 

「な、なにをしたのですか?」

 

「えっとね、あんまり使いたくないから普段は使ってないけど、粘性の高い素材を使った捕縛用ネットが炸裂する手榴弾かな」

 

 私の拳銃と同じく、ヴァルキューレで配備が見送られた試作装備の一種で、不採用理由はご覧のとおり、戦車の足回りに絡んでも切れない靱性に加えて触れてしまえばなかなか剥がれない粘着力。取るにはお湯の中に漬けるしかなく、対人装備として使えば使われた相手は釜茹でしないといけない非人道性から採用を見送られた曰く付きの装備。

 

 なんだけど、余ったらしいので私に装備局が廃棄も兼ねてぶん投げてきた。当然私も使えるわけないので、まともに使ったのはこれが初めてだ。

 

「すごい……戦車を生身で、あんな方法で止めるなんて」

 

「ありがと。けど、装備のおかげだよ」

 

「いいえ、エリカさんの度胸があってこそかと」

 

 素直な賞賛にちょっとこそばゆくなりながらも、私は立ち上がり、ナギサちゃんに手を差し伸べる。

 

「ありがとうございます」

 

「いやいや、砂だらけにしちゃってごめんね」

 

「そんなことはありません。エリカさんの方が砂だらけに」

 

「これぐらい大丈夫」

 

 あとで水浴びすれば平気だね。さて、ハルナの方はどうなってるのか見てみようかな?

 

 ……って、もう終わってる。どうやったのかはわからないけど、私と同じく履帯を破壊して行動不能にしていた。

 

「な、なんだ!?こんな簡単に…!貴様何者だ!?」

 

 マコト議長が砲塔の中から出て私に怒鳴っていた。ここまで来たら名乗らないとね。

 

「私は連邦捜査部シャーレの草鞋野エリカです!一方的な戦車による恫喝行為に対し、どのようなご説明を頂けますか!ゲヘナのマコト議長!」

 

「恫喝など知らん!……しかし、シャーレ?どこかで聞いたような……あと、草鞋野…?」

 

『ゔぁ、ヴァルキューレの狂犬と二枚看板のやつっすよ議長!』

 

「何ィ!?…………それはまずいのか!」

 

『聞いた話じゃ悪事は全部筒抜けだって!』

 

「なんだとっ!?」

 

 いつもの“事件わらし”とは違って別の意味でゲヘナには噂が残ってるんだね〜。確かにゲヘナ生もよく捕まえてたし、それが伝わって尾ひれ付いたかな。けど、これは好都合。

 

「羽沼議長!あなたも一つの学校の上に立つ方!探られたくない腹のひとつやふたつあるでしょう!」

 

「ば、馬鹿な!?もうすでに掴んでいるのか!?」

 

「私は職務上、アビドス高校の生徒会長と親交があります!よって、この砂の調達について伝えればどうなるかわかりますでしょう!無断ですね!?この砂を持ち出したのは!」

 

「ぐっ…!」

 

「取引です!ここを通して頂ければこのことは言わないと約束しましょう!」

 

 まぁ、言ったところでホシノちゃん個人としてはともかく、学校としてはゲヘナに喧嘩を売ろうなんて思わないだろうから大事にはならないけど、あの議長の感じだとこれで押し切れるはず。

 

 さぁ、どうする?

 

「ぐぐぐっ……虎丸さえあれば…!だがここでよくわからない犬に負けるなど…!こうなれば死なば諸共ォ!」

 

 えっ、特攻!?嘘でしょ!?ナギサちゃんをもう一回抱っこしよう、なんて構えた時だった。タァーン、と乾いた音と共にマコト議長がぐらりと崩れ落ちた。当然、そうなれば戦車は止まる。

 

「「「ぎ、議長!!???」」」

 

 戦車隊の子たちが絶叫していた。もちろんやったのはゲヘナのはずのハルナ。

 

「誰の、誰が、犬…と?」

 

 うわ、なんかものすごい笑ってるけどアレものすんごいブチギレてる!?何が琴線に触れたの!?ハルナは更にそこから、何かを3台の戦車に取り付けていき、私たちの方に歩いてきた。

 

 び、美人の怒った顔ってこんな怖いんだ……。

 

「は、ハルナ、何をつけたの?」

 

 私が問いかけたらハルナは笑って、ピッと電子音と共にいつの間にか手にあったスイッチを押していた。直後、戦車が全部大爆発した。はいっ!?

 

「な、なんてことを…!お、同じ学校の生徒ではないのですか!?」

 

「うふふ。桐藤さん。先ほど、愛とは、語ってこそ、と仰っていましたわね」

 

「そ、それは、はい……言いましたが」

 

「わたくし、行動で示す派、ですの」

 

 それはもう壮絶な笑み、と言えばいいのか。こんなに怒ってるハルナ初めてみたし、あと爆発した戦車から頭がアフロになった搭乗員全員が砂の上に落ちてきていた。全員ヘイローはあるので大丈夫そう。

 

「ば、ばかな……イロハほどではないにしても、こ、近衛だぞ……ガクッ」

 

「三枚目に用はなくてよ。さぁ、湖へ参りましょう?お二人とも」

 

 い、いいのかな。いいのか?同じ学校のハルナがやったから。けど、これあとでハルナ退学とかになったりしない?大丈夫?

 

「……黒館さん、やり方はともかくとして、感謝します。助けて頂いて」

 

「わたくしが勝手にやったことですわ」

 

「結果的に、とはいえ、ですよ」

 

「どういたしまして。やっぱり、桐藤さんはトリニティ生ですのね」

 

「それはどういう意味でしょうか」

 

「他者を想い、他者をいつくしみ……礼を捨てないその姿が、ですわ」

 

 ハルナは、黒崎さんを追う過程で不法行為に手を染めたトリニティ生を見てるから、なんだかんだ思うところがあったのだと思う。でも、ナギサちゃんを見て、何か感じたのかな。

 

「まぁ、これぐらいゲヘナでは日常茶飯事。瑣末ごとですわ、桐藤さん」

 

「こ、これで、ですか!?」

 

「朝、登校したら学校の校舎半分が温泉のために採掘されて無くなっていたなんてこともありますわよ。マコト議長の石像なんて一ヶ月に一回は破壊されますし。そもそも、誰?と」

 

「……なんだか、別の意味でエデン条約が不安になってきました」

 

 聞けば聞くほどゲヘナって学校として成立してるのが不思議すぎる。こんな学校とエデン条約で不可侵条約結んでも意味あるのか確かに不安になるよねぇ〜〜〜。ただ、そこはナギサちゃんたちがどう思うかなので、私はやるなら無事成立することを祈るしかない。

 

 私たちは結果的に制圧してしまったこの開発地区の生徒たちを背に、この先にあるであろう湖に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「(エリカさんは、か弱い方が好みなのでしょうか…わたくし、お姫様抱っこなんてされたことありませんのに)」

 

 

 

 

 

 




マコトちゃんがあっさりでしたが、イブキに機嫌を損ねられて焦ってる上、実は作中の主人公たちが今いるリゾートは30度を超えているので体感温度はもっと高く、そんな中いつもの制服姿のマコトちゃんはだいぶ本調子ではありません。あと今回連れてきた面々は十二分に優秀でしたが、パワー系ゴリラワンコの主人公と、ブチギレて正月ハルナ化したハルナには流石に敵いませんでした。
イロハと虎丸がいれば分かりませんでしたが、暑い中で戦車は地獄なので来るかというと……。爆破されたあとのマコトちゃんたちはすぐに後詰めを呼んで撤退してるので熱中症の心配はありません。

砂の量に関しては突っ込まない方向でお願いします!

なお、ナギサはエリカのことかっこいいな〜ぐらいは思っています。
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