頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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リアルが忙しすぎてなかなか更新できませんでした。
この話と次の話で夏編は終わりです。


Area-09「百夜堂アウトランド支店 #おいしい #FC #かわいいオーナー」

 羽沼議長が用意してくれた食材はおいしく、昨晩のBBQはかなり盛り上がった。ナギサちゃんが完全にBBQ初体験だったのもあって、色々と教えてあげながらだったけど、楽しんでくれていた。

 

 ただ、量を食べられるのが私ぐらいだったので、かなり私は食べてしまった。お腹がちょっと膨れるぐらい。ハルナは油っこいもの好きだけど少食だし、ナギサちゃんは逆に脂っこいものをたくさん食べられないようで、ホシノちゃんはホシノちゃんで割と並の食事量なせいか、頂いた食材を全部使い切るには私がなんとかするしかなかった。

 

 幸い、一晩明けても気持ち悪さとかはないのでよかった。

 

「いやいや、昨日はいい食べっぷりだったねぇ」

 

「あんなに食べたのは久々だよ流石に」

 

 ホシノちゃんがあくびをしながら昨晩のことを言う。ヴァルキューレの頃、入学したての頃は吐くほど食べて体を強くしろって感じだったので、その頃の名残か胃が広がってるのかも。ホシノちゃんは…まぁ、うん、見た目通りの容量だよねぇ。

 

「む?なんだかおじさんに失礼な目を向けてなーい?」

 

「そんなことないよ」

 

「ほんとかな…?まぁいいや。さぁて、お嬢さん達の方はどうかな?」

 

 今は出発前なので、色々準備をしていたのだけれど、ホシノちゃんと私は流石にこれまでの環境からか準備をすぐに終えてしまって待っていたのだ。ちなみに、広げていたテントとか諸々はもう私とホシノちゃんで片付けている。別に部隊で動いてるわけでもないし、やれる人がやっちゃえばいいからね。

 

「ホシノちゃん、そういえばこういう野営の準備って慣れてるね?普段アビドスでやってるの?」

 

「まぁ、それなりにね。最近はなかったけど、アビドス砂漠を何日も歩く時はちゃんと装備を持って動いてたよ」

 

「やっぱり砂漠だもんね。身一つだと危ないよね」

 

「そりゃあねぇ……ま、今は頼れる後輩たちもいるし、おじさんはそんなに頑張らなくていいからね。ナギサちゃんはその点、面倒みたくなっちゃう子だね」

 

 ホシノちゃんから見てもナギサちゃんは可愛がりたくなったらしい。

 

「意外だね。ホシノちゃん、ナギサちゃんは生徒会長だし、会長同士で色々考えちゃうことあるでしょ?」

 

「ないと言えば嘘になるかな。でもまぁ、実際にこうやって一緒にいれば、案外普通、というかむしろ箱入りって感じだし、大事にしてあげなくちゃだよね」

 

「庇護欲感じちゃう?」

 

「オブラートに包まず言うとそんな感じ〜。トリニティの会長っていうぐらいだからもっと政治家って感じかと思ってたし、ヒフミちゃんから聞いた印象だと完璧な子って思ってたから、いい意味で裏切られたよ」

 

 気が抜けた声音なので、ホシノちゃんは割と本気でそんなふうに思ってるんだね。アビドスはトリニティに借りがあるみたいだから、ホシノちゃんから見てもナギサちゃんの様子は安心したのかな。

 

「あぁいう子なら、恩はしっかり、大変な時に返してあげたくなるね」

 

「……そうだね。報われてほしい子だよ、色々」

 

 そもそも、ナギサちゃんがこうして阿慈谷さんのためにここへやってきたのも、友達を一度失いかけての行動だ。阿慈谷さんにしてしまった仕打ちから都合がいい、とナギサちゃん自身は思ってるけど、間違った気持ちじゃない。

 

「お待たせしましたわ」

 

 ハルナの声が聞こえ、振り向くと準備が済んだのか肩にいつものスナイパーライフルをかけたハルナがいた。そういえば、水着姿で余計に目立つけど、ハルナの尻尾って結構揺れてるよね。私よりも長くて立派。

 

 ナギサちゃんもハルナの隣で準備を終えたのか昨晩と変わらない水着姿だ。武器は変わらず私の銃を貸したまま。ただ、身バレを防ぐためか髪型はポニーテールだし、海警みたいにヴァルキューレの帽子は被ってる。

 

「二人とも準備は良さそうだね。それじゃ、対岸に向かおうか」

 

 これから先生と合流するわけだけど、この目の前の湖を渡らなくちゃいけない。泳いで、となるとかなり厳しいので、ボートを用意してある。波打ち際に待機してるボートは当然ながらゲヘナの校章が入っていて、持ち主は意外にも温泉開発部だった。

 

「こんなにもゲヘナに貸しを作るのは正直、あとが怖いのですが」

 

「大丈夫だよ。シャーレとして借りてるから」

 

 ボートに近寄りつつ、ナギサちゃんが言うけどそこはしょうがないね。背に腹は変えられない。

 

「それにしても、温泉開発部だっけ?なんで温泉開発するのにこんな揚陸用のボートなんて持ってるんだろうねぇ」

 

「彼女たちは基本的に、過酷なフィールドワークをこなして温泉の源泉を見つけているようですから、自然と装備も重装備化されていったのでしょう」

 

「ふーん。ゲヘナもやっぱりお金持ちだねぇ」

 

 ホシノちゃんの言う通り、ボートはボートなんだけど、これはっきり言っちゃうと揚陸艇だった。たぶん機材とかもあるだろうからこういう装備持ってるんだろうね。あとは温泉開発部の強行的な開発行為からして本来の用途としても使ってるのかも。なんか明らかに弾痕を補修した跡もあるし。

 

「あの……よろしければ小鳥遊さん、トリニティの不要な装備をそちらに融通しましょうか…?」

 

「ん?いーよいーよ、気を遣わなくって。それに、もらっても使う人がいないから持て余しちゃうって。ウチなんかヘリ一機整備するのも大変なんだから」

 

 乗り込みつつ、ナギサちゃんの提案をホシノちゃんはやんわり断っていた。そうだよね。アビドス、そもそも少人数だから装備が多すぎても持て余しちゃうもんね。それにしても、ヘリは持ってたんだ。

 

「ホシノちゃん、ヘリあったんだね?」

 

「一応ね。アヤネちゃんがいっぱい免許持ってるから動かせるけど、アヤネちゃんも一人しかいないからねぇ」

 

「そうなんだ………奥空さんが免許いっぱい持ってるのは意外」

 

「すごいでしょ?おかげでおじさんは楽できていいよ」

 

 だからよろしくね〜、とホシノちゃんはさりげなくボートの上でだらけ始めた。うーん、私が動かそうとは思ったけどまさか最初からやる気ないとは。いいけどね。

 

 ナギサちゃんとハルナの手をとってボートに乗せて、私は緊急時用のオールを使って砂浜からボートを離していく。浮いたのを確認するとエンジンをかけて、ゆっくりと旋回させた。

 

「エリカさんはボートも運転できるのですね」

 

「当然、エリカさんは警察官ですから様々な乗り物の資格を持っていますわ」

 

「だからなんでハルナが自慢げなのか。この子の言う通りだけどね」

 

「ヴァルキューレの方は皆、こうなのですか?」

 

「必要な資格はみんな取るかな。ただ、私みたいに水上の乗り物の免許取るのは幹部の講習で取っただけで、全員が全員、全部の運転資格を取るわけじゃないよ」

 

 パトカー、というか特定用途自動車の資格は必須で、それ以外は配属先に合わせて。ただし、幹部生は畑違いなところに異動することもあり得るからいきなり戸惑わないようにこういう資格もとるわけだ。

 

 ナギサちゃんやハルナのように一般的な学校だと確か、戦車の免許が選択制の科目であったりしたはず。トリニティは各クラスに一台配備してるって言ってるから必修にでもしてるのかな?

 

「出すよ〜」

 

「お願いします」

 

 対岸へ向いたのでボートを加速させる。みんな船酔いは大丈夫かな。ホシノちゃんは既に寝始めようとしている。

 

「ふあぁぁ…ついたら起こしてね〜」

 

「ホシノさんはどっしりされていますね……」

 

「いや、本当に眠いだけだと思う」

 

「ひどいなぁエリカちゃん」

 

 本当のことじゃん!と内心思いつつ、それ以上は言わずに流した。ホシノちゃんは何を思ったのか私に寄りかかって寝始めた。いやいや、ボート運転してるんだけど?

 

「いい匂い〜………」

 

「なっ……」

 

 ハルナが固まっていた。まぁ、ボートの上で暴れられると困るからこのまま静かにしておいてもらおう。

 

 空は快晴、そのおかげで湖は綺麗でボートが進むたびに受ける風も気持ちがいい。ゆったりとした空気でこれはこれで夏を楽しめてる気がする。ナギサちゃんも気持ちがいいのか、流れる景色を眺めて柔らかな表情だった。

 

 風で綺麗な毛並みの天使の羽が揺れて、私なんとかとは違うサラサラな髪の毛も揺蕩うように風に乗っていた。

 

「え、エリカさん、み、見惚れてらっしゃるのですか……!?」

 

「え?あ、ごめん。つい」

 

 ハルナに咎められるけど、ハルナだって銀色の長い髪は綺麗に揺れていて、水着の色っぽさも相まって見惚れてしまう綺麗さだ。すごいなぁ……トリニティもゲヘナも、天使的・悪魔的な可愛さや美しさを持つ子がいるけど、この二人は格が違うというか。

 

「やっぱり二人とも綺麗だね」

 

「えっ」

 

「……きゅ、急に、なにを」

 

「あ、ごめん。ほんとに、素直にそう思うんだ。絵になるな〜って」

 

 本当にね。それに、目的があるとはいえこんな夏の水辺で友達とボートに乗ってるっていうのがたまらなく私はいい気持ちだ。青春、できてるのかなぁ。

 

 二人は何故か黙ってしまったけど。

 

「……あの……彼女は、いつもこうなのですか……?」

 

「………素直、ですから。ただ、こうも直接は……あまり……」

 

 風切り音と波打つ音、それにエンジンが近いせいか何か二人がごしょごしょ言ってるみたいだけどよく聞こえなかった。エンジンの音うるさいから耳ペタして音を抑えてるのもあるけど。

 

 ちょんちょん、と寝たと思ってたホシノちゃんが私のことをつついて見上げていた。なんでか妙に神妙な顔だった。

 

「エリカちゃん、ほどほどにね?」

 

「……?どういうこと?」

 

「……おじさんは伝えたからね〜……」

 

 なにが程々になのかよくわらない。なんの忠告なのだろうか。視線を進行方向へ向ければ、まだ少し対岸は遠くだ。先生は無事だろうか。

 

「………あれは…なんでしょうか?」

 

 ナギサちゃんがふいに空を見た瞬間、何かを見つけたのかとても困惑した表情を見せた。

 

「ナギサちゃん、どうしたの?」

 

「いえ、空に……上から…?何かが降ってきています」

 

 指を差してくれたの私もそちらへ視線を向けると、雲ひとつない快晴、かなりの上空に白い一筋の線。飛行機雲なんだけど、そこから何か、黒い点が複数見えた。何かを投下した?爆撃?それにしては数が少ないし、高度が高すぎる。

 

「あ、ハルナは無理にスコープで見なくていいよ、目が傷ついちゃうから」

 

「お気遣いありがとうございます。ですが、対策はしっかりされていますのよ。夏ですもの」

 

「そうなの?じゃあ、お願いできるかな」

 

「任せてください」

 

 まぁ、夏レジャーとなれば装備も夏用に色々調整するのは普通なのでハルナぐらいの実力者にもなればちゃんと揃えてるか。レジャー用に銃をデコる子もいるけど、ハルナは結構道具に関してはシビアっぽいんだよねぇ。スナイパーライフルの手入れのされ具合とか見るに。

 

「……見えましたが、なんでしょうか……寿司?」

 

「は?寿司?」

 

 聞き間違えだろうか。

 

「寿司、ですわね。寿司が飛んでいますわ」

 

「冗談でしょ」

 

「ほ、本当ですわ!」

 

 まさかまたカイテンジャー?もうこのパターン飽きたよ。あれから私は目でも付けられてるんだろうか。体のいい戦闘テスト用の標的として。

 

「とりあえずハルナ、詳細わかる?」

 

「寿司のような飛行物体が20はいますわね…ネタも豊富ですわ」

 

「そこはいいから。機械、だよね?」

 

「機械なのは間違いないですわ。ただ…シャリの部分を見るに変形をしそうです。それと、その寿司に囲まれるように、緑色のピッチリスーツを着た生徒がパワードスーツのようなものを付けていますわ」

 

 緑、ということはカイテンジャーグリーン…?

 

「それって、ウチに勝手にもの置いてエリカちゃんに腹パンしたヤツじゃない?」

 

 ホシノちゃんがあのATMの件を思い出したのかそう言う。うーん、そうだと思うけど。

 

「……お待ちになって?エリカさんに、腹パン?」

 

「ん?…おっと」

 

 なんかホシノちゃんが余計なこと言っちゃった、みたいな空気になってるけど。

 

「あぁ、ハルナ。BBQの時に話したけど、アビドスでカイテンジャーに不意打ち食らった時の話だから」

 

「……そう、ですか」

 

「別に平気だよ?私が頑丈なの、ハルナは知ってるでしょ?」

 

「えぇ、もちろん」

 

「とまぁ、これまでの感じからして大した強さじゃないと思うけど」

 

 ただ、なんだろうか。変な感じがする。

 

「エリカさん、何か、引っかかるのですか?」

 

 ナギサちゃんが私の気持ちを察してしまったらしい。そうなんだよ。引っかかるんだよね。

 

「これまでさ、カイテンジャーグリーンって自分からその場に現れることなかったんだよ」

 

「でもさ、エリカちゃん。ウチの後もカイテンジャー倒したんでしょ?無人じゃダメだって判断になって現場に来たとかあるんじゃない?」

 

「ホシノちゃんの推測も確かに悪くないけど、これまでの感じとカイテンジャーグリーンの性格からして、それは避けそうなんだよなぁ」

 

 今はナギサちゃんがいるから口には出さないけど、カイテンジャーグリーンは間違いなくトリニティ生だと私は思ってる。やり口がゲヘナのような乱暴なものではなく、かといってミレニアムのように僅かな顕示欲を見せるものじゃない。

 

 そもそも、あんな砂漠のど真ん中、それも廃墟をわざわざ偽装してものを隠すという手つきはかなり丁寧だ。ホシノちゃんが言ってたけど、アビドスへの救援時に紛れて、というのも手つきがそこらのゴロツキとは違う。チヒロちゃんが探さなければバレなかったわけだし。そして、あんなに隠してもなお、本人は遠隔。二度目もそうだった。面倒が嫌いそうで、手を汚すのもあまり本意ではない。

 

 そんな人物が自ら出てくるなど、ありえるのだろうか。

 

「わたくしが見る限り、風貌からカイテンジャーグリーンに見えますが」

 

「接触してみないとわからないね。それにしてもどうしてこんなところに」

 

「彼らは正義を騙っている悪党だと私は認識しています。ならば、こんなところに現れてもおかしくないのではないでしょうか」

 

 わお、結構ナギサちゃん辛辣。そういうところは私の真似しなくていいからね?落下の予測地点がはっきりしないけど、このままだと私たちの向かう先に落ちてこないかな。

 

「これまでと違って数も多いし、ちょっと厄介そうだね。ハルナ、どこに落ちそうかわかる?」

 

「なんとも…しかし、私たちの進行方向に落ちそうかと」

 

「了解。できるだけ急ごう。みんな、足がつきそうなぐらいまで近づいたら戦闘にすぐなるかもだから、準備しといてね」

 

 ナギサちゃんもいるから、と少しだけ抑えていた速度を一気に上げていく。本当にカイテンジャーなのか、それとも。ただでさえ色々ありそうなここに、余計な介入者が増えた。厄介なのか間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

――エリカたちが出発する少し前

 

「先生、ひとまず午前中の分の仕込みは終わりました!」

 

「お疲れ様、シズコ。それにウミカ」

 

「いえいえ!」

 

 朝の仕込みを終えたという水着姿のシズコと、ここで初めて会ったお祭り運営委員会の委員であるウミカが海の家の厨房から出てきた。和風メイドチックでワン娘なウミカにはかなり唆られたけど、流石に初対面の子に不埒なことはできない。そのぶん存分にイズナをもふったが。

 

 さて、イズナに攫われたのが昨日。そしてそこで待っていたのは激混み+絶え間ない襲撃に晒されていた百夜堂アウトランドリゾート出張店だった。イズナが有無を言わずに攫ったのも納得の状況で、特に戦闘面でイズナの負担がヤバすぎて、イズナ自身が切実に助けてほしかったのかもしれない。

 

 シズコとウミカも戦えなくはないようだけど、お店の切り盛りで手が回らなかったようだ。なので、イズナがほぼ単独で攻め込んでくるヘルメット団や、商売敵だと攻めてくるオデュッセイアのバニーガールガードを抑えていた。流石キヴォトス最強の忍者なだけある。それでも多勢に無勢すぎて限界だったっぽい。

 

 それでイズナはまだ海の家の仮眠室でぐっすりだ。エリちゃんを一瞬で無力化するあたり、今まで見てきた各校の実力者に劣らない圧倒的戦力だったイズナが消耗しきるぐらいだったので本当に限界だったんだろうな。

 

「二人も少し休憩するんだよ。今日も暑いからね」

 

「いえいえ!先生こそ休んでください!ちゃんと寝ましたか?」

 

「ありがとうシズコ。でも大丈夫だよ」

 

 シズコに心配されちゃったので誤魔化す。結構疲れてる。

 

「シズコ、これはここでいいのか?」

 

「あ、はい!いいですよ!」

 

 ゴト、っと背後で音がしたので振り向けば、水着姿のアズサがお店で使うプロパンのボンベを持ってきてくれていた。アズサたちは偶然ここに立ち寄って私を見かけて助けてたくれた。イズナしかいなかったところにまさにナイスタイミングな増援で、どこぞの特殊部隊のような身さばきのアズサは頼りになる。

 

「よいしょ、っと。ふぅ、流石に重かったですね」

 

「ヒフミ、私が運ぶからいいのに」

 

「そんなアズサちゃんだけに任せませんよ」

 

 もちろん、アズサと一緒にいたヒフミも大変助かった。本人は一般人だと言い張るヒフミ自身も、ブラックマーケットに一人でいったり、アビドスの子たちについていけるし、どう考えても普通じゃない実力者なんだけど、今回は彼女が乗ってきたクルセイダー巡航戦車がめちゃくちゃ助かった。やっぱ戦車ってすごい。制圧力がダンチだった。

 

 これが今の百夜堂出張店のメンツだ。フィーナはどこかといえば百鬼夜行でお留守番らしい。そういえば、フィーナはトリニティからの転校生なんだよね。転校って珍しいから私は覚えてた。絶え間なく弾をばら撒いてくれるフィーナがいたらだいぶ楽だったんだろうなぁ、って思わなくもない。

 

「それにしても、こうしてトリニティの方に手伝ってもらえるなんて、こういう縁なんですかね」

 

「昨日聞きましたけど、転校生の方がいらっしゃるんですよね?確かに、不思議な縁ですね」

 

「二人はフィーナのこと知らないんだっけ?」

 

 私が二人にフィーナのことを聞いてみると、二人は首を横に振った。ヒフミもアズサも学年的には知らないのは当然か。

 

「それで、先生。これから私たちはどうすればいい?」

 

 アズサが海の家の柵に背を預けながら聞いてくる。エリちゃんからオクトパスバンクの営業マンが現れて投資をしている、というのは昨日電話で聞いた。そいつを捕まえて今回のこの一件を吐かせてしまえば話は終わりだ。

 

 昨日の晩、私はもちろんこの場にいる全員に情報を共有した。各々思うところはあったけど一番激怒したのがシズコだった。なんであれ、この地でお祭りが行われようとしているところを歪めようとしているオクトパスバンクは、シズコからすれば絶対に許されない存在となったようだ。

 

 アズサからのどうするか、という問いに私の答えは決まりきっている。

 

「待っていればいいよ」

 

「待つ…?それは悠長すぎるんじゃないかな」

 

「いいや、アズサ。シズコたちの百夜堂は間違いなく売れてる。百鬼夜行でしか買えない百夜堂の商品をここで買えるのも大きい。他の子たちも、わざわざ攻撃してくるってことは正攻法で勝てないってことだからね。そんな優秀なお店を、例の営業マンが放っておくわけがないと思うんだ」

 

 アズサは「なるほど」と納得してくれた。

 

「けど、先生。そんなに都合よく、すぐ営業マンが現れるでしょうか?」

 

「阿慈谷さんの言う通りです。先生。自慢じゃないですが、間違いなくウチの商品はここでも通用してます。売れているのも間違いないです。けど、出店してまだ1週間ちょっとですよ?」

 

「絶対来るよ。だってカイザーだよ?あいつら」

 

 苦しい時ほど、カイザーはやってくるんだよね。

 

 じゃり、じゃり、っと少し遠くから砂を踏み締め歩いてくる音が聞こえる。視線をそっちに向ければ、十数人分ぐらいの影が見えた。その先頭に立つ相手に、私は見覚えしかない。アロハシャツに麦わら帽子、という完全に夏満喫してるとしか思えない姿だけど、見間違う筈もない姿だ。

 

「な、なんですかあの集団!?」

 

 ウミカが怯えたように声を上げて、シズコの背後に隠れる。…ウミカの方がシズコより大きいので隠れられてないのはちょっと可愛いな。

 

「……あの先頭のアロハ、その後ろにいるのは訓練された兵士だ」

 

「社内の人望だけは厚いのかな?」

 

 私は腰掛けていた海の家の入り口の階段から立ち上がると、やってくる連中の前に立つ。ホシノもエリちゃんのとこにいるらしいし、なんだろう。因縁ってやつなんかな。カイザーとは。

 

「久しぶりだね、カイザーPMCの理事さん」

 

「……何故貴様がここにいる…!シャーレの先生…!」

 

「いやいや、女の水着姿見て言うことあるでしょ、もうちょいさ」

 

「貴様に関してはない。それに、用があるのは貴様ではない。後ろの海の家だ」

 

 ひどい言われようだった。

 

「開店前だよ?」

 

「我々は客ではない」

 

「なるほど?オクトパスバンクの営業マンってあなたのことだったんだね」

 

 私が言ってやるとカイザー理事……というか、たぶん営業マンに格下げされたであろうカイザー営業は電子タバコを取り出して吸い出した。

 

「あぁ、貴様とアビドスのおかげで理事から営業マンに格下げされ、日々悔しい思いをしてきた。だが、幸いにもこうして私には支えてくれる部下がいる。こうして今は再起して、カイザーローンの開発課の課長に収まっているのだ」

 

 なるほど、じゃあ後ろに控えてるスーツ姿のアンドロイド市民はカイザーPMCの崩れってところかな。これは流石に手こずるかも。イズナがダウンしてるからね今。

 

「まぁ、あなたの苦労は察するけど、同情はしないよ」

 

 カイザー営業は私を睨んでからそのまま何も言わずに、部下をその場に待たせて私の横を通り過ぎた。顔を向ければ、彼はシズコと向かい合っていた。

 

「君が、ここのオーナーだな?」

 

「そうですけど……」

 

「我々はオクトパスバンク、このアウトランドリゾートの持ち主だ。百夜堂の名は聞いている。この地においても、その力は確かなようだ」

 

「それはどうも」

 

「だが、困っているのではないか?従業員の数も足りず、嫉妬した他校の生徒からの強引な攻撃」

 

「確かに、大変ですよ」

 

「ならば、投資をさせてほしい。将来性の高い百夜堂がこのようなところで潰れてしまっては名を汚してしまうだろう。投資をさせてくれれば、カイザグループからプロの料理人、そして今連れてきた腕利きの警備員をそのまま店舗の警備につかせられる」

 

 シズコはカイザー営業の話を黙って聞いていた。……応えるとは思えない。シズコの目はどうみたって、怒っている。表情は完全に猫を被っていて、営業スマイルを見せているけど。

 

「なるほど、魅力的な提案ですね」

 

「そうだろう?この土地は今こそオクトパスバンク持ちだが、いずれはカイザーによる開発が始まり、新たなD.U.となる。そうすれば、生徒も集まり、百夜堂は更に名を広め、莫大な資産を得られる」

 

 いや、なにそれ。新たなD.U.?ここを?

 

「これはその、今後100年は続く栄華の始まりの話だ。だから、我々の融資を受けてほしい」

 

 あぁ、なるほどね。そういうことか。なんとなくわかったよ、エリちゃん。こいつらの狙いがさ。本当に最悪だよ。

 

「しゃ、社長」

 

「大丈夫。ウミカ」

 

 怯えているウミカを落ちるかせるようにシズコは穏やかに声をかけて、それからキッとカイザー営業を睨んだ。

 

「まず、融資の話ですけど……お断りします」

 

「何故だ?」

 

「あなた方がこの自治区を乗っ取ったと…先生から聞いているからです」

 

 シズコがハッキリと言った。おうおう、私を睨むな元理事。

 

「……乗っ取った、などと。オレンジパウンド高校とオクトパスバンクの取引は正当なものだ」

 

「でも架空の会社なんですよね?ちゃんと登記されてます?」

 

 シズコの言葉にはちゃんと重みが感じられた。彼女だって百鬼夜行という大きな学校で委員長を務める生徒の一人だ。そして、百夜堂という一つのお店、つまりは会社を経営している――少しだけ、私たち大人の世界に足を踏み入れている子だ。

 

「架空の会社と結んだ契約。登記のない会社の名前が乗った土地登記簿謄本。私たちが子供だから、そういう書類を見せれば言うことを聞くと、本当に思ってるんですか?」

 

「謄本?なんの話だ。だが、所有権がない、という出鱈目を言うのはやめてもらおうか。我々はあくまでオレンジパウンド高校から担保である土地を譲り受けただけだ」

 

 …トモエが見せてくれた謄本。あれ、そもそも本物かどうかも怪しい。このあたりも後で“お話”しないといけないかもね。

 

 さて、シズコと彼の話はこのままだと平行線になりそうだ。加勢しよう。

 

「オレンジパウンド高校だけど、なんでそんな破産しちゃったの?レッドウィンターの衛星学園って言ってもここって工業高校としてかなり優秀だったみたいだし、あなたたちにお金を借りる必要性もないと思うけど」

 

「我々は機械と設備を貸しただけだ。オレンジパウンドはただ、その賃貸料を払えなかっただけだ」

 

 なるほどね?ふーん。つまりはそういうことか。

 

 子供相手に何をしてるんだこのクソ野郎は。

 

「……どういうことなんだ?先生」

 

「あぁ、アズサ。簡単なことだよ。単純に、払えない“追加料金”があったんだろうね。基本料金の他に」

 

 アズサが首を傾げる。ヒフミはすぐに気がついたのか「それって…」と声を漏らしていた。

 

「よくある詐欺の手口だよ。商品の代金は安いけどよくみたら送料が途方もないぐらい高い、っていうのと同じ。そうだよね?」

 

「詐欺ではない。しっかりと契約書には明記していた」

 

「ちゃんと見やすい場所に書いてたか怪しいもんだね。というわけでさ、こんなぐだぐだな連中だからシズコ、乗らないで正解だよ」

 

 アビドスであれだけやってくれちゃったので懲りない連中だ。それに、目的がシャレになってない。D.U.を新たに作る?そこに生徒を集める?カイザーからすれば連邦生徒会は大口の取引先だろうけど目の上のタンコブ。リンちゃんがトップに立ってる以上は好き勝手はできない。

 

 それを無視できるもう一つの政府を作ってしまえば?戦争でもおっぱじめるつもりなのかなカイザーは。

 

「元から乗る気はないですよ、先生。ここで夏至祭、お祭りが開かれるのは知ってます。それを台無しにするようなこの人たちの提案に乗る気なんて、これっぽっちもないです。ですから、お引き取りを!」

 

 シズコが踏み出してカイザー営業に吠えた。ウミカもその背後でぶんぶん縦に頭を振っていた。交渉は決裂。私の前にアズサが出てくる。もう銃を抜いてるし、セーフティを外してる。ヒフミも慌てて私の前に立った。

 

「それが貴様の答えか。百夜堂のオーナー」

 

「そうです!あなたたちのやり方は気に食わないですし、私たちを子供だからって侮るような態度も嫌です。ビジネスで、こういう交渉をしようっていうのなら、相応の態度ってものがあるでしょう!?」

 

「社長の言う通りです!」

 

 元はPMCの人だし、そこらへんはノウハウがあんまりないのかもしれんから。

 

 なんであれ、連中もこのまま黙って引き下がるとは思えない。

 

「残念だ。なら交渉は不要だな。その社名だけを譲り受けるとしよう」

 

「最初からそのつもりでしょ?」

 

 私の言葉に相手は答えず、部下たちの元へと戻って、PMC崩れの連中は全員サブマシンガンを抜いていた。そりゃそうだよねぇ。

 

「先生、下がって。危ないから」

 

「ごめんね、アズサ。巻き込んじゃって」

 

「気にしない。先生には恩がある。ねぇ、ヒフミ」

 

「はい!それに、私だってアビドスのこともあってあの人たちにはあんまり、いい印象ないので…!」

 

 ヒフミからすればアビドスの子たちは補修授業部の子たちの次に大切な友達だろうし、因縁あるもんね。私もシッテムの箱をスリープ状態から立ち上げる。アロナがいれば流れ弾は防げるからね。

 

 エリちゃんたちもこっちに向かってるだろうし、そうすれば生徒会長クラスの子が3人も増えるのでカイザーPMC崩れぐらい簡単に落とせるだろうね。今は耐え抜こう。

 

 一瞬触発の状況で、どっちが先に動き出すか、といったところでカイザー営業が唐突にアロハシャツを脱いだ。現れたのは隆々とした機械のボディ。クソっ、ちょっとかっこいいな。

 

「なんで脱いだの」

 

「先生。貴様は私をただ椅子の上で踏ん反り返ってる存在だと思っていないか」

 

「思ってるよ」

 

 だって偉そうだし。

 

「………カイザーPMCの理事になるために必要なのは実力だ。見せてやろう。私の本気をな」

 

 あの人戦えるんだ…。みんなが構える。何をしてくるのか。いきなり殴りかかってくるのか。しかし、彼はそのままその場で指を鳴らした。途端に、砂浜の少し遠く、カイザーの連中の背後から何かが砂煙を上げて爆走してきていた。

 

「な、なんですかアレ!?」

 

「知らないわよ!」

 

 ウミカの驚く声と、動揺するシズコの声が聞こえる。なんだろう。戦車?にしては煙上がってる量すごくない?

 

 カイザー営業の部下たちが二手に分かれて、彼の背後を開けた。そうして見えた。向かってくるものの正体。

 

「せ、戦車なのか?」

 

「でも、大きすぎませんか」

 

 アズサとヒフミの困惑する気持ちはわかる。現れたのは黒塗りの大きな戦車。戦車、といっていいのか。履帯はあるけど砲塔の横には腕のように伸びたガトリング砲がついてるし、主砲の他に砲塔上部に明らかに実弾兵器じゃないっぽい砲門が見える。

 

「戦闘ボディ…来たか…!」

 

 カイザー営業の真後ろで停止した戦車のような何かに、彼はそのまま背中から機体正面の窪みに飛び込んだ。

 

「見ろ。これで私はこいつと一体になった。もはや止めることなどできはしない」

 

 戦車と合体した…?悔しいがかっこいい。ただ、なんというか合体する意味ある?正面から思いっきりカイザー営業見えてて弱点丸出しだよね?

 

「消えるがいい、先生…イレギュラー」

 

「くるっ…!」

 

 いやあんな主砲撃たれたらアロナでも防ぎきれないって。

 

 どうすんのよこれ。いくら弱点丸出しでもあの質量の戦車に真正面から行くのは無理でしょ。一旦みんなに退くように声を出そうとした。

 

 その瞬間だった。

 

「とおっ!」

 

 可愛らしい掛け声と共に今にも機動しようとしていたカイザー営業戦車の、それもコアユニットであるカイザー営業の前にしゅばっと影が現れた。

 

「な、何ぃっ!?なんだ!?」

 

「主殿への乱暴狼藉、このイズナが許しません!」

 

 イズナ!?え、さっきまで寝てたのにいつの間に。しかもあんな誰も捉えられない速度で懐に…!

 

「なんだこの小娘!?離れろ!轢かれたいのか!」

 

「いいえ退きません!退くのはそちらです!とりゃー!」

 

 イズナが何をするのか、力が抜けそうな可愛い声と共にイズナが放ったのは――影分身を物理的に成し遂げるほどの脚力を乗せた強烈な蹴りだった。まず、私たちに届いたのは衝撃波であり、その次に浮かび上がるカイザー営業の巨体、そして最後に大きな鉄が吹とぶ音。

 

「ウゴァァァァァアアアッ!!????」

 

「「「か、課長ー!」」」

 

 えぇ………つ、強すぎなんですけど。イズナってエリちゃん倒した時もだけど、機動力で翻弄するタイプだと思ってたので、単純な力押しもこんな強いんだ。

 

 カイザー営業はだいぶ後退して煙を上げていた。見るからに致命的ダメージである。

 

「………ひゃ、百鬼夜行の方って、す、すごいですね」

 

 ヒフミがなんとか言葉を捻り出したけど他の子たちはみんな呆然としていた。いやそりゃそうだよ!私だってそう!

 

 イズナはいつもの笑顔で私に褒めてと言わんばかりに笑顔を見せていた。とりあえず、ぎこちなくとも笑っておいた。助けてもらったのは事実だからね!やりすぎな気がしないでもない。

 

「ご、ぁ、き、貴様らァ!許さんぞォ!」

 

「頑丈だな。ヒフミ、こっちもクルセイダーを出そう」

 

「はい、アズサちゃん!」

 

「先生も生身でいるよりかは安全だから一緒に」

 

「そ、そうだね」

 

 明らかにブチギレて暴れ出すであろうカイザー営業に、アズサから私はクルセイダーに乗るように提案されてしまった。そりゃそう。

 

 ただ、あんな重武装な戦車、いくら快速自慢なクルセイダーでもやりあうの大変なんじじゃないかなぁ。

 

「まずはあの忍者だ!撃て!」

 

「おっと!空蝉の術っ!」

 

 結果的にイズナから仕掛けちゃったので、相手もついに応戦してきた。敵地のど真ん中にいるイズナにカイザー営業の部下たちが手持ちのサブマシンガンを撃ち込むけど、あっという間にイズナは脚力任せの空蝉の術でその場から離れて、近くの別の海の家の屋根に立っていた。

 

「忍法!ぷくぷくの術!」

 

「なんだ!?泡……ぅぐぉ!?」

 

 イズナが口から放ったシャボン玉がPMC崩れに当たってダメージを与えていた。

 

 水場だから水遁使うのわかるけど!あれまさか肺活量だけで弾けにくいミレニアム製のシャボン玉飛ばしてんのかな。いやはや、昨日目の当たりにしてるとはいえ、私抜きでも半日一人で保たせられるのも納得だわ。

 

「あ、あれって水遁……というものでしょうか?」

 

「物知りだね、ヒフミ。そういうことだろうね」

 

「すごいな。忍者…」

 

 アズサがなんかものすごいやりたさそうな目をしてる。純粋で可愛いんだけど、アレを習得するのはキヴォトスの子でも結構キツイような。イズナの身体能力どうなってるんだろうと常々思う。

 

 ヒフミとアズサの間に挟まれつつ海の家の裏手に停められてるクルセイダーにたどり着く。ヒフミが手慣れた様子で登って私の腕を掴んで引っ張り上げてくれた。私の身体能力じゃそんなぴょんぴょん登れないからね。おとなしいヒフミも私を抱き抱えるぐらいの力があったりする。

 

 砲塔の上にあるハッチは外されてて、ビーチパラソルが代わりに載ってる。レジャー用に戦車使うのもキヴォトスならでは。

 

 ヒフミに続いて私も車内に滑り込んでアズサが最後に入ってくる。戦車初めて乗ったけど結構狭いな。

 

「うわなにこれ」

 

「ペロロの湯沸かし器だな」

 

「はい!限定品なんですよ!」

 

「…あ、そうなんだ」

 

 トリニティの戦車は湯沸かし器が絶対ついてるって聞いたことあるけど、一応これ学校の備品だよね?いいのこれ?先生として注意すべきかな?

 

「飲んでもいいですよ!」

 

「淹れようか?先生」

 

「気持ちだけにしとくね。こぼしちゃうとまずいからさ」

 

「そうですか…」

 

「逆にこぼさない人いるの?」

 

「ナギサ様は迫撃砲の爆風の中でも紅茶をこぼさないそうです!」

 

 ナギサかぁ〜〜いや、イメージ湧きやすいな。優雅な笑みを浮かべながら羽を風避けにでもしてるんだろうね。そういえば、ナギサはエリちゃんと上手くやってるだろうか。私が連れてかれてく直前、エリちゃん怒鳴ってたし。

 

 運転はヒフミ、装填と砲撃はアズサがやるらしい。私は車長席にとりあえず座った。

 

「私はなんかすることある?」

 

「いえ!危ないので先生はそのまま席にいてください!」

 

「あぁ。ヒフミの言う通りだ」

 

「了解。静かにしとくよ」

 

 知ってた。ここは二人に任せよう。

 

 エンジンがかかり、ヒフミがクルセイダーを発進させる。この戦車乗って初めて知ったけど、なんと運転席の周りに3面モニターがついててロボットのコクピットみたいなってた。見た目はアンティークって感じだけど、中身はハイテクなんだねぇ。

 

「捕捉しました!アズサちゃん!」

 

「任せて」

 

 海の家の影から飛び出して、ヒフミは急停車。おもいっきり前に飛びそうになるのをなんとか周りに掴まる。そこから更に停止直後、アズサが砲塔を動かしてイズナに翻弄されてるカイザー営業に砲撃をしかけた。うっお、すごい衝撃だ。

 

「外した!」

 

「大丈夫です!次弾の装填を!」

 

 なんとカイザー営業はこっちの攻撃を避けた。イズナのキックが効いてたはずだけど、まだ動けるんだ。って、なんかカイザー営業の砲塔がこっち向いてる!

 

「待って狙ってない!?」

 

「ヒフミ!」

 

「掴まっていてください!」

 

 相手の砲が光るほんの僅か前にヒフミがクルセイダーを大きく後退させ、更にそのまま車体を滑らすように回転する。

 

「うわっわわわっ!?」

 

「先生、口閉じて、舌噛む」

 

 アズサに注意されて悲鳴を上げるのを堪えた。大人なんだから、しっかりここは堪えないと。とはいえ、ヒフミの操縦が凄まじすぎる。

 

 近くに着弾してるのがわかるけど、ヒフミは全部読んでるのかってぐらいのスムーズさでクルセイダーを避けさせてく。というか徐々に相手の集団に接近してるんだけど?

 

 PMC崩れたちがイズナからこっちに銃を向けてめっちゃ撃たれる。でも装甲に弾かれて効いてない。

 

「アズサちゃん!履帯を狙ってください!」

 

「わかった!」

 

 軽く返事するけど結構すごいこと指示してない?アズサはこんな揺れる中でしっかり狙いをつけて撃った。それは当たった。爆炎が晴れると、カイザー営業にくっついてる大きな戦車の履帯が壊れていた。

 

 が、まだカイザー営業はこっちを睨んでいた。あ?なんか砲塔の上から出て光って…。

 

「ヒフミ!避けっ」

 

 やべっ、これ死ッ――!?

 

 青白い光が、モニターいっぱいに広がる。咄嗟にアズサだけでも庇おうと動いたが、間に合いそうにない。終わった……そう思ったのに、私たちが熱で焼かれることはなかった。

 

 ビームの熱でモニターが死んでしまいどうなったのかと私が車内から顔を出せば、クルセイダーとカイザー営業の間に小さな影があった。

 

「意外と威力は低かったね〜」

 

「き、貴様、何故ここに…!」

 

「いやいや、なるほどねぇ〜、こういう縁かぁ」

 

 そこにいたのは可愛らしい白の2ピースの水着を身につけ、水着に似合わない鉄の盾を持ち、右手には使い込まれた白のショットガン。

 

「ホシノ!」

 

「やっ、先生。おじさんが助けにきたよ〜」

 

 どうやって、どこから。そんな疑問が尽きないけど、ホシノがそこに立っていた。

 

 




ちょっとルビコンに行ったりしてたけどしっかり青空見てきたので大丈夫です

ヒフミがどれだけドライバーとして優れてるかわからないのでとりあえず盛りに盛る。普通とは一体。
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