頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

34 / 143
今回の連続投下はここまでです!




Area-04「特異現象捜査部 移動部室 #トレーラー #近未来 #特異現象」

 明星さんたち特異現象捜査部は私が呼んだ翌日にはもうトリニティにやってきていた。解析装置などを積んだ移動式の司令室を荷台に備えたトレーラーでやってきていて、メンバーは明星さんと和泉元さん、そして意外にも生塩さんが付いてきていた。

 

「ふふっ、ごきげんよう。明星ヒマリです」

 

「ごきげんよう、明星さん」

 

 着いて早々に明星さんはナギサちゃんに挨拶に来ていた。変わらず車椅子姿だけど、和泉元さんも相変わらず物凄い格好のまま……ナギサちゃんが困惑してるけど何とかスルーしている。もちろんこの場にはコハルちゃんもいるけど、和泉元さんを見て目を回しそうになっていた。

 

「私の後ろにいるのが、助手兼護衛の和泉元エイミです。そして、こちらが我々ミレニアムの生徒会組織、セミナーの書記、生塩ノア」

 

「生塩です。よろしくお願いします」

 

 和泉元さんとは真逆のキチッとした格好の生塩さんがいるせいで余計に場がカオスになっている気がする。それにしても何故生塩さんまで来たんだろう?明星さんがミレニアムの重要人物だからお目付役?

 

「お、御三方とも遠路はるばるようこそトリニティへ」

 

「いえ。一度トリニティには来てみたかったので、いい機会でした」

 

「このような状況でなければもてなしの一つぐらいさせて頂きたいのですが、現在トリニティは来たるべく条約の調印式に向けて余裕がありません」

 

「噂の条約ですね。ノア、聞いていますか?」

 

「はい。昨日の17時56分、夕方のクロノススクールの情報番組でそういった条約があるという程度しかわかりませんが」

 

 絶対嘘だ。前に黒崎さんの件で生塩さんはある程度、トリニティの状況を把握している節があった。どういった意味でこんな話を?……うーん、政治は得意じゃないけど、ようはこれ「あなたの学校の事情には関わりませんので調査だけして帰ります」って意味かな。

 

「ニュースで流れ出したのですね」

 

「そのようですね。私たちミレニアムは関係のない第三校ですから、条約の成功を祈ることしかできません」

 

 明星さん、こういう対外的なこともできるんだなぁ。美少女を自称するだけあって、ナギサちゃんたちトリニティにも劣らない気品が確かにある。あるんだけど、真後ろの和泉元さんのせいで全部それが台無しだ。

 

「ありがとうございます。ぜひ、調印式が終わり落ち着きましたらトリニティにまたいらしてください」

 

「えぇ、機会があれば」

 

「それではこちらから派遣する人員も紹介します。まずは、正義実現委員会から、下江コハル」

 

「ひゃい!」

 

 トリニティ側のメンバーを紹介するターンになった。ナギサちゃんに名前を呼ばれてコハルちゃんが飛び上がりながら返事をした。この中で一番背が低いし、明らかに緊張でがちがちなところを見て、私含む上級生のみんながなんだかほっこりした空気になっていた。

 

「よろしくお願いしますね、下江さん」

 

「よ、よろしくおねがしましゅっ!」

 

 明星さんの貫禄もなかなかなので、コハルちゃん噛みっぱなしだ。

 

「続けて、シスターフッドから伊落マリー」

 

「若輩者ですが、よろしくお願いします」

 

 この子は今日初対面だった。シスターフッドの子で、私と同じく頭に耳がついてる子だけどシスターらしいベールのせいかあんまり目立たず、今朝少し話した感じものすごくいい子だった。ほんとにキヴォトスの方ですか?と言わんばかりの。

 

 ただ、彼女が腰に備えてる拳銃がただの拳銃じゃなくて、マグナム弾を扱えるかなりゴツいやつなので怒らせたら怖いかもしれない。

 

「あら…シスターさんですか?」

 

「もし本当に相手が幽霊となれば、シスターフッドの出番であるとのことで今日は協力頂いています」

 

 ナギサちゃんが言ったことは本当なんだけど、マリーちゃんは「除霊なんてできません!」と私に悲鳴をあげていた。どうやらシスターフッドも今は人手不足らしく、たまたま空いていたからマリーちゃんがこの調査に協力するらしい。実はコハルちゃんも同じ理由で、そんな人選でいいのか…と思ったけど、羽川さんは調査のみで相手を打倒しようとは考えてないみたいだった。

 

 うーん、調査だけで済むはずがないんだよなぁ、この手の支援要請。

 

「科学では証明できない何かに対するアプローチ手段も用意頂けると思いませんでした。どうぞ、よろしくお願いしますね。伊落さん」

 

「は、はいっ!」

 

 明星さんの悪気のない期待にマリーちゃんは申し訳なさそうにしつつも返事をしていた。

 

「そして最後に、我々ティーパーティーから。草鞋野エリカです」

 

「はて?彼女はシャーレの生徒では?」

 

「あはは…ちょっと事情があって。……ご紹介に預かりました草鞋野エリカです。ナギサ様の護衛ですが、今回はこの調査に協力いたします」

 

「なるほど。あまりそのあたりはツッコまない方が良さそうですね。蹴りを入れられても困りますので。…これで、全員ですね」

 

 メンバーはこれだけ。私、コハルちゃん、マリーちゃんのトリニティ3人と、明星さん、和泉元さん、生塩さんのミレニアム3人。この6人で調査にあたる。異色のメンバー、のように見えてトリニティ側は3派閥合同になってるので、昨晩寝る前にナギサちゃんが教えてもらったけど今後の新体制に向けてのアピールも兼ねてるらしい。

 

「はい。全員になります。……他校に自治区内の問題を押し付けるような形になったのは心苦しく思っています」

 

「とんでもありません。特異現象捜査部は元よりシャーレと、キヴォトスそのものの安全保障を脅かす存在に対して連携して調査をしています。何も気にする必要はないんですよ」

 

 明星さんこれ若干マウント取りに行ってません?ナギサちゃんはわかってるみたいだけど受け流した。明星さんもこれぐらいは織り込み済みなのか、特にそのあとは続けなかった。

 

「それではよろしくお願いします。ただ、その前に一ついいでしょうか」

 

「はい?」

 

「そちらの御付きの方……少々、服装が刺激的すぎるのではないでしょうか」

 

 あ、突っ込んじゃったよナギサちゃん!?スルーすると思ってたけどこれ他にも話す事があったからあと回しにしただけだ。どうするんだろう。これは言い訳のしようがないし、明星さんも擁護は何もできないような。

 

「エイミの格好ですか?彼女は極度の暑がりなのです。今も相当頑張って耐えていると思いますが」

 

「…え?耐え、え?な、なにをですか?」

 

「脱ぐのをです」

 

 全員固まった。明星さんは誤魔化しとかの小細工なんてせず堂々と言い切った。言ってやったぜ、ぐらいにも見えるのはなんなのだろう。

 

「エイミ、あとどれぐらい耐えられそうですか?」

 

「1分」

 

「ということですので、調査に向かわれる方は場所を移しましょう。行きますよ、エイミ、ノア」

 

 何が1分、とは全員聞かなかった。足早に明星さんの車椅子を押していく和泉元さんを追って私たちは部屋を出ていく。私が最後尾なので、最後にナギサちゃんに振りかえる。手を振ってあげると、笑顔で振り替えしてくれた。

 

「吉報をお待ちしております」

 

「任せて。ナギサちゃんも頑張ってね」

 

「えぇ。エリカさんも」

 

 少しだけ言葉を交わして、私を会談用の部屋の扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 明星さんに先導されてやってきたのはさっきまでいたトリニティの校舎にある駐車場、そこに停められていた青色のトレーラーヘッドにくっついた大型トレーラーだった。壁面にはミレニアムの校章が入っていて、通信用なのか大きなレドームもコンテナ上に設置されてる。

 

「す、すごい…ミレニアムはこんな立派な装置を…」

 

 マリーちゃんが圧倒されていた。シスターフッドの子だけあってなんというか箱入り感が強いというか。素直な反応に明星さんが気分がいいのか何故か自慢げな顔だ。

 

「先輩…ミレニアムはこういうの、いっぱいもってるんですか?」

 

「そうだね、コハルちゃん。色々持ってるみたいだよ?宇宙戦艦も作ろうとしてたし」

 

「う、宇宙戦艦…!?」

 

 ただし天文学的な予算がかかるため砲だけ。

 

 トリニティの子にはミレニアムの装備は未来のものに見えるぐらいすごいのかもしれない。レールガンとかまだどこの学校も作ろうなんてまずしてないし。

 

「草鞋野さん、ずいぶんと素性の良さそうな子たちを連れてきたんですね」

 

「あー…まぁ、かなりいい子たちだと思うよ、明星さん」

 

「うちの部員もこれぐらい素直ならいいんですか」

 

「ヴェリタスの?」

 

「はい。チーちゃんに任せきりとはいえ、一応部長ですから。やりすぎたら叱らないといけません。その言い訳がまたすごいものが多くて」

 

 なんというか自由人に見えて明星さんはわりと俗っぽいというか、全知なんて呼ばれてても親しみやすい子だと思う。

 

「ユウカちゃんも怒ってましたし、コユキちゃんが泣きながら被害額を纏めていましたね」

 

「……何をしたんですか?」

 

「流石に他校の前で言うのは流石の病弱超天才奇跡の美少女である私でも憚られますが…まぁ、ノアをつけたのはリオとの取引です。やらかしを見逃すから同行させろと」

 

 なんだかミレニアムも色々あるみたいだった。

 

 生塩さんがジャケットのポケットから何かを取り出す。ペンのように見えるけどスイッチのようだった。そのスイッチを操作すると、トレーラーの横が開いてスロープが伸びてくる。どうやらここから中に入れるようだ。

 

「エイミ、あとは自分でやりますから、暑いのであればトレーラーヘッドの中で冷房を全開にしていなさい」

 

「ありがとう、部長。そうする」

 

 和泉元さんは限界だったのか、明星さんの言葉に従ってトレーラーヘッドに向かって運転席の中へ消えていった。よっぽど暑かったんだね。

 

「では、皆さん中へ」

 

 明星さんの車椅子は本来押す必要がないもので、かなりの馬力があるのか割と角度のあるスロープをぐいぐい登っていく。生塩さんが後から続いて、私たちトリニティ3人もトレーラーの中へ入った。

 

 中はまさに別世界。まるで特撮映画のような移動式の司令室のように所狭しと機器やモニターなどが並んでいた。

 

「ようこそ、特異現象捜査部、移動式部室へ。他校の生徒を招いたのはこれで二度目ですね」

 

「一度目があったんですか?」

 

「はい。草鞋野さんも知っているアビドスの皆さんと」

 

「あぁ、そういえばこの前ホシノちゃんから聞いたけどビナーの調査で」

 

「そうです」

 

 ナギサちゃんとアウトランドにいた裏側で、アビドスはホシノちゃんがいない間に明星さんたちが来ていてデカグラマトンの調査をしていたんだって。そのときにこの移動式の部室を使ってたのかな。

 

 明星さんは研究者気質に見えて結構現場主義みたいだからこうやって現地近くまで来たいんだろうね。

 

「トリニティのお二人はどうですか?この部室は」

 

「え、えっと、す、すごい、たくさんすごいです!」

 

「私もすごいと思います!」

 

 マリーちゃんの語彙が残念なことになってるし、コハルちゃんも反応に困ったのか後に続いていた。明星さんはくすくすと笑っていた。小動物か何かだと思ってません?生塩さんは微笑ましく見守っていた。

 

「ヒマリ先輩、本題に入りましょうか」

 

「そうですね」

 

「あの、先ほどの和泉元さんは……」

 

 マリーちゃんが気を使って明星さんに言うと、彼女は「問題ありません」と言った。

 

「エイミにはインカムをつけさせています。集音機器は私についていますから、話題は共有できています」

 

「そうなんですね。すいません」

 

 準備がいいね。足が不自由な明星さんの普段の生活も和泉元さんが支えていて、もしかしたら一心同体ぐらいの関係性なのかもしれない。

 

 明星さんが手を体の前にかざすと、まるで眠っていた機器たちが目を覚ましたかのように次々と起動して、空間投影のディスプレイが浮かび上がる。

 

「……では、始めましょう、お嬢様方」

 

 不敵な笑みを浮かべ、電子の光に包まれる明星さんはまるで魔女のような印象を受けた。マリーちゃんもコハルちゃんも目を奪われている。

 

「お話は伺いました。スランピア・トリニティにて勝手に放棄された遊園地が稼働していると」

 

 表示されたのは今回の調査場所である遊園地“スランピア・トリニティ”。スランピアはモモグループのキャラであるモモフレンズを一部題材にしたものだけど、様々なアトラクションが用意されていてそれなりの広さがあるみたいだ。

 

「スランピア・トリニティ。5年前に廃業し、放棄された遊園地です。モモグループによる損失補填のため、当該地はトリニティへ買収されその後、解体されていません」

 

 生塩さんが手元にあるメモ帳を見て言う。

 

「私も小さい頃、訪れたことがあります。幽霊が出るなんてそんな噂は」

 

 マリーちゃんが首を傾げる。遊園地の遊具たちがそんな怨念を持って襲い掛かってくるなんてあるのかな。

 

「不可解な現象であるのは間違いないでしょう。ですが、意志なき筈のものが意志を持つことは事実としてあります。これが同じ類であるかはわかりませんが」

 

 デカグラマトン、とは違う何かなんだろうけど、近しいものかもしれないし、このあたりはここからの調査次第だね。

 

「今回の調査ではチームを2つに分けます。現地班とここでの解析班です」

 

 再び明星さんが手を振るうと、モニターが切り替わる。どこから入手したのか私たちの生徒証の写真が並んでいた。

 

「現地班、便宜上A班としましょうか。人員はこの4人です」

 

 モニターの中で写真が動いてA班が構成される。当然ながら私たちトリニティからの3人と、4人目は――。

 

「生塩さんが同行するんですか?」

 

「はい、草鞋野さん。今回、これが私の目的なので」

 

「非常に業腹なのですが、あの女…失礼、リオからノアの新装備のテストをするように言われています」

 

 新たにポップアップしたのは何かの武器の画像。開放型バレルにまるで鍵のようにも見える不思議な形。けれども武器の名前はこうだ。

 

「……スーパーノヴァMk2“アララト”…これって」

 

「はい。アリスが使用しているレールガンのデッドコピーです。こんなものを作って何をしようというのでしょうね、アレは」

 

 前にハルナが持ち出した遺物をいとも容易く破壊したのを覚えてるけど、それのコピー品。とはいえ、威力はきっと折り紙付きでそんなものをコピーするなんて。ミレニアムも一体何を…?

 

「れーるがん…?」

 

「下江さん…でしたか。馴染みのない武器かもしれませんが、火薬を使用せずに電磁力で弾を撃ち出す砲になります」

 

「えっと……」

 

「電気で撃つものすごい銃、って思ってください」

 

「あ、はい」

 

 生塩さんがものすごく噛み砕いた説明をしてくれてコハルちゃんは理解…してないけど納得はしたみたいだった。マリーちゃんは見たこともない技術のオンパレードで言葉を失っている。

 

「話を戻しましょう。ノアにはもちろん調査を任せます。ミレニアムの生徒ですから解析は基礎技能です」

 

「お任せください」

 

「基本的に、皆さんはノアの護衛をしてもらうことになります」

 

 護衛ね。トリニティの私たちが特異現象を調査しようとしても厳しいだろうし、だいぶ飲み込みやすい支援要請になったかも。

 

「それと、B班は残った私とエイミになります。ノアから送られてきたデータを元に解析を実行します」

 

 これが今回の編成、ってことね。

 

「では、準備に取り掛かりましょう。現地には夕方、調査の開始は例の動画と同じ夜間になります。仮眠を取れる方は取ってください。このトレーラー後方には仮眠室も設けてありますので」

 

「わかりました。現地のリーダーは誰にすればいいかな?」

 

「それは、草鞋野さんがするものと思っていますが?」

 

 明星さんは愚問と言わんばかりだ。うん、そういうことなら私がリーダーをやろう。

 

「じゃあ、私が現地で指揮を。明星さんの言った通り、寝れる人は寝てね。それと、現地の前で軽いブリーフィングするから」

 

「はい、先輩!」

 

「わかりました!そういうことなら、一度私はシスターフッドに戻ります」

 

 マリーちゃんは一回シスターフッドに戻るみたいだ。歌住さんへの報告があるんだろうね。とりあえず、だ。これであの遊園地へ行くことが確定して、メンバーも完全に決まった。あとは現地で何が出てくるか。

 

 先生がいないのが不安だけど、対処できる範疇のものであってほしいね。

 

 

 

 

 

 スランピア・トリニティの正面ゲート近くにやってきた私たちはトレーラーをキャンプとして、その前で園内突入前のブリーフィングを開始した。A班、つまりは私をリーダーとして園内へ入るメンバーは全員装備を整えた上でトレーラーの外にいる。

 

「みんな装備の点検をしてね。生塩さんは特殊な装備ですが平気ですか?」

 

「はい。ウタハ先輩に整備をお願いして、あとは簡単な点検マニュアルも見せてもらったので、問題ありません」

 

 今回、生塩さんはレールガンという特殊兵装を運用するんだけど、見た目がすごい。まるで大きな鍵のような剣のような。長大な砲身に開放型のバレル、身の丈以上の得物なんだけど、見た目よりは幾分か軽いらしい。

 

 生塩さんはそれを右手に、あとは接近されたら左腰に備えたゴリゴリにカスタムしたハンドガンで対応するようだった。

 

「あの…かなりアクセサリを付けられていますね」

 

 同じくハンドガンを使っているマリーちゃんが生塩さんの銃を見て気になったようだった。マリーちゃんの銃は綺麗に整備されてるけど、使用感がなんだかあまりない。もしかしなくても、普段戦わない人だったりする?

 

「趣味ですね。伊落さんは付けられないんですか?」

 

「いえ、私はそもそも、あまり銃を使わないので」

 

 わーお、本当にそうなんだ。生塩さんも少し驚いた様子だった。このキヴォトスの生徒で“銃をあまり使わない”なんて言うの、この子ぐらいじゃないだろうか。

 

 その割にはなんでこんなゴツいマグナムなのか。

 

「……トリニティの方はあまりお会いすることはありませんが、伊落さんのような方は多いのですか?草鞋野さん」

 

「いやぁ、そんなことないと思うよ?こっちのコハルちゃんは正義実現委員会だから本職でバンバン撃つし」

 

「そうなんですね」

 

 コハルちゃんは私に名前を挙げられてなんだかもじもじしていた。恥ずかしがっちゃてるのかな、かわいい。けどさ、コハルちゃんも十分な実力者なんだよね。狙撃の腕はかなりのものだろうし、実際RABBIT小隊に襲われた時反応できたのはコハルちゃんだけだった。

 

 だから今回は頼りにしてるんだ。

 

「それじゃあ、陣形の確認をしよう。まず、トップは私が」

 

 これから突入するにあたっての陣形は当然、私が一番前。いつもの拳銃はないけど、この銃で頑張るしかない。最悪の場合は格闘戦だ。

 

「私の後ろはコハルちゃん」

 

「はい!」

 

 私の援護と、この中で一番歳下だからね。頼りにはしてるけど、だからといって無理はさせられない。

 

「三番手には生塩さん、お願いします」

 

「任されました」

 

 生塩さんは真ん中に。彼女は重武装だし、基本的には後方支援だ。あと、かなり視野が広いと思われるので色々と見てくれると思う。

 

「最後尾はマリーちゃん、いいかな?」

 

「はい。私でよければ」

 

 最後に、生塩さんの直掩も兼ねた殿としてマリーちゃん。生塩さんが咄嗟に反応できない時の接近戦を担当してもらう。それにしても4人だと小隊だし、FOXやRABBITの子たちが浮かんじゃうな。

 

「この隊列でいくよ。それと、基本的にはバディを組むように。私とコハルちゃんがA1分隊、生塩さんとマリーちゃんがA2分隊。お互いにカバーして動こう」

 

「わ、私が、先輩とバディ…?」

 

「うん。武器も同じだし合わせやすいと思うよ。生塩さんとマリーちゃんは大丈夫?」

 

「問題ないかと」

 

「精一杯がんばります…!」

 

 準備は良さそうだ。秋のほんのりひんやりした気候が不気味さを感じさせる。遊園地の入り口を見つめても特に異変はまだ感じられない。頭につけたミレニアム製のヘッドセットを触って、通信機のテストを行った。

 

「こちら草鞋野、明星さん、聞こえますか?」

 

『はい、感度は良好です』

 

「もう少ししたら園内へ侵入を始めます。そちらも準備はよろしいでしょうか」

 

『えぇ。ノアに解析もさせますが、観測用のドローンも随伴させます』

 

 ブーンっ、と音がすればトレーラーの上から何かが切り離されて私たちの頭上に浮かんだ。大型のカメラ付きのドローンだね。航続距離は長そうだ。武装はされていないようで、本当に観測用みたいだ。

 

『高度は高く取りますので、戦闘の支障にはなりません』

 

「わかりました」

 

 けど、せっかく空からの目があるなら色々やってもらおうかな。

 

「明星さん。すいません、先行して園内を撮影してもらってもよろしいですか?」

 

『いいでしょう。エイミも同じ判断をしますからね』

 

 和泉元さん、あんな格好だけど戦闘ではかなりプロフェッショナルらしいし、特異現象捜査部は明星さんが前に出れない以上、和泉元さんが戦うことになるから本当のワンマンアーミーなんだと思う。そりゃドローン使うよね。

 

 ドローンが高度を上げ、先行して遊園地へ向かっていく。

 

『映像はノアが持っている端末に回します。ノア』

 

「共有しますね。みなさん、こちらです」

 

 準備がよすぎる…生塩さんに手招きされて私たちは彼女の手元にあるスマホを覗き見た。夜間用のカメラなので荒いけど園内の様子はしっかりと見えてる。特に変わったところは見受けられない。

 

「……建物も一部崩れてるし、老朽化の影響かな」

 

「間違いないかと。崩れ方がそうですし」

 

「生塩さんわかるんですか?」

 

「前に資料で見たものとよく似ています」

 

 空からドローンが近づいても動きなし。ということは人が入らないと反応はしないのかな。

 

「ヒマリ先輩もどうでしょうか」

 

『特に何も。エイミ?そちらのセンサー類は?』

 

『………異常なし』

 

 よし、行こうか。これは行かないと何も始まらないね。……っと、その前に、先生に報告ぐらいはしておこう。本来の支援要請から大きく外れた行動なので。

 

「あ、ごめん。みんなちょっと一緒に写真を撮ってもらっていいかな?」

 

「先輩?どうしてですか?」

 

「先生に報告しないとね。この支援要請はまた別のだからさ」

 

 コハルちゃんがピンと来てないようだけどしょうがない。生塩さんとマリーちゃんは察してくれたのか、ちょっと髪を整えていた。撮るんだから可愛くとらないとね。コハルちゃんは……うん、問題ないね。いつも通り可愛い。

 

「じゃ、私を囲んで……えっと、警棒の先にアタッチメント付けて、っと」

 

「じ、自撮り棒になっているんですね」

 

 マリーちゃんが苦笑いしていた。そう、私の警棒は自撮り棒も兼ねている。だいぶ意味不明なものと思われがちだけど、これ結構便利なんだよね。

 

『確か……一時期売っていたものですね、ミレニアムで』

 

「そうそう。警棒としても悪くない性能だから気に入ってるんだよね。じゃ、撮るよ〜」

 

 パシャ、っと。うん、みんないい笑顔。警棒を元に戻してから携帯をいじって、モモトークで先生へ今の写真を送る。そして、いつものように秒で既読がついた。それどころかいきなり電話がかかってきた。

 

「はやっ!」

 

 コハルちゃんが驚いていた。本当に早い。流石というかなんというか。

 

「はい、エリカです」

 

『エリちゃん!?何してんの!?ナギサの護衛は!?』

 

「あ、すいません。状況を報告したいので、よろしいですか?」

 

『いいけど…』

 

 だいぶ困惑してる先生に状況を伝えた。新たな支援要請を追加で受けたこと、ナギサちゃんの護衛は一旦別の子が引き継いでること、そして今、現場となる遊園地にやってきているってこと。

 

 先生は黙って聞いていた。

 

「――以上が新たに受けた支援要請です。まだ事後報告ですいません」

 

『そうだね。ちょっといいかな、エリカ。もしそこに他の子がいるならちょっと離れてほしい』

 

 ……呼び捨てにされた。うっ、先生怒ってる?もしかして。声音もなんだか厳しい感じがする。私は先生の指示に従って、みんなに断りを入れてから一旦3人と距離を置いた。

 

「先生、離れました」

 

『最初にお小言だよ。エリカ、受けるのはいいけど、受けてすぐに報告をしなさい』

 

「はい…」

 

『わかってね?この前のナギサの支援要請は受けてすぐだったからよかったけど』

 

「すいません」

 

『うん。いいね?今後は気をつけて。……で、ここから忠告だよ』

 

 声の調子がいつものに戻るけど、それでも先生はかなり真剣な様子だった。忠告、って一体。

 

『受けちゃったものはしょうがない、頑張ってとしか言えない。でも、まずいと思ったらすぐに撤退するんだよ』

 

「はい。元からそのつもりです」

 

『まぁ、エリちゃんのことだからそうだろうけど、用心してね』

 

 そこから2、3言で先生との電話は終わった。う〜失敗した。久々に先生に怒られてしまった。気は引き締まった気がするので、用心して行こう。

 

「みんなお待たせ。じゃあ、本当にそろそろ行こうか」

 

 3人の元に戻って、私は声をかける。3人とも頷いてそろぞれの武器を構えた。私は遊園地へと振り返り、普段とは違う真っ白なライフルを構える。これまで、犯罪者は何度も相手にしてきたけど、幽霊は初めてだ。

 

 ちゃんと、弾が通じるといいけど。

 

「明星さん、準備整いました。A班、園内へ侵入します」

 

『わかりました。みなさん、お気をつけて』

 

 私は後ろへ視線を向け、左手で合図する。つい癖でヴァルキューレの時のようになっちゃうのはしょうがない。

 

 コハルちゃん、生塩さん、マリーちゃんの3人が頷き、私は廃墟となった遊園地へ歩みを進めた。




コハルはエイミに対してエ駄死をしかけましたが「なんか偉そうな人の御付きだし」と言えずにパンクしかけてました。

ノアのレールガンは以前グローバル版の生放送で公開された初期案のノアを参考にしています。ただ本作では特にノアにアリスの役割があるわけではありません。ノアみたいな子があんなに大きいの持ってると…”燃え”るよね。ちなみにいつもの書記の採決は左手で近接防御用として使用することになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。